2026/07/02

Windowsユーザーが構築できるLinux系ミュージックプレーヤーVolumio(ヴォルミオ )

1.概要 

Volumioの画面

Windowsユーザーでも迷わず構築できる、高機能・高音質なLinux系ミュージックプレーヤーVolumio(ヴォルミオ )の紹介です。

Volumioは、ただのミュージックプレーヤーではありません。自分の手で音楽空間を作り上げる楽しさ、Linuxがもたらす異次元の音、そして完成させたプレーヤーへの深い愛着・・・そのすべてを体験できるプレーヤーです。

自分で作り上げたミュージックプレーヤーが音を鳴らすとき、そこには既製品では得られない満足感があります。古いPCが音楽専用機として生まれ変わった姿は、まるで自分の生活の一部を作り上げたような喜びがあります。

Linuxは、透明で、揺らぎが少なく、静けさの中に芯がある音です。その世界に一度触れると、Windowsとはまったく違う音の景色が広がります。

Volumioは、Linux系オーディオへの体験への入口です。自分だけのプレーヤーを製作する楽しさと愛着、Linuxの音の世界、そして豊かな音楽のある空間を実現します。想像するだけで、Volumioを使ってみたくなるはずです。

Volumioの特徴は、①導入の容易さ、②低コスト、③高音質、④高機能、⑤構築の柔軟性、⑥Daphileとの比較の以下の6点に整理できます。

1-1. Linux知識が不要

VolumioはLinuxを意識させない設計で、Windowsに慣れた操作感のまま自然に扱えます。

・Windowsアプリのインストーラー(balenaEtcher)で構築

起動後はUI画面から初期設定するだけでLinuxのコマンド操作は一切不要

1-2. 低コスト

古いPCが“高性能ミュージックプレーヤー”として蘇ります。

・Volumio OSは無料で利用可能

・Linuxの動作は軽く古いx86 PCでも十分な性能を発揮

1-3. 高音質

Windowsにはない揺らぎの少ない透明感ある音を提供します。

・Linuxはバックグラウンド処理が少なくCPU負荷が安定

・USB Audio Classの信号経路が短く、純度の高いデジタル処理

・割り込み処理が安定し、ジッターが少ない

・汎用PCの電源・冷却・ノイズ対策がそのまま活きる

1-4.高機能(機能性・拡張性) 

・日本語UIによる快適な操作

TIDAL / Qobuz / Spotify Connec

DLNA / UPnP / AirPlay

マルチルーム

詳しくは、12.Volumio仕様一覧を参照してください。 

1-5.導入のしやすさ

・お試しで利用したいときはUSBブート。

WindowsPCの内部をいじらずにUSBメモリ上でVolumioを利用できます。

・本格的な音楽専用PCを構築するにはPCブート。

USBブートと同様に簡単に構築でき難易度はかわりません。 

・短時間で構築が可能。

USBブートは実際に1時間程度で構築できました。

1-6.VolumioとDaphile比較

もう一つ、同じように簡単に構築できるLinux系ミュージックプレーヤーDaphileがあります。VolumioとDaphileを比較して、自ら構築するたのいしさ、自分に合わせた多様な音楽生活を実現出来ることからVolumioを紹介しています。

・Volumio

日本語UIの快適な操作性や機能性・拡張性を提供することで、多様な音のある生活スタイルに合わせて自ら構築するミュージックプレーヤーです。 Volumioは自ら構築し音楽を快適に楽しむためのミュージックプレーヤーとしての位置づけです。

Daphile

音質重視の機能に特化することで高音質を実現しています。ただし、音質以外のWeb UI(英語)などの利便性や拡張性は限られています。Daphileは音質重視型のミュージックプレーヤーの位置づけです。 

2.事前準備

Volumioを構築するにあたり、下記のものを準備します。 

2-1.構築に必要なもの 

・x86PC(CPU:1GHz以上、RAM:推奨 1GB以上)

・USBメモリ(8GB以上) 

・Volumio OS

Linux OSおよびVolumioミュージックプレーヤーを含んだOSイメージファイルです。

このURLから、PC (X86/X64)を選択してダウンロードします。

 https://volumio.com/get-started/ 

・balenaEtcher

OSイメージをSDカードやUSBドライブに安全かつ簡単に書き込むWindowsソフトです。

このURLからダウンロードします。

 https://etcher.balena.io/ 

2-2.周辺機器

・USB DAC

・音源ファイル(外付けHDDなど)

