2026/08/26

ループアンテナを用いた複同調ゲルマニウムラジオの製作

ループアンテナを用いた複同調ゲルマニウムラジオの製作

1.概要 

バリアブル・カップラを用いた複同調ラジオ

ループアンテナを用いた複同調ゲルマニウム・ラジオの製作です。子供の頃に出来なかったラジオ製作の再チャレンジのブログです。

今回は、外部アンテナなしでも実用的な感度を確保しつつ、指向性・選択度・同調を独立して追い込める複同調ゲルマニウム・ラジオを目指します。

(1)子供の頃の製作失敗 

小中学生の頃に愛読していたは「ラジオの初歩から組立まで 松尾誠 著」です。

複同調回路の例

P235「やさしい・ラジオ」では複同調回路が掲載されています。無謀にも当時すぐに製作してみました。まったくの無音であっさり失敗しました。何をどう修正してもダメでした。

コイルの取り付け方(誘導作用)

2本のコイルの誘導作用の図の意味が理解できていなかったのだと思います。「ラジオの初歩から組立まで 松尾誠 著」は小中学生の理解力では持て余す製作記事でした。

(2)バリアブル・カップラ 

今なら、誘導結合のバリアブル・カップラを用いた複同調のゲルマニウム・ラジオだと理解できます。当然ながら子供の頃失敗した複同調回路でゲルマニウム・ラジオを製作したくなりました。再チャレンジです。

2つのコイルを使用する方式にはバリアブル・カップラとバリオメーターがあります。似た構造ですが、全く異なる機能と用途なので、まずそこを下の比較表で整理してみました。

バリアブル・カップラとバリオメーターの比較表

以上のことから、複同調にはバリアブル・カップラを用います。

2.回路比較

 複同調とバリオメーターはコイルの回路構成の違いが動作と用途の違いになっています。

 (1)複同調回路

誘導結合はL1、L2のコイルを離して結合度を変化させて調整します。それがバリアブル・カップラです。

複同調回路

 (2)バリオメーター

L1、L2は直列に接続して、Lを変化させて同調します。

バリオメーター回路

3.回路図

下図は作りたい複同調回路のイメージです。L2にタップを出して、音質やマッチングを調整できるようにします。L1とL2はバリアブル・カップラとわかるように破線で結んでいます。クリスタルイヤホンに100kΩの抵抗を入れて包絡線検波とします。

 

バリアブル・カップラを用いた複同調回路

 4.機構

今回検討した「バリアブル・カップラ」の機構要件は以下の通りです。

(1)コイル間は適度な疎結合とする

  • バリオメーターのような高い加工精度は不要

(2)コイルへの影響(浮遊容量・手感度)を抑える構造

  • 直接手で触れずに操作できる機構

  • コイル周辺に無駄な高誘電体や導体を配置しない

  • 結合度を微調整できる機構

コイル間の適度な疎結合は、ループアンテナの内側に二次コイルを配置する構造を採用しました。この「外側コイルの内側で、小コイルを回転させる」というラフな構造は、手軽な自作にも非常に向いています。 (※なお、この配置は結合度調整(バリアブル・カップラ)向けであり、インダクタンスを大きく変化させる密結合のバリオメーターには向きません。)

構造が決まれば、次は材料の選定です。

(3)高周波損失と浮遊容量を抑える材料選び

  • 回転軸: 竹ひご(金属軸によるQ値低下を防止)

  • 内側コイル枠: ガムテープの紙筒

  • 土台・構造材: 木製シャーシ、プラスチック製ギアボックス 

(4)構造イメージ図

適切な素材を選定したら、次に製作するための構造イメージを検討します。

構造イメージ図

一見するとバリオメーターのように見えますが、両者は目的が異なります。

  • バリオメーター: インダクタンス(L)を変化させて同調させる

  • バリアブル・カップラ: 結合度(k)を変化させて選択度・分離感を調整する

直前に検討していたバリオメーターの機構アイデアを応用しました。一般的なゲルマニウム・ラジオにはあまり見られない、面白い複同調の構造に仕上がっています。

(5)この機構のねらい(どんなラジオを作りたいのか)

  • 外部アンテナなしでの高感度受信

  • 指向性(ループの向き)、選択度(結合度)、音質・マッチング(タップ調整)、同調(2連バリコン等)の4つを独立して調整可能 

マンションなどの室内利用を想定した、いろいろな機構を盛り込んだ欲張りなゲルマニウム・ラジオです。

5.製作

(1)材料 

用意する材料は以下のとおりです。

ループアンテナ AN-200、ダイオード、抵抗、ラグ板、台座用木材、LEGO ギアボックス、3接点セレクタ、つまみ×2個、2連バリコン、ガムテープの紙筒、エナメル線0.4mm、配線用リード線、竹ひご丸棒(直径4mm) 

(2)TECSUN AN-200仕様 

ループアンテナ AN-200の回路と仕様を実機を分解、測定して確認しました。

AN-200回路図

AN-200仕様

(3)バリアブル・カップラの製作

①バリコン

エアバリコン:440pF

写真の大型エアバリコン440pFを使用します。 大容量のエアバリコンなのでQが向上します。

社名とブランド名の刻印

このエアバリコンには、片岡電気(1948年設立~1963年)の社名とALPSのブランド名が刻印されています。片岡電気は、後のアルプス電気(商号変更1964年~)です。精密機械の趣がある古いバリコンです。

