1980年頃、夜間に小音量で音楽を楽しむためのマイクロスピーカーが密かなブームでした。代表的なスピーカーにはテクニクス:SB-F01やLo-D:HS-01などがあります。当時、深夜のFM放送ジェット・ストリームを聴くのにピッタリの製品でした。
今回は、YUPITERU:SP-5Hのジャンク品を入手しました。このマイクロスピーカーを流用してテクニクス:SB-F01風の音に改造してみたいと思います。
上の写真のYUPITERU:SP-5Hは形状やスペックが全く同じであることからLo-D:HS-01のOEM製品(たぶん1981年、10,000円の製品)ではないかと思います。ジャンク品は故障していて左右スピーカーからの音は出ませんでした。
上の写真が分解した様子です。出力3Wのフルレンジ50mm口径のスピーカーが目を引きます。22Ωのハイインピーダンスはイヤホンジャックのインピーダンスに合わせるためです。スピーカーBOXは鉄製の枠組みでスピーカーを防磁しています。スピーカーBOXはアルミ製の丈夫な作りで幅68x高さ88x奥行58mm、重量は550gと大きさの割には重たいです。
イヤホンジャック用入力の22Ω:3W、スピーカー端子入力の100Ω:70Wと2系統の入力端子を持っています。スピーカー端子の穴は小さく太いケーブルは接続できません。イヤホンジャック端子を接続するとスピーカー端子側は切断される仕組みです。
スピーカーのコイルからの銅線で編んだ引き出し線が劣化して断線しています。前オーナーさんがハンダ修理した形跡が残っています。引き出し線全体が錆びてボロボロで修理はできそうにありません。まだ使えそうなスピーカーBOXが惜しいです。3W・22Ωのスピーカーは入手不可能で代用品はありません。50mm・8Ωなら入手できますが、それでは普通のミニ・スピーカーと同じでSP-5Hの個性もなくなり改悪です。
そこでテクニクス:SB-F01をヒントにSP-5Hにヘッドホン用スピーカーを搭載してみることにしました。なお、Technics SB-F01 はヘッドホン端子からの駆動を前提としたスピーカーで、今回製作するスピーカーの構成はその系譜にあります。
BOSE QuietComforeの交換用スピーカー(中国製の正規品ではなく互換品だと思います)32Ω・20mWを使用します。このスピーカーと交換してテクニクス:SB-F01風の音になるか試してみたいと思います。
BOSE QuietComforeの交換用スピーカー:Amazonヘノリンク
YUPITERU:SP-5Hは50mmスピーカーです。交換用スピーカーは40mmで口径補正用のバッフルが必要です。はんだ線のボビンを利用してバッフル2個を製作します。バッフルの内径は40mmよりほんのわずか小さくします。バッフルをネジとボンドで固定します。
最後にスピーカーはボンドでカチカチになるようにバッフルと接着します。半日から1日程度、ボンドが乾くのを待ちます。最後に配線すればYUPITERU:SP-5H(改)の完成です。
出来上がったスピーカーの入力対応はヘッドホン・ジャック出力のみとします。ヘッドホン用スピーカーなので最大出力は30mW程度です。アンプのスピーカー端子と接続しないのは、ちょっとしたノイズや衝撃音でスピーカーが破損するのを回避するためです。
今回はUSB DAC:Topping DX3proのヘッドホン・ジャック出力(最大1500mW)と接続してヒヤリングします。非常に繊細な音質です。一音一音の分解性能は高く中高域が美しく響きます。弦楽器の響きが特に美しいです。音の定位も明確で奥行きなどの空間表現にも優れています。当然、包み込むような低音はでませんし、音のスケール感は小さくなります。少し高音の粗さが気になります。夜間のリスニング用ニアスピーカーとしては十分な音量です。通常のスピーカーとは全く異なる音です。
本家のテクニクス:SB-F01と比較してヒヤリングしてみます。中高域がきめ細かいシルクタッチで上品な音質です。SB-F01はややおとなしいですが繊細で奥行のある音です。YUPITERU:SP-5H(改)はクリアで明るい音色で音が前面に出てきます。個人的にはSP-H5(改)の高音の伸びと透明感やメリハリのある音が好きです。陽気で元気の良いスピーカーに仕上がりました。
テクニクス:SB-F01は、いつの間にか忘れ去られた80年代のスピーカーです。「真夜中のささやき」のフレーズを思い出させるSP-5H(改)です。
ヘッドホン用スピーカーを搭載したスピーカー製作は参考になったでしょうか。高品質で小音量のニア・スピーカーは深夜に自分だけの特別な空間を提供してくれます。
2024.12.2 エージング(初期)
YUPITERU:SP-5H(改)は新品のスピーカーのためエージングが必要だった様です。高域の粗さがとれて優しくきめ細かい高音に変化しました。
2025.1.25 エージング(長期)
YUPITERU:SP-5H(改)は、使い込んでみると想像以上に良いスピーカーです。独特のクリアで澄み切った音は夜間のリスニングには欠かせないアイテムとなりました。
2026.1.31 最後に
今回の製作ではヘンドホン用ユニットを使うなんて乱暴なことをすると思った方もいたかと思います。ブログに登場するテクニクス:SB-F01がまさにヘンドホン用ユニットを採用した製品です。また、SB-F01は商業的には成功した製品ではありませんが、オーディオ評論家の瀬川冬樹氏が使用していたことで知られています。このブログは、その前例を参考に製作したスピーカーの再現です。
2026.2.9 製作の意図
ニアフィールド専用スピーカーは30cm〜80cmぐらいの距離で聴くスピーカーです。低音はでませんが、立ち上がりのよい、クリアで定位の良い音が特徴です。
今回は、オープンエア型ヘッドホンの延長上にあるスピーカーを作ることです。
SB-F01はスピーカーボックスも大きく、ほんの僅かですがボックスの内容積とスピーカーとボックスの連結強度が音に影響していると感じられます。
今回のSP-5Hのボックスはより小さく内容積の空気の影響はほぼなさそうです。ボックスは分厚い金属ですから箱鳴りはありません。そして、スピーカーとボックスは高硬度のボンドで完全に固定することで余分な振動を排除します。これらのことは、ヘッドホンの製作と同じ考え方かと思います。
そして音質は、スピーカーが持つ本来の個性がダイレクトに伝わる構成となります。
以上、ニアフィールド専用スピーカーをどんな考え方で製作したをご説明させて頂きました。
2026.2.14 JBL CCLDの世界
このニアスピーカーの製作には、JBL CCLDに通じる目的があります。音の粒子の世界をスピーカーで実現することです。JPLAY FEMTOをKS(Kernel Streaming)で動作させて、USB DACからイヤホンやヘッドホンで聴くと音の粒子の世界を聴くことができます。このニアスピーカーはUSB DACに直接接続して音の粒子の世界を再生することを目的としたスピーカーです。
関連ブログ
テクニクス EAS-8HH17Gとチャージカップルド・リニア・ディフィニション
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