2026/10/28

DIATONE DS-25B 空気感を持つスピーカーとCCLD

DIATONE DS-25B 空気感を持つスピーカーとCCLD

1.概要

DIATONE DS-25B(ツィーター交換済)

DIATONE DS-25Bは、1976年に発売された28,000円の2Wayブックシェルフ型スピーカーです(写真はツィーター交換済)。今回の製作の目的は、CCLD(チャージカップルド・リニア・ディフィニション)を導入し、微細信号や空気感を改善することです。

しかし、試行錯誤の果てに見えてきたのは、CCLD単体の効果だけではありませんでした。 それは、DS-25Bそのものが持つ「制御・調整された空気と気配」そのものでした。

本記事は、一見するとよくあるスピーカーの改造記の様に見えます。しかし最終的には、DIATONEの「空気感」とは何か探る考察です。

 ・経緯

私が理想とするスピーカーには、微細信号を伴う空気感が必要条件です。そして、その空気感を再生できるスピーカーを探した結果、DIATONE DS-25Bにたどり着きました。

・ONKYO D-202A 

以前、ONKYO D-202AにテクニクスEAS-8HH17G+CCLDを組み合わせた外付けツィーターを製作しました。高域の微細信号や空気感の獲得において、これはある程度の成功を収めています。

D-202AとEAS-8HH17G+CCLD

さらに改善しようと、D-202Aのソフトドームツィーターを取り外し、ウーファーとEAS-8HH17G+CCLDを直結してヒアリングしてみました。 当然ながら、既存のネットワーク回路ではクロスが高すぎて中域が中抜けになり、予想通りの結果です。。それ以上に問題だったのは、ウーファーとEAS-8HH17Gの「スピード感の不一致」でした。

異質な音の組み合わせであり、統一感はまったくありません。ウーファーの重たい立ち上がりと不均衡な鳴り方が、クリアでスピード感のあるホーンツィーターとかみ合いません。この組み合わせは基本的に間違いでした。 振り返れば、ドームツィーターにより中域の中抜けが埋まり、ウーファーとツィーターの音質の違和感をうまいことごまかして聴かせていたのだと思います。それはまるで、薄曇りの空に時折青空を覗かせるような音質です。

このD-202AとCCLDの検証でわかったことがあります。それは、「どんなスピーカーと組み合わせてもCCLDが効果を発揮するわけではない」という事実です。 空気感を持つスピーカーに、CCLDの空気感を軽くのせるアプローチこそが必要であり、そもそも空気感を持たないスピーカーではCCLDの効果は薄いということです。

・空気感を纏うスピーカーの選定

「ツィーターはテクニクスEAS-8HH17G+CCLDを使う」という前提のもと、ウーファーやエンクロージャーの条件を整理すると、以下の要件が浮かび上がります。

・ウーファーのコーンが軽く、微細信号や空気感を再生できる応答性の良さ

・微細信号をロスしないため、ネットワーク回路はできる限りシンプルな構成が良い

・共振の少ないエンクロージャーであること

が考えられます。

おのずとフルレンジスピーカーが候補として浮かびますが、現代音楽を再生するには帯域が不足しています。市販のスピーカーの中から候補を選定してみたが、驚くほど該当する機種は極わずかでした。

3Wayスピーカーは対象外とし、2Wayから探します。小型ブックシェルフの小口径ウーファーはコーンが重く、アンプで強引にドライブするタイプのため対象外。円筒ダクトのスピーカーも共振による音の濁り(歪)があり対象外です。かといって、密閉型で空気感を出すには大容量の箱が必要となり、我が家の環境では現実的ではありません。

・DS-25BまたはDS-30B

DS-30Bカタログ

空気感の出る2Wayスピーカーを探す中で思い出したのが、DIATONE DS-30Bです。30cm大口径ウーファー+ツィーターという構成のモデルです。 当時、「なぜ音のスピード感が出にくい大口径で2Wayを組むのだろう?」と疑問に思っていました。重たく迫力のある音を想像していて、なぜかダクトの形状も三角形かと疑問に思っていました。

しかし実際の大口径ウーファーは、硬くて軽い素材で応答も早く、広い面積のコーンで効率よく空気を押し出すことができます。つまり、空気感を出すための理想的なウーファーでした。 しかもエンクロージャーは、特定周波数の箱鳴りを抑えた分散共振構造を採用しています。 極めつけはトライアングルダクトです。円筒型ダクトと違い、三角形の構造によって特定周波数の共振を排し、不要な歪みのないクリアで自然な音を実現しています。このダクト構造なら、ウーファーの動きを適度に軽く均一化し、微細信号や空気感を豊かに再生できそうです。この手の「共振させない構造のバスレフ」を持つスピーカーは少なく、極めて貴重であるとも言えます。

DS-25Bカタログ

以上の理由から、DS-30B、あるいは同系統のDS-25Bを改造の対象としました。

2.製作作業

DS-30Bの方が今回の目的には最適ですが、部屋の広さの制約からDS-25Bを採用します。

DS-25Bの角型ダクト
ウーファーはDS-30Bの30cmからDS-25Bは25cmとやや小さく、トライアングルダクトから角型ダクトの採用と構成が異なります。DS-25Bの角型ダクトもトライアングルダクトと共振させない目的は同じですが、方式が異なる分散共振構造です。DS-30Bは30cm大口径ウーファーで共振設計が難しくなり角型ダクトではなく非対称面で共振させないトライアングルダクトを採用したと思われます。