②バリアブル・カップラの計算

エアバリコン440pF の条件から、下表のバリアブル・カップラの値を求めます。

バリアブル・カップラの計算
バリアブル・カップラの製作 

AN-200を分解

AN-200を分解して、以下のとおりコイルを巻数を改造します。

・一次側コイル 

完成した一次側コイル

AN-200の一次側3ターンのコイルを取り外します。次に二次側28ターンを22ターンに変更します。回転軸を取り付けるため、事前に巻線の中央に隙間を設ける11ターン×2の分割巻きとします。

・二次側コイル

二次側コイル(内側コイル)

内側コイルはガムテープの紙筒に0.4mmエナメル線を58ターンとタップ(15T,30T45T)を取り出します。回転軸を取り付けるため、事前に巻線の中央に隙間を設ける29ターン×2の分割巻きとします。

実際に製作すると300μHあり、4ターン巻数を減らし54ターン250μHとしました。その関係で、タップは13T、28T、43Tとなります。

(4)台座

バリアブルカップラを乗せる台座を製作します。

①ギアボックス

LEGOギアボックス

内側コイルの回転にはLEGO ギアボックス(1:24)を使います。 非金属のプラスチック製のギアボックスに適度な長さのツマミ用シャフトと回転軸用シャフトを取り付け、ゴムスペーサーでシャフトの両側を挟み込み回転のガタつきをなくしています。また、ゴムスペーサーによりツマミの操作感を適度な重さに調整しています。

②台座の製作 

・台座のケース

台座の表側
台座の裏側

台座のケースにはSANSUI TU-666チューナーのウッドケースを再利用しました。古いラジオの佇まいを持ったケースに仕上がりました。バリコン とギアボックスの穴を開け、セレクタと測定端子を取り付けます。裏蓋はなしとして、底板は部品を取り付けるため別に作成します。

・ギアボックスとバリコンの配置

ギアボックスとバリコンの配置決め

台座の底板にバリコン とギアボックスを配置します。ギアボックスの軸はバリコンの軸の高さに合わせました。

・台座内部の仮配線

台座は事前に出来る範囲の仮配線を済ませておきます。 

仮配線した台座

・完成した台座

台座と底板を組み合わせれば完成です。

完成した台座

(5)バリアブル・カップラの取付

・回転軸の取り付け

回転軸を全ての部品に仮通しした様子

回転軸を通して軸が垂直になる位置に台座とバリアブルカップラをネジで固定する穴あけをします。台座とバリアブルカップラをネジで固定してから内側コイルと全円分度器に回転軸を通します。この回転軸を通す作業が一番難易度が高く大変です。ミリ単位のズレの微調整などの想定外の連続でした。竹ひごの柔軟性がなければ回転軸を通せなかったです。

全円分度器を設置

内側コイルと全円分度器をボンドで固定します。内側コイルは外側コイルの中心になる位置にします。全円分度器の本体はバリアブルカップラに固定、針は内側コイルの回転軸に固定します。ボンドが乾く前に全円分度器の角度が正しく示すように微調整しておきます。

・全円分度器の目的

全円分度器を取り付けて、内側コイルの回転角を針先で明示させます。結合度を角度により読み取ることを目的としています。

・ギアボックスと回転軸の連結 

1:24の減速ギアボックスにより内側コイルの角度を全円分度器の目盛りに合わせて精密に回転させることができます。

・配線作業

ケーブルガイド

内側コイルからは、単線ではなく柔らかなリード線を使い、コイルが回転してもバラバラにならない様にケーブルガイドを通します。

台座内の配線

バリアブルカップラと台座内の配線をすれば、全ての作業は終了です。

(6)完成 

完成した複同調ゲルマニウムラジオ

完成した複同調ゲルマニウムラジオです。

なんとも奇妙なバリアブルカップラが台座に乗り、分度器まで付いた理科の実験機材の様な雰囲気を纏った木製ラジオです。しかし、金属などは徹底排除、回路構成、パラメータの可視化など、複同調ゲルマニウムラジオの基本に沿って忠実に製作した結果です。

(7)動作確認 

①初期の動作試験

どんな立派な外観のラジオでも鳴らなければ意味がありません。一番心配なのは複同調は単同調より感度が落ちることです。電波が弱い我が家では一番の懸念事項です。

・クリスタルイヤホン接続

クリスタルイヤホンを接続して受信してみます。全然、受信できません。電源アースを接続して再度受信を試みます。 NHK第一放送がノイズに埋もれて微かに聞こえます。

・アンプ接続

ラジオのアンプとして電子ブロックST-45を使用

音量が小さすぎるので、アンプを入れて受信してみます。アンプには電子ブロックST-45を使用します。スピーカーアンプ内蔵で受信状況が確認しやすく便利です。

NHK第一放送が非常にクリアな音で受信できます。電源アースを繋ぐとノイズがひどいので接続はしません。受信できた放送局はNHK第一放送とAFN(旧FEN)、ニッポン放送の3局です。予想外にクリアなラジオ放送が聴けたので何だか泣けてきます。偶然、尾崎豊の卒業が流れてました。単同調は横に広がったような平坦な音、複同調はクリアでシャープな音がします。複同調のクリアな音を聞いた瞬間、製作してよかった思える音です。

