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2025/08/17

TRIO KA-4000 プリメインアンプ(スピーカー保護回路を付加)

 TRIO KA-4000 プリメインアンプの紹介です。1968年頃、49,800円の製品です。このシリーズはシンプルですが気品が漂うパネルデザインです。当時はサイドウッドで高級感のあるアンプやチューナーが多かったです。

背面パネルはごく一般的な端子類が実装されています。

内部は電源、プリアンプ基板、パワーアンプ基板、パワートランジスタが整然と並んでいます。シールド板を外すと取り外し可能なスロットタイプのプリント基板が見えます。

 

基板の電解コンデンサにも劣化がみられます。プリアンプ、パワーアンプ、他基板の全ての電解コンデンサを交換します。

5A電源ヒューズが溶断しています。 動作確認のためプリアンプ基板とパワーアンプ基板を抜いたままで電源ONにするとヒューズが瞬時に溶断します。 電源部の故障です。切り分けた結果はブリッジ整流器の故障です。新しい整流器に交換して電源が正常になりました。音出し試験では、L側の音が小さいです。入口から順にトレースしたところ、PRI OUTとPOWER INのプラグの接触不良です。プラグを清掃して正常です。

KA-4000は構造的にポップノイズがでます。電源ON時にスピーカー端子のサージ電圧を測定すると0.7V以下になるのに15秒以上かかります。スピーカーに悪影響がありそうです。対策としてダミー抵抗も考えましたが、今回はスピーカー保護回路を入れます。電源ON時の遅延回路だけでなくスピーカー端子のサージ電圧が0.7V以下にならなければリレーは動作せずにスピーカーを保護します。また、スピーカー端子のショート時にはリレーが断となりアンプを保護します。上の写真のように保護回路はシャーシ下に空スペースがなくシャーシ上のプリアンプ基板横に設置します。

アンプの電源回路から取り出せる電圧はDC68Vです。ツェナーダイオードによる簡易な定電圧回路を組み込みスピーカー保護回路を動作させます。上の写真はツェナーダイオード×3と680Ω×2によるスピーカー保護回路用の定電圧回路です。スピーカー保護回路の動作時間は実測して18秒でした。

パワーアンプのセンター電圧を34Vにうまく調整できません。左右の半固定抵抗(30kΩ)VR3,VR4の劣化です。VR3,VR4を交換しセンター電圧を34Vに調整できました。 これで調整も終了です。

USB DACを接続してヒヤリングします。上下の帯域はやや抑え気味ですがそれなりに広く奥行も感じられる良い音です。全体にクリアでスッキリした音質です。少し華やかな傾向で音の重心がもう少し低いと厚みや深みがでると思いますが贅沢なのかもしれません。レコードを聞いてみますが同じバランスの音がします。KA-4000はパネルデザインと音がマッチした良質のプリメインアンプです。電源ON時のポップノイズもなくなり安心して音楽を楽しむことができるアンプに仕上がりました。

2024/07/14

TEAC A-R630 プリメインアンプ

TEAC A-R630 プリメインアンプの紹介です。2011年製、42,250円の製品になります。大きなダイヤルを左右に配置した大胆なデザインのプリメインアンプです。従来のプリメインアンプにリモコンによる電子制御を付加した構造です。この年代のアンプ修理は初めてなので楽しみです。

POWER ONでアンプは待機状態になり手動もしくはリモコンでSTANDBAY/ONスイッチを操作してアンプの電源をON/OFFします。STANDBAY/ONスイッチは重要です。リモコン操作だけでなく前回操作したセレクタ位置などの情報を保持します。POWER OFFで前回操作したセレクタ位置などの情報は消えて初期状態に復帰します。POWERスイッチは常時ONで使用することが前提のアンプです。

ボリュームがdB表示のアンプ は久々に見ました。昔からdB表示のアンプはありましたが、音量の大小とdB表示に違和感があり判りにくいです。昔のオーディオ雑誌にも同じ意見のレビューがあったのを覚えています。

中央に配置されたパワートランジスタのヒートシンクは真四角のアルミパイプに冷却ファンを取り付けて強制排気して冷却する方式です。冷却ファンはある一定の温度以上になると動作する仕組みで常温では停止しています。 パワートランジスタには2SA1186-O/2SC2837-Oが採用されていました。

