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2026/09/11

6BA6を出力管とした低電圧式アンプの製作(試作機)

1.概要

6BA6を出力管とした低電圧アンプ

高周波(RF)増幅管である 6BA6 を出力管として用い、低電圧でドライブするアンプの試作記録です。6BA6は、低電圧動作において隠れた実力を発揮する真空管ですが、私自身低電圧アンプの製作は今回が初めて。まずはヘッドホン駆動およびデスクトップのニアフィールドリスニングを想定した試作機を仕立ててみました。

製作の経緯

数多くのラジオやチューナーを修理していると、行き場のないジャンク真空管が手元に溜まっていきます。私の部品箱も漏れなく「不要球」で溢れていました。

ジャンク真空管の部品箱

その箱を覗きながら、「6AU6や6BA6を使って、低電圧でアンプが作れないだろうか?」と考えたのが始まりです。とはいえ、低電圧動作のノウハウも経験もゼロ。いきなり本番機をつくるのは無謀なため、事前練習としてこの試作機を立ち上げることにしました。

2.回路図

6BA6低電圧式アンプ回路図

(1)特徴 

回路のB電源は標準で42V。G3(第3グリッド)の接続を工夫した「変形スペースチャージ」と、初段トランジスタによる「ハイブリッド構成」を採用しています。

(2)スペースチャージ方式と変形スペースチャージ

真空管の低電圧駆動といえば、カソードのすぐ外側にある第1グリッド(G1)に正の低電圧を加え、電子を強力に引き出すスペースチャージ方式(空間電荷格子管方式)が定番です。

しかし、この標準的な方式で小型アンプを組んでみたところ完全に失敗しました。6AU6や6BA6は格子(グリッド)が密すぎるため、G1をB電源に接続するとグリッド損失が大きくなりすぎ、音が全く出なかったのです。

そこで今回は、G1を入力(信号)、G2をB電源へ接続し、通常はカソードへ繋ぐG3(第3グリッド)をB電源へ接続する「変形スペースチャージ」を採用しました。

解説:真空管の**スペースチャージ方式(空間電荷格子管方式 / Space Charge Grid)**は、カソード(陰極)のすぐ外側に配置した「第1グリッド(スペースチャージグリッド)」に正(プラス)の低電圧を印加し、カソードから電子を強力に引き出す仕組みです。

(3)初段トランジスタ(2SC1815)によるハイブリッド化

RF管である6BA6を出力管として成立させるため、初段に2SC1815を挿入したハイブリッド回路としました。これには明確な目的があります。

低ゲインの補正:低電圧動作に伴う増幅率(ゲイン)の低下を初段トランジスタでカバー。

S/N比の向上:ローノイズなトランジスタで信号レベルをしっかり稼いでから真空管へ流し込むことで、残留ノイズを目立ちにくくする。

バイアス問題の回避とドライブ能力アップ:6BA6のバイアスが浅すぎる問題を回避しつつ、十分な信号振幅を送り込んで出力トランスをクリップギリギリまでしっかり使い切る。

3.製作

6BA6低電圧式アンプ

両脇は006P×2本、背面は単2×4本

ジャンクパーツをかき集めて組み上げた試作機ですが、見た目だけはそれらしく仕上がりました。

電源構成は以下の通りです。

ヒーター電源:単2乾電池 × 4本

B電源(通常時):006P(9V)角型乾電池 × 2本(18V〜)

テスト時:外付けで006Pを最大3本まで順次追加し、高電圧側までの挙動を確認。

 4.プレート電流の測定結果

低電圧増幅・測定結果

6AU6および6BA6を用い、B電源電圧(24V / 33V / 42V / 51V)と出力トランスの一次インピーダンス(7kΩ / 4kΩ / 3kΩ)を変えながらプレート電流を測定・比較しました。

