| Topping DX3Pro |
Topping DX3Proは2018年発売の少々古いUSB DACの紹介です。今回はToppingDX3proユーザーさん向けに書いたブログです。本記事は製品レビューや音質評価を目的としたものではなく、DX3Proの実装を観察しデータシート上の推奨条件との違いがどのように現れているかを確認した技術的メモです。本機の性能はすでに測定限界に近く、手持ちの測定環境では有意な差を示せないため数値測定は行っていません。本稿は測定値の優劣ではなく、実装とその考え方を記録することを目的としています。
現在は、Topping DX3Proにはエーワイのアナログ電源と自作したデータ専用USBケーブルを使っています。この2つの対策でも十分に満足のいく音がでています。今回のTopping DX3Proのコンデンサ交換の紹介については海外フォーラムの事例を参考にしています。海外フォーラムの事例からはデジタル機器に対する暗黙の示唆を感じます。DX3proは本機はスペック上の性能を維持したまま、コストおよび実装面積の最適化が図られています。しかし、その最適化が聴感上の余裕や時間軸方向の安定性まで担保しているかについては検証の余地があると感じます。本機でもD/Aコンバータ周辺を含め、必ずしもチップメーカーの推奨値通りとは言えない実装が見受けられます。今回は、そうした点に着目して実装状態の確認と推奨値どおりの部品交換により音の変化を確認します。※注:ここで言う「推奨値」とは、ICメーカーのデータシートに記載された標準的・代表的な使用条件であり、必ずしも製品設計で厳守されるべき数値ではありません。
| 背面パネルの取り外し |
工具による前面パネルの取り外し |
次にTopping DX3Proの前面パネルと本体ケースを連結する左右2つの六角穴付きボルトを外す必要があります。特殊な工具(軸長が16cm以上ある2mm六角ドライバー)を差し込み取り外します。私は”BONDHUS(ボンダス) 六角ループ・T-ハンドル ロング 2mm [全長:249mm 軸長:229mm ハンドル長さ:70mm] No.46552”が安いのでAmazonで購入しました。
BONDHUS(ボンダス) 六角ループ・T-ハンドル ロング 2mm:Amazonへのリンク
| プリント基板を取り出した分解写真 |
| プリント基板 |
上の写真が分解した様子と取り出したプリント基板です。
| DX3proV4.1:バージョンが記載 |
Topping DX3proのプリント基板には、DX3proV4.1とバージョンが記載されています。海外ではV2バージョンと呼ばれる製品です。
| OPA1612A |
RCA出力のオペアンプにはOPA1612Aが実装されています。
| AK4493S周辺の実装 |
AK4493Sアナログ出力とOPアンプ入力の間は電解コンデンサが採用されています。
| ヘッドホン用オペアンプ:TPA6120A |
次に部品交換する箇所について説明します。
![]() |
| D/Aコンバータ AK4493Sの回路 |
上の図はD/Aコンバータ AK4493Sのdatasheetからの抜粋です。AK4493Sアナログ出力とOPアンプ入力の間には100μF×4(赤丸印)のコンデンサ容量が推奨されています。AK4493Sの出力段のカップリングコンデンサを推奨値に増やすことで、低域のカットオフ周波数が下がり、位相特性や低音の厚みが改善される可能性があります。
| 推奨値とは異なる電解コンデンサ |
実際のプリント基板を見ると推奨値とは異なる47μFのニチコンFG電解コンデンサです。
![]() |
| D/Aコンバータ AK4493Sの回路 |
次に、これもD/Aコンバータ AK4493Sのdatasheetからの抜粋です。アナログ電源1.8Vに10μF×1、アナログ電源5.0Vに10μF×2、基準電圧5.0Vに470μF×2のコンデンサ容量が推奨されています。この実装もメーカー推奨値ではありませんでした。基準電圧(VREF)周辺の容量不足を補うことは、DACの変換精度やノイズ耐性に直結するため、音の「時間軸方向の安定性(ジッター感の低減)」や「見通しの良さ」に寄与します。
これらの推奨値とは異なる部品はコストダウンの痕跡またはサイズダウンなどによるものと推測します。
![]() |
