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2026/05/26

ナショナル TA-90 AM-FM オールバンド型 ハイファイチューナー

 1.概要(外観・仕様)

ナショナル TA-90

ナショナル TA-90 AM-FM オールバンド型 ハイファイチューナーの修理記録です。ナショナル TA-90は、1962年発売・14,900円の3バンド(MW/SW/FM)真空管チューナーです。 黒を基調とした端正なデザインで、通信機を思わせる精悍さと高性能を感じさせます。

背面の端子類

背面には、音声出力OP端子、外部機器入力端子PUとTAPE,MPX端子M/Xとアンテナ端子、ヒューズボックスがあります。ヒューズボックスは入力電圧によって100Vと110Vの片方のみにガラス管ヒューズを装着します。 

2.特徴(配置図・糸掛け図・回路構成)

2-1.配置図と糸掛け図 

仕様、配置図、糸掛け図

チューナーのボンネット裏には、仕様、配置図、糸掛け図が貼り付けてあります。

・仕様

TA-90 仕様
仕様として下記の内容が記載されています。

受信周波数帯:MWバンド 535~1605KC

       SWバンド 3.9~12MC

       FMバンド 80~90MC

中間周波数:AM 455KC,FM 10.7MC

使用真空管:6AQ8、6BA6、6AJ8、6DC8、6BX6、6AL5、6ZE1、6X4

ダイヤルライト:6.3V、0.25A、2個

感   度:MWバンド 50μV/30mV

      SWバンド 50μV/30mV

      FMバンド 30μV/30mV(S/N 30db)

電   源:50~60c/s 100~110V(ヒューズ差替式) 

・ 糸掛け図

糸掛け図

この糸掛け図にはダイヤル目盛りも併記されており、初見では調整方法が分かりにくい構成です。 しかし、ナショナル独自の方式を理解すると、短時間で正確に調整できる合理的な方法であることが分かります。
  
この糸掛け方式は“FM 89MHz を絶対基準にする”のが最大のポイントです。 
 そのうえで、以下のように寸法で位置決めを行います。 

②そこから 93.2mm がスタート地点

③さらに 8.6mm が SW 4MHz(糸掛けの正しさを確認する点)

④MW はトラッキング調整で合わせる(糸掛けでは決まらない)

⑤SW がズレている場合は糸掛けのやり直し(巻き量・初期位置の誤差)

以上の方法で糸掛けと調整をすれば正しい受信周波数になります。

工場向けに単純な糸掛け方法の説明ですみ、なおかつ誰でも短時間で正確に調整できるメリットが重要だったのではと推察しました。大量生産向けのナショナル独自方式です。

・配置図

配置図
真空管などの配置図です。ただし、(誤)6AB6⇒(正)6BA6と誤記があるので要注意です。

・工業所有権のシール

ボンネット裏の反対側には、「当社ガ有スル工業所有権」のシールが貼られています。特許侵害への警告と技術の高さをアピールするためのものでしょうか。昔の秋葉原ではコピー商品であふれていました。SONYのカセットテープそっくりのパッケージでよく見るとSANYの文字の商品などです。当然、中のテープは粗悪品でした。そんな経験から特許侵害への警告かなとも思えます。

2-2.回路図

ラジオ技術1962年9月号 回路図(抜粋)

ラジオ技術 1962年9月号に回路図が掲載されています。

2.3.回路構成

TA-90の機器配置

FM 系:

アンテナ → 6BA6(RF) → 6AJ8(MIX/OSC) → 6DC8(IF×2) → 6BX6(LIM) → 6AL5(FM DET) → AF OUT+ 検波出力 → 6ZE1/6BA6 → AFC → 局発へフィードバック

AM 系:

アンテナ → 6BA6(RF) → 6AJ8(MIX/OSC) → 6DC8(IF) → 6AL5(AM DET) → AF OUT+ NAR/WIDE で IF 帯域切替

共通:

6X4 電源、6ZE1 マジックアイ、PU 入力・出力切替

3.修理プロセス(事前作業 → 電源試験 → 不具合 → 再修理)