3. 構築手順①:ブート用USBメモリの作成

Volumioの構築にはUSBブートとPCブートの2つの利用形態を選べます。最初はブート用USBメモリの作成手順について説明します。 

3-1.概要 

USBブートはWindowsPCにインストールしないでUSB起動でVolumioを利用する形態です。インストール作業でWindows内部を汚すことなく、既存PCをそのままVolumioミュージックプレーヤーとして使用することができます。最初にVolumioがどんなミュージックプレーヤーなのか試してみたいときに便利なブート方法です。音質面ではPCブートに劣りますが、USBブートでもWindows系とは全く異なる静寂性や透明感を一瞬で確認することができます。

3-2. ブート用USBメモリの作成

・balenaEtcherのインストール

https://etcher.balena.io/  

ダウンロードしたbalenaEtcherを作業用WindowsPCにインストールします。 

・balenaEtcherを起動しさせ、左側の青いボタン"Flash from file"を押します。

balenaEtcherの初期画面

・次に、imgファイルの選択画面で、事前にダウンロードして解凍したVolumioのimgファイルを選択します。

imgファイルの選択画面

・正常にimgファイルの読込ができると、中央の青いボタン"select target"に遷移します。

select targetの画面

・"select target"の青いボタンを押して、書き込みするデバイスを選択します。

USBメモリを選択する画面
・該当する書き込みするデバイス、今回はUSBメモリにチェックを入れ"select1"の青いボタンを押します。 

”Flash!”の青いボタンの画面

・正常にUSBメモリが認識されると”Flash!”の青いボタンの画面に遷移します。

USBメモリへの書き込み画面

・”Flash!”の青いボタンを押してUSBメモリへのVolumioの書き込みを実行します。

USBメモリへの書き込みが正常に終了した画面

・正常に書き込みが終了すれば、Volumioのブート用USBメモリの完成です。 

4.構築手順②:Volumioの構築(USBブート編)

ブート用USBメモリを使いPC起動と設定によりVolumio構築ついて説明します。この作業によりVolumioは使用できるようになります。尚、PCはHP EliteDesk 800 G5 DMを例に説明しています。

4-1.BIOS設定

ブートUSBメモリを使用するため以下の事前にBIOS設定をします。 

・USBブートで起動させるためにはセキュアプートを無効化

セキュアブートの無効化の画面
詳細設定>セキュアブートの構成>

”レガシーサポートの無効化およびセキュアブートの有効化” から

”レガシーサポートの有効化およびセキュアブートの無効化”  に変更します。 

・起動順位をUSBメモリを最上位に設定。

4-2.Volumioの初期設定

ブート用USBメモリでVolumioを立ち上げて初期設定をします。

起動させる前に、USB DACや音源メディア(外付けHDDなど)をPCに接続しておきます。

mini-PCをブートUSBで起動
(1)ブートUSBからの起動

ブート用USBメモリを差し込みPCを起動させればVolumioが自動的に立ち上がります。

Linux(Volumio OS)の起動する画面

(2)システム設定

ブートUSBで起動したPCには、Volumioのシステム設定画面が立ち上がります。 以下のとおり順次システム設定を進めることでVolumioは完成します。

 ・言語

最初は言語の設定画面から開始します。言語>日本語、タイムゾーン>Japanを選択します。 

言語の設定画面
 ・ログイン

Volumioは「基本的な再生機能」だけならログイン不要で使えます。ただし、プラグインのインストールやMyVolumioのクラウド機能を使う場合はログインが必要です。

ログインの画面

・名前

名前(ホスト名)の設定画面では、”機器に一意の名前を付けてください”と表示されるので名前(ホスト名)を入力します。

名前(ホスト名)の設定画面

・出力

”オーディオ出力を選択してください”との画面から、出力機器の"DX3 Pro"を選択します。 

出力の設定画面

 ・ネットワーク

接続したいWiFiネットワークを選択します。

SSIDを選択>パスワードを入力>接続ボタンを押すとWiFiが接続されます。

ネットワークの設定画面

・音楽ソース

Start Free Trialがデフォルトで設定されています。 そのままのStart Free Trialとして次へのボタンを押します。

音楽ソースの設定画面
 ・完了 

全ての設定が終了すると、 

”おめでとうございます””Volumioの設定が完了し、再生の準備ができました”

