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2025/10/04

PIONEER TX-15 真空管FM/AMチューナー

 

 PIONEER TX-15 真空管FM/AMチューナーの紹介です。1965年頃、31,800円の製品です。ダイヤルスケールの窓が大きく大胆で斬新なデザインです。

ダイヤル目盛りにステレオランプ、ビーム・インジケーター(マジックアイ)によりチューニングと受信レベルを知ることが出来ます。窓の横にはAGCスイッチがあります。

 

回路図はいろいろな雑誌に掲載されています。「電波実験 新ステレオ回路集」の回路図は2ページにわたり大きて見やすく部品配置図もあり修理にとても役に立ちます。

 

ここまではいつもの製品紹介です。外観は綺麗なのにやっかいな不具合や損傷のあるチューナーです。上の写真を見てください。MPX回路の中央T502、その左L502、L504が横倒しになって断線しています。コイルの損傷をくわしく調べましたが修理はできそうにありません。入手は困難な部品です。ジャンク品の保存部品からなんとか代替えできる部品を探して交換しました。

フライホイールと一体のダイヤルツマミの軸が折れています。しかたなく、ジャンク品から糸巻の位置の高さがあう部品を見つけて交換しました。交換作業は半日かかります。

電源も入りません。電源回路の200Ω8Wの抵抗が焼き切れて断線です。劣化による過電流が原因かと思います。セメント抵抗に交換して電源が入るようになりました。
内部は全体的に劣化が激しいです。劣化部品を全て交換します。各所の電圧を測定しますが、これもかなりズレているので抵抗で6か所ほど電圧調整しました。ハンダづけがあまく芋ハンダで接触不良が多いです。全て再度ハンダづけを施します。裸線の空中交差もありエンパイヤチューブなどで補修します。
この時点でためしに動作確認をします。受信はできますがステレオランプが点灯しません。
半固定抵抗VR502が不良でステレオランプが点灯しません。丁度良い抵抗値がなく高級なネジ止め付きのボリュームをセパレーションボリューム横のシャーシに取り付けました。また、セパレーションも不安定なのでボリュームを分解・清掃します。
上の写真が修理後の姿です。受信レベル、セパレーション、ステレオランプを調整します。しかし、80MHz付近で無音ですが受信レベルが上がりFM放送とバッティングしてFM放送が阻害されます。AGCも動作不良です。
この不具合の現象は過去にも経験しています。IFTのコンデンサ容量抜けです。初段のIFT一次側に20pFを入れます。無音の不要な妨害波はなくなり、80MHzのFM放送が正常に受信できます。
 
最後にスイープジェネレータを入れて確認します。 10.7MHzのIF波形はきれいな波形でOKです。
Sカーブを確認しますがバランスが崩れています。検波回路のダイオードを交換します。
ダイオードの交換によりSカーブのバランスが戻りました。この状態で再度調整します。
ヒヤリングします。FMステレオではホワイトノイズがやや多めです。FM放送はすっきりした音質で好感がもてます。真空管の劣化でしょうか受信レベルが低いのがホワイトノイズが多い原因かと思います。TX-15は昔のラジオ雑誌でよく広告を見ました。 TX-15のようなセパレートステレオは高級品です。我が家はがんばって家具調のナショナルSE-6200Aが精いっぱいです。現在ではTX-15はあまり見かけません。出回っている数も少ないチューナーです。手強い修理作業は昔を懐かしむ貴重な時間になりました。

2025/07/17

東芝 6FT-265 真空管FMチューナー(MPX OUT付加)

 東芝 6FT-265 真空管FMチューナーの紹介です。1959年、8,900円の真空管FMモノラル・チューナーです。当時のFM周波数の割り当てから80MHz~90MHzのダイヤル目盛りとなっています。正面パネル左上のマツダの文字が古さを感じます。

背面は、アンテナ端子、ピンジャックケーブル(モノラル出力)、電源ヒューズになります。

底面には、仕様、配線図、糸掛け図が張り付けてあります。また、ゴム足4つのネジで本体シャーシを固定しています。

 