また、この価格帯のスピーカーですから安価な純正ツィーターでは微細信号や空気感の再生には向いていません。そのため、微細信号と空気感をより豊かに再生するためには、ツィーターとネットワーク回路が弱点であり改善する必要があります。

(1)状態確認

箱の化粧板に傷、日焼けはありませんが、角の2箇所に凹みがあります。スピーカーネットの破れ、ほつれ、シミ、日焼けもなく状態は良好です。スピーカー端子は左右共に破損しているので交換が必要です。コーンのつぶれや傷、日焼けもなく良好です。ウーファーのエッジは適度に柔軟性が残っているのでここまま使用しても大丈夫そうです。ネットワーク回路はオリジナルのままで改造されていません。

(2)ヒアリング(オリジナル)

DS-25Bに一切の手を加えないオリジナルの状態でのヒアリングです。 

音全体に透明さはなく、灰色に覆われてクリアさは感じられません。音の出方が全体的にやさしい音がするスピーカーです。高域は非常に細かく繊細だが、帯域の伸びが不足しています。低域は出ているのですが音としての強調感が一切ありません。全体におとなしく聴こえ、決して刺激的な音が一切しません。音全体に何か音の余韻がまとわりついている様な印象を受けます。

(3)ヒアリング(電解コンデンサを交換)

取り外したネットワーク基板

劣化部品を交換した基板

ネットワーク回路の劣化した電解コンデンサを交換してのヒアリングです。 

全体的に音の透明感が向上してクリアになりましたが、まだ透明感が不足しているように感じます。高域は細かく繊細で上限まで伸びています。低域はオリジナルよりもほんの少し出ています。全体の音の印象は繊細でやさいい音、そして音全体に何か音の余韻がやさしくまとわりついているように聴こえます。

もっと元気な若者向けなスピーカーかと思っていましたが、非常に繊細でやさしくバランスの良い音のするスピーカーです。 

(4) ヒアリング(EAS-8HH17G+電解コンデンサ交換済)

EAS-8HH17Gにツィーター交換

DS-25Bのツィーターのビス穴とEAS-8HH17Gのビズ穴の寸法は同じでそのまま取り付け可能です。ただし、ツイーター形状が異なるため埋め込み形状までは合いません。電解コンデンサは交換済の状態でツィーターをEAS-8HH17Gに交換しての条件でヒアリングをします。

高域が強いのでHIGHポジションのつまみをnormalからdecreaseに切替ますが、高域はこれでもやや出過ぎの感があります。高域はシャープで少し硬く粒子が大粒で粗い印象です。音のバランスは高域よりですが、純正ツィーターよりは、解像度、クリアさ、高域の伸びなど遥かに向上しています。 

ユニット間のつながりは、やや別々に鳴っているような印象を受けます。もう少し一体感がありスムーズなつながりが望ましいです。ツィーターの個性が前面で出てしまい、空気感、音の余韻、場の雰囲気などは陰に隠れてDS-25Bの良さを消しています。

(5)ヒアリング(外付けEAS-8HH17G+CCLD)

外付けツィーター+CCL
DS-25Bのツィーターの配線を外して、以前製作した外付けEAS-8HH17G+CCLDを接続してヒヤリングします。 

過去に製作したD-202A+EAS-8HH17G+CCLDでは、D-202Aのウーファーは重くスピード感があるツィーターと噛み合いませんでした。DS-25Bのウーファーは硬く軽いためEAS-8HH17G+CCLDのスピード感と相性もよく何の違和感もありません。

ウーファーとツィーターの音質が溶け合い同じ系統であるかの様に聞こえます。中音の中抜けもなくバランスが良いです。

音全体の圧倒的な透明感とクリアさが第一印象です。音の見通しが良くなり奥行が良く分かります。音が空間に漂う雰囲気も再現できています。不思議なことに、音がシャープになった影響でこの組み合わせの方が低域が締まってよく聴こえるようになりました。音にまとわりつく音の余韻にも透明感があり自然で意識させなくなり美しいです。外付けツィーターのせいなのか音像が上下に少し伸びています。また、外付けツィーターの音量を少し下げて聞きたいです。ただし、全体的に音の密度や厚みがやや薄くかんじられます。

このヒアリングで気づいたことがあります。コンサートの生演奏では疲れませんが、今まで使ったスピーカーでは聴き疲れてしていました。現代的な解像度や情報量、帯域、歪みなどではなく、空気感や余韻のある聴き疲れしない、自然な音?が欲しかったことがわかりました。

ここで誤解していただきたくないのは、DS-25Bが生演奏(原音再生)を再現できるスピーカーであるとは言っていないことです。あくまで、私個人が聴きたい音(空気感など)を再現できるスピーカーですとの意味であることをご理解ください。 

(6)製作(EAS-8HH17G+CCLDの組み込み)

DS-25Bの弱点であるツィーター交換とネットワーク回路+CCLDに変更します。

・ネットワーク回路(オリジナル)