3-1.事前作業

電源を入れて試験する前に実施する修理作業です。 

・目視確認

修理前の内部の様子
内部を目視しますが、焦げや損傷、ハンダなどの異常もなく良好です。

修理したヒューズカバー

ヒューズ断とヒューズカバー破損しています。ヒューズ(1A)交換とカバーを修理します。

・劣化部品

交換して取り外した劣化部品

ペーパーコンデンサは全てフィルムコンデンサと交換します。

ペーパーコンデンサ交換後の内部

ペーパーコンデンサの片側ハンダなし

この位置の0.05μFは“音声出力のカップリング”という重要な役割を持つため、 片側が無ハンダのまま出荷されていたのは驚きでした。手前の抵抗の陰に隠れていて、抵抗を取り外さないとハンダ箇所が見えない場所です。あまり見たくなかった製造ミスです。なお、音声が完全に途切れなかったのは、近接する配線や部品との間に生じる浮遊容量(数 pF 程度)による微小な AC カップリングによって、IF 信号がわずかに漏れ込んでいたためと考えられます。

・清掃

AFC用のスライドスイッチ

AFC用のスライドスイッチは分解、清楚します。セレクタの端子も黒くなっているので清掃します。

ダイヤル目盛りの背面の黒板を清掃

清掃後の綺麗になったダイヤル目盛り

ダイヤル目盛りのガラス板を慎重に清掃します。背面の黒い板は汚れが酷くコンパウンドで磨くと綺麗になります。背面の黒い板を清掃しておくとダイヤル目盛の仕上がりの美しさに大きな差がでます。

4.調整(RF/IF・AFC・MPX)

4-1.電源試験

まず、電源投入後に主要ポイントの電圧を測定し、回路図値と比較しました。 結果を以下にまとめます。 

電源装置で100Vで0.6Aと表示
電圧測定の様子

回路図に記載されている電圧を参考にします。□内の電圧はAM、()内はFMの電圧です。

電源回路(抜粋)

測定電圧一覧表
 ・電源トランス100V端子接続 

電源回路の1kΩ両端(電源トランス側とチューナー側)の電圧を測定(測定電圧一覧を参照)します。

FMの電圧は+32Vと少し高めです。また、電流値は+8mAですが電圧が高い影響のためで、ブロック電解コンデンサは過電流もなく良好と判断できます。 

・電源トランス110V端子接続 

給電電圧が高いため、電源トランスの一次側タップを100V⇒110V接続に変更して二次側電圧を下げて測定(測定電圧一覧を参照)します。(背面のヒューズホルダのヒューズを110V側にします。)

測定した結果からFMおよびAM受信で給電電圧が適正な電圧の電源トランス一次側は110Vタップで通常使用とします。

・短絡(ショート)

このTA-90は購入時に電源ヒューズが溶断していました。修理中も電源トラブルもなく良好に動作していました。それが、突然6AQ8付近から小さな白煙で、ヒューズ線は白熱電球のように光っています。 電源ヒューズが溶断していたのでおかしいとは思っていました。

ヒーターの5番端子とシールド板の接触あり
2P(プレート)1番端子とシールド板もショートの危険性あり

すぐに電源落として裏返して確認します。6AQ8のソケットのシールド板と端子が接触してショートしていました。6AQ8のヒーター用の5番端子とシールド板がショートしたのが原因です。6AQ8を揺すると2P(プレート)用の1番端子もシールド板と接触します。シールド板を少し上に位置をずらし、端子から遠ざかるように横に曲げて接触しないように修復します。本来はシールド板の下に端子が来ても接触しないようにシールド板がカットされています。シールド板の設置位置が低すぎてカット面が端子に接触していました。これも見たくなかったもうひとつの製造ミスです。 

4-2.受信確認(1回目)

AM,FM共に正常に受信できます。ジーッとノイズが入り耳障りです。一番疑わしいのはブロック電解コンデンサで交換する必要がありそうです。

4-3.再修理(ジーッ音のノイズ)

受信時にジーッとノイズが入ります。ブロック電解コンデンサが疑わしいので確認します。電源回路にモニターを入れて直接ノイズ音を確認します。 ブロック電解コンデンサに近いほどノイズが大きくノイズの質も音声出力と同じです。ブロック電解コンデンサがノイズ源で確定です。