バリアブル・カップラの回転、タップの切り替えの動作および受信状態の変化を一通り確認して正常でした。

↓↓↓↓↓↓↓↓ここより下の試験結果については後日公開予定です↓↓↓↓↓↓↓↓ 

②同調  未実施

   受信可能な周波数範囲の確認 

③結合度(Q) 未実施

当初はシグナルジェネレータとオシロスコープによる昔からの3点測定で結合度(Q)を測定しようと思っていました。スイープジェネレーターMSW-7124を持っていたの忘れてました。MSW-7124はFMチューナーのQカーブを見ますがAM用に使うという考えは浮かびませんでした。スイープジェネレーターを使い、周波数、角度、タップを変えて、リアルにQカーブがどのように変化するのかを直接観測します。 

・テスト用送信アンテナの製作 製作済

テスト用送信アンテナ

2mmのアルミ線で直径10cmのテスト用送信ループアンテナを作成します。

・テスト受信の確認 未実施

測定する前に適正なQカーブになるように受信レベルや距離、角度を調整します。

・測定結果 未実施

 590kHz(NHK:594kHz相当)

  角度20.40.60,80

 タップT13,28T.43T 

 写真で連続変化を見る、測定テータを数値化する 

 マーカーはf1、f2相当に設定 、波形の底の位置を揃えて高さを比較

1240kHz(ニッポン放送:1242kHz相当)

  角度20.40.60,80

 タップT13,28T.43T 

 写真で連続変化を見る、測定テータを数値化する 

  マーカーはf1、f2相当に設定 、波形の底の位置を揃えて高さを比較 

④音質、マッチング(タップ毎の評価) 未実施

 15T:高選択、高分離

     実験結果: 

 30T:標準

     実験結果: 

 45T:高音量、高感度 

            実験結果:  

↑↑↑↑↑↑↑↑ここより上の試験結果は後日公開予定です↑↑↑↑↑↑↑↑ 

6.教育的な価値

スキルやノウハウのない初心者には、1度製作したら変更のできないゲルマニウムラジオの単同調回路は非常に難しいです。

今回、製作した複同調のバリアブルカップラは、パラメータが微調整できます。パラメータの調整は、一見すると性能向上や最適化が目的になります。

しかし、違う側面があることに気づきました。

単同調では固定されている不可視のパラメータが複同調のバリアブルカップラではパラメータが可視化されています。可視化されたことで、同調回路への理解が容易になるとともに、実体験を通じた教育的な価値を持っています。意図せずに複同調パラメータ実験機を生み出したみたいです。

この様な教育的な視点を備えた工作には、性能向上や最適化などの機能を超えた遙かに大きな価値を感じます。

さらに、外側コイルと内側コイルが10cmという大きな間隔で誘導結合しているという体験は特別です。このスケールで電磁誘導を扱い、角度や距離によって結合度が変化し、ラジオが同調して受信する。これはミリ単位の小さな部品では決して味わえない醍醐味です。

バリアブルカップラは、まさに「電磁誘導の構造を体感で理解できる装置」です。

7.まとめ

ループアンテナ構造の分度器付きバリアブル・カップラを用いたラジオ製作は如何だったでしょうか。私自身ゲルマニウムラジオに精通していないことが、ループアンテナをソレノイドとして利用する変わった製作が出来たのではないかと思っています。

子供の頃の失敗作を大人になり少し捻った構造で製作してみました。成功体験より失敗の方が心に残ります。それが原動力になり製作したゲルマニウム・ラジオです。永い年月が経ってようやく夏休みの工作が完成しました。今度は間に合いました。

追記:何でもいいから変わった構造でラジオを製作すればいいのではないと思います。また、変わった発想であることは初心者であることの裏返しです。変わった発想がすごいのではなく、発想できるだけの基礎理論と実践の歴史を少しかじらせてもらっただけのブログです。 

2026/07/23

ゲルマニウムラジオの基礎の基礎

1.概要

ゲルマニウムラジオとマグネチックレシーバー

マグネチックレシーバーを入手したのでゲルマニウムラジオに使用する予定です。ゲルマニウムラジオのアンテナや同調回路は繊細で非常に難しいです。そこは回避して検波方式と負荷の組み合わせに着目してマグネチックレシーバーを活かせないか検討しました。

本記事では、

クリスタルイヤホン/マグネチックレシーバー/トランスの検波方式の違い

・平均値検波と包絡線検波の音量差(約8〜10dB)

・ マグネチックレシーバーを使う際の“落とし穴”

 を体系的に整理しています。

2.クリスタルイヤホン(C)系

ご存知のとおり、クリスタルイヤホンはロシェル塩などの圧電素子で構成された高インピーダンスなコンデンサ(C)素子です。 クリスタルイヤホン自体が持っている静電容量(約1000pF〜3000pF)をコンデンサ(C)として検波方式を比べてみます。

(1)① C直結(抵抗なし)

