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2026/04/24

ONKYO Integra 725 プリメインアンプの修理記録

 1.概要

Integra725の正面パネル

ONKYO Integra 725 プリメインアンプの紹介です。1969年、45,900円のプリメインアンプです。 幅313x高さ136x奥行366mm、重さ8kgのやや小型のアンプです。鮮やかなシルバーのパネルにツマミやレバーに黒のアクセントがある独特のデザインとサイドウッドにより高級感があります。

Integra 725はつくづく不思議なアンプです。何故、横幅が313mmの小型サイズなのでしょうか。レコードプレーヤーと横並びにしても700mm程度に収まり和室への設置環境に適していたのかと思います。別の見方をすればミニコンポザイズの先駆け、もしくは原型になったサイズとも言えます。当時、ONKYO以外では313mmサイズの製品はないことからONKYOのデザインの独自性が際立っています。しかも、内容は本格的な作りで高級志向の製品です。

上から見たIntegra725

上蓋を開けると端子パネル

横幅313mmに収めるための構造で特徴的なのは本体の上蓋を開けた中央に端子パネルが配置されていることです。端子パネルを背面に設置する空間がないため横置きの端子パネルが採用されています。この配置により入力から出力までの信号の流れが自然です。しかも、プリアンプを端子パネルの裏側に配置することで最短距離での配線となっています。ヒートシンクは内部に配置できる空間はなく、背面に出して解決していますが奥行が長くなります。スピーカー端子は本体の外に出したかったはずですが、場所もなく端子パネルで妥協しています。しかし、操作性や美観は損なわない様に配慮されています。

背面のヒートシンク

背面のパワートランジスタは2SD180×2の準コンプリメンタリー構成により22Wの定格出力です。 

パワーアンプ基板と端子パネル
本体を上から見ると、端子パネル、電源トランスとパワーアンプ基板が配置されています。

底板を外すとプリアンプ基板がある

底板を外すとプリアンプ基板や端子パネルの配線がコンパクトに収納されています。

トーンコントロール基板
プリアンプの段数も少なく簡素な回路に見えますが、トーンコントロール基板は抵抗とコンデンサを組み合わせたセレクタ式の贅沢な作りです。
大きなトグルスイッチ

無垢のツマミ、金属レバーのトグルスイッチも堅牢で高品質なものを採用していて隅々まで配慮された高級アンプであることがわかります。 

2.修理作業

パワーアンプ基板

Integra725のパワーアンプ基板はネジとコネクタを外せば簡単に取り出すことが出来ます。

劣化した電解コンデンサ
パワーアンプ基板をよく見るとR側の電解コンデンサが熱で被覆がめくれています。過電流の兆候が疑われます。それ以外に外観の劣化や損傷はみあたりませんでした。

パワーアンプ基板と劣化部品
パワーアンプ基板の劣化部品を全て交換します。また、黒く焼けているコネクタ端子を磨いておきます。

取り外したプリアンプ回路基板
裏側にあるプリアンプ基板を取り外します。

電解コンデンサ2個による無極性が採用されている

電解コンデンサ1μF×2個、47μF×2個で作った無極性が採用されています。同じように電解コンデンサ2個を組み合わせて無極性を作り交換します。

部品交換したプリアンプ基板

プリアンプ基板の劣化部品を全て交換します。

部品交換が終了したパワーアンプ基板
部品交換が終了したプリアンプ基板

3.放熱用シリコンの交換

放熱用シリコンが固まり放熱効果が落ちていることを想定してシリコングリスの交換をします。

サンハヤト放熱用シリコン SCH-30を使用します。 

サンハヤト放熱用シリコン SCH-30
元々の用途がサイリスタやパワートランジスタの放熱用です。-50℃~+300℃で、2×10^-3の熱伝導率を誇る優秀な放熱用シリコンです。 
絶縁マイカ板と放熱シリコンを交換
ヒートシンクを外してから、パワートランジスタを取り外します。一回り大きな絶縁マイカ板がついていました。放熱用シリコンを交換した形跡です。放熱用シリコンは固まっています。絶縁マイカ板と放熱用シリコンを交換しました。

