1.概要
| Integra725の正面パネル |
ONKYO Integra 725 プリメインアンプの紹介です。1969年、45,900円のプリメインアンプです。 幅313x高さ136x奥行366mm、重さ8kgのやや小型のアンプです。鮮やかなシルバーのパネルにツマミやレバーに黒のアクセントがある独特のデザインとサイドウッドにより高級感があります。
Integra 725はつくづく不思議なアンプです。何故、横幅が313mmの小型サイズなのでしょうか。レコードプレーヤーと横並びにしても700mm程度に収まり和室への設置環境に適していたのかと思います。別の見方をすればミニコンポザイズの先駆け、もしくは原型になったサイズとも言えます。当時、ONKYO以外では313mmサイズの製品はないことからONKYOのデザインの独自性が際立っています。しかも、内容は本格的な作りで高級志向の製品です。
| 上から見たIntegra725 |
| 上蓋を開けると端子パネル |
横幅313mmに収めるための構造で特徴的なのは本体の上蓋を開けた中央に端子パネルが配置されていることです。端子パネルを背面に設置する空間がないため横置きの端子パネルが採用されています。この配置により入力から出力までの信号の流れが自然です。しかも、プリアンプを端子パネルの裏側に配置することで最短距離での配線となっています。ヒートシンクは内部に配置できる空間はなく、背面に出して解決していますが奥行が長くなります。スピーカー端子は本体の外に出したかったはずですが、場所もなく端子パネルで妥協しています。しかし、操作性や美観は損なわない様に配慮されています。
| 背面のヒートシンク |
| パワーアンプ基板と端子パネル |
| 底板を外すとプリアンプ基板がある |
底板を外すとプリアンプ基板や端子パネルの配線がコンパクトに収納されています。
| トーンコントロール基板 |
| 大きなトグルスイッチ |
無垢のツマミ、金属レバーのトグルスイッチも堅牢で高品質なものを採用していて隅々まで配慮された高級アンプであることがわかります。
2.修理作業
| パワーアンプ基板 |
Integra725のパワーアンプ基板はネジとコネクタを外せば簡単に取り出すことが出来ます。
| 劣化した電解コンデンサ |
| パワーアンプ基板と劣化部品 |
| 取り外したプリアンプ回路基板 |
| 電解コンデンサ2個による無極性が採用されている |
電解コンデンサ1μF×2個、47μF×2個で作った無極性が採用されています。同じように電解コンデンサ2個を組み合わせて無極性を作り交換します。
| 部品交換したプリアンプ基板 |
プリアンプ基板の劣化部品を全て交換します。
| 部品交換が終了したパワーアンプ基板 |
| 部品交換が終了したプリアンプ基板 |
3.放熱用シリコンの交換
放熱用シリコンが固まり放熱効果が落ちていることを想定してシリコングリスの交換をします。
サンハヤト放熱用シリコン SCH-30を使用します。
| サンハヤト放熱用シリコン SCH-30 |
| 絶縁マイカ板と放熱シリコンを交換 |
絶縁試験
放熱用シリコン交換後にヒートシンクとパワートランジスタ間の絶縁を確認したところ導通があります。トランジスタの配線は基盤からコネクタで切り離しています。ぱっと見では正常に見えます。
| 固定端子板に油の様なシミ |
| ヒートシンクにも油の様なシミ |
トランジスタの固定端子板をヒートシンクから取り外します。固定端子板とヒートシンクの双方に油の様なシミがありました。油の様なシミは濡れた様な感じです。このシミになった汚れを丹念に清掃してトランジスタを取り付けます。
再度、 テスターで確認するとヒートシンクとトランジスタ間は絶縁になり正常となりました。油に様なシミは何だったのか不明です。導通のあるシリコングリスを使っても溶け出すことはありません。もしかしたらトランジスタ端子に接点復活剤でも振ったのかもしれません。
4.電源試験
劣化部品を交換したので電源を入れて故障の有無を確認します。電源電圧は±24.5Vで正常、アイドリングはR側+27.8mVが大きすぎます。電解コンデンサの被覆が熱でめくれていた原因でもあります。ただし、電圧は半固定抵抗で調整できましたので故障ではなく調整不良でした。
・電源電圧:±24.5V
・アイドリング:0.5Ω抵抗の両端電圧
R側 +28.7mV⇒+10mVに調整、 -10mV
L側 +10mV、 -10mV
後のヒアリングにより修正
・アイドリング:0.5Ω抵抗の両端電圧
R側(L側も同様)
+10mV(アイドリング電流+20mA)⇒+15mV(アイドリング電流+30mA)
-10mV(アイドリング電流-20mA)⇒-15mV(アイドリング電流-30mA)
5.故障診断
故障診断のためようやく音出し試験です。TUNER端子に入力してプリアンプとパワーアンプの動作を確認します。
| 故障診断の音だし試験 |