① C直結(抵抗なし)回路図

ダイオード検波からクリスタルイヤホンに直結する回路の動作は、ダイオードを通ってイヤホン(C)に溜まった電荷の「逃げ道」がなくなります。

イヤホンに電荷が溜まりっぱなしになり、ダイオードの両端電圧が同等(または逆バイアス)になって「ダイオードが整流動作を停止」します。

その結果、音が出なくなってしまうか、極めて歪んだ小さな音になってしまいます。

例外的にラジオが鳴ることがあります。これは、クリスタルイヤホンの数十MΩクラスの内部抵抗に流れた漏れ電流により辛うじてラジオが鳴っている状態です。

(2)② C+負荷抵抗(包絡線検波)

イヤホンと並列に接続した負荷抵抗(100kΩ〜450kΩ)が、ダイオードの整流電流(直流)をアースへ逃がす経路(R)になります。

② C+負荷抵抗(包絡線検波)回路図

この イヤホン(C)並列の抵抗(R)が組み合わさることで、整流された高周波の「山(ピーク)」の電荷を抵抗(R)からジワジワと放電させ、振幅の変化(包絡線)になめらかに追従する波形=音声信号(AF)を作り出しています。

包絡線検波の波形
 この検波方式は包絡線検波と呼ばれています。

① C直結(抵抗なし)よりレベルが高い包絡線検波を使用して下さい。

3.マグネチックレシーバー(L)系

(1)③ L直結(Cなし=平均値検波)

マグネチックレシーバーの内部には、細い電線を何千回も巻いた大きなインダクタンス(L成分)を持ったコイルが入っています。

L直結(Cなし=平均値検波)回路図


コイルには「電流の変化を拒み、一定に保とうとする(平滑化する)」という電気的性質があります。
  • ダイオードの出力: 高周波のON/OFF(プラスの半波の連続脈流)

  • コイルの反応: 高周波の激しい変化についていけず、脈流の電流の平均的な太さ(直流〜音声周波数成分)だけをなめらかに流そうとします。

つまり、コイル自身がチョークコイル(高周波阻止コイル)として働き、高周波成分をシャットアウトして「平均電流」だけを抽出します。

平均値検波の波形

この様な検波方式を平均値検波と呼んでいます。

平均値検波は波形のピーク値Vpの1/πのレベルになります。

(2)④ L+C(包絡線検波)

マグネチックレシーバーによる平均値検波に並列で高周波バイパスコンデンサ(1000pF〜4700pF)を入れることで包絡線検波になります。

LC(包絡線検波)回路図

包絡線検波の波形

「② C+負荷抵抗(包絡線検波)」は平均値検波に比べて、理論上および実際の回路動作でおおむね「2.5倍〜3倍(約 +8dB 〜 +10dB)」ほどのレベルが向上しますが、「④ L+C(包絡線検波)」はインダクタンスの影響により「② C+負荷抵抗(包絡線検波)」よりレベルは低下します。

8項、参考(6パターンの実測データ)をご確認ください。  

4.インピーダンス変換トランス(L)系

マグネチックレシーバーの包絡線検波は興味深い内容です。マグネチックレシーバー(L)を、そのままインピーダンス変換トランス(L)に置き換えてみました。

市販されていた昔のゲルマニウムラジオキットや、インピーダンス変換トランス(ST-32やST-71など)を使ってローインピーダンスのクリスタルイヤホンや現代のイヤホンを鳴らす回路で、トランスの一次側(ダイオード側)にコンデンサが並列に入っているのをよく見かけます。

結論からいうと、トランス(ST-12A)では弱い包絡線検波は成立するが、トランス(ST-30)はインダスタンスがより大きく検波方式(包絡線検波)が成立しません。並列コンデンサ(C)は高周波フィルターとして機能します。

8項、参考(6パターンの実測データ)をご確認ください。 

(1)⑤ トランス一次側Cなし(平均値検波は成立する)

トランス一次側Cなし回路図

(2)⑥ トランス一次側Cあり(インダクタンスの大きさにより包絡線検波は成立/不成立が決まる)

⑥ トランス一次側Cあり回路図

5. 検波方式理解への疑問

検波方式という概念は、日本のラジオ文化の中で体系的に定着してこなかった印象があります。これは単なる知識の不足ではなく、歴史的背景として必然だったと考えています。以下にその理由を整理します。

(1)鉱石ラジオ時代の強電界文化では、方式の違いが問題化しなかった

戦後の強電界環境では、鉱石ラジオは 平均値検波でも包絡線検波でも「鳴ればよい」 という実用性が最優先されていました。

そのため、検波方式の分類はラジオ文化として深く意識されず、 「とにかく受信できること」 が価値として継承され、現在に至っています。

(2)昭和の教材は実用技術中心で、方式名の体系化が行われなかった

昭和のラジオ雑誌や教科書を確認しても、 平均値検波・包絡線検波といった方式名はほとんど登場しません。

当時の教材は、

  • ダイオード検波

  • ダイアゴナルひずみ

  • AVC など、現象と調整技術を中心にした“実用技術者育成”の教育文化の中で作られていました。

一方、現代の大学教科書では通信工学の体系化が進み、 復調方式として平均値検波・包絡線検波が明確に分類されています。

この差は、 昭和の実践技術文化と、現代の国際標準に基づく理論体系との間にある教育文化のギャップ として理解できます。

(3)参考資料

いずれも実用技術者育成を目的とした教材であり、方式名の体系化は見られません。

  • 文部省認定 通信教育 ラジオ工学講座  『ラジオ工学教科書 第1部第1巻』 昭和23年

  • NHK 『ラジオFM技術教科書』 日本放送協会編 昭和46年  

6.マグネチックレシーバーを使う際の“落とし穴”