測定している様子
 (1)出力トランスの選定

低電圧動作では出力トランスの選定が非常に重要であることが分かりました。実験上は4kΩの結果が最も良好で、本番機を組む際には汎用品の5kΩトランスが最適と判断しました。

(2)6AU6と6BA6の明確な特性差

・ 6AU6 のデータ(33Vで1.7mA、42Vで2.7mA)と比較すると、6BA6 の方が低電圧下で約2.3倍〜2.6倍も電流が流れやすいことが一目瞭然です。

・シャープカットオフ管の 6AU6 に比べて、リモートカットオフ(可変ゲイン)特性を持つ 6BA6 の方が、この低電圧領域において内部抵抗が低く抑えられ、出力段として非常に扱いやすいことが実測データによって裏付けられています。 

5.ヒアリング

 

ヒアリング風景

回路として動く感触は得られましたが、オーディオで最も重要なのはスペックではなく「音質」です。

試聴にあたっては、ヘッドホンでは評価が甘くなるのを避けるため、FM放送を音源とし、2Way小型スピーカーを鳴らすという厳しい環境でチェックを行いました。

【条件1】6BA6のみ(単体駆動) 

・条件1-1:G3=カソード接続

音量をボリューム位置12時より上げると高域で歪みを感じます。高音はやわらかな音色で中低音は出ません。音自体はきれいだが量感に乏しいです。音量はやや小さいですが夜間のリスニングには十分です。昼間でもニアフィールドであれば必要十分な音量です。

条件1-2:G3=B電源接続(変形スペースチャージ)

条件1-1と同様に音量をボリューム位置12時より上げると高域で歪みを感じますが歪は少ないです。少し音がクリアで見通しが良くなっています。こちらの方が中低域で少し厚くなって聞こえます。

 

【条件2】 ハイブリッド構成(2SC1815 + 6BA6)  

 

条件2-1:ハイブリッド化(初期)

ハイブリッド化は音に安定感があります。音に繊細さとつやがでてきてボーカルに色気が感じられます。出力上限または入力上限を超えなければ音は破綻しないがその範囲は狭いです。中低域は一番でています。 辛めの評価としては、音全体に灰色の膜がかかり透明度とクリアさが不足しています。中低域の厚みがもっと欲しい。S/Nの向上は感じられませんでした。ハイブリッド化によりボリュームに少し余裕がでましたが、まだ初段のゲインが高すぎるようです。

条件2-2:初段ゲイン最適化 + B電源42V

初段のゲインを2~3倍程度に下げた回路とB電源42Vで再調整後のヒアリングです。 初段トランジスタのバッファ効果でしょうか。6BA6への入力の影響もなくボリューム範囲が広がり12時超えても歪まずに改善しました。高域のざらつきがまだ少し残っていますが時間とともに減少しています。 音に適度の重さとうるおいが出て、それなりの透明度もあります。ただし、突き抜けるようなクリアさや透明度ではなく、空気全体に薄く色がまとっています。少しねばりのある中低音がでているが、気持ちよく聴けます。ボーカルに色気があります。 高域寄りの音を重心を少し下げ、ザラツキを減らせればと思います。オーディオとして音質調整してもいいレベルにようやく到達した音質になりました。ただし、まだ好みではありません。

・最終調整

最後に初段トランジスタのベースとエミッタ間に 47pF、カソードに 450μF を入れてから半固定抵抗で微調整しました。 音のバランスが一気に整いました。音だけを聴いたら6BA6シングルだなんてわかりません。これなら夜間のオーディオ用として使えます。真空管の味も十分味わえる出来上がりです。音楽が楽しいアンプに仕上がりました。

 

【条件3】 B電源電圧の比較テスト(条件2-2の回路ベース)


条件3-1:B電源 33V

条件2-2の回路構成でB電源33VとしましたがB電源42Vと同じ音がします。驚きですが、音質は42V電源と遜色がありません。最大音量も下がったようには感じらずほぼ同等です。ただし、半固定抵抗の再調整は必要です。