DS-25Bのネットワーク回路図を実機から書き写しました。 

DS-25B回路図(オリジナル)

・ネットワーク回路(EAS-8HH17G+CCLDの組み込み) 

DS-25BのツィーターをEAS-8HH17Gに交換してCCLD化します。10μF+2.2μF+0.2μFを15μ+0.2μ×2(直列)=7.5μFとして、ツィーターの中音の受け持ち範囲を引き上げます。また、ウーファーの15μFから15μF×2(並列)=30μFとして中音の上限を引き上げて、DS-25Bの音の厚みが少ないことを補います。さらにスピーカー端子プラスに0.3Ωを入れることでウーファーの音の落ち着きと1N4935による整流の安定(CCLDの安定化)を目指します。 

DS-25B+CCLD回路図

改造したネットワーク回路(1/2)

改造したネットワーク回路(2/2)

出来上がったネットワーク基板は、オリジナルと比べるとかなりやりすぎ感があります。CCLDなのでどうしてもコンデンサが大容量で数量もおおくなりがちですが、これでも既存の基板を活かしてフィルムコンデンサを最低数に制限して効率よく配置しています。

・バッフルリング

DS-25Bのツィーターは外径110cmの円形です。EAS-8HH17Gの外径は曲線を描いた四角形なので形状が合わず埋め込みしての固定はできません。しかも、本体とツィーターには埋め込みの溝で隙間ができてしまいます。このままでは音漏れや共振の原因になります。対策として外径110mm、内径80mmのバッフルリングをスピーカー本体との間に挟み隙間を埋めてEAS-8HH17Gを固定します。 

バッフルリングを取り付け
最初から、この精悍なデザインであるかの様にツィーターが馴染んでいて違和感がありません。外観からはわかりませんが、アッテネーターも無段階可変式に交換しています。

(7)ヒアリング(改善後)

改造されたDS-25B

内蔵ツィーターはネットワーク改造とアッテネーター を微調整したことで、外付けツィーターにはない統一感のあるバランス良い音がします。そして、以前からCCLDを長期間にわたり聴き続けた経験から、DS-25B本来の姿が浮かび上がりました。

・高域~低域まで透明感があり非常にクリアで音が混濁しない

・中低域よりのに高音が乗っているバランスの音 

・高域は非常に繊細で細かい粒子からできた綺麗な高音

・低域はしまってタイトだが量感がアップ

・ボーカルは前面で出過ぎずに適度な距離感

・全体的に音に余韻があり、音に空気が纏わりつく、無音になっても空気の気配が残る。

・低域が膨らみ楽曲により白く濁る⇒この音質には原因があり、USB DACからアンプへの出力レベルを-14dBから-24dBへレベルを下げたところ解消しました。

これらの改善効果の大半は、フィルムコンデンサへの換装、ホーンツィーターへの換装、クロスオーバーの再設計、そしてCCLDの導入によるものです。 今回のツィーター、ネットワーク回路、CCLDを除くと残ったものは、DS-25Bが本来もつ「空気と気配」です。

私はDS-25Bと向き合い、製品選定から改造に至るまでの自身の評価を根本から改めざるを得なくなりました。

当初は「大型フロア型のような自然な空気感を再生すること」が目的でした。 しかしDS-25Bが持っていたのは、自然な開放感とは異なる、「制御・調整された空気と気配」です。

※「制御・調整された空気と気配」とは、音楽が途切れた時の無音や音楽が小さく微細な表現のときの「空気の揺らぎが制御・調整されて均一である」ことを表します。 

「制御された空気感」というものは、私の知らなかった世界の音です。聴き慣れない空気感には最初はわずかな違和感を覚えましたが、違う魅力があります。DS-25Bは制御・調整された空気と気配の土台を、分散共振型の箱とダクト、硬質で軽い25cmのウーファーで実現しています。

この構造で空気感を絶妙なバランスにまとめるのは、極めて繊細で難しかったはずです。現代的な高剛性キャビネットや新素材、マルチウェイのほうが、調整しやすかったはずです。これこそが、DIATONEの音づくりの一片なのかもしれません。

今回の主役は、ツィーター、ネットワーク回路、CCLDではなく、制御・調整された空気や気配を持つDS-25Bでした。

3.まとめ

今回の製作は、いかに微細信号や空気感を失わずに自然に再生するかという、私個人のオーディオ観と音楽の聴き方を投影した実験です。 しかし、予想はあっけなく裏切られます。目指した「自然な空気感」とは異なり、「制御・調整された空気と気配」を持つスピーカーの魅力を発見する実験となりました。

この制御・調整された空気や気配は、上流から下流に至るまでのシステム全体で適切なセッティングを行って初めて姿を現す極めて繊細な代物です。 DIATONEは、このブックシェルフというサイズ感の中で「自然な空気感」を再現することの限界を見据え、あえて「制御・調整された空気と気配を纏う構造」を選択したのではないか――そんな思いすら抱かせます。

