2023/05/07

PIONEER パイオニア A-X730 プリメインアンプ(ジャンパーピンの製作)

PIONEER パイオニア A-X730 プリメインアンプの紹介です。1987年の製品です。パイオニアのプライベート・プロシリーズのシステムコンポのプリメインアンプです。プライベート・プロは単体コンポの性能をそのままに小型化したシステムコンポです。そのためA-X730はW360×H135×D315mmですが重さ11kgと重量級です。 

このアンプは全面パネルと背面パネルを取り外さないと中の基板が取り出せない構造になっています。購入時は埃がいっぱいなので分解して清掃します。内部を確認しますが部品の劣化や損傷はない様に見えます。ヒューズも切れていません。

試しに電源を入れてみます。保護回路のリレーは正常に動作します。チューナーを接続しますが音が出ません。プリアンプ部とパワーアンプ部の接続箇所で故障の切り分けをします。背面パネルのジャンパーピンがありません。応急処置としてRCAステレオケーブルで接続します。正常に音が出ます。ノイズもありません。ボタン類の動作も正常です。「音が出ません」とのジャック品を購入したのですが修理する箇所もなく拍子抜けです。

材質が2種類のジャンパーピンを製作します。ホームセンターでは3mmのアルミ製丸棒しか販売していないのでアルミ製を購入しました。後日、3mmの銅製丸棒はAmazonで見つけたので購入しました。 RCAピンジャックの間隔に合わせ丸棒を折り曲げて製作します。アルミ製丸棒は柔らかいので加工しやすいですが、銅製丸棒は固く作業が大変です。

製作後、念のためにテスターで抵抗を測定します。アルミ製1.2Ω、銅製1.2Ωと差はありませんでした。

 
上の写真は銅製ジャンパーピンを挿入した様子です。

最初に銅製ジャンパーピンでヒヤリングします。高音はきめが細かく繊細で気持ちの良い音がします。響きもよく量感も十分感じられます。次にアルミ製ジャンパーピンをヒヤリングします。高音のきめ細かさは減少して粒子が粗くなった印象です。量感も大幅に減少して痩せた音がします。 短い配線ですがジャンパーピンは音質に大きく影響するようです。もしくはA-X730が優秀なので聴き比べすることが出来たのかもしれません。

前回のSANSUI AU-207IIとは音の出かたが全く異なります。AU-207IIは音楽性重視、A-X730は余分な音を徹底して排除した原音重視なのでしょう。音づくりの方向性が全く違うように感じられます。どちらのアンプも音楽を楽しく聴かせてくれます。何が正しいのか迷うところがオーディオの奥深いところです。80年代末期のA-X730は純粋なオーディオ機器の流れを汲む良質の製品かと思います。

TRIO トリオ FX-7T(初代トランジスタ式FMチューナー)

TRIO トリオ FX-7Tの紹介です。1965年、43,900円の製品です。トリオの初代トランジスタ式・FMチューナーになります。外観はFX-6などと似たデザインを採用したアルミパネルが美しいチューナーです。当時は真空管式とトランジスタ式が乱立して登場していた技術の節目の時期にあたります。トランジスタを採用した多くのアンプやチューナーが雑誌を賑わしていました。FX-7Tはアナログ・チューナーとしては古い製品です。大型で性能の劣るチューナーと思われているのか安価で人気がありません。私にとっては貴重なチューナーなので修理したいと思います。 

ブロック電解コンデンサの液漏れや電解コンデンサの発熱によるカバーのめくれがみられます。アンテナ用同軸ケーブルの切断とAC100V端子によるケーブル被覆の絶縁破壊による短絡などの危険な故障もみられます。

劣化部品は全て交換します。ブロック電解コンデンサは4700μFに容量を増やして交換します。アンテナ用同軸も新しく張り直しします。 照明のガラス管ヒューズ電球もガラス面が黒く変色しているので交換します。