条件3-2:B電源 24V

条件2-2の回路構成でB電源24Vの音は、全体的に音がおとなしくなった印象です。中低域に重心が下がったバランスで聴きやすい音です。高域のざらつきは極わずかだけ聞こえます。音量も少し小さくはなりましたが、夜間のリスニングでは十分な音量です。十分実用になるレベルの鳴りっぷりです。ただし、過大入力レベルに対する余裕は少なく、半固定抵抗での調整は限界ぎりぎりです。

条件3-3:B電源 15V

条件2-2の回路構成でB電源15Vの音は、どのように調整しても歪んでNGでした。回路を見直し再設計すれば修正できるかもしれません。限界までの低電圧を目指している訳ではなく、あくまで音質優先なので、低電圧の動作確認はここまでとします。

 

6.まとめ

正直、6BA6で本気のオーディオアンプが製作できるとは思いませんでした。低電圧アンプでは珍しく、スピーカードライブできます。小音量ですが音は良いです。真空管の音が聞けるアンプに仕上がりました。RF管の6BA6ですが低電圧でこそ本領を発揮する真空管でした。はじめた本人も驚く結末でした。

 

7.今後の課題(周波数特性の測定)

今回は聴感上のフィーリングを中心に評価を行いましたが、今後は周波数特性等の測定を行い、6BA6低電圧アンプの電気的な特徴をさらに掘り下げて可視化していく予定です。

2026/08/26

ループアンテナを用いた複同調ゲルマニウムラジオの製作

ループアンテナを用いた複同調ゲルマニウムラジオの製作

1.概要 

バリアブル・カップラを用いた複同調ラジオ

ループアンテナを用いた複同調ゲルマニウム・ラジオの製作です。子供の頃に出来なかったラジオ製作の再チャレンジのブログです。

今回は、外部アンテナなしでも実用的な感度を確保しつつ、指向性・選択度・同調を独立して追い込める複同調ゲルマニウム・ラジオを目指します。

(1)子供の頃の製作失敗 

小中学生の頃に愛読していたは「ラジオの初歩から組立まで 松尾誠 著」です。

複同調回路の例

P235「やさしい・ラジオ」では複同調回路が掲載されています。無謀にも当時すぐに製作してみました。まったくの無音であっさり失敗しました。何をどう修正してもダメでした。

コイルの取り付け方(誘導作用)

2本のコイルの誘導作用の図の意味が理解できていなかったのだと思います。「ラジオの初歩から組立まで 松尾誠 著」は小中学生の理解力では持て余す製作記事でした。

(2)バリアブル・カップラ 

今なら、誘導結合のバリアブル・カップラを用いた複同調のゲルマニウム・ラジオだと理解できます。当然ながら子供の頃失敗した複同調回路でゲルマニウム・ラジオを製作したくなりました。再チャレンジです。

2つのコイルを使用する方式にはバリアブル・カップラとバリオメーターがあります。似た構造ですが、全く異なる機能と用途なので、まずそこを下の比較表で整理してみました。

バリアブル・カップラとバリオメーターの比較表

以上のことから、複同調にはバリアブル・カップラを用います。

2.回路比較

 複同調とバリオメーターはコイルの回路構成の違いが動作と用途の違いになっています。

 (1)複同調回路

誘導結合はL1、L2のコイルを離して結合度(k)を変化させて調整します。それがバリアブル・カップラです。

複同調回路

 (2)バリオメーター

L1、L2は直列に接続して、Lを変化させて同調します。

バリオメーター回路

3.回路図

下図は作りたい複同調回路のイメージです。L2にタップを出して、音質やマッチングを調整できるようにします。L1とL2はバリアブル・カップラとわかるように破線で結んでいます。クリスタルイヤホンに100kΩの抵抗を入れて包絡線検波とします。

 