本記事の目的は、検波方式の観点からマグネチックレシーバーの活用を整理することです。

マグネチックレシーバーはコイル(L)なので、クリスタルイヤホンで使われていた並列抵抗をそのまま使うと平均値検波に戻り、音量が大きく低下します。

そのため、クリスタルイヤホンで包絡線検波(並列に抵抗あり)を行っていた回路にマグネチックレシーバーを接続する場合は、並列抵抗をコンデンサ(1000〜4700pF)に置き換える必要があります。

8項、参考(6パターンの実測データ)をご確認ください。  

参考までに、最初から並列に抵抗とコンデンサを入れておけば、クリスタルイヤホンとマグネチックレシーバーのどちらでも利用できそうに思えます。しかし、クリスタルイヤホン(C)にCを追加することでCに高周波が流れレベルが低下し、更にCが追加され全体のCが大きくなりすぎ包絡線の形成が阻害されてレベルが低下します。以上の2つの理由から最初から並列でCとRを入れることはしません。また、マグネチックレシーバー(L)の場合も同様で、Rを追加することでレシーバー(L)とRに電流が分かれレベルが低下し、更にRが追加され全体のRが下がりすぎて包絡線の形成が阻害されてレベルが低下します。中途半端な動作になりレベル低下しますのいで、負荷にあわせて適切な検波回路を選択して下さい。
 
参考の参考(CとRの最適値)
  上記は「C が大きすぎるとダメ」「R が小さすぎるとダメ な理由ですが、負荷に並列で入れ
  る最適値を示しますので参考にしてください。
 ・クリスタルイヤホン(C:1000pF~3000pFが前提)
  R:100kΩ〜470kΩ
  C:100pF〜470pF(追加しないことも多い)
 ・マグネチックレシーバー(L:インピーダンス 数百〜数千Ω)
  C:1000〜4700pF 
    R:入れない(入れると音が激減)

7.まとめ

検波方式の記事はいかがだったでしょうか。理論だけの少し堅い記事です。ゲルマニウムラジオの製作では、皆さんが微細な信号レベルを確保するのに苦労してラジオを組まれています。それにもかかわらず、平均値検波回路が散見されます。少しでもお役に立てればと思い包絡線検波を推奨する旨を本記事で書かせて頂きました。

8. 参考(6パターンの実測データ)

6パターンの測定結果一覧にまとめました。また、測定の詳細について各項目を参照してください。 

測定結果一覧表

当初、検波出力の波形観測としようと思いましたが、オシロスコープのプローブには静電容量(10pF~20pF)があり、これが検波方式に干渉して測定出来ませんでした。

ゲルマニウムラジオは繊細なため非接触型測定方法に急遽変更しました。

(1)クリスタルイヤホン(C)系 

スマホのマイクにクリスタルイヤホンを取り付けた測定方法

スマホアプリ(音量測定ソフト)とスマホのマイクにクリスタルイヤホンを押し付けた、ハイテク+ローテクを組み合わせ方法です。クリスタルイヤホンをセロテープでスマホに固定したなんともローテクな測定方法です。

最初の測定は失敗しました。原因は電子ブロックのダイオード不良で、真逆の測定結果となってしまいました。 新しい1N60を直接基板に刺して対応しました。

・最初(1回目)の測定結果 

 ① C直結(抵抗なし):52dB

 ② C+負荷抵抗(包絡線検波):56dB

56-52dB=4dBの相対的なレベル差です。 

理論的には、 包絡線検波は平均値検波に対して 約 +8〜10 dB(2.5〜3倍) とされています。 今回の実測では +4 dB なので、理論値より少し小さいけれど、 「包絡線検波のほうが明確に大きい」 という方向性はきちんと一致しています。 

・2回目の測定結果

スタンドに固定してブチルゴムでイヤホンの周囲を密閉

スタンドにスマホを固定してマイクの真下にイヤホンを配置、周囲をブチルゴムのテーブで塞いだ密閉構造の測定方法にしました。また、テスト信号にはAM変調とラジオ放送の2種類にしました。

・テスト信号:AM変調 

 ① C直結(抵抗なし):59dB

 ② C+負荷抵抗(包絡線検波):62dB

62-59=3dBの相対的なレベル差です。 

・テスト信号:ラジオ放送 

 ① C直結(抵抗なし):52dB~72dB(振れ幅を測定)

 ② C+負荷抵抗(包絡線検波):62dB~85dB(振れ幅を測定)

 62-52=10dB、85-72dB=7dB(振れ幅を測定)

7~10dBの相対的なレベル差です。

検波方式のレベル差から「包絡線検波のほうが明確に大きい」 という方向性はきちんと一致しています。

 (2)マグネチックレシーバー(L)系

・最初(1回目)の測定結果 

③ L直結(Cなし=平均値検波):39dB

④ L+C(包絡線検波):40dB

40-39=1.0dBの相対的なレベル差です。

クリスタルイヤホン(C)系より明らかにレベル差が小さくなっています。スマホのマイクとマグネチックレシーバー間の距離が大きく物理的にも密着が難しいことが測定レベルの低下の一因です。また、マグネチックレシーバーのインダクタンスの大きさが影響してレベルが低下しています。