何事もなかったように左右から音がでます。歪んでもません。めずらしく1回で音だし試験はOKです。 ただし、ボリューム、セレクタ、スイッチの操作でガリやノイズ、接触不良がでます。トーンコントロールが複数点で導通していないらしく音色がメチャメチャでした。特に異常な発熱などもありません。
故障と思われる現象を列記します。
・ガリや接触不良:ボリューム、セレクタ、スイッチ類の全て
・トーンコントロールのクリック全般で導通不良
・電源ONにしてから3~50秒ほど左右からノイズが出ます。しばらくすると完全に消えます
・スピーカー端子が緩んでグラグラ
・電源ランプ不点灯(6.3V電球切れ)
6.修理作業
セレクタは前面パネルをはずしてから清掃します。トグルスイッチは全て分解・清掃します。本体中央にあるプリアンプとパワーアンプの接続用スライドスイッチも取り外して分解・清掃します。
| トーンコントロールの分解・清掃 |
トーンコントロールの基板を取り出します。半分くらいの接点が通電しないのでナットを外してセレクタを分解します。ベークライトの板とワッシャの順番を間違えなければ簡単に取り外しての清掃ができます。意外と簡単な作業でした。
| スピーカー端子のナットを絞めている様子 |
ノイズの切り分け作業 |
| ノイズの発生原因の自作ショートピン |
原因はパワーアンプとプリアンプを繋ぐ自作のショートピンです。スライドスイッチをUNITEにすればプリアンプとパワーアンプは接続することができます。スライドスイッチをわざわざSEPにして、ショートピンでプリとパワーを接続していました。このショートピンが入っているとUNITEの状態でもノイズが入るため原因切り分けに時間がかかりました。
7.ヒアリング
| ヒアリング風景 |
1時間後:少し高域の暴れがおさまり大人しくなってきました。第一印象は立ち上がりの良いクリアな高域が綺麗な音がします。現在のバランスは高域寄りになっています。入力の音質をそのままストレートに再現するアンプのようです。良くても悪くてもダイレクトにスピーカーからそのままの音質をだします。音を作るアンプではないです。USB DACから良質の音楽は心地よく、ノイズ感のあるFMを聴くとそのままの粗さを感じます。あと、半日は鳴らしたままにしておく必要がありそうです。
半日後:鳴らし試験をしました。まだ、音のバランスが高域寄りです。アイドリング電流は20mAでは少ないのでしょうか?ヒートシンクは冷たいままです。
アイドリング電流を20mAから30mAに変更してヒアリングします。重心が下がりバランスがとれた音に変化しました。
更に半日後(1日後):更に半日は慣らし運転をすることにしました。時間とともに高域の粗さがとれ滑らかさが出てきました。音のバランスも重心が更に少し下がっています。エージングが進むにつれて中低音の力強さも戻ってきています。第一印象の立ち上がりの良いクリアな音質は変わりません。音源の音質を色付けせずダイレクトにスピーカーから出てきます。やはり、音を作るアンプではなく音質をそのままストレートに表現するアンプです。使う人を試すようなところがあるアンプとも思えます。少し気難しいアンプです。
Integra725のクリアな音質を生かすために色付けのないセレクタ式のトーンコントロールを選択したのがわかります。トーンコントロールを操作してもクリアな音の本質は担保されています。
翌日(1日半後): Integra725はカミソリのような切れ味の音です。高域は少し和らぎましたがそれでも高域寄りの音です。この時代のアンプはカマボコ型の特性をイメージしていましたが完全に裏切られました。この音を聴くとアナログ機器と組み合わせると音のバランスが良いのかもしれません。
チューナーはSONY ST-ES50SAを使います。ST-ES50SAはフロントエンドも高機能・高音質で当時のアナログ・チューナーとはかなり違いますがヒアリングしてみます。 FM放送でソニー・ロリンズ ドント・ストップ・カーニバルが流れていました。JAZZが生き生きと響き、場の雰囲気に全体が包まれたように聞こえます。この音は当時秋葉原のオーディオルームで聴いた音のようです。古臭い音ではなく当時の最先端オーディオ機器の音です。70年代の空気感が一気に蘇ります。Integra725はアナログ機器をつないだ時に本当の真価を発揮するアンプです。 デジタル機器なんて関係ない時代のアンプですから、無理にDACで鳴らしていたのかもしれません。
余談ですが、ヒアリングしていて電源トランス鳴りがありました。電源入れて10秒程度です。電源電圧選択スイッチ100V-117Vのスライドスイッチを数回動かしたらトランス鳴りがピタリと収まりました。毎回、電源投入時に電源電圧が変動していたのかもしれません。
8.まとめIntegra725は小型であることを生かした信号の最短経路などにより、音の素材をそのままストレートに再生する高級アンプであるとの印象を受けました。1969年当時としては斬新な外観のインパクトと非常にクリアな音質に、こんなアンプがあったんだという純粋な驚きがあります。ONKYOのアンプへの情熱と拘りを知る機会となりました。個性も強く完成度も高いアンプなので使いこなしが大変むずかしいアンプの修理でした。