劣化部品等の修理も終わり次は電源試験です。0.27Aで正常です。受信感度やセパレーション、トラッキング等を調整します。

 MUTING(スケルチ)ツマミをまわしても局間ノイズが消えません。MUTING基板の半固定抵抗を回しても反応なしです。プリント基板の半固定抵抗をよく見ると回転ブラシの接触面が曲がり断線状態です。 半固定抵抗を交換します。交換後はMUTINGの感度調整ができるようになり局間ノイズを消すことができました。ただし、MUTING回路の影響でチューナーは再調整する必要があります。

前面パネルの文字がほとんど残っていません。アルミパネルに文字を彫り込むタイプではないため摩耗したようです。文字の修復にはレタリングより簡単な透明黒字のテプラを使います。上の写真は文字をテプラで修復したものです。

修理が終わりヒヤリングです。中音に厚みのある落ち着いた雰囲気を持っています。エージングが進むと音の見通しが良くなります。不思議と真空管式チューナーと似たような音の傾向です。このチューナーはもう少し高音寄りのバランスでも良かったと思います。当時のTRIOはチューナーに限っては真空管よりトランジスタの方が優位性があると全面的に移行しています。その後、トランジスタ式チューナーはFX-7T以降に機能・性能を大幅に改善されてゆきます。技術の変遷期に登場したTRIOの記念すべき初代トランジスタ式・FMチューナーです。貴重なFX-7Tは修理して大切に使ってほしいものです。

2023/05/05

SANSUI サンスイ AU-207Ⅱ プリメイン・アンプ

SANSUI サンスイ AU-207Ⅱ プリメイン・アンプの紹介です。1979年 34,000円の製品です。昔、SANSUIのアンプを使っていたことがあり懐かしくなり購入しました。ブラック・パネルは定番です。さすがにこのクラスではツマミはプラスチック製が採用されています。しかしツマミの感触は良く操作感も良好です。

薄型のアンプなので内部のつくりに興味津々です。大型の電源トランスにパワートランジスタ(2SB545A/2SD188A)、アルミ製ヒートシンクでシャーシを補強する構造になっています。回路はシンプルでもう少し凝った回路を想像してたので意外でした。しかし個人的には好感のもてる回路構成です。

 
電源回路は目的別にフォノイコライザー、プリアンプ、パワーアンプに区分されています。内部を見ても触った痕跡はありません。ヒューズ切れはなく見た目には損傷はなさそうです。プリント基板の電解コンデンサの一部に被覆が熱でめくれているものがあります。劣化部品は全て交換します。

劣化部品を交換してから電源を入れてみます。電流値は0.3Aで正常のようです。保護回路のリレーが正常に動作します。電源回路の出力電圧も正常です。AUX1kHzを入力してみるとRchはきれいな正弦波で正常ですがLchは波形も小さく大きく歪んでいます。Lch回路の各電圧を測定しますが微妙に全ての数値が違います。なかなか故障箇所が特定できません。

結論から言うとLchの82Ωの抵抗が断線と10kΩに劣化しています。抵抗を交換して波形が正常に出力しました。念のためRchの抵抗を取り外して測定すると同じく断線と2kΩに劣化しています。抵抗が断線でもRchから出力していたのが理解不能です。更にRchとLchの220Ωは4本とも全て断線を確認しました。この抵抗を交換すると低音がでるようになり音質が激変です。バイアスは7mVに合わせます。回路図には故障した抵抗に赤丸マークを入れてあります。経年劣化で回路が不安定になりトランジスタに大きな電流が流れてW数の小さい抵抗が損傷した模様です。

次に音質の確認をします。左右ともにノイズが出ています。ノイズはプリアンプ部の2SC1845のトランジスタ交換で解決しました。更に長時間ヒヤリングしていると右側の高域で滲みでるような歪みが聴こえます。基板を良く見ると右端奥の3.3μF電解コンデンサの交換を忘れていました。すぐに交換して歪みは完全になくなりました。

修理が終わりヒヤリングをします。AU-207IIは音のバランスも良く過不足は感じられません。バイアス調整により音に深みが出ています。ジャンルを選ばす良質の音楽を聴かせてくれます。上位機種と比べれば音全体に不満は感じます。しかしAU-207II単体だけのヒヤリングで不満を感じる人は少ないと思います。AU-207IIは低価格帯ですが音楽性をもった良く出来たアンプです。