絶縁試験 

放熱用シリコン交換後にヒートシンクとパワートランジスタ間の絶縁を確認したところ導通があります。トランジスタの配線は基盤からコネクタで切り離しています。ぱっと見では正常に見えます。

固定端子板に油の様なシミ

ヒートシンクにも油の様なシミ

トランジスタの固定端子板をヒートシンクから取り外します。固定端子板とヒートシンクの双方に油の様なシミがありました。油の様なシミは濡れた様な感じです。このシミになった汚れを丹念に清掃してトランジスタを取り付けます。

再度、 テスターで確認するとヒートシンクとトランジスタ間は絶縁になり正常となりました。油に様なシミは何だったのか不明です。導通のあるシリコングリスを使っても溶け出すことはありません。もしかしたらトランジスタ端子に接点復活剤でも振ったのかもしれません。

4.電源試験

劣化部品を交換したので電源を入れて故障の有無を確認します。電源電圧は±24.5Vで正常、アイドリングはR側+27.8mVが大きすぎます。電解コンデンサの被覆が熱でめくれていた原因でもあります。ただし、電圧は半固定抵抗で調整できましたので故障ではなく調整不良でした。

・電源電圧:±24.5V

・アイドリング:0.5Ω抵抗の両端電圧 

 R側 +28.7mV⇒+10mVに調整、 -10mV 

 L側 +10mV、 -10mV

後のヒアリングにより修正 

・アイドリング:0.5Ω抵抗の両端電圧 

 R側(L側も同様)

    +10mV(アイドリング電流+20mA)⇒+15mV(アイドリング電流+30mA)

  -10mV(アイドリング電流-20mA)⇒-15mV(アイドリング電流-30mA) 

5.故障診断

故障診断のためようやく音出し試験です。TUNER端子に入力してプリアンプとパワーアンプの動作を確認します。

故障診断の音だし試験

何事もなかったように左右から音がでます。歪んでもません。めずらしく1回で音だし試験はOKです。 ただし、ボリューム、セレクタ、スイッチの操作でガリやノイズ、接触不良がでます。トーンコントロールが複数点で導通していないらしく音色がメチャメチャでした。特に異常な発熱などもありません。

故障と思われる現象を列記します。

・ガリや接触不良:ボリューム、セレクタ、スイッチ類の全て

・トーンコントロールのクリック全般で導通不良

・電源ONにしてから3~50秒ほど左右からノイズが出ます。しばらくすると完全に消えます

・スピーカー端子が緩んでグラグラ 

・電源ランプ不点灯(6.3V電球切れ) 

・Phonoイコライザーから左右ノイズあり 

6.修理作業

セレクタは前面パネルをはずしてから清掃します。トグルスイッチは全て分解・清掃します。本体中央にあるプリアンプとパワーアンプの接続用スライドスイッチも取り外して分解・清掃します。

トーンコントロールの分解・清掃

トーンコントロールの基板を取り出します。半分くらいの接点が通電しないのでナットを外してセレクタを分解します。ベークライトの板とワッシャの順番を間違えなければ簡単に取り外しての清掃ができます。意外と簡単な作業でした。

スピーカー端子のナットを絞めている様子
Integra725の唯一の欠点がスピーカー端子です。スピーカー端子を回してコードを接続していると端子のナットが緩んでガタガタになります。このスピーカー端子を使う場合はバナナプラグで接続するしかないです。修理はスピーカー端子のナットを小型モンキーで締めればOKです。ただし、工具を使うスペースがないため作業はすごくやり難いです。

 ノイズの切り分け作業

電源ONにした時のノイズの原因を切り分けます。原因を探すのに手こずりました。

ノイズの発生原因の自作ショートピン

原因はパワーアンプとプリアンプを繋ぐ自作のショートピンです。スライドスイッチをUNITEにすればプリアンプとパワーアンプは接続することができます。スライドスイッチをわざわざSEPにして、ショートピンでプリとパワーを接続していました。このショートピンが入っているとUNITEの状態でもノイズが入るため原因切り分けに時間がかかりました。