とのコメントの完了が画面が表示されます。

完了の画面

完了までの設定が終われば、それ以降Volumioをご利用になれます。 

5. 構築手順③:Volumioの構築(内蔵SSDブート編)

内蔵SSDブート(PCブート)はVolumioの音楽専用PCを構築します。

この章ではPC内を初期化しても良い汎用PCx86をご用意ください。 

USBブートでVolumioを起動させて、システム設定>ディスクにインストールの画面からmini-PC内蔵SSDを選択してインストールを実行します。

ディスクにインストールの画面

インストール中の画面
 
インストール完了の画面

 内蔵SSDへのインストールが完了したら、再起動ボタンを押します。USBメモリを抜きVolumioが起動するのを待ちます。

システム設定の最初の画面
 システム設定の入力画面が立ち上がります。ブログ内の4-2.Volumioの初期設定>(2)システム設定を参考してシステム設定を完了させます。 

これで内蔵SSDブート版のVolumioの完成です。

6.参考:ブログ内のPC仕様

Volumioは古いPCでも十分に動作しますが、このブログで紹介するPC仕様は、私が(1)は音楽専用PCとして最低限必要と思う条件、(2)は古いPC(再利用)の仕様です。

(1)HP EliteDesk 800 G5 DM

HP EliteDesk 800 G5 DM

音楽専用PCとして、下記のとおりハード選定などに凝って音質と利便性を改善しています。 

・低消費電力CPU(Intel Core i3-9100T) 

一定で少ない消費電力と発熱、C-state処理の素直さを重視。音楽再生ではCPU負荷が低く、これ以上の高性能CPU(i5/i7)にしても改善は限定的です。

HDD 500GBの実装

・2.5インチHDDからM2規格SSDへの交換

発熱と消費電力が下がり、筐体内の空気の流れも改善します。

・RAM:4GBまたは8GB

スワップを抑えてUSB転送を安定させるため4GBから8GBに増量します。ただし、8GB以上増やしても効果は限定的かと思います。 

冷却ファンの下にRAMを実装

・WiFi

mini-PCにWiFiカードを増設して利便性の向上させます。しかし音質面ではWiFiがノイズ源となってしまうデメリットがあります。必要のない時はOFFにして運用します。

SSD128GBへの交換と無線LANカードの追加
 ・冷却ファン

本当はファンレンスが良かったのですがファン有です。ファンの音への影響は、ファンの動作が電源を変動させて音の安定感が揺らいでしまいます。

(2)HP EliteBook 8470b

2012年発売のHP EliteBook 8470b、第3世代Intel CPU、RAM 8GB、SSD500GB のWindows7のかなり古いノートPCを再利用します。Volumioは楽々と動作します。しかもPC本体、メモリ、SSDまたはHDDのみで構築できます。最初はご自宅の不要なったPCを活用すればいいかと思います。 

7.ヒアリング

4つのPC構成パターンでのヒアリングを実施しました。 

ヒアリング結果まとめ

7-1.HP EliteBook 8470b(USBブート)

2012年発売のHP EliteBook 8470b(第3世代Intel CPU、RAM 8GB、SSD500GB)の古いノートPCをUSBブート、外付けHDD、Topping DX3Proの構成でヒアリングします。

良くも悪くもきれいでバランス良い音です。低音は締まり、透明感や高域の伸びもほどほど、奥行もあり定位も良いです。しかし、何か全体的に音が押さえつけられたような解放感がない印象の音です。音が心に少しも響かないつまらない音です。Windows系にはないクリアさがありますが、無味無臭になりやすいLinux特有の質感が思ったより悪く感じました。

7-2.HP EliteDesk 800 G5 DM(USBブート)

HP EliteDesk 800 G5 DM (Intel Core i3-9100T、RAM 4GB、SSD128GB)のminiPCをUSBブート、外付けHDD、Topping DX3Proの構成でヒアリングします。

きれいな音で奥行も感じられ、中域の潤いも少し出います。 普通に聞いていられる音です。しかし、何か少し息苦しいような緊張感があり、やはり解放感がほしいです。

HP EliteBook 8470bと比べると遥かに改善しています。音楽ソースの元の音がダイレクトに反映されるため、古い楽曲は音全体の曇りが識別できる様になります。Windows系では単調になりがちな楽曲でも分解能は高く1音1音が明瞭に表現されます。高域のきらめきが少し出てきて、ベールを被ったような感じは少し和らいでいます。

