毎日、真夏日が続いています。こんな時期は涼しい夜に部品箱を漁って電子工作が一番です。今更ですがケミコン・テスター製作の紹介です。若い人には馴染みのない名前でしょうが電解コンデンサの漏れ電流を測定するためのテスターです。漏れ電流は電解コンデンサの劣化判定には欠かせない数値です。毎回、安定化電源を使い手配線して測定していましたが煩雑です。安価なデジタル計を使ったデジタル・ケミコン・テスターを製作してみました。
製作するケミコン・テスターの測定可能な電解コンデンサの電圧はDC0V~100Vです。漏れ電流は電解コンデンサに流れる電流を1kΩ抵抗の両端の電圧で測定します。そのため漏れ電流を表示する電圧計の読みは1mV表示=1μAと読み替える必要があります。直列1kΩ抵抗は①電圧処理に使用する抵抗値である、②電圧/電流換算しやすい、③メーター保護のため電圧測定、④回路全体の保護のため、などの理由から採用しました。電解コンデンサの印加電圧および電流はデジタル電圧/電流計で数値を把握します。通常ならアナログ電流値を見ながら漏れ電流がμAオーダーになってからμAアナログ電流計を繋ぎます。今回の測定方法ではテスターが測定範囲を自動判別するので常に漏れ電流を測定できます。いちいちメーターを切り替える手間がなくなります。また、漏れ電流測定と電圧処理は同じ回路としています。
製作には手持ちの機材を流用します。30年前に買ったデジタル・テスターをそのまま配置(ネジで固定)します。それとAmazonで購入した電圧/電流計を使った自作とは呼べないほど簡単なデジタル・ケミコン・テスターです。しかし測定精度は高く操作はいたって簡単です。
漏れ電流検出と電圧処理用の10Wの500Ω×2のセメント抵抗です。安定化電源MAX70Vの関係から測定できる電解コンデンサの電圧は最大63Vになり、1kΩなら約4W以上の抵抗が必要です。もう一つは電源OFF時に使う電解コンデンサ放電用の3W・4.7kΩ抵抗です。
ケースの内部はほとんど配線です。006P外付け電池は電圧/電流計用の電池になります。電源スイッチON/OFFは006P電源用になります。
簡単な動作テストしたところ、電解コンデンサへの印加電圧を測定するデジタル電圧計で30μAほど電流が流れるようです。漏れ電流と誤認するため、測定時には電圧計をOFF(30μAを遮断)にするスイッチを付加しました。デジタル電流計は0Aしか表示できない精度なので今回の使い方では不要でした。また、デジタルテスターの電圧値は常に変動するのでピーク値を読み取るようにします。
半日で完成です。機能確認して動作はOKのようです。実際の測定を始める前に漏れ電流について整理してみたいと思います。
・長期間放置された電解コンデンサは絶縁性能が低下し漏れ電流が増加します。
・漏れ電流の大きいコンデンサ容量を測定すると表示される容量が大きくなります。
・酸化皮膜が劣化すると耐電圧が低下します。
・酸化皮膜の修復のために大きな漏れ電流が流れ発熱が大きくなります。
測定結果は、未使用①、未使用②、中古⑥の漏れ電流は正常です。中古③は4100μFと容量も異常に大きく安定化電源の印加電圧10Vで2300μAもながれています。印加電圧10Vで電解コンデンサの両端で2.5Vの異常値です。漏れ電流改善の兆しもなく完全に故障しています。これ以上は危険なのでテストは中止しました。 中古④、中古⑤は漏れ電流が60μAと230μAとやや多く流れていることがわかります。この2つの電解コンデンサは修理できそうなので電圧処理を実施します。電圧処理後の測定で中古④は60μA⇒25μA、中古⑤は230μA⇒70μAに改善できたようです。
今回のデジタル・ケミコン・テスターはアンプなどの電解コンデンサの劣化判断には重宝するかと思います。真空管ラジオに使用する高電圧の電解コンデンサを測定したい場合は、デジタル電圧/電流計を400V仕様に変更し、1kΩは100Wに変更、DC電源は400V可変出力の整流回路を組んで供給すれば可能かと思います。いろいろ工夫してみるのも面白いと思います。小型デジタル電圧計を応用すれば電解コンデンサの漏れ電流のテスター製作や操作の難易度は大幅に下がるので参考にしていただければと思います。