1.概要
| ゲルマニウムラジオとマグネチックレシーバー |
マグネチックレシーバーを入手したのでゲルマニウムラジオに使用する予定です。ゲルマニウムラジオのアンテナや同調回路は繊細で非常に難しいです。そこは回避して検波方式と負荷の組み合わせに着目してマグネチックレシーバーを活かせないか検討しました。
本記事では、
・クリスタルイヤホン/マグネチックレシーバー/トランスの検波方式の違い
・平均値検波と包絡線検波の音量差(約8〜10dB)
・ マグネチックレシーバーを使う際の“落とし穴”
を体系的に整理しています。
2.クリスタルイヤホン(C)系
ご存知のとおり、クリスタルイヤホンはロシェル塩などの圧電素子で構成された高インピーダンスなコンデンサ(C)素子です。 クリスタルイヤホン自体が持っている静電容量(約1000pF〜3000pF)をコンデンサ(C)として検波方式を比べてみます。
(1)① C直結(抵抗なし)
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① C直結(抵抗なし)回路図 |
ダイオード検波からクリスタルイヤホンに直結する回路の動作は、ダイオードを通ってイヤホン(C)に溜まった電荷の「逃げ道」がなくなります。
・イヤホンに電荷が溜まりっぱなしになり、ダイオードの両端電圧が同等(または逆バイアス)になって「ダイオードが整流動作を停止」します。
・その結果、音が出なくなってしまうか、極めて歪んだ小さな音になってしまいます。
例外的にラジオが鳴ることがあります。これは、クリスタルイヤホンの数十MΩクラスの内部抵抗に流れた漏れ電流により辛うじてラジオが鳴っている状態です。
(2)② C+負荷抵抗(包絡線検波)
イヤホンと並列に接続した負荷抵抗(47kΩ〜100kΩ)が、ダイオードの整流電流(直流)をアースへ逃がす経路(R)になります。
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② C+負荷抵抗(包絡線検波)回路図 |
この イヤホン(C)と並列の抵抗(R)が組み合わさることで、整流された高周波の「山(ピーク)」の電荷を抵抗(R)からジワジワと放電させ、振幅の変化(包絡線)になめらかに追従する波形=音声信号(AF)を作り出しています。
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| 包絡線検波の波形 |
① C直結(抵抗なし)よりレベルが高い包絡線検波を使用して下さい。
3.マグネチックレシーバー(L)系
(1)③ L直結(Cなし=平均値検波)
マグネチックレシーバーの内部には、細い電線を何千回も巻いた大きなインダクタンス(L成分)を持ったコイルが入っています。
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③ L直結(Cなし=平均値検波)回路図 |
コイルには「電流の変化を拒み、一定に保とうとする(平滑化する)」という電気的性質があります。
ダイオードの出力: 高周波のON/OFF(プラスの半波の連続脈流)
コイルの反応: 高周波の激しい変化についていけず、脈流の電流の平均的な太さ(直流〜音声周波数成分)だけをなめらかに流そうとします。
つまり、コイル自身がチョークコイル(高周波阻止コイル)として働き、高周波成分をシャットアウトして「平均電流」だけを抽出します。
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| 平均値検波の波形 |
この様な検波方式を平均値検波と呼んでいます。
平均値検波は波形のピーク値Vpの1/πのレベルになります。
(2)④ L+C(包絡線検波)
マグネチックレシーバーによる平均値検波に並列で高周波バイパスコンデンサ(1000pF〜4700pF)を入れることで包絡線検波になります。
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④ L+C(包絡線検波)回路図 |
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| 包絡線検波の波形 |
「② C+負荷抵抗(包絡線検波)」は平均値検波に比べて、理論上および実際の回路動作でおおむね「2.5倍〜3倍(約 +8dB 〜 +10dB)」ほどのレベルが向上しますが、「④ L+C(包絡線検波)」はインダクタンスの影響により「② C+負荷抵抗(包絡線検波)」よりレベルは低下します。
8項、参考(6パターンの実測データ)をご確認ください。
4.インピーダンス変換トランス(L)系
マグネチックレシーバーの包絡線検波は興味深い内容です。マグネチックレシーバー(L)を、そのままインピーダンス変換トランス(L)に置き換えてみました。
市販されていた昔のゲルマニウムラジオキットや、インピーダンス変換トランス(ST-32やST-71など)を使ってローインピーダンスのクリスタルイヤホンや現代のイヤホンを鳴らす回路で、トランスの一次側(ダイオード側)にコンデンサが並列に入っているのをよく見かけます。
結論からいうと、トランス(ST-12A)では弱い包絡線検波は成立するが、トランス(ST-30)はインダスタンスがより大きく検波方式(包絡線検波)が成立しません。並列コンデンサ(C)は高周波フィルターとして機能します。
8項、参考(6パターンの実測データ)をご確認ください。
(1)⑤ トランス一次側Cなし(平均値検波は成立する)