レベルは小さいですが「包絡線検波のほうが明確に大きい」 という方向性はきちんと一致しています。

・2回目の測定結果

 1回目の測定結果では差異が1dBと小さかったため、測定方法を改善して再度測定しました。

スマホスタンドを使いマイクとレシーバーを密着
1回目はスマホのマイクにマグネチックレシーバーを押し当てただけの測定方法が原因でレベルが低かったことを反省して改善しました。

スタンドにスマホを固定してマイクの真下にレシーバーを配置、周囲をブチルゴムのテーブで塞いだ密閉構造の測定方法にしました。前回のセロテープ固定ではセロテープが動くとパチッとノイズが入り密閉も甘く測定が難しかったです。スタンドにテープでぐるぐる巻きにしたローテクの極みですが、短時間での製作や短期利用には実用的かなと思います。

また、特定周波数のテスト信号では、検波回路の周波数依存に対応できていないかと思い、ラジオ放送の変動するレベル幅をアプリのアナログメーターで測定しました。

・テスト信号:AM変調波 

③ L直結(Cなし=平均値検波):54dB

④ L+C(包絡線検波):56dB

56-54=2.0dBの相対的なレベル差です。

・テスト信号:ラジオ放送

③ L直結(Cなし=平均値検波):42dB~48dB(振れ幅を測定)

④ L+C(包絡線検波):48dB~55dB(振れ幅を測定)

 48-42=6dB、55-48dB=7dB(振れ幅を測定)

6~7dBの相対的なレベル差です。

1回目よりも明らかにレベルが上がっています。物理的な改善とテスト信号にラジオ放送を加えたことにより、検波方式の違いがより鮮明になったかと思います。 

レベル差により「包絡線検波のほうが明確に大きい」 という方向性はきちんと一致しました。

マグネチックレシーバーの仕様:495Ω、122mH 

(3)インピーダンス変換トランス(L)系 

トランス(L)系 はクリスタルイヤホン2回目と同様にスタンドに固定してブチルゴムでクリスタルイヤホンの周囲を密閉した測定方法に見直しました。また、トランスもST-12A(トランジスタ増幅用)とST-30(クリスタルイヤホン用)の2種類としています。  

a.ST-12A 

 仕様:1kΩ(直流抵抗45Ω):100kΩ(直流抵抗1.27kΩ)

 実測:51.2Ω、358mH : 1.39kΩ、63.6H

・テスト信号:AM変調 

⑤ トランス一次側Cなし:64dB

⑥ トランス一次側Cあり:63dB

63-64=-1dB の相対的なレベル差です。

・テスト信号:ラジオ放送

③ L直結(Cなし=平均値検波):35dB~63dB(振れ幅を測定)

④ L+C(包絡線検波):37dB~67dB(振れ幅を測定)

 37-35=2dB、67-63dB=4dB(振れ幅を測定)

2~4dBの相対的なレベル差です。

AM変調では包絡線検波が成立していないようにみえますが、ラジオ放送で成立していることから、周波数に依存した結果のため正確に測定できなかったと判断します。

ラジオ放送は2~4dBの相対的なレベル差は小さいですが「包絡線検波のほうが明確に大きい」 という方向性はきちんと一致しました。レベル差が小さい要因はインダクランスが大きくなった影響と判断します。 

b.ST-30

 仕様:12.5kΩ(直流抵抗540Ω):50kΩ(直流抵抗1.25kΩ)

 実測: 614kΩ、12.8H:1.33kΩ、38.9H 

・テスト信号:AM変調 

⑤ トランス一次側Cなし:70dB

⑥ トランス一次側Cあり:61dB

61-70=-9dB の相対的なレベル差です。

・テスト信号:ラジオ放送

③ L直結(Cなし=平均値検波):38dB~63dB(振れ幅を測定)

④ L+C(包絡線検波):35dB~62dB(振れ幅を測定)

 35-38=-3dB、62-63dB=-1dB(振れ幅を測定)

-1~-3dBの相対的なレベル差です。

AM変調およびラジオ放送の相対的なレベル差がマイナスのため包絡線検波は成立しないと判断します。

コンデンサ(C)は包絡線検波にはなんら影響がなく、高調波コンデンサとしてフィルターの役割を果たしている模様です。スマホアプリのスペクトルアナライザでテスト用周波数がコンデンサ挿入によりフィルターとして働き急激に減衰するのを確認しました。

電流の流れを必要とする包絡線検波は電圧増幅を目的とする高インダクタンスのトランス(L)には適用できないことがわかりました。

(4) マグネチックレシーバーを使う際の“落とし穴”

・クリスタルイヤホンの条件(平均値検波)でマグネチックレシーバーを使用

 テスト信号:ラジオ放送  45dB~50dB(振れ幅を測定)

・マグネチックレシーバーの条件(包絡線検波)に変更

 テスト信号:ラジオ放送  50dB~55dB(振れ幅を測定)

