2024/05/09

HITACHI Lo-D SR-600 ステレオ・レシーバー

 

 HITACHI Lo-D SR-600 ステレオ・レシーバーの紹介です。1971年頃、56,800円のレシーバーです。シルバーメタリックのフロントパネルが美しいレシーバーです。同時期に発売されたプリメインアンプ(IA-600,IA-1000)もSR-600と同様に評価も高く今でも買い求める人が多い製品かと思います。

背面パネルは全体が利用されて空スペースがありません。パワートランジスタの保護カバーが4つ四角く突き出ているのが印象的です。右上は左右のスピーカーヒューズの保護によるレシーバーのようです。

パワーアンプ基板に大容量コンデンサ×2個を直接配置した作りです。

レシーバーのカバーを外すと、透明のビニールに包まれた自作のスピーカー保護基板(上の写真)が設置・配線されていました。プリント基板は固定もされていないでブラブラの状態です。年代物のリレーとトランジスタ(2SC92,2SC69)で遅延回路の機能を持たせたスピーカー保護回路のようです。電源ONの時に保護回路が必要なほど激しいポップノイズがでたのだと思います。他のレシーバー修理でも保護回路が後付けされていた経験があり前オーナーさんにとっては切実な機能だったかと思います。

 

修理は劣化部品を交換して再調整します。スピーカー保護回路以外は普段と変わらない修理作業です。

SR-600にはシグナルレベルメーターはありますが、チューニングメーターはありません。その代わり最適なチューニングが出来た時点でダイヤル針がオレンジ色に点灯する機能を持っています。修理後に再調整して気づいた便利なチューニング機能です。

試験的にスピーカーを接続してみます。予想どおりの激しいポップノイズです。スピーカー端子の電圧を見ると、電源ONにした時の高い電圧が発生してから減衰するまでに約7~8秒も時間もかかります。スピーカーの故障を誘発する非常に困った症状です。対策として新たにスピーカー保護基板を設置しました。 ポップノイズの原因は不明ですがパワーアンプ基板に実装された大容量電解コンデンサーの影響かもしれません。

上の写真が電源電圧12~24Vのスピーカー保護回路です。レシーバーの電源部から抵抗で少し電圧を落として電源を確保します。左右のスピーカー(+)のみ保護リレーに結線してあります。この保護回路はスピーカ端子が0.7V以上では動作しない仕様です。電源ONすると約10秒ほど経ってからリレーが動作しました。パワーアンプの直流電圧が落ち着くまで時間がかかるレシーバーのようです。また、パワートランジスタの発熱が大きいので専用のヒートシンクは必要だったと思います。

昔、日立さんが管球式の音を持ったレシーバーと広告してたのでヒヤリングが楽しみです。USB DACを接続してヒヤリングしてみます。このレシーバーはすばらしい音の出来栄えです。上下に帯域も広くクリアでキレのある音質です。最新の音楽ソースでも全く遜色ない音を聞かせてくれます。MMカートリッジでレコードを聴いてみますが同じ音の傾向です。Phono入力でのレコードの音がいいレシーバーは少なく貴重な製品です。音の量感、奥行の雰囲気も良好な大人のレシーバーです。SR-600はLo-D のオーディオブランドに恥じないレシーバーの名機かと思います。

2024/05/05

TRIO AFX-21T を利用したFM MPX アダプターの製作

 

 TRIO AFX-21Tを利用したFM MPX アダプター製作の紹介です。 TRIO AFX-21T は、1967年、28,900円のAM/FMチューナーです。

 

チューナーのセレクターの軸が折れて修理できないジャンクになってしまいました。内部のプリント基盤はきれいで捨てるにはおしいので再利用することにします。

電波科学 1967年11月号にAFX-21T の回路図が掲載されています。回路図を見ると、①RF基板、②IF基板、③MPX基板、④AUDIO基板、⑤POWER SUPPLY基板などの機能毎にプリント基板が分かれて構成されています。MPX基板が独立していて分離できるため、プリント基板をそのまま載せ替えてFM MPXアダプターを作りたいと思います。この年代以降になると、MPX回路とIF回路を1枚のプリント基板に実装したり、MPX ICIF ICが搭載された高密度実装になり再利用しにくくなります。

AFX-21Tから、電源トランス、MPX基板、AUDIO基板、POWER SUPPLY基板を取り出してシャーシ(摂津金属工業CA-80W:縦8cm×横20cm×奥行18cm)に組み込みます。上の写真は部品を仮置きして配置を決めている様子です。

部品の配置が決まったらシャーシにプリント基板固定用のスペーサーを取付けます。電源スイッチ、ヒューズホルダー、ACコード、RCA端子、STEREOランプなど流用できるもはすべて再利用します。

電源用ネオンランプ、スペーサー、整流ダイオード×1、電解コンデンサ220μF、ラグ板×2、RCAコード×1だけは新たに用意しました。配線もすべて流用させてもらいました。

組み立て前にプリント基板の電解コンデンサなどの劣化部品は全て交換しておきます。回路図を見ながら最初に電源回路およびSTEREOランプの電源部(ラグ板で作成)を配線します。次にオーディオ基板とMPX基板を配線しました。

半日程度の作業で完成です。上の写真は完成後の姿です。手配線が乱雑で美しくありませんがご容赦ください。

再度、配線を確認してから電源を入れて各電圧を確認します。次にチューナーからのMPXを入力してRCA端子から左右の音が出力されるか確認します。心配だった部品配置やアース位置、配線経路などからのノイズはないようです。最後に測定器を入れてセパレーションの調整およびSTEREOランプが点灯するように調整します。

 
完成品をヒヤリングしてみます。ノイズ感はなく繊細でクリアな音質です。弦楽器の鮮やかな高音が印象的です。すっきりした透明感とキレのある音がします。低音がたっぷり出るような質感の音は苦手なようです。それなりに奥行もあり雰囲気も持っています。当然ですが長時間ヒヤリングしても発熱は少なく安定した動作です。高級なFM MPXアダプターが出来上がりました。AFX-21Tはオールトランジスで組まれた製品です。1チップとなったMPX ICも良いですが、オールトランジスタで組まれたMPXも捨てがたい魅力があります。今回のFM MPXアダプターは、プリント基板の乗せ替えなので工作する難易度は低いかとおもいます。製作したレトロなFM MPXアダプターと真空管モノラル・チューナーとを組み合わせてFMステレオ放送を楽しんでみたいと思います。