ケースを取り外すと、6AQ8,6BA6×2,6AU6,6AL5,5M-K9の真空管です。検波~電源まで6球の真空管で構成されています。バリコンは2連式です。

前面と底板を一体にしたL字型の独特のつくりです。

プラスチックパネルを取り外すとL字型カバーに黒い厚紙で出来たシートが張り付けてあります。厚紙は経年劣化で少しでも触るとボロボロに破けて砕けるので交換します。上の写真は色付画用紙で作成したシートです。この黒いシートはダイヤル目盛りのランプの光がプラスチックパネルから透けて漏れ出すのを防いでくれます。 

背面にむき出しで危険なヒューズフォルダはカバー付きに交換します。

劣化部品は全て交換します。ダイヤル糸が断線していたので張替えします。受信感度とダイヤル目盛りを調整して修理は完了です。

このFMチューナーはレシオ検波です。時代背景からモノラル出力のみのFMチューナーです。

上の写真は実際のレシオ検波の回路です。


 現在ではFMモノラル出力では実用的ではないのでステレオ化を目指します。上の図は6FT-265にMPX OUTを付加した回路図です。MPX OUTがあれば6FT-265でFMステレオ放送を聞くことができます。

ラグ板を使いレシオ検波によるMPX OUT回路を組み込みます。上の写真はMPX OUTを付加した様子です。セパレーションを測定します。約20dBを確保することができました。 TRIO AD-5のディメンションコントロールがあるFMアダプタであれば、セパレーションはもっと良い数値になったと思います。

MPX OUTをFMアダプタに接続してFMステレオ放送をヒヤリングします。音の重心は低めで奥行も感じます。高域がやや少ないマイルドで穏やかな音です。FMアダプタの影響なのか中低音はダンピングが効いたような粘りがあります。FM放送を穏やかに安心して聴けるチューナーのようです。

初期のFMチューナーは教科書に載っているような検波回路なので容易にMPX OUTを付加することができます。古いモノラルFMチューナーは飾って置くだけでは勿体ないと思います。少し手間をかけMPX OUTを付加してFMステレオ放送を聞いてみるのも一考かと思います。

2025/06/13

STAR(富士製作所)FM-121 真空管FMチューナー(MPX OUTを付加)

 

 STAR FM-121真空管FMチューナーの紹介です。1958年、9,100円のSTAR(富士製作所)のキット製品です。シンプルなデザインと堅牢なシャーシのFMチューナーです。前面パネルを見ると当時のFM周波数は狭く80MHz~90MHz対応です。パネルのダイヤルスケールにはランプ照明があり夜間操作や電源ランプ兼用で使いやすい作りです。

 

6CB6,6AQ8,6U8,6AU6×2,6AL5の6球で3連バリコンの真空管式FMモノラル・チューナーです。キット製品とは思えない作りの本格的なFMチューナーです。内部シャーシはサビも少なく状態は良好です。

 
修理のため底板を外します。大きな損傷はみられませんが、一部回路が改造されていました。
1958年発売の「無線と實験 401回路集」にFM-121の回路図が掲載されています。また、付属として「実体配線図」と「実態配線写真」のA2資料が同梱されていました。この資料により改造されたチューナー修理が非常に楽になります。
 

FM-121にはセレン整流器が使われていますが、耐用年数を大幅に過ぎているので交換します。
何故か検波回路がフォスターシーレー方式からレシオ方式に変更されていたのが気になります。オリジナルはフォスターシーレー方式です。 
改造箇所を回路図どおりに修復します。修理中に3箇所ハンダ不良で断線を発見してました。過去のキット製品でもハンダ不良が多いです。また、配線をむき出しで継ぎ足し接続している箇所が数か所あります。接触と断線の危険があるので配線は張り直しです。部品取付けにエンパイアチューブが使われていないので裸線が交差する危険な箇所が見受けられます。
上の図はFM-121の検波回路の抜粋です。FM-121が発売された当時はモノラルFM放送しかない時代の回路構成です。
上の回路図はMPX OUTを付加しています。FMマルチプレックス・アダプターを接続してFMステレオ放送を聞けるようになります。FMチューナーにMPX OUTを付加するのは非常に簡単で5.6kΩ抵抗を1本追加するだけです。