外観はそのままのブロック電解コンデンサ

新しい電解コンデンサと交換し、黄色いカバーのブロック電解コンデンサはくり抜きそのまま設置して再利用すれば、外観は全く変わりません。

ヒヤリング試験をしますが、嘘のように電源ノイズは消え音声がクリアになり修理は成功です。 

4-4.受信試験(2回目)

再修理でブロック電解コンデンサを交換して電源ノイズもなくなりました。しかし、FMステレオ放送を聴くと背景にサーッと違うノイズが聞こえて気になります。

FMシグナルジェネレータとスペアナを接続して波形を観測します。チューナーを裏返しにするなど本体を動かすと波形が変形したり、うねったり不安定です。ノイズレベルは-50dBとかなり悪い状態で、これがサーッという消したいノイズです。高調波も全帯域で発生しています。ノイズの解消というよりは、波形の不安定さを解消するのが先決のようです。

4-5.再々修理(サーッ音のノイズ) 

部品のひとつひとつのハンダ付けや配線、容量など地道にチェックします。原因はセラミックコンデンサのリード線が6AQ8の端子に接触しており、 微小な容量変化が局発周波数に影響して波形が不安定になっていました。

セラミックコンデンサのリード線にエンパイヤチューブを被せて6AQ8端子と接触しないように対策します。対策後のスペアナを見ると高調波も少ない綺麗な波形です。

スペアナで見たノイズもなく正常な波形と帯域

この状態でRFやIFなど調整します。調整したことによりノイズレベルも-70dB以下になりました。もう少しノイズレベルが低いといいのですが、FM黎明期のMPX出力の限界かと思います。

4-6.受信試験(3回目) 

サーッ音のノイズも低減したので、マジックアイの機能を確認します。 

マジックアイ・AFC OFF(緑) 

マジックアイ・AFC ON(赤)

マジックアイの受信状況の変化は良好です。このマジックアイ(6ZE1)はAFC機能OFF:緑、AFC機能ONで赤く点灯が変わります。また、AFC機能の受信周波数に引き込む動作は良好でした。 

4-7.MPX出力(FMステレオ放送)

TA-90のMPX出力とFMマルチプレックスアダプターには同じナショナルのSH-300がよかったのですがSH-300の調子が悪く、TRIO AD-5を接続してFMステレオ放送を試験します。

TRIO AD-5とTA-90でFMステレオ試験

FMステレオのセパレーションは右25dB、左23dBでした。 FM黎明期の真空管チューナーとしてりっぱな数値です。

5.ヒアリング

TA-90とAD-5でヒアリング

・感度: 

 AMとFMは受信感度も高く良好に受信できます。

・AM:

  音質はノイズも少なく聴きやすい音質です。 

・FMモノラル:

  中域が前面にでた音のバランスです。全体的に厚みのある音がします。音質はクリアでノイズ感はありません。高音も程よくでています。

・FMステレオ:

  中低音が厚く、全体的にエネルギー感のある音がします。奥行も良好でやわらかな高音です。全体がなめらかな音質で、ボーカルに艶や色気があります。

・ノイズ:

  ステレオ時にサーッ音が入りますが、激しい曲では判りません。静かな曲などではノイズは聞こえますが、さほど気にならない範囲かと思います。 

6.デザイン考察

TA-90の黒を基調としたデザイン

TA-90は、黒を基調としたパネルに中央のゴールドのツマミを配置した、通信機そのものの面構えをしています。家庭用チューナーとしては武骨で、好みが分かれるデザインです。なぜナショナルは、このような通信機的デザインを採用したのでしょうか。

結論として、通信機を作りたかったのではなく、“通信機の信頼性と精密さ”を外観で表現したかったと考えられます。

1960年代前半はFM放送が始まったばかりで、FMチューナーはまだ新しい高周波機器でした。ナショナルとしては、「高周波技術に強いメーカーである」という印象を市場に示す必要があり、その象徴として通信機のデザイン言語を取り入れたと考えられます。