バリアブル・カップラを用いた複同調回路

 4.機構

今回検討した「バリアブル・カップラ」の機構要件は以下の通りです。

(1)コイル間は適度な疎結合とする

  • バリオメーターのような高い加工精度は不要

(2)コイルへの影響(浮遊容量・手感度)を抑える構造

  • 直接手で触れずに操作できる機構

  • コイル周辺に無駄な高誘電体や導体を配置しない

  • 結合度(k)を微調整できる機構

コイル間の適度な疎結合は、ループアンテナの内側に二次コイルを配置する構造を採用しました。この「外側コイルの内側で、小コイルを回転させる」というラフな構造は、手軽な自作にも非常に向いています。 (※なお、この配置は結合度調整(バリアブル・カップラ)向けであり、インダクタンスを大きく変化させる密結合のバリオメーターには向きません。)

構造が決まれば、次は材料の選定です。

(3)高周波損失と浮遊容量を抑える材料選び

  • 回転軸: 竹ひご(金属軸によるQ値低下を防止)

  • 内側コイル枠: ガムテープの紙筒

  • 土台・構造材: 木製シャーシ、プラスチック製ギアボックス 

(4)構造イメージ図

適切な素材を選定したら、次に製作するための構造イメージを検討します。

構造イメージ図

一見するとバリオメーターのように見えますが、両者は目的が異なります。

  • バリオメーター: インダクタンス(L)を変化させて同調させる

  • バリアブル・カップラ:  結合度(k)を変化させ、通過帯域幅と選択度(分離感)を最適に調整する

直前に検討していたバリオメーターの機構アイデアを応用しました。一般的なゲルマニウム・ラジオにはあまり見られない、面白い複同調の構造に仕上がっています。

(5)この機構のねらい(どんなラジオを作りたいのか)

  • 外部アンテナなしでの高感度受信

  • 指向性(ループの向き)、選択度(結合度(k))、音質・マッチング(タップ調整)、同調(2連バリコン等)の4つを独立して調整可能 

マンションなどの室内利用を想定した、いろいろな機構を盛り込んだ欲張りなゲルマニウム・ラジオです。

5.製作

(1)材料 

用意する材料は以下のとおりです。

ループアンテナ AN-200、ダイオード、抵抗、ラグ板、台座用木材、LEGO ギアボックス、3接点セレクタ、つまみ×2個、2連バリコン、ガムテープの紙筒、エナメル線0.4mm、配線用リード線、竹ひご丸棒(直径4mm) 

(2)TECSUN AN-200仕様 

ループアンテナ AN-200の回路と仕様を実機を分解、測定して確認しました。

AN-200回路図

AN-200仕様

(3)バリアブル・カップラの製作

①バリコン

エアバリコン:440pF

写真の大型エアバリコン440pFを使用します。 大容量のエアバリコンなのでQが向上します。

社名とブランド名の刻印

このエアバリコンには、片岡電気(1948年設立~1963年)の社名とALPSのブランド名が刻印されています。片岡電気は、後のアルプス電気(商号変更1964年~)です。精密機械の趣がある古いバリコンです。

②バリアブル・カップラの計算

エアバリコン440pF の条件から、下表のバリアブル・カップラの値を求めます。

バリアブル・カップラの計算
バリアブル・カップラの製作 

AN-200を分解

AN-200を分解して、以下のとおりコイルを巻数を改造します。

・一次側コイル 

完成した一次側コイル

AN-200の一次側3ターンのコイルを取り外します。次に二次側28ターンを22ターンに変更します。回転軸を取り付けるため、事前に巻線の中央に隙間を設ける11ターン×2の分割巻きとします。

・二次側コイル

二次側コイル(内側コイル)

内側コイルはガムテープの紙筒に0.4mmエナメル線を58ターンとタップ(15T,30T45T)を取り出します。回転軸を取り付けるため、事前に巻線の中央に隙間を設ける29ターン×2の分割巻きとします。