30分程度、聴き込むことでプリメインアンプLV-103の影響でしょうか音に余韻と潤いが出てきました。意外ですが真空管アンプとの組み合わせは適度なゆらぎや潤いを与えるので良いのかもしれません。全体にベールを被った音には、楽曲が元々もっている曇りとLinux系システム固有の曇りの2つがあるようです。後者はシステム改善で曇りを解消できるかと思います。

7-3.HP EliteDesk 800 G5 DM(内蔵SSDブート)

HP EliteDesk 800 G5 DM (Intel Core i3-9100T、RAM 4GB、SSD128GB)のminiPCを内蔵SSDブート(PCブート)、外付けHDD、Topping DX3Proの構成でヒアリングします。

(1)RAM:4GB

解像度は高く1音1音明瞭に聞こえます。音のバランスは上下に一番バランス良く伸びています。当然、クリアなのでノイズ感は全くありません。ごく薄い曇りのような膜の様はものはやはり残っています。息苦しさは感じられませんので改善されています。高域のきらめきや胸に響く様な低域はでません。LV-103で30分たつと、音に潤いが出て音に深みが生まれます。この効果はシステムの向上とリンクしているようです。

(2)RAM:8GB

8GBのRAMが届いたので、4GBと交換してヒアリングします。 LV-103は1時間ほどエージングしてあります。

今まで薄く張った曇り(目の様な)は、完全に消えていはいませんが気にならない程度まで改善しています。奥行まで見通せるような空間を感じ音が深いです。高域の繊細さにキラメキ、余韻やざわめきが付加されています。これは聞いていて気持ちの良い音です。音楽への没入感が得られます。Windowsが少し尖ったキラメキと迫力の美しさならLinuxはクリアでなめらかな音の美しさを感じます。

RAMは8GBでの利用を強く推奨します。 Volumioの設定やBIOSはデフォルトのままでのハード構成変更だけのヒアリング結果です。Volumioの音の素性がすばらしく良いので、更に音質の向上が期待できることがわかりました。

ヒヤリングとは関係ありませんが、多量の楽曲データを最初に読み込むのに1万曲で約3分程度がかかりましたので参考にしてください。

8.WindowsとLinux:音作りの異なる思想

ヒアリングにより音作りの違いや目指すべき方向性が見えてきます。WindowsとLinuxではOSの挙動の違いが、そのまま音に影響を与えるため、180度異なる考え方で音質調整をする必要があります。

・Windows系

必要な微細信号などを欠落させないように不要な音やノイズを削ることで音の純度をあげて高音質化を図ります。

・Linux系 

音の純度が高すぎてそのままでは無味乾燥で聞くに堪えません。音にゆらぎや潤いなどを付加するため、周辺機器等から質の高いゆらぎやノイズをもらい高音質化を図る必要があります。例えるなら、純粋な水は飲むに堪えないが、適度なミネラルなどを加えることで美味となることに似ています。

ただし、どちらも原音は純度が高いことが前提になります。純度の高い音に対してWindows系は引き算の理論で高音質を目指し、Linux系は足し算の理論で高音質を目指す必要があります。 

Windows系は音のバランスがある程度完成されているの対して、Linux系はPCの構成や挙動が音にダイレクトに反映します。PC固有の音は未完成で自ら純度の高いバランスの取れた音に再構築しなければいけない難しさがあります。Volumioの音の完成度を1割とすると、残りの9割は自ら調整する余地があるように感じます。

9.構築時のトラブル一覧

Volumio構築時に遭遇したトラブルは以下の3件だけです。 

・balenaEtcherのVolumioイメージファイル読み込みエラー

 インストーラーbalenaEtcherのVolumioのイメージファイル読込に何度か失敗しました。数回、再度チャレンジしてようやく読み込むことができましたが原因は不明です。

・音源フォルダの3階層までしか認識しない

HDD内の3階層までのフォルダ下の音源(FLAC)しかVolumioが認識しませんでした。 大容量の楽曲が原因で、RAMやMPDのリソースが不足したと考えられます。以下の対策で良好な動作となりました。