実際、TA-90の内部構成は家庭用ラジオより通信機寄りで、RF → MIX/OSC → IF×2 → LIM → DETという本格的な高周波構成や、AFC・MPX出力など、当時としては先進的な要素が多く含まれています。外観と中身が一致しているわけです。

また、松下電器は当時、通信機器部門と家庭用ラジオ部門を並行して持っており、高周波技術者がチューナー開発に関わった可能性も十分にあります。

つまりTA-90の武骨な外観は、単なるデザインではなく、「精密な高周波機器である」という技術的メッセージを込めた意図的な選択だったと考えられます。マニア好みの外観になったのも、その結果と言えるでしょう。

TA-90のデザインは、1960年代前半の技術観とナショナルの姿勢がそのまま外観に表れた製品です。デザインには、その時代の空気と気配が満ちています。

7.まとめ(総評)

TA-90 は、FMステレオ放送開始前に MPX 出力を搭載した先進的な設計で、 ナショナルが FM 時代を強く意識していたことが分かります。 修理後は動作も安定しており、60年以上前の製品とは思えない完成度です。 当時の技術思想と設計品質を今に伝える、非常に魅力的なチューナーだと感じました。

2026/03/25

ナショナル RE-510 回路図の公開

 1.概要

RE-510  FMチューナー

ナショナル RE-510の紹介です。1963年頃の製品で6,800円の製品です。本記事では、これまで未公開だったRE-510の回路図を、実機から新たに起こして公開します。
さらに、1958〜1964年にかけてのナショナルFMチューナーの系譜を一次資料から再構成し、RE-510の技術的・歴史的な位置づけを明らかにします。

2.RE-510回路図の公開

作成した回路図は以下の計3枚になります。

RE-510回路図(1/3)

RE-510回路図(2/3)

RE-510回路図(3/3)
以上がRE-510の回路図です。回路図はヘラジカ資料室からダウンロード(ナショナル RE-510 回路図 )できます。

3.回路図が未公開の謎

以前、数台修理をしたことがあるチューナーです。何故かRE-510の回路図は公開されていません。RE-510とセットで使用するFMアダプターRD-511の回路図は公開されています。RE-510の回路図だけが公開されていないのが不可解です。回路図を公開したくない理由があったのでしょうか。

4.RE-510の特徴

回路図を起こしてまず感じたのは、想像以上に簡略化された構成であるという点でした。この回路図から読み取れるRE-510の特徴は以下の通りです。
•     17EW8
RF増幅とミキサーを1本でまかなうための採用。コストと構成の簡略化が目的。
•     IFTをフロントエンドと一体化
部品点数を減らし、調整箇所を最小限にするための構造。
•     初期IFTで2段構成
必要最低限の選択度を確保しつつ、回路規模を抑えるため。
•     AGCなし
簡易型チューナーとしての割り切り。回路を簡素化しコストを下げるため。
•     2連バリコン
RFと局発の同調のみを行う最小構成。FM-P1の簡略化路線を継承。
•     MPX出力
外付けのFMアダプタRD-511でステレオ化するための出力端子。
RE-510単体ではモノラルですが、FMアダプタRD-511と組み合わせることでFMステレオ放送を受信できます。
当時のFMステレオ普及期に合わせ、必要最小限の構成でステレオ対応を可能にした設計と考えられます。


5.FMチューナー系譜の変遷

ナショナルのFMチューナーの系譜を追っていくと、1958年のES-901を起点として、
その後のモデルがどのように簡略化され、普及機として整理されていったかが見えてきます。

・系譜図 

ES-901(1958)  

 └── AS-907(1958)

     └── FM-P1(1958)

        ├── RE-510(1963)※本作:FM-P1の簡易版 

        └── EUL-FMP2(1964)

 
最初期の ES-901(1958) は、FM黎明期の製品らしく構成が複雑で、高周波・中間周波ともに本格的な設計が採用されています。

同年の AS-907(1958)  はES-901の設計思想を踏襲しつつ、部品点数や構成を見直した整理型のモデルです。

同じ1958年に登場した FM-P1(1958)  は、FM普及を目的として大幅な簡略化が行われたモデルで、以降のナショナルFMチューナーの基礎となる構成がここで確立されます。