当初の目的とは異なり、「DS-25Bとは何者なのか」を探るブログとなりました。

ダクト調整:2026.10.29 

現在の音には違和感が残っています。この違和感への対応としてダクトの開口部を調整してみました。

・ダクトを100%開口: やや低音が少し膨らんでおり、低域が少し不明瞭で音が纏わりつく。音全体に極薄い灰色の膜の様なものがかかっているような質感。

・ ダクトを1/2閉塞:低音の量感は低下して少しすっきりした音に変化。全体にかかっている灰色の薄い膜は極わずか残っている。

・ダクトを2/3閉塞:低音の量感は過不足ない。極わずかに残った灰色の薄い膜は透明になる。全帯域の音はあたたかくウェットで絹の様な繊細な質感。この状態がベストの音質と感じます。

・ダクトを100%閉塞:音全体がタイトでクリアでシャープな音質に変化。密閉構造だが空気感を極わずかだが感じさせる。全帯域の音はやや硬くやや冷たい質感。

このダクトの調整により、2/3閉塞により低音と灰色の薄い膜が消えたときに、残った何者かが「制御・調整された空気や気配」なのでしょうか。現時点で言えることは「音が生きる何者か」であることは確かです。 

音質:2026.10.31

ブログを読んだ人は、豊かな低音をイメージするでしょうが誤解です。改造したDS-25Bはワイドレンジの鮮やかな音です。

2026/10/25

SANYO SFT-1 FMチューナー MPX OUT付加と修理記録

SANYO SFT-1 FMチューナー MPX OUT付加と修理記録

1.概要 

SFT-1正面

SFT-1背面

SANYO SFT-1 FMチューナーの紹介です。 1958年、9,500円の三洋電機から初のFMチュ-ナーです。

横幅370mmの大きな堅牢な鉄製筐体のFMチューナーです。全面が鉄板で囲まれたここまで堅牢なFMチューナーは初めてです。

ナショナルES-901のような家庭に置いて似合うラジオではありません。デザインが武骨なため家庭の和室や洋室にも合わず、会社の事務所などに置くと似合いそうです。当時はSANYOの製品は一般家庭では見ませんでしたので業務用機器が多かったのかもしれません。 

・回路図

SFT-1 回路図
SANYO SFT-1の回路図は、「FMラジオの解説と製作 オーム社 昭和33年8月20日初版発行、昭和41年6月30日第9版発行」に掲載されています。

真空管は、6DT8,6BA6,6BA6,6AL5,6X4の構成です。ナショナルES-901と瓜二つの回路構成です。 ナショナルもSANYOも標準的で破綻のない手堅い回路を採用しています。回路図の手堅さは社風が大きく影響しているものと思います。

初段がナショナルES-901は6AQ8でSANYO SFT-1は6DT8との違いはあります。互換性はありますが、ヒーター電流は6DT8(0.3A)から6AQ8(0.43A)、6AQ8の方が僅かに高ゲイン(高感度)かつ低ノイズ(S/N比向上)かと思います。6AQ8への差し替え後はフロントエンドの再調整は必要です。 

2.修理作業

・分解

SFT-1を分解した様子 

分解すると本体カバーの剛性がよくわかります。通常はコの字型カバーを上から被せますが、 SFT-1は両側がコの字型で、前後の金属板と底板を組み合わせると箱型形状になっています。この形状は、両端のネジで天板からの圧力をコの字で受け止める従来の構造とは剛性が段違いです。

剛性の高いケース

背面板も鉄製メッシュで、ES-901のようなパーチクルボードの破損などは一切ない構造です。 

通気は天板、底板、背面の3方向にメッシュ構造として、筐体全体が鉄製で放熱するため発熱対策が万全です。この発熱対策により各部品の経年劣化もすくなく、剛性筐体により部品へのストレスも少ない理想的な筐体かと思います。その証拠に本体カバー内側のススは薄く全体についているだけで、局所的に激しく焼けるような痕跡は皆無です。

高さ20mmの足

1点角忘れてました、筐体の4本の足が特徴的です。通常のゴム足ではなく、高さ20mmもある細いくて硬い円錐状の足です。 これば底板からの通気性を考慮したものと思います。徹底した発熱対策が施されています。

SFT‑1の円錐状の高足は、昭和の民生機ではほぼ見られず、 同様の構造を採用していたのは TRIO の初期チューナーだけです。 これは両社が家庭向けデザインよりも、通信機的な剛性・放熱構造を優先した 共通の設計文化を持っていたためと思われます。 

状態の良いケースの塗装

更にもう一つ、この本体カバーを水洗いして激しい汚れを落としました。その下から現れたのは当時のままの美しい塗装です。表にも裏にも一切のサビがない優秀な塗装です。

・目視確認 

前オーナーさんからは、「コンデンサを入替したが音がでませんでした」 との販売コメントのある製品です。

内部を覗いて見ます。

裏側の配線の様子

SFT-1は劣化する部品点数が少ないチューナーで、その劣化すると思われる部品が交換されていました。

ブロック電解コンデンサは撤去され電解コンデンサ×2個に置き換わっています。ペーパーコンデンサはフィルムコンデンサに交換されています。意味は不明ですが何故か数十pFのコンデンサが数点交換されています。

重要なフロントエンドの同調回路にまで手を加えていました。部品交換による影響がなければよいのですが。 

・配線チェック 

配線を全数チェックしましたが正しい配線です。ただ気になるのは、電源トランスの表面に油が染み出て固着して光っています。電源トランスが発熱(過電流)した形跡だと思います。