対策:第1階層を複数フォルダに分割。また、第3階層まのでフォルダに音源ファイルを格納 。

・内蔵SSDが認識出来ない

HP EliteDesk 800 G5 DMにHDDからSSDに実装変更したときにSSDが認識できませんでした。BIOSを工場出荷時にリセットする事でSSDを認識できるようなりました。中古PCのためBIOSの設定が多数変更されていたのが原因です。

10.今後の改善

Volumio構築に伴い、今後改善すべき内容もみえてきたので以下に記載します。 

10-1.RAM容量

現在は4GBでしが、スワップをなくすために8GBへの増量が有効 。

10-2.ストレージのフォーマットの最適化

現在のNTFSからフォーマット種別を最適化したストレージに移行が有効

 Linuxでのみ使用: ext4

 LinuxとWindowsで使用:exFAT

10-3.音源を格納するストレージ

電源、メカ、USBの影響がないストレージへの移行が有効。現在の外付けHDD(USB接続)から以下の改善案を検討中。

・改善案

①HDDからSSDへの交換

②内蔵SSDへ移行

③妥協案:ストレージにHDDおよびUSBを使用せざる負えない場合の対策 。RAMディズクの機能がないため、MPDを最適化により改善。

10-4.BIOS設定

BIOS設定により、Volumioの音質を最適化します。実際にHP EliteDesk 800 G5 DMの設定で改善できる余地があります。

電源管理、USB、不要デバイス、ブート、熱・ファン

11.まとめ

Volumioは自身で音を作り込むミュージックプレーヤーです。音質はアマチュアの領域を超えたかなと思わせます。少しの条件で大きく音が変わる繊細な音質で調整はむずかしいです。しかしアマチュアの特権は何度でも失敗できるのが強みです。原音を濁さずに音のゆらぎを付加しながら自分だけの音をつくりあげてください。原音を誤って汚すと、どこかで音の袋小路に迷い込んでしまいます。その時はアマチュアの特権を発動して、最初からやり直せばいいだけです。VolumioはWindows系とは全く異なる音の世界に連れていってくれます。Windowsユーザーから隔離されて埋もれているには惜しいVolumioです。

12.Volumio仕様一覧

 VolumioはLinuxベースの高音質オーディオ専用OS で、 Raspberry Pi・x86 PC・専用機(Primo / Rivo)などで動作します。

(1)オーディオフォーマット

FLAC/WAV/AIFF/ALAC/MP3/AAC/Ogg Vorbis/Cueシート(CUE)

DSD(DSF/DFF)DSD256-SDS512は対応機器に依存 

(2) サンプリングレート / ビット

・PCM:最大 384kHz(OS仕様)

・専用機(Primo Plus / Rivo+)では PCM 768kHz / DSD512 に対応

・ビット深度:最大 32bit(USB出力時)

(3) ストリーミングサービス

Spotify(プラグイン / Connect)

TIDAL(日本未サービス)

・Qobuz

・Radio Paradise FLAC

・DLNA / UPnP / OpenHome

・Roon Ready(対応機種) 

(4) ネットワーク・入出力

・LAN / Wi-Fi(機器依存)

・Bluetooth(SBC)

・USB-DAC 出力(ALSA 経由)

・HDMI オーディオ出力 

・I2S(Raspberry Pi / Rivo+)

・CD再生・リッピング(USB-CDドライブ 

(5)ハードウェア

・CPU:1GHz 以上

・RAM:512MB 以上(推奨 1GB〜) 

・ストレージ:microSD / USB / SSD / HDD(ただしSSD推奨)

・ネットワーク:LAN または Wi-Fi 

(6)ストレージのフォーマット

SSDやHDDで使用可能なフォーマットは以下のとおりです。 

ext4/exFAT/FAT32/NTFS

(7)Volumio Premium(有料版)の追加機能

・AIプレイリスト(Supersearch)

・インフィニティプレイ(自動連続再生)

・マルチルーム同期

・CDリッピング(USB-CD)

2026/05/26

ナショナル TA-90 AM-FM オールバンド型 ハイファイチューナー

 1.概要(外観・仕様)

ナショナル TA-90

ナショナル TA-90 AM-FM オールバンド型 ハイファイチューナーの修理記録です。ナショナル TA-90は、1962年発売・14,900円の3バンド(MW/SW/FM)真空管チューナーです。 黒を基調とした端正なデザインで、通信機を思わせる精悍さと高性能を感じさせます。