RE-510はこの系譜の中でも特に簡略化が進んだモデルであり、FMステレオ普及期における価格帯の調整という役割が強く現れています。FMアダプターRD-511と組み合わせる方式を採用したのも、当時の価格戦略の一環と考えられます。

翌年の EUL-FMP2(1964) では、FMステレオ時代に対応した新しい構成が採用され、
RE-510以前の簡略化路線から、ステレオ対応の本格チューナーへと移行していきます。

1958年から1964年にかけてのナショナルFMチューナーは、複雑な初期構成から簡略化、そしてステレオ対応へと段階的に変化していったことが、一次資料から確認できます。


・RE-510の位置付け

RE-510はFM-P1の流れをくんだ簡易型FMチューナーで、FMステレオ放送の普及期に合わせて機能を最小限に抑えた廉価モデルです。FMチューナー部とFMアダプタRD-511を分離した構成も、購入価格を抑えるための設計と考えられます。RD-511と並べて使用することを前提としたデザインで、セットとしての統一感が重視されています。
このように、RE-510は「RD-511のための簡易チューナー」という性格が強いモデルです。
 
5.回路図が公開されなかった理由(推測)
 
RE-510の回路図は、他のナショナル製FMチューナーと異なり公開されていません。
その理由として、以下の可能性が考えられます。

可能性1:技術的に新しくないため公開価値が低かった
RE-510はFM-P1の簡易版であり、技術的には既存構成の再利用が中心で、新規性が少なかった。
可能性2:RD-511とのセットとして見せるため
技術的には他機種とも接続可能だが、RE-510はRD-511と並べて使用する前提でデザインされており、“専用チューナー”として見せた方が販売上わかりやすかった可能性がある。
可能性3:社内資料の整理上の理由
廉価版モデルは、詳細資料が省略されることが当時のメーカー資料では珍しくない。

これらを総合すると、RE-510は技術資料としての公開よりも、製品としての位置づけが優先されたモデルであった可能性が高いと考えられます。 
以上の点を踏まえると、RE-510は技術的背景だけでなく、当時の市場環境や製品戦略とも密接に結びついたモデルであったことがわかります。 
 
6.最後に 

RE-510は廉価版でありながら、FMステレオ普及期のナショナルが果たした役割を象徴する製品です。今回の回路図公開により、これまで不明だったRE-510の技術的実像が明らかになりました。本記事が、RE-510の実像を理解するための基礎資料となれば幸いです。
 

7.参考資料
以下は機能比較に使った資料類になります。 
 
ES-901(1958)
以下の資料は、オーム社編「FMラジオの解説と製作」昭和33年8月20日発行にES-901が掲載されていたものです。また、「無線と実験401回路集」昭和33年発行にES-901が掲載されています。

ES-901仕様(1/2)

ES-901仕様(2/2)

ES-901回路図

AS-907(1958)

AS-907の発売時期(1958)の特定には、ナショナル 電化製品カタログ 昭和33年に ES-901,AS-907が揃って掲載されたことを年代特定としています。 

AS-907回路図
AS-907回路図はFMチューナー本体に掲載されたものです。

FM-P1(1958) 

FM-P1の回路図および詳細はn.p.cを参照してください。以下には参考にしたFM-P1ワイヤードパックの回路図やFMチューナー使用例の回路図です。 

FMステレオ製作読本よりFM-P1回路図と解説

1964.5ラジオ技術よりFM-P1のFMチューナー使用例

FM-P1の発売時期(1958)はn.p.cより特定しています。national parts fan circle(n.p.c) 1958年 No11「FMの理論と実際(第3回)誰でもFM受信機が作れる」にFM-P1の詳細が掲載されています。下記のリンク先でn.p.c.資料が参照できます。

ラジオ工房のFM-P1 n.p.c.資料:5m-2npc 1958-11 ナショナル FM専用チューナーの作り方 FM-P1について 

n.p.cは松下電器・部品事業部がアマチュア向けに発行していた機関誌です。参考として電波科学に掲載していた広報を載せておきます。

n.p.c機関誌の雑誌案内(1/2)

n.p.c機関誌の雑誌案内(2/2)