Phono EQのノイズ源のトランジスタ
レコードを聴いてみましたがPhonoイコライザーから左右にノイズが入ります。EQには2SA493、2SC632A、2SC732が使われています。3石ともにノイズでEQ回路は全滅でした。

トランジスタは以下のとおりに交換しました。

2SA493⇒2SA910

2SC632A⇒2SC2310

2SC732⇒2SC732

トランジスタ交換により左右のノイズはなくなり良好になりました。 

7.ヒアリング

ヒアリング風景
やっと、修理も終了したのでヒアリングです。USB DACを接続して試験をします。交換部品が多かったせいか高域が暴れてヒアリングになりません。しばらくは音を出したままエージングすることにします。

1時間後:少し高域の暴れがおさまり大人しくなってきました。第一印象は立ち上がりの良いクリアな高域が綺麗な音がします。現在のバランスは高域寄りになっています。入力の音質をそのままストレートに再現するアンプのようです。良くても悪くてもダイレクトにスピーカーからそのままの音質をだします。音を作るアンプではないです。USB DACから良質の音楽は心地よく、ノイズ感のあるFMを聴くとそのままの粗さを感じます。あと、半日は鳴らしたままにしておく必要がありそうです。

半日後:鳴らし試験をしました。まだ、音のバランスが高域寄りです。アイドリング電流は20mAでは少ないのでしょうか?ヒートシンクは冷たいままです。

アイドリング電流を20mAから30mAに変更してヒアリングします。重心が下がりバランスがとれた音に変化しました。

更に半日後(1日後):更に半日は慣らし運転をすることにしました。時間とともに高域の粗さがとれ滑らかさが出てきました。音のバランスも重心が更に少し下がっています。エージングが進むにつれて中低音の力強さも戻ってきています。第一印象の立ち上がりの良いクリアな音質は変わりません。音源の音質を色付けせずダイレクトにスピーカーから出てきます。やはり、音を作るアンプではなく音質をそのままストレートに表現するアンプです。使う人を試すようなところがあるアンプとも思えます。少し気難しいアンプです。

Integra725のクリアな音質を生かすために色付けのないセレクタ式のトーンコントロールを選択したのがわかります。トーンコントロールを操作してもクリアな音の本質は担保されています。

翌日(1日半後): Integra725はカミソリのような切れ味の音です。高域は少し和らぎましたがそれでも高域寄りの音です。この時代のアンプはカマボコ型の特性をイメージしていましたが完全に裏切られました。この音を聴くとアナログ機器と組み合わせると音のバランスが良いのかもしれません。

チューナーはSONY ST-ES50SAを使います。FM放送でソニー・ロリンズ ドント・ストップ・カーニバルが流れていました。JAZZが生き生きと響き、場の雰囲気に全体が包まれたように聞こえます。この音は当時秋葉原のオーディオルームで聴いた音のようです。古臭い音ではなく当時の最先端オーディオ機器の音です。70年代の空気感が一気に蘇ります。Integra725はアナログ機器をつないだ時に本当の真価を発揮するアンプです。 デジタル機器なんて関係ない時代のアンプですから、無理にDACで鳴らしていたのかもしれません。

翌々日(2日半後):部品交換後の初期動作で音が固まるまで時間のかかるアンプです。

朝、アナログチューナーの音を聞いていて、意外と中低音でるようになったと気がつきました。高音はまだ粗かったです。

夜になるとアナログチューナーの音が大人しくなったような気がします。時間がかかりましたがようやく高域の粗さがとれてきました。それと共に芯のある中低域が弾むようにでます。音の重心が下がりバランスがとれてきました。

3日後(最終日):音が落ち着いてきたので再度DACを接続してみます。シュガー・ベイブ「蜃気楼の街」を聴いてみました。耳障りな高域の粗さが消えています。高域よりの音ですが、中低域が気持ちよくでるようになっています。うまく鳴りだしました。まだ少し高域が暴れますが改善しそうな予感をさせる音です。 

