2024/07/06

AIWA TPR301 FM/MW/SWラジオカセット

AIWA TPR301 FM/MW/SWラジオカセットの紹介です。1974年、40,800円のラジカセです。このラジカセの特徴はダブル・ダイヤルスケールです。とてもレアな機能ですが、真空管チューナーの頃にはダブル・ダイヤルスケールが既に搭載されています。FM、AMなど一度選局しておけばバンドが変わるたびにいちいち選局の必要がない便利な機能です。コストは2倍かかるので高額な上位機種での採用になるかと思います。しかしデジタルチューナーのワンタッチ選局の登場により、ダブル・ダイヤルスケールは無用の長物となってしまいました。今頃になってダブル・ダイヤルスケールのラジカセが70年代に発売されていたことを知りました。誘惑には勝てずジャンクのTPR301を買わせてもらいました。

TPR301はSWの変調方式別にFMとMWの2つにダイヤルスケールが分かれています。AIWAのラジカセLL350TMR350TMR355にも採用されていますが他メーカーでは見つかりませんでした。AIWAだけかもしれません。

 TPR301ではダブル・ダイヤルスケールを使ったダブル・オペレーション機構を搭載しています。ラジオをカセット録音しながら他のラジオ局を聞くことができる機能です。左上の真四角(DUAL)がその機能ボタンです。

 もう一つの特徴はワイヤレスマイク搭載です。70年代には多数のラジオやラジカセにワイヤレス機能が搭載されて一種のブームのようになっていました。TPR301もその1台です。

マイク左の白いボタンを押すと蓋が30度ぐらいまで開いて。4ウェイ・コンデンサマイク(WM-206)が取り出せます。。4ウェイ・コンデンサマイク(WM-206)を格納するときには電源のスライドスイッチが自然にOFFになるよう蓋に出っ張りが設けてあります。
上の写真は取り出した4ウェイ・コンデンサマイク(WM-206)です。4ウェイ・コンデンサマイクとの名称のとおり以下の4通りの使い方があります。① ラジカセ内蔵・コンデンサマイク、②コード・コンデンサマイク、③ワイヤレス・コンデンサマイク、④ワイヤレス・トランスミッター 。このワイヤレス・マイク単体(WM-206)にはアンテナがありません。ワイヤレス・マイク利用時には付属コード(アンテナに相当)接続する必要があります。知らずに付属コードなしでワイヤレスマイクのテストをしていました。送信できる距離が極端に短くておかしいと思っていました。アンテナが無ければ当然です。
このラジカセの取扱説明書には回路図が掲載されています。AIWAさんには感謝の言葉しかありません。

故障修理するためケースから本体を取り出します。スピーカーも一体で取り出せる修理しやすい構造です。
このラジカセの故障はラジオ(AM,FM)から音が出ないことです。いろいろなスイッチをON/OFFすると時々雑音やラジオ放送が瞬間きこえるだけです。故障の原因はDUAL切替用スライドスイッチの接触不良でした。スライドスイッチを取り外して分解清掃すると音がでるようになります。そのほかプリント基板の劣化部品は全て交換します。

DUAL表示ランプが切れているので赤く塗装した麦球ランプと交換します。ラジオの受信感度とトラッキングを調整します。カセットのゴムベルトを交換しましたがモーターの回転が弱く残念ながらカセットテープ再生は無理のようです。

このラジカセはケースの損傷が激しいです。上の写真の左側アルミの淵に沿ってL字型にプラスチックが7~8cmほど裂けてハンドルでラジカセを持ち上げることも出来ません。内部では裏蓋をビスで止めるプラスチックの円筒形のスペーサーが根本から折れて、開いたままの裏蓋右上ビスが締めらません。ボンドで補修してビス止めで裏蓋を閉められる様になり、ハンドルで持ち運びも出来るようになりました。

電池の蓋がないので他のラジカセの蓋を黒で塗装して代用します。プラスチックの爪が折れて蓋の固定が出来ません。スペーサー取り付け場所が確保できたので蓋をビス止めにしました。これですべての修理作業は終了です。

AIWA TPR-301のダブル・ダイヤルスケールは個性的なデザインで見ているだけで楽しくなります。70〜80年代のラジカセにはワイヤレスマイク、2Wayスピーカー、BCL、ステレオ、ダブルカセット、デジタルメーター、CDなどの機能が時代とともに次々搭載されています。ラジカセを見ると懐かしいその頃の技術や出来事を思い出します。TPR301は70年代の旺盛な製品開発から生まれたレアな機構を持ったラジカセです。デジタルが主流の今では二度と製品化されることのないアナログ技術の一端を感じることが出来る製品です。