(4)台座

バリアブルカップラを乗せる台座を製作します。

①ギアボックス

LEGOギアボックス

内側コイルの回転にはLEGO ギアボックス(1:24)を使います。 非金属のプラスチック製のギアボックスに適度な長さのツマミ用シャフトと回転軸用シャフトを取り付け、ゴムスペーサーでシャフトの両側を挟み込み回転のガタつきをなくしています。また、ゴムスペーサーによりツマミの操作感を適度な重さに調整しています。

②台座の製作 

・台座のケース

台座の表側
台座の裏側

台座のケースにはSANSUI TU-666チューナーのウッドケースを再利用しました。古いラジオの佇まいを持ったケースに仕上がりました。バリコン とギアボックスの穴を開け、セレクタと測定端子を取り付けます。裏蓋はなしとして、底板は部品を取り付けるため別に作成します。

・ギアボックスとバリコンの配置

ギアボックスとバリコンの配置決め

台座の底板にバリコン とギアボックスを配置します。ギアボックスの軸はバリコンの軸の高さに合わせました。

・台座内部の仮配線

台座は事前に出来る範囲の仮配線を済ませておきます。 

仮配線した台座

・完成した台座

台座と底板を組み合わせれば完成です。

完成した台座

(5)バリアブル・カップラの取付

・回転軸の取り付け

回転軸を全ての部品に仮通しした様子

回転軸を通して軸が垂直になる位置に台座とバリアブルカップラをネジで固定する穴あけをします。台座とバリアブルカップラをネジで固定してから内側コイルと全円分度器に回転軸を通します。この回転軸を通す作業が一番難易度が高く大変です。ミリ単位のズレの微調整などの想定外の連続でした。竹ひごの柔軟性がなければ回転軸を通せなかったです。

全円分度器を設置

内側コイルと全円分度器をボンドで固定します。内側コイルは外側コイルの中心になる位置にします。全円分度器の本体はバリアブルカップラに固定、針は内側コイルの回転軸に固定します。ボンドが乾く前に全円分度器の角度が正しく示すように微調整しておきます。

・全円分度器の目的

全円分度器を取り付けて、内側コイルの回転角を針先で明示させます。結合度(k)を角度により読み取ることを目的としています。

・ギアボックスと回転軸の連結 

1:24の減速ギアボックスにより内側コイルの角度を全円分度器の目盛りに合わせて精密に回転させることができます。

・配線作業

ケーブルガイド

内側コイルからは、単線ではなく柔らかなリード線を使い、コイルが回転してもバラバラにならない様にケーブルガイドを通します。

台座内の配線

バリアブルカップラと台座内の配線をすれば、全ての作業は終了です。

(6)完成 

完成した複同調ゲルマニウムラジオ

完成した複同調ゲルマニウムラジオです。

なんとも奇妙なバリアブルカップラが台座に乗り、分度器まで付いた理科の実験機材の様な雰囲気を纏った木製ラジオです。しかし、金属などは徹底排除、回路構成、パラメータの可視化など、複同調ゲルマニウムラジオの基本に沿って忠実に製作した結果です。

(7)動作確認 

①初期の動作試験

どんな立派な外観のラジオでも鳴らなければ意味がありません。一番心配なのは複同調は単同調より感度が落ちることです。電波が弱い我が家では一番の懸念事項です。

・クリスタルイヤホン接続

クリスタルイヤホンを接続して受信してみます。全然、受信できません。電源アースを接続して再度受信を試みます。 NHK第一放送がノイズに埋もれて微かに聞こえます。

・アンプ接続

ラジオのアンプとして電子ブロックST-45を使用

音量が小さすぎるので、アンプを入れて受信してみます。アンプには電子ブロックST-45を使用します。スピーカーアンプ内蔵で受信状況が確認しやすく便利です。

NHK第一放送が非常にクリアな音で受信できます。電源アースを繋ぐとノイズがひどいので接続はしません。受信できた放送局はNHK第一放送とAFN(旧FEN)、ニッポン放送の3局です。予想外にクリアなラジオ放送が聴けたので何だか泣けてきます。偶然、尾崎豊の卒業が流れてました。単同調は横に広がったような平坦な音、複同調はクリアでシャープな音がします。複同調のクリアな音を聞いた瞬間、製作してよかった思える音です。