トランス一次側Cなし回路図

(2)⑥ トランス一次側Cあり(インダクタンスの大きさにより包絡線検波は成立/不成立が決る)

⑥
トランス一次側Cあり回路図

⑥ トランス一次側Cあり回路図
6.マグネチックレシーバーを使う際の“落とし穴”
本記事の目的は、検波方式の観点からマグネチックレシーバーの活用を整理することです。
マグネチックレシーバーはコイル(L)なので、クリスタルイヤホンで使われていた並列抵抗をそのまま使うと平均値検波に戻り、音量が大きく低下します。
そのため、クリスタルイヤホンで包絡線検波(並列に抵抗あり)を行っていた回路にマグネチックレシーバーを接続する場合は、並列抵抗をコンデンサ(1000〜4700pF)に置き換える必要があります。
8項、参考(6パターンの実測データ)をご確認ください。
7.まとめ
検波方式の記事はいかがだったでしょうか。理論だけの少し堅い記事です。ゲルマニウムラジオの製作では、皆さんが微細な信号レベルを確保するのに苦労してラジオを組まれています。それにもかかわらず、平均値検波回路が散見されます。少しでもお役に立てればと思い包絡線検波を推奨する旨を本記事で書かせて頂きました。
8. 参考(6パターンの実測データ)
6パターンの測定結果一覧にまとめました。また、測定の詳細について各項目を参照してください。
| 測定結果一覧表 |
当初、検波出力の波形観測としようと思いましたが、オシロスコープのプローブには静電容量(10pF~20pF)があり、これが検波方式に干渉して測定出来ませんでした。
ゲルマニウムラジオは繊細なため非接触型測定方法に急遽変更しました。
(1)クリスタルイヤホン(C)系
| スマホのマイクにクリスタルイヤホンを取り付けた測定方法 |
スマホアプリ(音量測定ソフト)とスマホのマイクにクリスタルイヤホンを押し付けた、ハイテク+ローテクを組み合わせ方法です。クリスタルイヤホンをセロテープでスマホに固定したなんともローテクな測定方法です。
最初の測定は失敗しました。原因は電子ブロックのダイオード不良で、真逆の測定結果となってしまいました。 新しい1N60を直接基板に刺して対応しました。
・最初(1回目)の測定結果
① C直結(抵抗なし):52dB
② C+負荷抵抗(包絡線検波):56dB
56-52dBの相対的なレベル差です。
理論的には、 包絡線検波は平均値検波に対して 約 +8〜10 dB(2.5〜3倍) とされています。 今回の実測では +4 dB なので、理論値より少し小さいけれど、 「包絡線検波のほうが明確に大きい」 という方向性はきちんと一致しています。
・2回目の測定結果

スタンドに固定してブチルゴムでイヤホンの周囲を密閉
スタンドにスマホを固定してマイクの真下にイヤホンを配置、周囲をブチルゴムのテーブで塞いだ密閉構造の測定方法にしました。また、テスト信号にはAM変調とラジオ放送の2種類にしました。
・テスト信号:AM変調
① C直結(抵抗なし):59dB