PU端子は空き端子としてTAPE端子をMPX OUT端子として利用します。

MPX OUTにTRIO AD-5を接続して試験します。セパレーションは良好で30dB以上を確保できます。思った以上に優秀な性能です。ヒヤリングします。FM特有のクリアな音質でサッーというノイズは感じられません。少しサ音が気になります。奥行や深みもありステレオ感は良好でした。出力波形を観測すると正弦波が少し変形しているのがサ音が強く感じる要因かと思います。IF段のコンデンサなど回路の微調整の余地がありそうです。

 
1958年のキットですが技術的に完成された製品です。外観はシンプルですが、自作の製品とは違いガッシリした鉄製のカバーやパネルによ洗練された雰囲気を持っています。FM-121のようにケースを含めたFMチューナー・キットは今でも欲しい製品です。60年以上経過しても状態も良く大切に使い保管されていたチューナーかと思います。修理により10年先、20年先と使えるようになったSTAR FM-121の紹介でした。

2023/12/05

TOSHIBA 東芝 FMT-100 真空管FMチューナー(MPX OUTを付加)

TOSHIBA 東芝 FMT-100 真空管FMチューナーの紹介です。発売時期はTRIO FM-108と同時期の1963年頃でしょうか。小型の真空管FMモノラル・チューナーです。

背面はアンナナ端子とモノラルのOUT PUT端子のみになります。

FMチューナーパック FM-011P3Aが使われています。17EW8を使ったμ同調方式のチューナーパックです。

チューナーの底には、回路図、配置図、糸掛け図が張り付けてあります。

ペーパーコンデンサを交換します。電源試験で0.4Aですぐに安定しました。発熱もなくブロック電解コンデンサはまだ使えるようです。機能試験をしますが音がでません。各電圧を確認しますが正常です。よく見るとボリュームの配線が切断していました。この配線を直して音ができるようになりました。受信感度を調整します。受信周波数はズレていませんでした。

これで修理は終了です。修理と言えるような作業ではありません。時間があるのでMPX OUT端子を追加してみることにしました。 

上の図は標準的なレシオ検波回路です。この検波回路でディエンファシス回路を回避してMPX OUTを取り出し、FMアダプターに接続してみましたが動作はNGでした。この検波回路の構成だとスペアナで見てもパイロット信号19kHzが取り出せないようです。

トリオのチューナーを参考にします。FMT-100の回路では検波出力をコンデンサから抽出していますが、上の図の様に検波回路のコンデンサ中点と抵抗中点の間に抵抗を入れて抽出するように回路を変更すれば動作はOKです。この回路変更によりパイロット信号19kHzも出力できるようになります。

FMアダプターと接続してセパレーションを測定します。約12dBほどしか確保できません。しかし、ステレオ放送を聞くことは出来そうです。最初はパイロット信号を止めてモノラル状態でヒヤリングしてみます。上下の帯域が狭い中音のみ強調された音です。ノイズ感はなく良好です。次にステレオでヒヤリングします。全体に透明感が出て高域と音の広がりが改善されたことがはっきりわかります。聴感上のノイズ感はありません。FMステレオ放送の片鱗は聴くことが出来たようです。

1963年頃のFMステレオチューナーは高価ですから、モノラルで聴くのが普通のことだったと思います。当時のオーナーさんはFMT-100でFMステレオ放送が聴きたかったはずです。60年後に実現できました。FMT-100はFMチューナーパックの高い性能によりMPX OUTを実装できました。簡単な変更ですが、TRIO FM-108に対抗できる実力をもったFMT-100です。