RE-510(1963)

ナショナル 電化製品 カタログ 昭和38年版に掲載されていることから発売年を特定しています。

EUL-FMP2(1964) 

ラジオ技術(1964.5)に掲載されていた資料です。

EUL-FMP2概要(1/2)
 
EUL-FMP2概要(2/2)

EUL-FMP2回路図
推奨回路例

2026/01/04

後編:テープレコーダー用ストロボディスクの製作

 1.概要

ナショナルRQ-402とストロボディスク
テープ レコーダー用ストロボディスクの製作です。先日、ナショナルRQ-402やソニーTC-220Lを修理していたときの疑問です。モノラルオープンテープレコーダー 9.5cm、4.75cmはどうやって速度調整(または速度測定)をするのかということです。カセットテープレコーダーではメーカー製やネットで個人販売しているテストテープで速度測定ができます。19cm/sステレオオープンリールテープレコーダーも同様です。家庭用モノラルオープンテープレコーダー 9.5cm、4.25cmのテストテープは見たこともありません。家庭内で閉じた録音再生が前提で所有している機器の速度がマスターなのかもしれません。

2. 非接触型タコメーター

SHIMPO DT-205B

前回、修理したRQ-402やTC-220Lのテープ速度は非接触型タコメーター(SHIMPO DT-205B)で測定しています。通常、テープレコーダには使わない測定方法です。

ゴム足に反射シールを貼る

上の写真ではテープレコーダーのキャプタンの上に円筒形のゴム足を被せています。その円筒形のゴム足の上に反射シールを貼ります。

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タコメーターで回線数を測定

テープレコーダーを回しながらキャプタンの円筒形にある反射シールにレーザー光を当てれば速度を簡単に測定できます。 最近は非接触型タコメーターも安価になり購入しやすくなっています。 タコメーターを使うにはキャプタンの回転数を事前に知る必要があります。 条件:RQ-402、テープ速度9.5cm/s、キャプタンの直径8mm、電源周波数50Hzとします。1秒あたりの回転数:8mm×3.14=25.13mm、3.78×60秒=227rpmとなります。 タコメーターで実測するとテープ速度9.5cm/sのとき226rpmと観測できました。

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3. ストロボディスクの製作 

テープ速度を測定していて思い出したのがストロボディスクです。ストロボディスクはレコードプレーヤー用が一般的です。 

3-1. ストロボディスク製品

テープレコーダー用 外付けストロボディスク

昭和43年 誠文堂新光社「テープ・レコードとテープ・プレーヤー」より抜粋 

上の写真は昔の雑誌から抜き出したテープレコーダー用のものです。外付けできるテープレコーダー用ストロボディスクです。実際には見たこともないレアなものです。特別な機材も必要ないので便利そうです。シビアな精度を問わない日常のテープ速度の確認用には良いかもしれません。

3-2. ストロボディスの線数計算

早速、RQ-402用9.5cm/sのストロボディスクを作成してみます。 まず最初にストロボディスクの線数を計算します。227回転÷60÷100=0.03783...となり、0.03783...×360=13.62度です。1本の線の角度が13.62度ですから、360÷13.62=26.4本/回転となります。ストロボディスクの線数は整数化して26本または52本になります。

26本と整数化(0.4本数が減っていので回転は速くなる)したことでストロボディスクの誤差は以下のとおりです。計算上は26.4本、360÷263.846…、360÷26.43.636…、1線数あたりの角度差:3.846-3.6360.21度、1回転の角度差:0.21×265.46度、誤差:5.46÷360×100+1.52%となります。

 

3-3.ストロボディスクの描画 

Inkscape(インクスケープ)

ストロボディスクの線数は26本と52本で作成してみることにしました。しかしストロボディスク作成で26本の線を描くのに苦戦しました。イラストレータなどのドローソフトは持っていませんので中途半端な角度の描画には無理があります。 試行錯誤で見つけいたのがInkscape(インクスケープ)で無料の多機能ドローソフトです。何角形でも簡単に描画できるのでストロボディスク製作に最適です。