| 交換対象の電解コンデンサ |
| 交換対象のチップコンデンサ |
実際には、アナログ電源1.8Vに10μF×1、アナログ電源5.0Vに10μF×2、基準電圧5.0Vに100μF×2が実装されています。
![]() |
| 対象箇所と推奨値と実装値、変更値 |
| 交換用チップコンデンサ |
上の写真が交換部品のチップコンデンサです。一番上が100μF(6.3V)、下2段が220μF(10V)です。
| チップコンデンサを交換した様子 |
交換対象のチップコンデンサを取り外します。ホットピンセットがあれば作業は楽なのですが2本のはんだゴテで取り外します。チップコンデンサの両端に少しハンダを追加すればハンダが溶けて簡単に取り外せます。次に上の写真のように全てのチップコンデンサを取り付けて完成です。チップコンデンサ交換後の動作は良好です。電源部強化までで一度ヒヤリングしてみます。交換前のTopping DX3Proは少し高域よりのバランスです。チップコンデンサ交換により全体的に音の重心が下がり深みのある音質に変化しました。高域はややキラキラした印象でしたがシルクタッチできめ細やかな音に変わります。たったこれだけのチップコンデンサ交換で音に大きな影響があることに驚きます。
| 交換対象の電解コンデンサ |
残りはAK4493Sアナログ出力とOPアンプ入力の間のカップリング用電解コンデンサ47μFを100μFに置き換えです。ニチコンMUSE ESへの置き換えが評価された例が多くあり、帯域と透明感の改善を期待して47μFのFGから100μFのMUSE ESに置き換えてみました。ただし、ケースに接触しないように隅の2個はやむなく横に寝せて実装します。
| 交換後の電解コンデンサ |
次はカップリング・コンデンサ交換後は1日以上のエージングが必要です。最初のころは音に霞がかかりぼんやりした不明瞭な音がします。エージングが終了したらヒヤリングです。いままでより透明感があり豊かで深みのある音です。ほんの少しベールのように薄い膜が1枚あるような音でエッジが取れて少し丸なって聴こえます。この音の傾向が長所か欠点かは個人の好みの世界です。どちらにしても音のグレードは向上します。Topping DX3proは高音がきれいで抜けのいい音がしますが低音がやや薄く不満でした。低域を補強することにはじゃうぶんに出来たようです。これらの変化は、本機・本個体を自分の使用環境で聴いた限りでの印象であり、他の製品や条件で同様の結果が得られるとは限りませんのご注意ください。
Topping DX3ProのD/Aコンバーター周辺部品をメーカー推奨値に変更する試みは海外フォーラムを参考にしています。 今回は取り組み易く根拠があり納得できるものに限定しました。海外フォーラムではOPアンプを交換する筋金入りのマニアも多く、大いに盛り上がっています。性能や測定したデータに基づき議論するフォーラムなどもあります。中国製のオーディオ機器は安価で高性能なので利用者が多く、フォーラムが盛況な理由かもしれません。今回は日本語圏のサイトでは事例が少ないのでご紹介しました。作業は楽しかったですが参考になりましたでしょうか。ただし、改造は自己責任でお願い致します。
本記事はDX3Proをそのまま使うことを否定するものではなく、実装という観点から既製品を眺め直した一例として記録したものです。メーカーのスペックはノイズと正弦波を破綻なく出力できる最低限度の再現性を示しているだけと考えています。また、スペックは製品の性能保証で音質を保証するものではありません。今回のようなコンデンサ交換が影響するような領域は、波形として直接観測できるものではなく、せいぜいノイズの影響差を観測できるかどうかだと思います。そのため、測定データがなにもかかわず部品交換により音質差があるという主観に基づいた評価としました。
2025.2.15
Topping DX3Proを使いこんだことで、バランスもよく豊かで奥行きのある音ができるようになりました。前回、ほんの少しベールのように薄い膜が1枚ありましたがエージングでその影響もなくなったように聴こえます。
2025.12.3
Topping DX3Proのツマミはプラスチックで貧弱です。感触も良くありません。最悪なのはボリュームを調整するたびに回転させた最後に数値が後戻りします。
| ツマミをアルミ製に交換 |