バリアブル・カップラの回転、タップの切り替えの動作および受信状態の変化を一通り確認して正常でした。

また、バリアブル・カップラは、周囲の電波を敏感に拾いあげます。ラジオから1m以上離れていてもスマホの発する電波がノイズとして聞こえます。スマホ操作すると「ブツ・ブツ・ブツ・ツゥーツツー」とアマチュア無線の混信の様な音が短時間受信されます。非常に鋭敏なバリアブル・カップラです。

②同調

・受信可能な周波数範囲:550kHz~1350kHz

ここでいう「受信可能な周波数範囲」は、レベル低下や大きな変動がなく、安定して受信できる実力値の範囲を示します。 この上下の帯域でも受信自体は可能ですが、レベルの低下や変動が大きく、安定した受信とは言えないため、仕様としての提示からは除外しています。

③選択度・共振特性(Qカーブ)の測定

当初はシグナルジェネレータとオシロスコープによる昔からの3点測定で選択度(Qカーブ)を測定しようと思っていました。スイープジェネレーターMSW-7124を持っていたの忘れてました。MSW-7124はFMチューナーのQカーブを見ますがAM用に使うという考えは浮かびませんでした。スイープジェネレーターを使い、周波数、角度、タップを変えて、リアルにQカーブがどのように変化するのかを直接観測します。 

・テスト用送信アンテナの製作

テスト用送信アンテナ

2mmのアルミ線で直径10cmのテスト用送信ループアンテナを作成します。

・測定結果

Q測定結果一覧表
選択度(Qカーブ)の測定結果は非常に良好で、複同調ならではの鋭い分離特性が確認できました。タップ位置によるQ変化が単純な比例関係にならなかったのは、検波回路の負荷効果(Qダンプ)と結合度・インピーダンスマッチングが複雑に相互作用しているためと考えられます。意外だったのは、タップが小さくなると音量が下がり選択度(Qカーブ)が良くなるものと思っていました。共振周波数によりその関係もかわり、タップ、音量、Qの比例関係にあるような単純な動作ではなかったみたいです。 

Q測定画面などのデータは、8.参考:測定データを参照してください。 

④倍電圧検波

倍電圧検波に変更してみましたが、みごとに失敗しました。Qと音量の低下です。倍電圧検波による負荷は同調回路には重すぎたのでしょう。このラジオは繊細なバランス構造の上に成り立っていることがわかりました。

⑤周波数のシフト

タップの切り替え、内側コイルの角度(結合度(k))を変えたときの共振周波数のシフトを測定します。測定結果の画面などのデータは、8.参考:測定データを参照してください。 

a.タップとQカーブへの影響

タップ切替とと共振周波数のシフトを測定した。 

・30T(基準):NHK第一放送相当 594kHz 

・ 30T⇒45T:共振周波数は590kHz(-4kHz)にシフト

 ・30T⇒15T:共振周波数は599kHz(+5kHz)にシフト

 b.内側コイルの角度とQカーブの影響

外側コイルと内側コイルの角度と共振周波数のシフトを測定した。0度は内側コイルが正面を向いた状態とした。

・0度(基準):共振周波数は594kHz NHK第一放送相当、タップ30T

・20度:共振周波数は590kHz(-4kHz)にシフト

・40度:共振周波数は584kHz(-10kHz)にシフト

・60度:共振周波数は577kHz(-17kHz)にシフト

⑥タップと音の関係

NHK第一放送594kHzを例にします。タップ45Tは、音が横に広がったような平坦な音です。タップ30T、15Tとタップ数が下がるにしたがって、音がクリアでシャープ(音がやせる)になります。音量は大きいほうから45T⇒30T⇒15Tの順になります。 

