2026/04/13

Topping DX3proのTCXO化(ジッタ低減による音質向上)

Topping DX3pro

前回は、Topping DX3pro 推奨値とは異なる実装の改善により音質向上を実施しました。今回は、Topping DX3proのマスタークロックをTCXOへ置き換え、ジッタ低減による音質改善を試みます。参考:TCXOとは、Temperature Compensated Crystal Oscillatorの略で、日本語では温度補償型水晶発振器と呼ばれています。

改造の方針 

Topping DX3proのプリント基板

Topping DX3proのプリント基板を眺めて音質が改善できないか思案していました。写真の右側の電解コンデンサやフィルムコンデンサは前回の改善です。

今回の改造は以下のとおりです。

・不要Bluetoothモジュールの取り外し 

クロックの高精度化(TCXO化) 

Bluetoothモジュールの取り外し

Bluetoothのモジュール

使っていないBluetoothモジュールの取り外しです。不要なノイズ源をなくすことと、TCXOの電源として利用します。

QRコードを剥がしたBluetoothモジュール

モジュールに貼ってあるQRコードのシールをはがすと型番がわかります。BluetoothモジュールにはCSR8675CGが使われていました。

クロックの高精度化(TCXO) 

3つのXOモジュール
 
44.1k系と48k系のXOモジュール

プリント基板をよく見ると、2.5mm×2mm(2520パッケージ)のXOモジュールが3個ありました。45.1584MHzと49.152MHzはオーディオ信号処理・DAC の時間軸(44.1k 系/48k 系)です。もう一つの24MHzは通信・制御まわり(USB/BT/MCU)に使用されています。ジッタを低減するために、44.1k 系/48k 系のXOモジュールを高精度のTCXOに交換します。24MHzは音質への影響が小さそうなので今回は対象外としました。参考:XOとは、X'tal(crystal) Oscillatorの略で、日本語で水晶発振器と呼ばれています。

TCXOの製品選定 

購入したTCXOモジュール

一般にTCXOは周波数精度(ppm)の向上が注目されますが、音質に影響するのはむしろ短期的な時間揺らぎであるジッタです。TCXOは温度補償により長期安定性を向上させるだけでなく、発振回路の品質が高い製品では位相雑音(フェーズノイズ)が低く、結果としてジッタ低減が期待できます。

以下の製品を選定しました。

・製造:Shenzhen Hongchip Micro Technology Co.,Ltd

・周波数:45.1584MHz/49.152MHz 

・電源:3.3V

・精度:0.5ppm

・パッケージ:7050(7mm×5mm)

・消費電流:MAX10mA

・他:CCHD-575シリーズとの互換あり

電源の検討

今回のTCXOは3.3V MAX10mAの電源を必要とします。今回はXOモジュールの電源を利用せずにBluetoothモジュール用の電源20〜40mAを利用します。Bluetoothモジュール用の電源はデジタル処理系から分離された専用電源のため、クロック用電源として流用することでノイズ混入の低減が期待できます。

実装作業 

プリント基板の取り出し 

プリント基板の取り出し

前回と同様にTopping DX3proの本体からプリント基板を取り出します。

モジュールの取り外し 

XOモジュールとBluetoothモジュールの取り外し

プリント基板から、44.1k 系/48k 系のXOモジュールとBluetoothモジュールを取り外します。

TCXOの実装方法

2520パッケージと7050パッケージ
取り外したXO(2520パッケージ)と交換するTCXO(7050パッケージ)では、形状に互換がないため、そのままでは基板に実装できません。

手持ちの変換基板を利用しました。今回の変換基板ははんだがやり難く、はんだの状態が確認できないなどのデメリットがあります。専用変換基板があればそちらを推奨します。

TCXOのピンアサイン 

TCXOのピンアサイン

TCXOのピンアサインとXOのピンアサインは同じなので、同じピン番号をそのまま接続しても動作します。

TCXO基板の実装(真上)

TCXO基板の実装(横)

配線の手順

・基板の固定:Bluetoothモジュールの跡はプリント配線がないので穴あけしてTCXO基板をプラスチックのスペーサで固定します。

・VCC(赤):BluetoothモジュールのCSR8675CGの43番端子PWR(BT3.3V電源)跡と接続します。  

・GND(青):プリント基板のDGNDと接続します。

・OUT(黄):44.1k 系/48k 系のXOモジュールの3番端子にそれぞれ接続します。 

 ・電源デカップリング:TCXOのVCC(4番)とGND(2番)の間に、10μFチップコンデンサと0.022μFセラミックコンデンサを追加します。

VC端子(1番):未使用のためGNDへ接続しています(データシート準拠)。

以上でTCXO基板の配線は終了です。

動作確認 

44.1kHzPCMで起動した様子
Topping DX3proをPCに接続して再起動します。表示画面には44.1kHzPCMと表示されて正常に起動したことがわかります。また、フル・デジタル・チューナーからのCOX入力により表示画面には48kHzと表示され正常に動作していることを確認できました。

ヒヤリング

TCXO化による音質の変化は明確に感じられます。外気の新鮮な空気を味わうような、澄みきった空気感が印象的です。

第一印象は音の奥行が深くなっています。音と音の間の静寂性が増し背景がより静かになっています。余分な音が抑えられ、雑味のないクリアな音へと変化しています。音の粒子は非常に細かく、空間全体に自然に広がる印象です。余韻が美しい。

これはジッタ低減により時間軸の揺らぎが抑えられ、微小信号の再現性が向上したためと考えられます。 

まとめ

今回のTCXO化により、クロックの時間軸安定性が向上し、静寂性や空間表現の改善といった音質向上が確認できました。

特に、音の奥行きや余韻の表現に変化が見られ、クロックの品質が音質に与える影響の大きさを改めて実感しました。

今後は位相雑音特性の異なるTCXOの比較や、電源のさらなる低ノイズ化についても検討していきたいと思います。

前回の改造ブログ「 Topping DX3Pro(推奨値とは異なる実装の改善)」も参考にしてください。

免責事項

表面実装部品(特に2520パッケージのXO)の取り外しはパターン剥離のリスクが高い作業です。「改造は自己責任でお願いいたします」。