配線が正しく、電源トランスが発熱する過電流であると想定すると疑わしいのはショートです。 

6X4の4ピンがショート

配線をチェックしているときに、6X4の4ピンの配線がソケットの固定リベットに接触しています。 ヒーターがショートしています。音が出るはずもありません。電源電圧をチェックしなかったのでしょう。この部分を再度ハンダすれば修理は完了です。

・電源試験 

電源試験で電流を測定

原因らしき箇所を発見・修理したので、電源を入れてみます。 電流は0.32Aで安定しています。各箇所の電圧を測定して正常です。

・動作確認

OUT PUTにモニター接続してSFT-1の音だし試験をします。あっさり、FM放送が受信できました。拍子抜けです。6X4のヒーター配線のショートを直しただけです。 

・トラッキング

 トラッキングが大幅にズレています。トリマやコイルを調整しますが、78~83MHz近辺しか受信できません。同調回路のコンデンサを交換した影響です。

同調回路の二次側コンデンサが交換されている
写真では青いコンデンサが交換されたものです。回路図では23pF、交換されたコンデンサは22pFでした。周波数のズレ幅が非常に大きいので容量差1pFではないかと思います。 また、同調回路の一次側コンデンサも交換されています。回路図どおりのコンデンサに交換しても回復できそうにない繊細な回路です。

ためしに、23pFにしてみましたがもっとズレ幅が広がります。元の部品が残っていないのが悔やまれます。

トリマへの交換
仕方なく、20pFトリマを取り付けての実機調整としました。調整はある程度できたのですが、ダイヤルスケール目盛り幅で上限は2MHzほど短かくなってしまいました。受信できる周波数範囲は78MHz~90MHzです。但し、80M㎐のダイヤル目盛に針を合わせても90M㎐で、ダイヤル目盛は88M㎐で、これ以上はツマミは回せません。
このチューナーは調整幅が極端にすくないので、繊細なバランスが崩れてしまったことまでは修理出来ませんでした。直して直せないでもありませんが、部品交換しながらの調整で時間もかかりそうなのでここまでの修理とします。

3.MPX OUT付加

MPX OUTを付加した回路図

モノラルFMチューナーですから、FMステレオ放送を聞くためにMPX OUTを付加します。

MPX回路に改造

部品点数も少なく簡単に配線することができました。

ヒアリング風景

TRIO AD-5と接続して音だし試験をします。これも簡単に左右から音がでます。動作にも不具合や不安定さはなさそうです。

・セパレーション 

セパレーションを測定します。

セパレーション(1kHz): 15dB

・ヒアリング

FMステレオ放送は、上下の帯域は欲張らずにバランスの良い音ですがやや高域よりでしょうか。音質は真空管チューナーではあまり聞いたことのない、やや硬めのタイトな音がします。ノイズはほんの僅か電源ノイズのブーンとホワイトノイスのサーッの2種類が混じります。ホワイトノイズはAD-5のフィルターONで消すことができます。MPXは十分に実用になる範囲で改造できたようです。このチューナーの構造の影響を思わせるタイトで硬めの音が印象に残ります。

4.まとめ

SFT‑1は、私の生活圏の民生機文化とはまったく異なる構造のFMチューナーです。筐体は必要以上に大きく、内部の本体シャーシも民生機では見たことがないほど余裕を持って作られています。この“ゆとりのある構造”が、剛性・放熱・劣化の少なさ・改造の容易さのすべてを支えており、民生機では絶対に感じられない「気配のなさ」を生んでいるのだと思います。

分解しても、修理しても、触っても、民生機のような文化的な匂いや癖がほとんど感じません。製品としての方向性が完全に民生機から外れていて、通信機や業務機の系統に属するチューナーです。鉄製の箱型筐体、3方向メッシュの放熱構造、高足による底面通気、合理的すぎる端子配置──どれもが家庭用ラジオの文化とは別の世界の設計思想です。

内部構造は単純な回路なのに、部品配置の自由度が異様に高く、ラグ板なしでどんな回路でも組めそうな合理性を持っています。これは民生機ではまず見られない構造で、私には理解しきれません。触ってようやく少しだけ感触がつかめる程度で、普通に見ただけでは気配すら感じない機種です。

今回の修理作業で、業務用機器が過酷な環境に耐えるために持つ構造の強さをまざまざと感じました。民生機にもこの剛性と放熱構造がほしくなる、そんな修理記録でした。

5.定格 

型   式 : 高周波1段付スーパー・ヘテロダイン

受信周波数帯:FM帯 80~90Mc

中間周波数 :10.7Mc

使用真空管 :6DT8 高周波増幅および局部発振混合

       6BA6×2 中間周波増幅

       6AL5 FM レシオ検波

       6X4 電源整流

ダイヤルライト:6.3V 0.2A

感    度 :25μV/30mV、S/N 30dB

出 力 電 圧:500μV 入力 30% 変調 0.5V

        500μV 入力 100% 変調 1.1V

電    源 :50~60c/s 90~100~110V(ヒューズ切替式)

