2025/01/25

さぐり式鉱石検波器の製作

さぐり式鉱石検波器の紹介です。日本では1925年にラジオ放送がはじまりました。さぐり式鉱石検波器は当時のラジオ技術です。今回は100年前のラジオ技術の追体験になります。

部品棚を整理していたら昔に購入した黄鉄鉱のビン詰めがでてきました。なつかしい黄鉄鉱です。これを使って鉱石ラジオが作れます。今回は何十年ぶりかでさぐり式鉱石検波器を作ってみました。

材料を用意します。木板、ワンタッチスピーカー端子(L,R)、ネジ式スピーカ端子(端子に穴あり)、銅製キャップ、金属リング、ビス・ナット、ワッシャー、ゴム足、鉱石(黄鉄鉱、方鉛鉱)、真鍮ワイヤーなどを用意します。

上の写真では、木板に穴あけ加工後に塗装を施して台座を作成します。

最初に銅製キャップにはんだを流し込みます。上の写真のように後から鉱石(黄鉄鉱)を入れキャップ内のはんだに沈めて固定したら完成です。黄鉄鉱と方鉛鉱の2種類を作成します。はんだのフラックスで鉱石が黒くなることがあります。そのときは鉱石を磨いてください。

次にさぐり針を作成します。 ヒゲの形は様々ありますので自分の好みの形状に加工します。上の写真は作成したさぐり針です。毎回、代り映えしない同じ形状です。私はこの形でしかうまく作成できません。

全ての部品を取り付けます。さぐり針は金色のスピーカー端子の穴を通してから最後にビスで固定します。台座の裏側で見えない様に配線します。銅製キャップの底からスピーカ端子(+)へ、さぐり針の根元からスピーカー端子(-)に配線します。最後にさぐり針の形を整えて金色のスピーカー端子でさぐり針の針圧を調整すれば完成です。スピーカー端子のネジがグラグラするので気になる人はスプリングを噛ませた方が良いかと思います。

自作したさぐり式鉱石検波器を試験します。試験にはゲルマニウム・ラジオを使います。トランジスタ・ラジオでは回路によりトランジスタ検波することがあり、ダイオードなしのただの銅線でもラジオが聞こえることがあるので試験用ラジオとしては使いません。

ラジオの簡単な実験には電子ブロックが便利です。電子ブロック:DR-ⅡAのゲルマ検波ラジオを使用します。電子ブロックのダイオードをさぐり式鉱石検波器と入れ替えて試験します。

電波環境を確認するために検波電流を測定します。検波電流を測定するにはアナログ・テスターを使用します。テスター(電流計)はダイオードとクリスタルイヤホンの間に直列に挿入します。デジタル・テスターでは内部損失が大きく検波電流をうまく測定できないことがあります。通常のアナログ・テスターで60μAまたは100μAポジション(上の写真は60μA)があれば測定可能です。我が家の受信電波は弱く、ダイオード(1N60)で測定できた検波電流は3μAでした。

鉱石検波器を作成する前に検波電流の測定をした方が良いです。ゲルマニウムラジオの検波電流が1μAも測定できない環境では、鉱石検波器ではラジオの受信は無理かと思います。検波電流が小さすぎる場合は電灯線アンテナやアースを事前に改善しておく必要があります。

   

ダイオードでラジオ放送が聞こえたらさぐり式鉱石検波器と入れ替えます。さぐり針をセラミックドライバーで少しづつ移動させて音量が最大になる点を探ります。最大の音量で検波電流を測定します。

 

黄鉄鉱の表面は比較平らで針をスライドしての検波がしやすいです。しかしテスターで針1本分のほんのわずかしか振れません。1μA未満です。 それでも放送内容をじゅうぶんに聞き取れる音量です。もう一つの方鉛鉱の表面は凸凹しているため針の移動はやり難いです。但し方鉛鉱に変えると1μA程度と黄鉄鉱より感度は良いです。鉱石検波器は簡単に自作できて誰が作成しても動作すると思います。

さぐり式鉱石検波器は壊れやすいので保管がむずかしいです。そのため、白木の箱を用意して箱に入るサイズに検波器を作成します。

 

久しぶりにさぐり式鉱石検波器を作成しました。なつかしいです。ゲルマニウム・ラジオも魅力的ですが、鉱石を針でさぐってラジオを聞くことは毎回新鮮で楽しい体験です。古典的ですが簡単に製作できるさぐり式鉱石検波器を作成してみてはいかかでしょうか。何気なく聴いていたラジオに新たな魅力を感じることは間違いありません。

2025. 5.24

さぐり式鉱石検波器の製作(二作目とシリコン結晶)のブログもアップしましたので参考にしてください。