Inkscapeでストロボディスクを描画
Inkscapeを起動して新規作成画面で左端の星形/多角形ツールを選択します。1つ図形を描画します。描いた図形を選択したら、右側の”オブジェクトのプロパティ”で星形を選択、”角”を26に設定、”スポーク比”と”丸め”で描画を変形させれば完成です。

印刷したストロボディスク

  

上の図では26本と52本のストロボディスクを3パターン作成しました。ただし歯車型は中央に白丸を後から編集して作成しています。上のテンプレートは「ヘラジカの資料室」からダウンロードできます。

3-4.アダブタ化 

左:ゴム足加工前 中央:線数26本 右:線数52本

キャプタンに取り付けるため今回はゴム足を使いました。ゴム足の径が直径8mmキャプタンに丁度良く収まります。ストロボディスクのパターンを印刷してゴム足に糊付けします。 

ストロボディスクをキャプタンへ取り付け

上の写真は26本のストロボディスクをRQ-402のキャプタンに取り付けた様子です。 

3-4.スロトボライト 

Douk Audio ストロボライト

光源にはDouk Audio 50/60Hzストロボライトを使用しました。Douk Audioストロボライトは50Hzまたは60Hzの周波数で高輝度LEDを精密に点滅させるライトです。昔から使われていた電源周波数50Hzまたは60Hzにより点滅させるネオンランプや蛍光灯に変わる現代の製品です。このライトをストロボディスクに照らすことでストロボ効果を得ることができます。

Douk Audio ターンテーブル用LPレコード 50/60Hz ストロボスピードメーター + タコメーターディスク:Amazonへのリンク

3-5.測定 

速度がテープレコーダーの9.5cm/sに同期するとストロボディスクの模様が静止します。速度が遅いと模様が右に回転、速いと模様が左に回転します。26本の方が模様がハッキリと見やすいです。52本になるとパターンが薄く見えにくいです。これ以上の線数は実用的ではないかと思います。

ストロボディスクの模様が静止して見える

4.あとがき 

テープレコーダー用のストロボディスクの製作は思っていたより苦労しました。 ストロボディスクのパターン作成にはInkscape、ストロボライトにはDouk Audioの製品に助けてもらいました。昔だったら自作でストロボディスクのパターン作成は無理だと思います。レトロなデープレコーダーの速度測定は新しい技術に助けてもらった形でようやく完成しました。

スロトボディスクを装着した様子

家庭用モノラルオープンテープレコーダー用にストロボディスクを1個作成してみてはいかがでしょうか。愛機のテープ速度が正しいのか簡単に確認できるかと思います。

5.  蛍光灯とネオンランプ(2025.1.5 追記

ストロボライトはDouk Audio製品などを購入しなくても昔ながらの方法があります。

小型蛍光灯をストロボライトとして使用
1つめの方法は蛍光灯をストロボライトとして使用します。蛍光灯は電源周波数50Hzまたは60Hzで点滅する照明です。上の写真はミニ蛍光灯でストロボディスクを照らした様子です。ストロボ効果でディスクの模様が静止していることがわかります。 

電源タップのネオンランプをストロボライトとして使用

2つめの方法はネオンランプをストロボライトとして使用します。家にネオンランプなんかないと思いがちですが、どこのご家庭にもあるテーブルタップのスイッチ照明に使われています。ネオンランプはランプ切れがなくランプ交換不要という特徴を生かしてスイッチ内のランプに使われています。上の写真ではテーブルタップのスイッチ照明でディスクを照らして模様が静止している様子です。

Douk Audioのストロボライト、蛍光灯、ネオンランプのどれと比較しても同じ速度でディスク模様が静止して見えます。Douk Audio製品も昔ながらの方法も同じ結果となりました。

ご家庭にある身近な製品をストロボライトとして使ってみてはいかかでしょうか。 

6.参考リンク(2026.1.30 追記

修理後のRQ-402は、テープ速度が適正であるかを確認する手段がありません。
本記事は、前編「RQ-402 ゴールドメカA(エース)」の修理内容を前提としていますので、あわせてお読みいただければと思います。