異常がないか観察するとSUB TRANS BOADの5Aヒューズが溶断しています。現状のままとりあえず動作確認をします。一見動作しているように見えますが、この状態だとPREAMP BOARDやFRONT PREAMP BOARDなどにしか給電されてません。MAIN BOARDへの給電は断です。ヒューズが飛んだ原因の故障切り分けのためパワーアンプ回路に電源供給しているMAIN BOARDのコネクタ:CN74を抜きます。5Aヒューズを装着して電源をONにします。ヒューズは溶断しませんのでパワーアンプ回路の故障が濃厚です。

 

故障原因と思われるパワートランジスタをヒートシンクから全て取り外します。一つ一つトランジスタを試験するとRchの2SC2837の端子間がショートして故障していました。今回はパワートランジスタを4つとも交換します。交換後、電源を入れるとスピーカーリレーがカチッと正常に動作します。アンプの各機能を確認しますがリモコンも含めて全て正常です。

A-R630にはKoshin製の音響用電解コンデンサ KR3が全ての回路に使われいます。A-R630のカップリングコンデンサは全て10μF/50Vを使用しています。手持ちの電解コンデンサはニチコンFGです。KR3とFGの規格を単純に比較するとtanδは同じです。ただし長時間使用(耐久性)するとKR3の方がtanδが劣化しやすいようです。2010年発売のA-R630であれば、劣化したと思われるKR3をFGに交換する意味がありそうです。

MAIN BOARDのパワーアンプ回路へニチコンFGを実装
PREAMP BOARDのプリアンプ回路へニチコンFGを実装

FRONT PREAMP BOARDのTONE回路へニチコンFGを実装

MAIN BOARDのPHONO・ EQ回路へニチコンFGを実装

音質に大きく影響するカップリングコンデンサはPREAMP BOARDのTONE回路×4個、FRONT PREAMP BOARDのTONE回路×6個、MAIN BOARDのパワーアンプ回路×2個とPHONO回路×4個が使用されています。入力ソース毎の片チャネルが通過するカップリングコンデンサの数は次の通りです。①SOURCE DIRECT OFF:CD(7個)、PHONO(9個)。② SOURCE DIRECT ON:CD(4個)、PHONO(6個)。入力~出力までにかなりの数のコンデンサを通過するので交換による改善が期待できそうです。Koshin KR3からニチコンFGに対象のコンデンサを全て交換します。

次にAMP POWER SUPPLY BOARDの6000μF×2個を10000μF×2個に交換します。USB DACを接続して再度ヒヤリングします。電源回路の影響は大きく音の重心がさがり量感が増します。奥行が感じられ中低音は豊かに響きます。高域もバランス良く出ています。交換した部品のエージングが進むと音のつながりが滑らかになります。

 

±15V電源回路には1000μF×2個が実装

レコードを聴いてみます。PHONOの音には癖があり違和感を覚えます。海外仕様の回路図を眺めているとPHONOへ供給される±15V電源回路には3300μF×2が実装されているはずです。実際のMAIN BOARDで確認すると小さな1000μF×2が代わりに実装されていました。

この電源回路はPHONO以外にTONE回路へも供給されていて、レコードの音の違和感は非力な電源回路の影響かもしれません。1000μFを交換のため取り外すと大きさの違う電解コンデンサーを差し替えできるようにプリント基板に穴まで準備されいます。これはAMP POWER SUPPLY BOARDの6000μFを10000μFに交換したときと同じです。プリアンプ用の電源回路も同じかと思います。意図的にダウングレードしています。A-R650(海外仕様のみ)とA-R630との価格帯毎に部品を使い分けていたのだと思います。

 


±15V電源回路の電解コンデンサーを3300μF×2に交換します。プリアンプ用の電源回路も2000μF×2から3300μF×2に交換します。そのほか劣化が進んでいると思われる電解コンデンサーを10個ほど交換します。

再度ヒヤリングします。結論から言うとPHONOに感じた違和感は解消しませんでした。A-R630の固有の音なのでしょうが不自然です。CDやUSB-DACは音質の改善がみられます。帯域は上下に広くクリアで引き締まった鮮烈な音です。音場の広がりや量感も十分に感じられます。優秀なプリメインアンプかと思います。但し、A-R630は音場の広がりを意図的に作り込んだ製品のように感じます。