背面の端子類

背面には、音声出力OP端子、外部機器入力端子PUとTAPE,MPX端子M/Xとアンテナ端子、ヒューズボックスがあります。ヒューズボックスは入力電圧によって100Vと110Vの片方のみにガラス管ヒューズを装着します。 

2.特徴(配置図・糸掛け図・回路構成)

2-1.配置図と糸掛け図 

仕様、配置図、糸掛け図

チューナーのボンネット裏には、仕様、配置図、糸掛け図が貼り付けてあります。

・仕様

TA-90 仕様
仕様として下記の内容が記載されています。

受信周波数帯:MWバンド 535~1605KC

       SWバンド 3.9~12MC

       FMバンド 80~90MC

中間周波数:AM 455KC,FM 10.7MC

使用真空管:6AQ8、6BA6、6AJ8、6DC8、6BX6、6AL5、6ZE1、6X4

ダイヤルライト:6.3V、0.25A、2個

感   度:MWバンド 50μV/30mV

      SWバンド 50μV/30mV

      FMバンド 30μV/30mV(S/N 30db)

電   源:50~60c/s 100~110V(ヒューズ差替式) 

・ 糸掛け図

糸掛け図

この糸掛け図にはダイヤル目盛りも併記されており、初見では調整方法が分かりにくい構成です。 しかし、ナショナル独自の方式を理解すると、短時間で正確に調整できる合理的な方法であることが分かります。
  
この糸掛け方式は“FM 89MHz を絶対基準にする”のが最大のポイントです。 
 そのうえで、以下のように寸法で位置決めを行います。 

②そこから 93.2mm がスタート地点

③さらに 8.6mm が SW 4MHz(糸掛けの正しさを確認する点)

④MW はトラッキング調整で合わせる(糸掛けでは決まらない)

⑤SW がズレている場合は糸掛けのやり直し(巻き量・初期位置の誤差)

以上の方法で糸掛けと調整をすれば正しい受信周波数になります。

工場向けに単純な糸掛け方法の説明ですみ、なおかつ誰でも短時間で正確に調整できるメリットが重要だったのではと推察しました。大量生産向けのナショナル独自方式です。

・配置図

配置図
真空管などの配置図です。ただし、(誤)6AB6⇒(正)6BA6と誤記があるので要注意です。

・工業所有権のシール

ボンネット裏の反対側には、「当社ガ有スル工業所有権」のシールが貼られています。特許侵害への警告と技術の高さをアピールするためのものでしょうか。昔の秋葉原ではコピー商品であふれていました。SONYのカセットテープそっくりのパッケージでよく見るとSANYの文字の商品などです。当然、中のテープは粗悪品でした。そんな経験から特許侵害への警告かなとも思えます。

2-2.回路図

ラジオ技術1962年9月号 回路図(抜粋)

ラジオ技術 1962年9月号に回路図が掲載されています。

2.3.回路構成

TA-90の機器配置

FM 系:

アンテナ → 6BA6(RF) → 6AJ8(MIX/OSC) → 6DC8(IF×2) → 6BX6(LIM) → 6AL5(FM DET) → AF OUT+ 検波出力 → 6ZE1/6BA6 → AFC → 局発へフィードバック

AM 系:

アンテナ → 6BA6(RF) → 6AJ8(MIX/OSC) → 6DC8(IF) → 6AL5(AM DET) → AF OUT+ NAR/WIDE で IF 帯域切替

共通:

6X4 電源、6ZE1 マジックアイ、PU 入力・出力切替

3.修理プロセス(事前作業 → 電源試験 → 不具合 → 再修理)

3-1.事前作業

電源を入れて試験する前に実施する修理作業です。 

・目視確認

修理前の内部の様子
内部を目視しますが、焦げや損傷、ハンダなどの異常もなく良好です。

修理したヒューズカバー

ヒューズ断とヒューズカバー破損しています。ヒューズ(1A)交換とカバーを修理します。

・劣化部品

交換して取り外した劣化部品

ペーパーコンデンサは全てフィルムコンデンサと交換します。

ペーパーコンデンサ交換後の内部

ペーパーコンデンサの片側ハンダなし

この位置の0.05μFは“音声出力のカップリング”という重要な役割を持つため、 片側が無ハンダのまま出荷されていたのは驚きでした。手前の抵抗の陰に隠れていて、抵抗を取り外さないとハンダ箇所が見えない場所です。あまり見たくなかった製造ミスです。なお、音声が完全に途切れなかったのは、近接する配線や部品との間に生じる浮遊容量(数 pF 程度)による微小な AC カップリングによって、IF 信号がわずかに漏れ込んでいたためと考えられます。