消 費 電 流:20VA

形    状 :370×120×150mm


2026/09/29

東芝 RH-506F ラインアンテナの構造美と昭和技術の美学 ― 修理記録

1.概要

RH-506F(正面)

RH-506F(裏面)

東芝 RH-506F AM/FMラジオは1972年、8,700円のホームラジオです。

・経緯

このラジオにはとても惹かれています。それはラジオ本体ではなくラインアンテナ(電源線アンテナ)が残っているからです。 

ラインアンテナ用カップラ

ラインアンテナは、電源コードとラインアンテナ用カップラで構成されています。ラインアンテナ用カップラは電源コードの留め金具ではありません。正真正銘のラジオ用アンテナです。多くのラジオでは捨てられて、残っているラジオが珍しくなっています。

ラインアンテナ用カップラを見たとき、昔のゲルマニウムラジオのアンテナ線を電源コードにぐるぐる巻きにしていたことを思い出しました。 

原理は同じです。電源コードとカップラ間の静電容量で、ラジオ波を拾いアンテナとして機能させています。

ラインアンテナ用カップラが気になって仕方がないので、すぐに静電容量を測定しました。

約20pF。予想通りの値です。

では、この静電容量がどれほど効果を持つのか。DSPラジオのレベル表示機能を使ってでAM/FMの感度を測定してみました。FM放送の改善があまりにも劇的で、思わずあぜんとしました。 こんな簡単な構造が、ここまで合理的に働くとは信じられませんでした。

しかも従来の電灯線アンテナより安全面では格段にすぐれた方式です。

今回は、最初にラインアンテナをご紹介してから修理作業に入りたいと思います。 

2.ラインアンテナ

ラインアンテナ用カップラ
ラインアンテナの原理は電源コードとカップラ(結合金具)間の静電容量をアンテナに応用したものです。ラインアンテナの静電容量、インピーダンス、効果について確認します。 

 (1)静電容量

①実測

電源コードとRH-506F付属するカップラ(結合金具)間の静電容量を測定すると約20pFです。

②カップラの長さと静電容量

20mmは18.1pF
40mmは25.5pF

カップラを長くすれば静電容量が増えるのではと思い実験してみました。

ラインアンテナの試験用カップラとして長さを変えたアルミ板を電源コードに巻いて静電容量を測定します。

横幅20mmと40mmを比較します。20mm:18.1pF、40mm:25.5pFと横に長く伸ばしても長さに比例して静電容量が大きくなるわけではありませんでした。

③25mmカップラの意味

横幅25mmのカップラ

ラインアンテナ用カップラの幅が約25mmという設計は、高周波結合の観点から非常に絶妙なバランスの上に成り立っています。

対向面積を広げて長さを25mm以上に伸ばしても、電線被覆(PVC等)の誘電率や密着性の限界から結合容量は単純に比例して増えにくくなります。むしろ、シールドやシャーシグランドとの不要な浮遊容量が増大し、同調回路のQ値を下げたりノイズを増やす原因になります。

(2)波長とアンテナ長(電源コード長)のマッチング 

RH-506F の電源コードの長さは1.8mです。この長さ1.8mが、どう影響するのか考察します。

①FM(VHF帯):約3mの波長

FMの波長はλ≒3.7m(80MHz)です。1/2波長(ダイポール)で約1.8m、1/4波長で約0.9m(90cm)となります。 

一般家庭の電源コード(ACライン)は全長1.5m〜3m程度ありRH-506Fは1.8m、電源コードそのものがFM波の波長に対して理想的な「1/2波長または1/4波長アンテナ」としてジャストサイズで共振・動作します。

②AM(中波帯):約300mの波長

AMの波長はλ≒300m(1000kHz)です。電源コードの数メートル程度の長さでは波長に対してあまりにも短すぎるため、微弱な効果にとどまります。 

 (3)インピーダンス 

20pFの結合コンデンサ(電源コードとカップラ間の静電容量)と周波数によるインピーダンスの関係は以下のとおりです。

①FM(80MHz)でのインピーダンス

・結合容量 C=20pFのリアクタンスXcは次のようになります。 

 Xc=1/2πfC=1/(2π×80×10^6×20×10^-12)≒99.5Ω

 ・FM高周波領域ではわずか約100Ωの非常に低いインピーダンス(信号が素通りする状態)になり、電源コードに誘導したFM波のRFエネルギーがロスなくFMチューナーの同調回路(高周波段)へ流れていきます。

②AM(1MHz)でのインピーダンス

・ 一方、AM帯では Xc≒8kΩと高いため、高周波エネルギーを引き込む効率としては疎結合(信号の減衰が大きい)になります。

2バンド(AM/FM)ラジオにおいて、ラインアンテナはAMのためというよりも、実は「室内でFM放送をロッドアンテナなしでクリアに受信させるための主目的回路」として極めて緻密に設計されていると言えます。 

(4)効果の確認

DSPラジオのレベル表示機能でRH-506Fのラインアンテナの効果を確認します。

・AM放送

カップラ未接続 37dB

カップラ接続 37dB  0db改善

・FM放送

カップラ未接続 14dB

カップラ接続 25dB  11db改善 

ラインアンテナはAMよりFM放送の感度向上に劇的に効果があります。今までAM用アンテナ用だとすっかり信じて誤解していました。

FM放送であれば電源ノイズの影響も受けにくく、FMアンテナのないホームラジオには非常に適したアンテナです。 外部アンテナの設置が不要で場所を取らずスマートな構造です。