A-R630は音はいいのに操作の感触や質感で損をしているアンプです。左右のツマミはアルミ製でいいのですが、ツマミの重さが感じられず回した時の滑らかさもありません。中央の3つのツマミと前面パネルはプラスチック製で感触が悪くオーディオを操作する楽しみを半減させます。また、操作時の質感の悪さと派手なデザインが災いしてなのか安い手抜き製品の様な印象を受けます。真面目に回路設計した実力のあるアンプを組み込んでいるだけに残念です。このアンプの価格帯では限界なのかもしれません。

今回は劣化部品交換時に部品をアップグレードしてオリジナルより良い音に改善できました。本機は高音質のアンプをリモコン操作で手軽に楽しむ製品です。本体の質感よりも音と利便性が優先されています。個人的には、もう少しオーディオ機器として操作する楽しみを追求してほしかった製品です。気づかないところまでの品質や機能にこだわっていた頃の製品が懐かしくなります。

2024/06/15

DENON PMA-235 プリメインアンプ

 

DENON PMA-235 プリメインアンプの紹介です。 1975年、66,500円の製品になります。シンプルで洗練されたデザインとシルバーメタリックが美しいアンプです。また、PMA-235はアンプを自作していた当時を思い出す懐かしい基本的な回路のアンプです。 

 

背面は中央の電源トランスが印象的です。スピーカー端子はネジ式ですがスピーカーケーブルをホールドできるワッシャーがあり使いやすいです。


中央後には電源トランス、中央に電源および保護回路、左右にはパワーアンプを配置しています。全面のプリント基板は上下2段構成で上部はプリ、TONE・Filter回路、下部は入力セレクタ、EQなどです。全体的に左右対称の美しい配置です。

左右の大容量電解コンデンサー(6800μF)は発熱で被覆が捲れています。劣化している様子なので10000μFと交換です。その他、劣化部品はすべて交換します。 ただし、このアンプは接点がすべてハンダ付けに変更されているので、プリント基板の取り出し作業が大変です。

劣化部品交換後に初めて電源を入れてみます。電源回路からの電圧はすべて正常です。しかし、電源部にある保護リレーが動作しません。オフセット電圧は正常です。PMA-235の回路図はないので手探りでの修理となります

リレーと同じ基板の22番ピン(リレーの左)を抜くとリレーが正常に動作します。リレーが動作しない原因は、22番ピン(リレーの左)に電源ON時に20kΩ程の抵抗があるためです。この22番ピンには、電源スイッチと連動して電源OFF(0Ω:アース)、電源ON(アース解放:抵抗∞)を22番ピンに出力する必要があります。上の写真の電源と連動するスイッチ内部の接触不良です。

スイッチは取り外して分解清掃します。これで、リレーが正常に動作するようになります。

電源ランプも切れていたので麦球を交換します。

次に音声出力を確認します。スピーカー出力で無音、若干のノイズは聞こえるようです。パワーアンプ基板の入力端子でもNGです。原因はTONE基板の一番左にあるlo-cat filterスイッチの接触不良です。スイッチは取り外して分解清掃します。パワーアンプ基板の入力端子までは正常になりました。

 次にスピーカー端子またはヘッドホンでモニターします。Lchは正常、RchはNGです。パワートランジスタ:MJ3001、MJ2501の不良です。交換によりRchも正常に出力するようになりました。動作確認を続けますが、lo-cat filterとmutingスイッチを操作するとリレーが誤動作します。スイッチ切替え時のノイズがパワーアンプ出力に影響して保護回路が動作した模様です。原因はlo-cat filterの出口のタンタルコンデンサ劣化です。タンタルコンデンサを交換してリレー誤動作はなくなり正常になりました。他のタンタルコンデンサ劣化により回路が不安定になっていると思われるため全てを交換しました。修理中のヒヤリングでは音がよかったのでタンタルコンデンサ交換を躊躇したため、修理が二度手間になってしまいました。

余談ですがlo-cat filterのプリント配線がカッターで切断され、再度ジャンパーで元に戻してありました。lo-cat filterスイッチ切替時のリレー誤動作は、前オーナーさんの時代から発生していたのかもしれません。