・清掃

AFC用のスライドスイッチ

AFC用のスライドスイッチは分解、清楚します。セレクタの端子も黒くなっているので清掃します。

ダイヤル目盛りの背面の黒板を清掃

清掃後の綺麗になったダイヤル目盛り

ダイヤル目盛りのガラス板を慎重に清掃します。背面の黒い板は汚れが酷くコンパウンドで磨くと綺麗になります。背面の黒い板を清掃しておくとダイヤル目盛の仕上がりの美しさに大きな差がでます。

4.調整(RF/IF・AFC・MPX)

4-1.電源試験

まず、電源投入後に主要ポイントの電圧を測定し、回路図値と比較しました。 結果を以下にまとめます。 

電源装置で100Vで0.6Aと表示
電圧測定の様子

回路図に記載されている電圧を参考にします。□内の電圧はAM、()内はFMの電圧です。

電源回路(抜粋)

測定電圧一覧表
 ・電源トランス100V端子接続 

電源回路の1kΩ両端(電源トランス側とチューナー側)の電圧を測定(測定電圧一覧を参照)します。

FMの電圧は+32Vと少し高めです。また、電流値は+8mAですが電圧が高い影響のためで、ブロック電解コンデンサは過電流もなく良好と判断できます。 

・電源トランス110V端子接続 

給電電圧が高いため、電源トランスの一次側タップを100V⇒110V接続に変更して二次側電圧を下げて測定(測定電圧一覧を参照)します。(背面のヒューズホルダのヒューズを110V側にします。)

測定した結果からFMおよびAM受信で給電電圧が適正な電圧の電源トランス一次側は110Vタップで通常使用とします。

・短絡(ショート)

このTA-90は購入時に電源ヒューズが溶断していました。修理中も電源トラブルもなく良好に動作していました。それが、突然6AQ8付近から小さな白煙で、ヒューズ線は白熱電球のように光っています。 電源ヒューズが溶断していたのでおかしいとは思っていました。

ヒーターの5番端子とシールド板の接触あり
2P(プレート)1番端子とシールド板もショートの危険性あり

すぐに電源落として裏返して確認します。6AQ8のソケットのシールド板と端子が接触してショートしていました。6AQ8のヒーター用の5番端子とシールド板がショートしたのが原因です。6AQ8を揺すると2P(プレート)用の1番端子もシールド板と接触します。シールド板を少し上に位置をずらし、端子から遠ざかるように横に曲げて接触しないように修復します。本来はシールド板の下に端子が来ても接触しないようにシールド板がカットされています。シールド板の設置位置が低すぎてカット面が端子に接触していました。これも見たくなかったもうひとつの製造ミスです。 

4-2.受信確認(1回目)

AM,FM共に正常に受信できます。ジーッとノイズが入り耳障りです。一番疑わしいのはブロック電解コンデンサで交換する必要がありそうです。

4-3.再修理(ジーッ音のノイズ)

受信時にジーッとノイズが入ります。ブロック電解コンデンサが疑わしいので確認します。電源回路にモニターを入れて直接ノイズ音を確認します。 ブロック電解コンデンサに近いほどノイズが大きくノイズの質も音声出力と同じです。ブロック電解コンデンサがノイズ源で確定です。

外観はそのままのブロック電解コンデンサ

新しい電解コンデンサと交換し、黄色いカバーのブロック電解コンデンサはくり抜きそのまま設置して再利用すれば、外観は全く変わりません。

ヒヤリング試験をしますが、嘘のように電源ノイズは消え音声がクリアになり修理は成功です。 

4-4.受信試験(2回目)

再修理でブロック電解コンデンサを交換して電源ノイズもなくなりました。しかし、FMステレオ放送を聴くと背景にサーッと違うノイズが聞こえて気になります。

FMシグナルジェネレータとスペアナを接続して波形を観測します。チューナーを裏返しにするなど本体を動かすと波形が変形したり、うねったり不安定です。ノイズレベルは-50dBとかなり悪い状態で、これがサーッという消したいノイズです。高調波も全帯域で発生しています。ノイズの解消というよりは、波形の不安定さを解消するのが先決のようです。