 50-45=5dB、55-50=5dB 

 5dBの相対的なレベル差になります。

マグネッチクレシーバーは平均値検波から包絡線検波(並列にC)に変更することでレベルが上がることがわかります。  

(5)前編:ブログ  

ゲルマニウムラジオに関係する前編のブログです。 

ゲルマニウムラジオ用アクティブ・アンテナの製作 



2026/07/12

電子ブロック SR-3A 50年越しの理解

1.概要

電子ブロックSR-3A(100回路)

電子ブロックSR-3A(100回路)は、電子ブロック機器製造株式会社製で1969年、5,700円で販売されたものです。 

2.レコードプレーヤーアンプ

(1)違和感 

昔、SR‑3Aで遊んでいた小学生の私が、唯一実験できなかった回路があります。 「3石レコードプレーヤーアンプ」です。当時の家庭にはレコードプレーヤーがない家も多く、私の家も例外ではありません。だからこそ、この回路だけは“触れられない未来”の象徴のように見えていました。そして「ラジオやテープレコーダーを接続するアンプでもいいのに何でわざわざレコードプレーヤーなんだろう」と疑問に思っていました。

そんな昔の疑問は時代と共にすっかり忘れて、SR-100回路集を見ていると「3石レコードプレーヤーアンプ」が目に止まりました。クリスタルピックアップのレコードブレーヤーのアンプです。

3石レコードプレーヤーアンプの実体図

レコードのRIAA補正の簡易版として、入力がハインピーダンスのアンプ回路だと思っていました。 しかし実体図を見ると入力インピーダンスは16.8kΩでそんなに高くありません。ハイインピーダンスで高域を落としてレコードを補正する単純な仕組みではないようです。何かおかしいです。

(2)RIAA特性

レコードのもつRIAA特性はイコラーザで補正しますが、以下の主な3つで定義されています。

・低域(50Hz以下):ブースト(+6dB/oct)

・中域(500Hz~2kHz):ほぼ平坦

・高域(2kHz以上):減衰(-6dB/oct)

この特性を前提にすると、電子ブロックの回路がどこまでレコード再生を意識していたのかが見えてきます。   

(3)電子ブロックの簡易イコライザー 

3石レコードプレーヤーアンプ回路図
回路集の回路図に抵抗やコンンデンサ、トランジスタの型番や数値を落とし込んでみました。

ベースとコレクタ間をよくみると、直接250kΩ、0.005μF+47kΩ+250kΩ、0.005μF+0.01μFの3種類の帰還になっていることがわかります。

電子ブロックの簡易イコライザー回路は、ベースとコレクタ間の帰還(NFB)経路が周波数によって以下のように読み替えることができます。

・低域(50Hz以下):0.005μF+47kΩ+250kΩ

・中域(500Hz~2kHz):直接250kΩ

・高域(2kHz以上):0.005μF+0.01μF

子供向け電子玩具に抵抗1本で済むハイインピーダンス回路で胡麻化さずに簡易イコライザーを搭載しています。子供には判らない内容なのに敢えて本格的な回路構成です。どれだけ真剣に電子ブロックを開発したのか、今になってわかりました。 

後のST-100では「レコードプレーヤーアンプ」は姿を消しています。メーカー側も子供の実験教材として無理があると判断したものと思います。また、SR-3Aは用途別のアンプですがST-100からは方式別のアンプとなり、電子玩具から電子教材へと変遷しています。

3.フラットな特性のアンプ

折角なのでチューナーやDACを接続して電子ブロックの素の音質を確認してみます。簡易イコライザーを外してフラットな周波数特性のアンプに組みなおします。

(1)RIAA補正(イコライザーあり)

RIAA補正(イコライザーあり)の基板

比較参考するためRIAA補正のあるレコードプレーヤーアンプを電子ブロックで組んだ基板の様子です。 SR-3Aにはピンジャックの部品もないため自作しました。

(2)フラットな特性(イコライザーなし) 

フラットな特性(イコライザーなし) の基板

DACやチューナーを接続するために、RIAA補正回路を外してフラットな特性のアンプに組みなおした様子です。

(3)ヒアリング

ヒアリング風景

・RIAA補正(イコライザーあり)

中低音がまったく出ない、ハイ上がりの音です。高音が耳について聞きづらい音です。当然ですが。

・フラットな特性(イコライザーなし) 

初段のトランジスタまわりの抵抗を変えて一番歪の少ない回路にしてみました。  

(条件) 

DAC(Topping DX3pro)から電子ブロックへの出力は-28dB 

初段の帰還抵抗は6.8kΩ

ベースとアース間は16.8kΩから47kΩへ変更

エミッタとアース間は10Ωから330Ωへ変更

中間トランスは反転させて出力段の利得を下げています 

2Wayスピーカーは8cmウーファー、2cmソフトドームツィーターでバスレフ構造

この条件で基板×2セットによるステレオでのヒアリングとします。

低音が全くでないハイ上がりの音がします。音がやせて聞こえ、洞窟に入ったようなエコー感があります。ハイ上がりの影響なのかノイズ感があります。

思っていたよりずっと音が悪いです。想像以上に良くないので原因がないか思案しました。

各部の定数を改めて見直してみます。初段トランジスタの出力側カップリングコンデンサは30μF、ボリュームの出力側には10μFです。しかし、ピンジャクからのカップリングコンデンサは0.05μFです。入口のカップリングコンデンサ0.05μFで低域を大幅にカットしてるのが原因です。