午後になり、高域よりですがとりあえずプリアンプとパワーアンプの初期エージングは終了とします。

プリアンプとパワーアンプが落ち着いた最後にレコードを聴いてきます。最後にしたのはPhono EQ回路のみを純粋に聞き分けたかったからです。 

やはり高域よりのバランスですが、DACのクリアとは違い音の厚みや存在感でしょうか場の雰囲気や空気感が良いです。レコードの良さが生きるアンプです。トランジスタを交換しましたがEQは違和感もなくプリアンプとパワーアンプの音をそのまま受け継いだような音に仕上がっています。 

戻って、USB DACはやはり高域よりのバランスです。クリアで帯域も広く中低域も気持ちよく響きます。 

アナログ・チューナーはやはり高域よりのバランスです。レコード、USB DAC、アナログ・チューナーで高域の質やバランスがそれぞれに違いがあり音の印象がかわるのが面白いです。帯域は一番狭いはずですが音も厚く何故か一番華やかな音がします。 

Integra725は、色づけのないストレートな音色で、音源ソースの質の良し悪しまでそのままへ表現します。当時にしては帯域は広いためなのか、特に音のバランスやノイズ感には特に敏感なので周辺機器との組み合わせが重要かと思います。 

余談ですが、ヒアリングしていて電源トランス鳴りがありました。電源入れて10秒程度です。電源電圧選択スイッチ100V-117Vのスライドスイッチを数回動かしたらトランス鳴りがピタリと収まりました。毎回、電源投入時に電源電圧が変動していたのかもしれません。 

8.まとめ 

Integra725は小型であることを生かした信号の最短経路などにより、音の素材をそのままストレートに再生する高級アンプであるとの印象を受けました。組み合わせる機器や鳴らす音楽を選ぶアンプなので万人向けではありません。1969年当時としては斬新な外観のインパクトと非常にクリアな音質に、こんなアンプがあったんだという純粋な驚きがあります。ONKYOのアンプへの情熱と拘りを知る機会となりました。個性も強く完成度も高いアンプなので使いこなしが大変むずかしいアンプの修理でした。 

2025/08/17

TRIO KA-4000 プリメインアンプ(スピーカー保護回路を付加)

 TRIO KA-4000 プリメインアンプの紹介です。1968年頃、49,800円の製品です。このシリーズはシンプルですが気品が漂うパネルデザインです。当時はサイドウッドで高級感のあるアンプやチューナーが多かったです。

背面パネルはごく一般的な端子類が実装されています。

内部は電源、プリアンプ基板、パワーアンプ基板、パワートランジスタが整然と並んでいます。シールド板を外すと取り外し可能なスロットタイプのプリント基板が見えます。

 

基板の電解コンデンサにも劣化がみられます。プリアンプ、パワーアンプ、他基板の全ての電解コンデンサを交換します。

セレン整流器からブリッジ整流器へ交換

5A電源ヒューズが溶断しています。 動作確認のためプリアンプ基板とパワーアンプ基板を抜いたままで電源ONにするとヒューズが瞬時に溶断します。 電源部の故障です。切り分けた結果はブリッジ整流器の故障です。新しいブリッジ整流器に交換して電源が正常になりました。音出し試験では、L側の音が小さいです。入口から順にトレースしたところ、PRI OUTとPOWER INのプラグの接触不良です。プラグを清掃して正常です。

ブリッジ整流器:Amazonへのリンク 

スピーカー保護回路を実装

KA-4000は構造的にポップノイズがでます。電源投入時にスピーカー端子のサージ電圧を測定すると0.7V以下になるのに15秒以上かかります。スピーカーに悪影響がありそうです。対策としてダミー抵抗も考えましたが、今回はスピーカー保護回路を入れます。電源投入時の遅延回路だけでなくスピーカー端子のサージ電圧が0.7V以下、またはショートによりリレーが動作する保護回路があります。上の写真のように保護回路はシャーシ下に空スペースがなくシャーシ上のプリアンプ基板横に設置します。