6.教育的な価値

スキルやノウハウのない初心者には、1度製作したら変更のできないゲルマニウムラジオの単同調回路は非常に難しいです。

今回、製作した複同調のバリアブルカップラは、パラメータが微調整できます。パラメータの調整は、一見すると性能向上や最適化が目的になります。

しかし、違う側面があることに気づきました。

単同調では固定されている不可視のパラメータが複同調のバリアブルカップラではパラメータが可視化されています。可視化されたことで、同調回路への理解が容易になるとともに、実体験を通じた教育的な価値を持っています。意図せずに複同調パラメータ実験機を生み出したみたいです。

この様な教育的な視点を備えた工作には、性能向上や最適化などの機能を超えた遙かに大きな価値を感じます。

さらに、外側コイルと内側コイルが10cmという大きな空間で誘導結合しているという体験は特別です。このスケールで電磁誘導を扱い、角度や距離によって結合度(k)が変化し、ラジオが同調して受信する。これはミリ単位の小さな部品では決して味わえない醍醐味です。

バリアブルカップラは、まさに「電磁誘導の構造を体感で理解できる装置」です。

7.まとめ

ループアンテナ構造の分度器付きバリアブル・カップラを用いたラジオ製作は如何だったでしょうか。私自身ゲルマニウムラジオに精通していないことが、ループアンテナをソレノイドとして利用する変わった製作が出来たのではないかと思っています。

子供の頃の失敗作を大人になり少し捻った構造で製作してみました。成功体験より失敗の方が心に残ります。それが原動力になり製作したゲルマニウム・ラジオです。永い年月が経ってようやく夏休みの工作が完成しました。今度は間に合いました。

追記:何でもいいから変わった構造でラジオを製作すればいいのではないと思います。また、変わった発想であることは初心者であることの裏返しです。変わった発想がすごいのではなく、発想できるだけの基礎理論と実践の歴史を少しかじらせてもらっただけのブログです。 

8.参考:測定データ

(1)Qカーブ測定

①Qカーブ測定結果一覧 

Qカーブ測定結果一覧
②Qカーブ測定画面
スイープジェネレーターによる共振周波数、タップ毎のQカーブ画面です。 

a.NHK第一放送相当:594kHz

・15T

Qカーブ:594kHz、15T
 
・30T

Qカーブ:594kHz、30T

 ・45T 

 
Qカーブ:594kHz、45T

b.TBS放送相当:954kHz

・15T

Qカーブ:954kHz、15T

・30T

Qカーブ:954kHz、30T

・45T 

Qカーブ:954kHz、45T
 

c.ニッポン放送相当:1242kHz

・15T

Qカーブ:1242kHz、15T
 ・30T

Qカーブ:1242kHz、30T
 ・45T 

Qカーブ:1242kHz、45T
(2)タップとQカーブへの影響

タップ切替とと共振周波数のシフトを測定した。 

・30T(基準):NHK第一放送相当 594kHz (マーカーで表示)

594kHz、30T(基準) 

・ 30T⇒45T:共振周波数は590kHz(-4kHz)にシフト

594kHz、30T⇒45T

 ・30T⇒15T:共振周波数は599kHz(+5kHz)にシフト

594kHz、30T⇒15T

(3)内側コイルの角度とQカーブの影響

外側コイルと内側コイルの角度と共振周波数のシフトを測定した。0度は内側コイルが正面を向いた状態とした。 

・0度(基準):共振周波数は594kHz NHK第一放送相当、タップ30T

0度(基準):共振周波数は594kHz
 ・20度:共振周波数は590kHz(-4kHz)にシフト
20度:共振周波数は590kHz

・40度:共振周波数は584kHz(-10kHz)にシフト

40度:共振周波数は584kHz
・60度:共振周波数は577kHz(-17kHz)にシフト

60度:共振周波数は577kHz