TRIO AFX-21Tを利用したFM MPX アダプター製作の紹介です。 TRIO AFX-21T は、1967年、28,900円のAM/FMチューナーです。
チューナーのセレクターの軸が折れて修理できないジャンクになってしまいました。内部のプリント基盤はきれいで捨てるにはおしいので再利用することにします。
電波科学 1967年11月号にAFX-21T の回路図が掲載されています。回路図を見ると、①RF基板、②IF基板、③MPX基板、④AUDIO基板、⑤POWER SUPPLY基板などの機能毎にプリント基板が分かれて構成されています。MPX基板が独立していて分離できるため、プリント基板をそのまま載せ替えてFM MPXアダプターを作りたいと思います。この年代以降になると、MPX回路とIF回路を1枚のプリント基板に実装したり、MPX ICやIF ICが搭載された高密度実装になり再利用しにくくなります。AFX-21Tから、電源トランス、MPX基板、AUDIO基板、POWER SUPPLY基板を取り出してシャーシ(摂津金属工業CA-80W:縦8cm×横20cm×奥行18cm)に組み込みます。上の写真は部品を仮置きして配置を決めている様子です。部品の配置が決まったらシャーシにプリント基板固定用のスペーサーを取付けます。電源スイッチ、ヒューズホルダー、ACコード、RCA端子、STEREOランプなど流用できるもはすべて再利用します。電源用ネオンランプ、スペーサー、整流ダイオード×1、電解コンデンサ220μF、ラグ板×2、RCAコード×1だけは新たに用意しました。配線もすべて流用させてもらいました。組み立て前にプリント基板の電解コンデンサなどの劣化部品は全て交換しておきます。回路図を見ながら最初に電源回路およびSTEREOランプの電源部(ラグ板で作成)を配線します。次にオーディオ基板とMPX基板を配線しました。
半日程度の作業で完成です。上の写真は完成後の姿です。手配線が乱雑で美しくありませんがご容赦ください。
再度、配線を確認してから電源を入れて各電圧を確認します。次にチューナーからのMPXを入力してRCA端子から左右の音が出力されるか確認します。心配だった部品配置やアース位置、配線経路などからのノイズはないようです。最後に測定器を入れてセパレーションの調整およびSTEREOランプが点灯するように調整します。
完成品をヒヤリングしてみます。ノイズ感はなく繊細でクリアな音質です。弦楽器の鮮やかな高音が印象的です。すっきりした透明感とキレのある音がします。低音がたっぷり出るような質感の音は苦手なようです。それなりに奥行もあり雰囲気も持っています。当然ですが長時間ヒヤリングしても発熱は少なく安定した動作です。高級なFM MPXアダプターが出来上がりました。AFX-21Tはオールトランジスで組まれた製品です。1チップとなったMPX ICも良いですが、オールトランジスタで組まれたMPXも捨てがたい魅力があります。今回のFM MPXアダプターは、プリント基板の乗せ替えなので工作する難易度は低いかとおもいます。製作したレトロなFM MPXアダプターと真空管モノラル・チューナーとを組み合わせてFMステレオ放送を楽しんでみたいと思います。