スピーカー保護回路:Amazonへのリンク

アンプの電源回路から取り出せる電圧はDC68Vです。ツェナーダイオードによる簡易な定電圧回路を組み込みスピーカー保護回路を動作させます。上の写真はツェナーダイオード×3と680Ω×2によるスピーカー保護回路用の定電圧回路です。スピーカー保護回路の動作時間は実測して18秒でした。

パワーアンプのセンター電圧を34Vにうまく調整できません。左右の半固定抵抗(30kΩ)VR3,VR4の劣化です。VR3,VR4を交換しセンター電圧を34Vに調整できました。 これで調整も終了です。

USB DACに接続してヒヤリングします。上下の帯域はやや抑え気味ですがそれなりに広く奥行も感じられる良い音です。全体にクリアでスッキリした音質です。少し華やかな傾向で音の重心がもう少し低いと厚みや深みがでると思いますが贅沢なのかもしれません。レコードを聞いてみますが同じバランスの音がします。KA-4000はパネルデザインと音がマッチした良質のプリメインアンプです。電源投入時のポップノイズもなくなり安心して音楽を楽しむことができるアンプに仕上がりました。

部品の入手先 

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2024/07/14

TEAC A-R630 プリメインアンプ

TEAC A-R630 プリメインアンプの紹介です。2011年製、42,250円の製品になります。大きなダイヤルを左右に配置した大胆なデザインのプリメインアンプです。従来のプリメインアンプにリモコンによる電子制御を付加した構造です。この年代のアンプ修理は初めてなので楽しみです。

POWER ONでアンプは待機状態になり手動もしくはリモコンでSTANDBAY/ONスイッチを操作してアンプの電源をON/OFFします。STANDBAY/ONスイッチは重要です。リモコン操作だけでなく前回操作したセレクタ位置などの情報を保持します。POWER OFFで前回操作したセレクタ位置などの情報は消えて初期状態に復帰します。POWERスイッチは常時ONで使用することが前提のアンプです。

ボリュームがdB表示のアンプ は久々に見ました。昔からdB表示のアンプはありましたが、音量の大小とdB表示に違和感があり判りにくいです。昔のオーディオ雑誌にも同じ意見のレビューがあったのを覚えています。

中央に配置されたパワートランジスタのヒートシンクは真四角のアルミパイプに冷却ファンを取り付けて強制排気して冷却する方式です。冷却ファンはある一定の温度以上になると動作する仕組みで常温では停止しています。 パワートランジスタには2SA1186-O/2SC2837-Oが採用されていました。

異常がないか観察するとSUB TRANS BOADの5Aヒューズが溶断しています。現状のままとりあえず動作確認をします。一見動作しているように見えますが、この状態だとPREAMP BOARDやFRONT PREAMP BOARDなどにしか給電されてません。MAIN BOARDへの給電は断です。ヒューズが飛んだ原因の故障切り分けのためパワーアンプ回路に電源供給しているMAIN BOARDのコネクタ:CN74を抜きます。5Aヒューズを装着して電源をONにします。ヒューズは溶断しませんのでパワーアンプ回路の故障が濃厚です。

 

故障原因と思われるパワートランジスタをヒートシンクから全て取り外します。一つ一つトランジスタを試験するとRchの2SC2837の端子間がショートして故障していました。今回はパワートランジスタを4つとも交換します。交換後、電源を入れるとスピーカーリレーがカチッと正常に動作します。アンプの各機能を確認しますがリモコンも含めて全て正常です。

A-R630にはKoshin製の音響用電解コンデンサ KR3が全ての回路に使われいます。A-R630のカップリングコンデンサは全て10μF/50Vを使用しています。手持ちの電解コンデンサはニチコンFGです。KR3とFGの規格を単純に比較するとtanδは同じです。ただし長時間使用(耐久性)するとKR3の方がtanδが劣化しやすいようです。2010年発売のA-R630であれば、劣化したと思われるKR3をFGに交換する意味がありそうです。