・カップリングコンデンサ 0.05μFから1μFへ変更

0.05μFを1μFに交換した様子
セラミックコンデンサ0.05μFを1μFのオーディオ用電解コンデンサに交換します。実装は電解コンデンサの足を直接基板に刺します。

明らかに中低音が大幅に増えて音のバランスが良くなります。奥行は深く定位も良好です。ノイズ感はなく、小型スピーカーによる音楽鑑賞でも十分なパワーがあります。気持ちよく音楽を聴くことが出来る音です。DACとの接続ですがクリアでハイスピードの音はでません。あくまで、ほどほどの帯域でバランスよく聴かせるアンプです。

不思議なのですが、このフラットアンプは昔のラジカセの音がします。何故かなつかしく、ほっとする音がします。 

・参考:回路定数変更一覧表 

回路定数変更一覧表
 4.まとめ 

SR‑3Aが発売された当時、電子技術は明るい未来を切り開く力を持つと誰もが信じていました。

テレビをつければ、漫画は鉄腕アトム、エイトマン、スーパージェッター、宇宙少年ソラン、海外ドラマは宇宙大作戦(スタートレック)、宇宙家族ロビンソン、サンダーバード、原子力潜水艦シービュー号、世相的には大阪万博、アポロ11号など未来科学や夢満載の環境でした。子供の私には、その未来の技術と夢の一部を電子ブロックに見たのかもしれません。自分が手にすることができる未来の技術と夢です。

オーディオ文化が成熟期を迎えた時代でもあり、電子ブロックに「3石レコードプレーヤーアンプ」が組み込まれたのは、技術者自身の情熱と時代の希望が重なった結果だったのでしょう。子供向け教材でありながら、本物の回路をそのまま縮小して渡そうとした――そんな自由と夢が許された時代でした。

電子ブロックは、未来を信じていた時代の空気そのものです。50年越しに理解できたのは、回路の仕組みではなく、 あの頃の日本が抱いていた“技術への憧れ”だったのかもしれません。 

5.電解コンデンサ・ブロックの作成 2026.7.13

カップリングコンデンサ1μFは電解コンデンサの足を基板に直接刺しています。見栄えが悪いので、ジャンクの余剰ブロックを使い作成してみました。

作成した1μF電解コンデンサ・ブロック
上の写真のように出来上がりました。

作成した1μFを基板に実装した様子

基板に1μFを実装するとスッキリした配線になります。1μF電解コンデンサ・ブロックは昔からあったような顔をして鎮座しています。 

6.50年越しのヒアリング 2026.7.17

クリスタルカートリッジが入手できました。これで電子ブロックでレコードが聞くことが出来ます。

クリスタルカートリッジNC-202

ナガオカ(長岡精機宝石工業株式会社)のNC-202を使用します。 リード線をカートリッジ側のコネクタに変更して、専用マウンタでカートリッジをシェルに取り付けました。

NC-202でレコードを聴く
クリスタルカートリッジはセラミックカートリッジに比べ繊細な音質で出力もやや高めです。電子ブロックで聴くレコードの音が楽しみです。

クリスタルカートリッジでヒアリング
・0.05μF+付属スピーカー

カップリングコンデンサはオリジナルの0.05μFと付属スピーカーでヒアリングします。

付属スピーカーは箱に入っていないため、音の厚みが出ずにハイあがりの音です。低音は出ています。何かエコーのような響きがあり音の奥行を感じさせます。この音は電子ブロックのラジオに通じ同じ音がします。 

・1μF+付属スピーカー

明らかに中低音に厚みが増して、音の重心が下がります。しかし、まだ高域よりの音であることに変わりはありません。何かエコーのような響きがあり音の奥行を感じさせます。全体の音がマイルドになっています。1μFのほうが音のバランスが良くなります。

・0.05μF+2Wayスピーカー 

ハイあがりの音ですが高域の音の抜けが良く開放感があります。それなりに中低音も出ています。エコーのような響きは少ないですが奥行は良好です。

・1μF+2Wayスピーカー
高域があざやかな音質です。やや高域よりのバランスですが中低音もでています。 奥行もでています。1μFのほうが音のバランスが良くなります。

ノイズですが、レコードプレーヤーのモーターや電源ノイズなどが混入します。そのため、各基盤からアースをとって対策したところ良好になりました。 

0.05μF+付属スピーカーによるレコード音は電子ブロックのラジオの音と同じだったんです。「そうか、こんな音がしたんだ」が感想です。当時、レコードの音聴いていも違和感なかったかと思います。1μFを入れて音質を良くしてみましたが、電子ブロックは音質じゃなかったです。自分で作った回路の音が聞きたかったんだと気が付きました。

・参考(規格 :ナガオカ ステレオ クリスタルカートリッジNC-202 )

エレメント:クリスタル

周波数範囲:40~15,000c/s

感度:0.8V(1000c/s50mm/sec)

セパレーション:15dB(1000c/s)

チャンネルバランス:3dB(1000c/s)

コンプライアンス:0.7×10^-6cm/dyne

負荷抵抗:1~2MΩ

針圧:6gr

針先:ST.LP-0.7mil SP-3.0mil

取付寸法: EIA.JIS