(5)自作カップラ

ラインアンテナ用カップラは簡単に自作できるのでご紹介します。

横幅40mm目玉クリップ

横幅40mmの目玉クリップをカップラとして使います。目玉クリップのはさみ口を平らに加工して電源コードをしっかり挟めるようにします。

目玉クリップの静電容量

自作カップラ(40mm目玉クリップ)で電源コードを挟んだ時の静電容量は20pFでした。自作カップラが同じ静電容量を持ちラインアンテナとして利用できることがわかります。

ラジオのアンテナに自作カップラ未接続

ラジオのアンテナに自作カップラ接続

DSPラジオ(RAD-T941N)のレベル表示を使い自作カップラの効果を確認します。 電源コードを自作カップラ(40mm目玉クリップ)で挟み込み、自作カップラ(目玉クリップ)とラジオのアンテナ間はワニ口クリップで接続する構成とします。

80M㎐受信、自作カップラ未接続 :8dBμ

80M㎐受信、自作カップラ接続:26dBμ

26-8=18dB改善

自作カップラを接続すると80M㎐受信時に18dB改善しました。FM放送は良好に受信出来るようになりました。

しかし、PCやUSB DACなどのデンジタル機器の電源ONだと、受信レベルが改善してもFM放送はノイズだらけの音で聞くに堪えません。ラインアンテナは効果的ですが、電源からのノイズの影響を受けやすことがわかりました。

3.無電源ラジオと増回路付ラジオの違い

ラインアンテナ(20pF)がゲルマニウムラジオに使えないか気になり調べてみました。

(1)ゲルマニウムラジオで100pFの電灯線アンテナが効く理由

 ・AM帯(1MHz)でのインピーダンス低下

 結合容量が20pF(約8kΩ)から100pF約1.6kΩ)に増えると、結合インピーダンスが約5分の1に低下します。

 これにより、建物全体の電灯線に載っている高周波のAM信号エネルギーが、減衰することなく回路へしっかりと引き込まれます。

 ・無電源(無増幅)回路との相性

 ゲルマニウムラジオは外部電源やトランジスタによる増幅が一切できないため、アンテナから入る高周波エネルギーの大きさがそのままイヤホンの音量に直結します。

選択度(Q値)の低下や電源ノイズ(ブーンというハム音など)を引き換えにしてでも、インピーダンスを下げて微弱な高周波エネルギーを多く取り出すという意味で、100pFの電灯線結合は無電源回路にとって極めて都合が良いわけです。 

 (2)増幅回路付ラジオ(トランスジスタ/真空管)との違い

 ・トランスジスタ/真空管ラジオ(20pF)

 後段に十分な増幅回路があるため、アンテナ側で無理にエネルギーを稼ぐ必要がありません。むしろ20pF程度の疎結合にしてインピーダンスを高く保ち、同調回路のQ値(選択度)を上げて隣接局の混信を防ぐ方が有利になります。

 ・ゲルマニウムラジオ(100pF)

 択度やノイズ耐性を多少犠牲にしてでも、100pF等で低インピーダンス化して「とにかく信号パワー量を最大化する」ことが最優先されます。

 「20pF=高インピーダンスで疎結合(感度より選択度・安全重視)」「100pF=低インピーダンスで密結合(選択度より感度・パワー重視)」という使い分けの理屈が、ゲルマニウムラジオの動作特性と完璧に合致しますね。

(※ただし、やはりAC100Vへの直接接続はコンデンサのショート破壊時のリスクが非常に高いため、実験される際はくれぐれも安全対策にご注意ください。)

(3) 用途別の適正容量(C)

・ゲルマニウムラジオ

適正値:100pF 〜 470pF

・真空管・トランジスタラジオ

適正値:20pF 〜 100pF(推奨は33pF〜50pF程度)

4.ラインアンテナの性能

①強電界地域での使用

元々が電界強度が極めて高い「強電界地域(送信所の近く)」でローカル局を聞くだけのものです。弱電界地域での受信にはT型フィーダーアンテナの方が性能が良いです。

②電波環境の変化

  

FM多局化時代を迎え、電波環境が大きく変化したことがラインアンテナが使われなくなった大きな要因です。

・ラインアンテナの性能限界

電源コードの不特定の引き回しによる周波数範囲の変動や無指向性のためマルチパス混信を防ぐことができないなど、FM環境に適合できなくなりました。

・外部アンテナ併用の悪影響

外部アンテナとラインアンテナを併用して使うと、インピーダンス不整合と信号の反射や同調回路のQ値の低下、更にはラインアンテナからの電源ノイズが入るなどの悪影響がでます。

 

そのため、ホームラジオへのカップラの標準装備は次第になくなりました。

4.修理作業

前置きが長くなりましたが、修理作業に入ります。 

・内部の状態確認 

ラジオ内部の様子

基盤は上下に綺麗に機能が分かれています。上部はAM/FMラジオ回路で左から右へ信号が流れます。下部はアンプ回路で同様に左から右へ信号が流れる素直な構造です。

・回路の理解

トランジスタ応用例”9石 AM-FM ラジオ”