MAIN BOARDのパワーアンプ回路へニチコンFGを実装
PREAMP BOARDのプリアンプ回路へニチコンFGを実装

FRONT PREAMP BOARDのTONE回路へニチコンFGを実装

MAIN BOARDのPHONO・ EQ回路へニチコンFGを実装

音質に大きく影響するカップリングコンデンサはPREAMP BOARDのTONE回路×4個、FRONT PREAMP BOARDのTONE回路×6個、MAIN BOARDのパワーアンプ回路×2個とPHONO回路×4個が使用されています。入力ソース毎の片チャネルが通過するカップリングコンデンサの数は次の通りです。①SOURCE DIRECT OFF:CD(7個)、PHONO(9個)。② SOURCE DIRECT ON:CD(4個)、PHONO(6個)。入力~出力までにかなりの数のコンデンサを通過するので交換による改善が期待できそうです。Koshin KR3からニチコンFGに対象のコンデンサを全て交換します。

次にAMP POWER SUPPLY BOARDの6000μF×2個を10000μF×2個に交換します。USB DACを接続して再度ヒヤリングします。電源回路の影響は大きく音の重心がさがり量感が増します。奥行が感じられ中低音は豊かに響きます。高域もバランス良く出ています。交換した部品のエージングが進むと音のつながりが滑らかになります。

 

±15V電源回路には1000μF×2個が実装

レコードを聴いてみます。PHONOの音には癖があり違和感を覚えます。海外仕様の回路図を眺めているとPHONOへ供給される±15V電源回路には3300μF×2が実装されているはずです。実際のMAIN BOARDで確認すると小さな1000μF×2が代わりに実装されていました。

この電源回路はPHONO以外にTONE回路へも供給されていて、レコードの音の違和感は非力な電源回路の影響かもしれません。1000μFを交換のため取り外すと大きさの違う電解コンデンサーを差し替えできるようにプリント基板に穴まで準備されいます。これはAMP POWER SUPPLY BOARDの6000μFを10000μFに交換したときと同じです。プリアンプ用の電源回路も同じかと思います。意図的にダウングレードしています。A-R650(海外仕様のみ)とA-R630との価格帯毎に部品を使い分けていたのだと思います。

 


±15V電源回路の電解コンデンサーを3300μF×2に交換します。プリアンプ用の電源回路も2000μF×2から3300μF×2に交換します。そのほか劣化が進んでいると思われる電解コンデンサーを10個ほど交換します。

再度ヒヤリングします。結論から言うとPHONOに感じた違和感は解消しませんでした。A-R630の固有の音なのでしょうが不自然です。CDやUSB-DACは音質の改善がみられます。帯域は上下に広くクリアで引き締まった鮮烈な音です。音場の広がりや量感も十分に感じられます。優秀なプリメインアンプかと思います。但し、A-R630は音場の広がりを意図的に作り込んだ製品のように感じます。

A-R630は音はいいのに操作の感触や質感で損をしているアンプです。左右のツマミはアルミ製でいいのですが、ツマミの重さが感じられず回した時の滑らかさもありません。中央の3つのツマミと前面パネルはプラスチック製で感触が悪くオーディオを操作する楽しみを半減させます。また、操作時の質感の悪さと派手なデザインが災いしてなのか安い手抜き製品の様な印象を受けます。真面目に回路設計した実力のあるアンプを組み込んでいるだけに残念です。このアンプの価格帯では限界なのかもしれません。

今回は劣化部品交換時に部品をアップグレードしてオリジナルより良い音に改善できました。本機は高音質のアンプをリモコン操作で手軽に楽しむ製品です。本体の質感よりも音と利便性が優先されています。個人的には、もう少しオーディオ機器として操作する楽しみを追求してほしかった製品です。気づかないところまでの品質や機能にこだわっていた頃の製品が懐かしくなります。