4-5.再々修理(サーッ音のノイズ) 

部品のひとつひとつのハンダ付けや配線、容量など地道にチェックします。原因はセラミックコンデンサのリード線が6AQ8の端子に接触しており、 微小な容量変化が局発周波数に影響して波形が不安定になっていました。

セラミックコンデンサのリード線にエンパイヤチューブを被せて6AQ8端子と接触しないように対策します。対策後のスペアナを見ると高調波も少ない綺麗な波形です。

スペアナで見たノイズもなく正常な波形と帯域

この状態でRFやIFなど調整します。調整したことによりノイズレベルも-70dB以下になりました。もう少しノイズレベルが低いといいのですが、FM黎明期のMPX出力の限界かと思います。

4-6.受信試験(3回目) 

サーッ音のノイズも低減したので、マジックアイの機能を確認します。 

マジックアイ・AFC OFF(緑) 

マジックアイ・AFC ON(赤)

マジックアイの受信状況の変化は良好です。このマジックアイ(6ZE1)はAFC機能OFF:緑、AFC機能ONで赤く点灯が変わります。また、AFC機能の受信周波数に引き込む動作は良好でした。 

4-7.MPX出力(FMステレオ放送)

TA-90のMPX出力とFMマルチプレックスアダプターには同じナショナルのSH-300がよかったのですがSH-300の調子が悪く、TRIO AD-5を接続してFMステレオ放送を試験します。

TRIO AD-5とTA-90でFMステレオ試験

FMステレオのセパレーションは右25dB、左23dBでした。 FM黎明期の真空管チューナーとしてりっぱな数値です。

5.ヒアリング

TA-90とAD-5でヒアリング

・感度: 

 AMとFMは受信感度も高く良好に受信できます。

・AM:

  音質はノイズも少なく聴きやすい音質です。 

・FMモノラル:

  中域が前面にでた音のバランスです。全体的に厚みのある音がします。音質はクリアでノイズ感はありません。高音も程よくでています。

・FMステレオ:

  中低音が厚く、全体的にエネルギー感のある音がします。奥行も良好でやわらかな高音です。全体がなめらかな音質で、ボーカルに艶や色気があります。

・ノイズ:

  ステレオ時にサーッ音が入りますが、激しい曲では判りません。静かな曲などではノイズは聞こえますが、さほど気にならない範囲かと思います。 

6.デザイン考察

TA-90の黒を基調としたデザイン

TA-90は、黒を基調としたパネルに中央のゴールドのツマミを配置した、通信機そのものの面構えをしています。家庭用チューナーとしては武骨で、好みが分かれるデザインです。なぜナショナルは、このような通信機的デザインを採用したのでしょうか。

結論として、通信機を作りたかったのではなく、“通信機の信頼性と精密さ”を外観で表現したかったと考えられます。

1960年代前半はFM放送が始まったばかりで、FMチューナーはまだ新しい高周波機器でした。ナショナルとしては、「高周波技術に強いメーカーである」という印象を市場に示す必要があり、その象徴として通信機のデザイン言語を取り入れたと考えられます。

実際、TA-90の内部構成は家庭用ラジオより通信機寄りで、RF → MIX/OSC → IF×2 → LIM → DETという本格的な高周波構成や、AFC・MPX出力など、当時としては先進的な要素が多く含まれています。外観と中身が一致しているわけです。

また、松下電器は当時、通信機器部門と家庭用ラジオ部門を並行して持っており、高周波技術者がチューナー開発に関わった可能性も十分にあります。

つまりTA-90の武骨な外観は、単なるデザインではなく、「精密な高周波機器である」という技術的メッセージを込めた意図的な選択だったと考えられます。マニア好みの外観になったのも、その結果と言えるでしょう。

TA-90のデザインは、1960年代前半の技術観とナショナルの姿勢がそのまま外観に表れた製品です。デザインには、その時代の空気と気配が満ちています。

7.まとめ(総評)

TA-90 は、FMステレオ放送開始前に MPX 出力を搭載した先進的な設計で、 ナショナルが FM 時代を強く意識していたことが分かります。 修理後は動作も安定しており、60年以上前の製品とは思えない完成度です。 当時の技術思想と設計品質を今に伝える、非常に魅力的なチューナーだと感じました。