RH-506Fは接続集やテクニカルガイドがなくても回路の理解は十分可能です。「実用トランジスター回路集 無線と実験編 成文堂新光社 昭和34年5月1日初版発行、昭和42年8月1日第6版発行」のP.192:トランジスタ応用例の”9石 AM-FM ラジオ” の回路図はRH-506Fとほぼ同じ構成として読むことが出来ます。また、チューナー回路やプッシュプル回路についてトランジスタ種別の適用事例(P.61-P.65を参照)が詳しく解説されています。RH-506Fはトランジスタ初期の頃から実績のある定番回路を採用していることがわかります。

・ケースの修理

ラジオを分解した様子
木製ケースはかなり汚れているのでサッと水洗いします。

錆びで汚れたネットと新しいネット材料

張り替えたスピーカーネット

スピーカーネットは、スピーカー固定のネジが錆びてネットの布にシミになり取れません。ネジは錆び止めしてスピーカーネットを張替えしました。 

・劣化部品の交換

取り外した劣化部品

雑音でラジオが受信できませんので、劣化部品を交換して様子を見ます。

 ・動作確認試験(1回目)

AM,FM共に受信できるようになりましたが、AMとFM共通のブツブツと音がする雑音が入ります。

AM/FMバンド切替のスライドスイッチが接触不良です。 

ダイヤル目盛りのランプが切れています。

AC100Vでの試験は煩わしいので006P9V乾電池を繋いて試験をしています。

・スライドスイッチ修理

AM/FMバンド切替のスライドスイッチ

AM/FMバンド切替のスライドスイッチは、スイッチのL型の足をプリントパターン表面にハンダ付けする特殊な構造で取外しが非常に難しいです。修理する方にはお勧めできな作業です。プリントパターンを剥がさない様にスイッチを取り外して分解・清掃します。この清掃作業により、切替動作は正常になりました。

・トランジスタ不良による雑音

2段目の2SB54
 アンプ回路を切り分けて2段目の2SB54不良で交換して解消です。ランプも交換します。

 ・動作確認試験(2回目) 

AM,FMとも受信レベルなどを調整します。AMは良好です。FMはホワイトノイスが多いです。調整中にいきなり音が徐々に小さくなって最後は無音になりました。このアンプの不具合は通電していると不定期に何回も発生します。 

・ヒートシンクによる接触(ショート)

入力トランス2次側のサーミスタと抵抗

アンプ回路の入力トランス2次側のサーミスタを導通して指の温度に反応するので正常です。

サーミスターに平行する抵抗100Ωが173Ωと劣化して電流が流れ過ぎるので予防で交換しました。

正常に戻したヒートシンク(故障時は右下が接触)

修理作業中に出力トランジスタのヒートシンクが不自然に傾いているのに気づきました。ヒートシンクはトランジスタの足を左側に上から押倒して、ヒートシンクとトランジスタの足が接触しています。道理でヒートシングがやけに熱いと思いました。ヒートシンクをトランジスタも一緒に上に引き上げて正常な状態に戻します。 

・動作確認試験(3回目) 

電源を入れてもヒーシンクはほんのりとしか熱くならず正常です。アンプの音が小さくなる故障も2度と再発しなくなりました。ヒートシンクの接触が原因で間違いなさそうです。 

FMのホワイトノイズを解消できないかとフトントエンドやIFを2SC1675に変えてみましたが徒労でした。このラジオの性能限界のようです。

・ヒアリング

ヒアリング風景
AMは感度も高く音質も良好です。FMは受信感度は低めでホワイトノイズが目立ちます。良く受信できる放送局ならあまりノイズは気にならないです。 

・FM外部端子の意味 

FM用外部アンテナ端子

当時の東芝ホームラジオにはFMアンテナだけ外部端子があり、ラインアンテナ装着を前提に設計されていたことを、修理の過程でようやく理解しました。 

オークションではラインアンテナのカップラが紛失したホームラジオをよく見かけます。カップラがないと、まるでロッドアンテナが折れたポータブルラジオのように見えてしまいます。しかし本来カップラは、ホームラジオに最適化された合理的なFMアンテナでした。 

この“アンテナに見えず、誤解されながら消えていった技術”こそ、今回ラインアンテナに強く惹かれた理由です。

5.まとめ 

「身近すぎるのに、深すぎる」──ラインアンテナはまさにそういう構造物です。普段はただの金具。ただの電源コード。ただのホームラジオです。

しかも、何の説明もしない「見ればわかるだろう」という暗黙の文化を感じます。 

ところが、その“ありふれた日常の部品”の裏側に、「高周波工学・安全設計・コスト最適化・波長マッチング・静電容量結合 」という、とんでもなく深い技術が潜んでいます。

このギャップこそが、ラインアンテナの魅力です。

ラインアンテナは「構造が美しすぎるのに見た目は地味すぎる存在」です。

昭和技術の本質をみたようです。

現代であれば見た目重視で金ぴかのロゴ入りで性能はそこそこで作られます。 

昭和のラインアンテナは今見ると異様に美しいです。

何も説明しないが構造が美しい武骨な昭和の技術者達の息吹を感じさせます。