ナショナル RF-787 サウンドスコープの紹介です。1972年、16,500円、FM-AM2バンド・FMステレオポータブルラジオです。 以前、ご紹介したサンヨー IC-ST71と同じFMステレオ放送が聞けるラジオですがサラウンド機能搭載が特徴のラジオになります。
中央にフィルム式ダイヤルスケールとステレオランプ、TONEは2段階でSOFTとMUSICです。右側にSE CONTRIL、ボリューム、チューニングツマミがあるシンプルな構成です。
サウンドスコープのサラウンド機能はL+△R、R+△Lを左右のスピーカーから出力します。L,RそれぞれにL成分の一部:△L,R成分の一部:△Rを加えることでサランド効果を得ることができます。
SE CONTROLツマミをMONOから右に回し真上ぐらいの位置でFMステレオのセパレーションが最大になります。この位置まではサランド効果はなく通常のFMステレオ放送です。
更にSE CONTROLツマミを右いっぱいに回すとサラウンド効果が最大になります。SE CONTROLツマミで△L,△Rだけを増減させることで、サラウンド効果を増減させる仕組みです。
FR-787の左右のスピーカーは角度を持たせ外側を向いています。江川三郎さんの逆オルソンのスピーカー配置みたいです。左右のスピーカーの音がお互いに漏れないようにするためのスピーカー配置です。ただし、逆オルソンは原音再生を目指すのに対して、RF-787はサラウンド効果を高めるためのスピーカー配置になります。ラジオの左右スピーカー中央に仕切りを置くと理論通りにサラウンド効果がさらに増すことがわかります。
背面の3本のネジを外せばラジオの蓋を開けることができます。IF用IC AN253を採用しているせいでしょうか思ったより簡素なプリント基板です。
FM/AMのBAND切り替えスイッチが接触不良です。取り外しが大変ですが分解清掃をします。
劣化部品を交換して再調整します。ボリュームなどにガリがあるので洗浄してコンタクトクリーナーを吹き付け処理をします。このラジオはセパレーションだけでなく、サラウンド機能の調整も必要です。Lに△R成分、Rに△L成分を加えますので、その波形の大きさや波形が歪まないように調整すれば終了です。この調整が悪いとノイズが増えるので注意が必要です。
ヒヤリングします。FM受信感度がやや低いのかFMステレオ放送にノイズが乗っています。FMステレオ放送を聴く場合は上の写真のように外部アンテン端子とラジオのアンテナをクリップで結んで聞いています。外部アンテナとの接続により受信感度は数段良くなります。
当初、ノイズまみれだったラジオが生き返りました。FMステレオ放送はノイズ感もなくクリアな音で良好です。TONEスイッチは2段階ありSOFTとMUSICです、SOFTは音の帯域も狭く劣悪な電波環境でしか使うことはないと思います。今回はあくまでMUSICポジションでFMステレオ放送を聴くことにします。SE CONTROLツマミは中央の位置でセパレーションが最大になり、FMステレオ放送の音が広がって聴こえます。TONE MUSICはやや中低音よりの聴きやすい音色で可もなし不可もなしの普通の音です。FR-787の最大の特徴はサラウンド機能です。SE CONTROLツマミを最大にすると音は一気に広がりきめ細やかな高音がサラサラと聞こえてきます。常にサラウンド機能をを最大で聞いていたいラジオです。FMステレオ放送をサラウンド機能最大で聞いてしまうと通常のFMステレオ放送が物足りなくなります。ただし、FM電波の受信感度が弱い環境ではサラウンド機能を大きくするにしたがってノイズも大きくなる傾向です。このラジオで快適にFMステレオ放送を聴くためには、受信環境が良好であることが大前提となります。受信環境さえ整えば、RF-787は自然に広がる質の高いFMステレオ放送が聴ける完成度の高いラジオになります。