次はアンプの調整です。パワーアンプ基板のVR1で直流オフセット電圧(DC漏れ)を調整します。VR2はバイアス調整です。しかし、実装した基板の状態では0.45Ωの両端でバイアス電圧を測定できない構造です。

PMA-235のパワーアンプは、PMA-500Z(上の回路図)とほぼ同じ回路構成です。PMA-500Zを参考にしてバイアス調整します。PMA-500Zは+B電源には45mA流れ、パワートランジスタには30mA、そのフロント回路には15mA流れる構造です。

 

PMA-500Zとは少々回路が異なり、PMA-235はフロント回路とパワートランジスタは別電源になっています。+36V端子(右端のオレンジ)と-36V端子(右から3番目のグリーン)はパワートランジスタのみ供給されます。実測して+36V端子の電流が32mAのときに0.45Ωの両端で15mVとなるのを確認しました。そのため、以下の方法でPMA-235のバイアス調整をすることができます。パワーアンプ基板の+36V端子のリード線を取り外して、その間に電流計を挿入します。VR2で32mAになるように調整します。結果的に0.45Ωの両端電圧は15.0mVとなりバイアス調整は終了です。この方法であれば実装したまま電源線の取り外しだけでバイアス調整ができます。

上の写真ではリレー接点が黒く焼けている様子がわかります。リレー、スピーカーセレクター、ボリュームを洗浄および清掃をします。

ヒヤリングしてみます。 色付けのないクリアで透明感のある音質です。高音はシャープですが刺激的にならない品が良い音です。低音はやや控えめですがしっかり出ています。音を聞けばハッタリのない真面目に作られたことがわかるアンプです。出力に余裕が感じられ安心して音楽を楽しめます。クラッシックを聴いても奥行を感じます。個人的は中低域にもう少し厚みがほしかったと思います。修理により安定感のあるアンプの音に仕上がりました。しっかり修理したので永く愛用することが出来ると思います。PMA-235は当時のアンプ回路技術とオーディオの楽しさを凝縮した印象深い製品です。

2024/04/29

PIONEER パイオニア SA-80 プリメインアンプ

PIONEER パイオニア SA-80 プリメインアンプの紹介です。1971年、56,000円の製品になります。オーソドックスですが使いやすいツマミとスイッチの配置です。おちついたデザイン(渋いデザイン)の印象と音質の印象とにギャップを感じます。

背面パネルの様子です。この頃のアンプのスピーカー端子にはT型が採用されています。左側の空洞には、MCカートリッジ用トランスを実装できる本格派です。個人的にはMCカートリッジはトランスを通した音が好きです。
  

SA-80は木製のカバーが採用されています。そのためなのか、EQ回路やTONE部や配線も含めてシールドケースで覆われています。シールドケースにTRIOの修理履歴のシールが残っています。

 シールドケースを取り外した写真です。

パワートランジスタには2SD90×4個が採用されています。パワートランジスタの小ぶりヒートシンクは個人的にはもう少し大型のものにしてほしかったところです。

この頃になるとスピーカー保護のリレーが装着されるようになり、より快適に音楽を楽しめるようになっています。リレー式の保護回路でポップ音防止やショートおよび異常電位などを検知するとスピーカーとパワーアンプ回路を切り離します。リレー式の保護回路は機能的には優れていますが、リレー接点の接触不良が発生することがあり、それまでのヒューズ式と比べて一長一短です。

SA-80のスピーカー端子はT型コネクタが採用されおり、専用の接続プラグが必要になります。上の写真では標準のネジ式プラグに交換してあります。プラグ間隔が狭く締めにくいですがやむ負えずの交換です。

ヒヤリングしてみます。外観からは奥行のあるゆったりした低音がでそうな気がします。しかし印象とは異なり、クリアで音抜けがよいあざやかな中高音の音質です。楽器の1音1音が分離してきこえるようです。奥行もありいい雰囲気を持っています。低域もしかっり出ていますがあまり目立ちません。ただし、ヘッドフォンで聴くとややエコーがかかった様な不自然さを感じます。このプリメインアンプはかなり優秀で個人的には好きな部類です。ただし、音質には好みが別れるアンプなのかもしれません。