SANSUI MP-2 FMマルチプレックス・アダプタの紹介です。1963年頃、11,000円の製品になります。当時はチューナーFM-8とMP-2のセットでFMステレオ放送を聞くことができました。
最初にカバーを外してみます。見た目でコンデンサが劣化しています。電源入れてみたところ、数値が落ち着くまで時間がかかりすぎます。電源部の修理も必要のようです。
カバーの裏には回路図が貼られています。初期のMP-2の回路図で実際の回路図とは異なります。電波実験・新ステレオ回路集(昭和39年)にMP-2回路図が掲載されています。ステレオランプの点灯方法が、前期は直接ネオンランプ点灯、後期はリレーによるランプ点灯と機能が異なることです。
ただし、この新しい回路図と実回路を比較すると更に相違点があります。回路図の真空管構成は、12AX7、6BL8、12AX7ですが実回路では12AT7、6BL8、12AU7の構成でした。修理のため劣化部品を全て交換します。試験しますがディメンション・ボリュームのガリがひどいです。 また、ディメンション・ボリュームの影響で19kHzパイロット信号のレベルが低すぎてモノラルしか出力できない状態です。
故障したディメンション・ボリュームは10kΩ(A)へと過去に交換されたものです。修理のため回路図どおりの500kΩ(A)に交換します。ディメンション・ボリュームの交換によりパイロット信号レベルが10dB以上高くなりステレオ出力できるようになります。MP-2のディメンション・ボリュームを右に回すと全体のレベルが下がります。一定のレベルに下がるとパイロット信号が検出できなくなり、ステレオからモノラルに切替ります。癖の強いディメンションなので操作には注意が必要です。
コイルでセパレーションを調整します。
ステレオ出力はするのですがステレオランプが点灯しません。パイロット信号のレベルが低すぎてリレーが動作しないです。調整だけでは改善出来ませんでした。そこで、初段の12AT7を12AX7に交換します。レベルが上がりステレオランプが点灯するようになります。
レベルを上げるもう一つの方法があります。上の写真はTU-70の回路図です。MP-2はTU-70の回路とほぼ同じです。違う点はTU-70の6BL8カソードに5μFが入っていることです。MP-2にも同様に5μFを入れることで全体のレベルが上がり動作が安定します。
ステレオランプの動作で悩みました。FM放送受信時にステレオかモノラルか判別できますが、FM放送がない周波数でもステレオランプは点灯したままになります。たぶん、当時はこれが正常動作なのだと思われます。但し、局間ノイズでリレーがON/OFFを繰り返すことがあるので、リレーにコンデンサを入れて対策します。
修理が終わったのでヒヤリングです。FMステレオ放送の音はすばらしいの一言です。ノイズ感は全く感じさせずクリアでみずみずしい高域と奥行のある豊かな音質です。調整を誤るとつまらない音になるので注意が必要です。製品を発売してから改良を重ねたMP-2ですが、音楽性豊かな製品に仕上がっています。今まで聞いた中で一番良い音のFMアダプタの修理でした。