2022/07/29

Topping HS01 アイソレーター(発熱は多いがそれなりに効果)

ノイズ関連グッズには日ごろから興味がありましたが、高額な製品が多く購入できませんでした。最近、Toppingから1万円を切るアイソレータが発売されましたので、おためしで購入してみました。

HS01は金属ボディで非常にコンパクトな作りです。本体側面にUSBコネクタ(USB給電用)とステータスランプがあります。ランプは給電時はホタルのようにゆっくり点滅し、通信時はデータ伝送に合わせて激しく点滅します。

この製品は金属ボディが発熱してかなり熱くなり故障の原因になりそうです。対策①として小型ヒートシンクを全面に貼って使用することにしました。ヒートシンクを貼るとまるでハリネズミ状態ですが、ここまで発熱するのであれば熱を考慮して製造してほしかったと思います。

また、PC電源offでもUSB給電されていてHS01は発熱し続けます。24時間365日、USB給電で発熱してHS01に悪い影響を与えそうです。対策②としてPC電源off時にUSB給電を同時にoffするには GIGABITEのBIOS画面で電源管理>Eirを”有効”にすることでUSB給電offにできます。HS01のランプ消灯でUSB給電offを確認します。HS01を安全に使用するには発熱対策の2つを実施することをお勧めします。

次にUSBインターフェースの問題です。現在使用しているUSB-DAC Topping D3USB1.1USB2.0対応のHS01とは接続できないようです。ためしに接続してみますが、給電時のランプがゆっくり点灯だけでデータ通信時の激しい点滅はしませんでした。USBポートの規格のことは全く考えていなかった私の購入ミスです。USB1.1をUSB2.0に変換する必要があり、Toppingでは推奨していませんが手持ちのUSBハブを間に挿入することでこの問題を解決しました。

実際のUSBインターフェース問題の解決策として、上の写真の2種類のUSBハブを用意しました。左側はUSB2.0にUSB2.0×3ポート、右側はUSB3.0にUSB2.0×2、3.0×1の2種類が混在したハブです。今回はUSB2.0のハブを使用します。HS01⇔USB3.0(ハブ)USB2.0⇔USB1.1(DAC)の接続構成だとUSBポートの認識がしずらく、認識できてもビットエラーが発生してブツブツ音がして使用に耐えれません。HS01⇔USB2.0(ハブ)USB2.0⇔USB1.1(DAC)の接続構成では何も問題なく使用することができました。

Topping HS01を使用すると高音域の靄がとれてすっきりとした音質に変化します。音質的に良い方向に改善されるように聴こえます。

しかし、今までノイズ対策製品を使っていることのプラシーボ効果で、音が良くなっていると思い込んでいるだけなのかもしれません。精神衛生的にはいいのですが本当に音質が改善していることをノイズが低減することで裏付けできないか測定みることにしました。

スペクトラム・アナライザーには昔から使っているフリーのVISUAL ANALYSER 2014です。上の写真のとおり、上部がオシロスコープで下部がスペアナの画面構成で画面キャプチャーボタンもあり使い勝手もなかなか良好なソフトウェアです。

 主に使う機能はスペアナとTHD測定です。THDは周波数毎に自動で測定してくれるので非常に便利です。Calibrateボタンを押してMaster output Levelを調整するとTHD測定に適したレベルに調整できると”OK”表示がでます、次にAutoにチェックを入れMeasureボタンを押すと事前に設定した周波数帯と周波数ステップに従いTHDの測定を開始します。

最初に組んだ接続構成①です。左肩上がりのノイズ特性で、通常時でこんなにノイズが発生しているとはとても思えません。PCのオーディオボードですら無負荷時で-120dBぐらいのノイズですが、測定値は最悪-95dBの周波数帯もあります。 この接続構成では正常に測定できないようです。

そこでPC1台からPC2台の接続構成②にするとノイズは大幅になくなります。全体的に-110dBぐらいに収まっています。このくらいが私の装置の実力値だと思います。最初に測定したディスクトップPC1台で組んだ接続構成①ではグランド・ループが発生していたようです。今回のこの特性がノイズフィルターを入れたときと比較するための基礎データとなります。

また、もうひとつの方法としてPC2台の接続構成②は操作が大変なので、LINE INの手前に上の写真のSmof グランド・ループ・ノイズフィルターを入れてアースを遮断する接続構成③で測定することができました。Smof ノイズフィルターは、トランスを内蔵することで入出力のUSB間で通電がないように作られています。全体帯域で-100dB~-110dBのノイズが発生していますがPC2台の接続構成②の実測値に近い数値で測定できるようになります。

この2つの方法いずれかで測定できる環境がととのったようです。Topping HS01をUSB-DACのUSB部分に挿入してみます。疑似的にグランド・ループを発生した構成と比較すると、グランド・ループが遮断されてノイズが大幅に改善されているのがわかります。ただし、グランド・ループが発生していない実際の環境でHS01を測定すると、HS01の有無にかかわらずノイズの改善は測定値からはわかりませんでした。逆にHS01を入れると付属品の接続ケーブルで長くなったせいか低い周波数帯でノイズが若干多くなっています。ノイズ環境が-100dB~-110dB程度でおさまったシステムにはノイズ改善は測定できませんでした。 しかし、HS01を入れると、たしかに音はよくなり改善します。今回の方法では音質と計測値の因果関係はわかりませんでした。昔からオーディオの世界は深く、ノイズやその他の特性が悪くても良質な音楽を奏でるアンプはいくらでもあったことを思いだしました。安直にアイソレータだからノイズの大小で音質が左右されると思った私がおろかでした。単にアソレータ製品の性能を音質評価の参考程度と考えてノイズ測定するべきだったと反省です。

その他にもパイオニア DRESSING(USB)、エミライ製 USBノイズフィルター ES-OT4の効果の有無を測定しましたがノイズ特性的には改善は見られず、こちらの製品は音質の改善も感じられません。そのため、私の所有するシステムには導入する必要はないと判断しています。今まで精神安定のため製品を使い、私の聴感では把握できないノイズが発生しているのではと疑っていました。ノイズ対策に夢中になり測定してはみたものの最後に評価するのは自分の感性で音楽を聴き分けることが大切だとあらためて感じた実験でした。最後にHS01は比較的安価で導入しやすく改善効果(私の好みの音質)もそこそこ見込めるので私のオーディオ装置に常設することとしました。

2022/07/11

ナショナル RD-511 真空管FMステレオアダプター(アンプ接続時に注意)

 

ナショナル RD-511 真空管FMステレオアダプター、1963年頃の製品になります。RE-510 FMチューナーと同じデザインで組合わせてFMステレオ放送を聞くことができます。正面左から電源スイッチ、ステレオ・インジケーター、セレクターが配置されています。

背面パネルの左からMPX IN(2ピン端子およびピンジャック)、PHONO(IN)L R(3ピン端子)、STEREO OUT L R(RCA端子)が配置されています。

ケース底に真空管配置図、上蓋の裏に回路図が配置されていました。回路図が残っていますので、写真を撮って拡大印刷して修理のときに使用します。


付属品一式が揃っているこは大変めずらしいです。RCA接続コード2本(茶×1本、灰×1本)、3ピン端子×3個、2ピン端子×2個、スペーサおよびネジ×各6、ピンプラグ×1個、改造用抵抗100kΩ×2本、ご愛用のしおり×1冊。

上の写真は付属する取扱説明書(ご愛用のしおり)です。

詳細な定格は以下のとおりです。真空管 6BA6,12AT7,12AX7/ダイオード OA79×4、OA70×2、SC-20×1/ステレオセパレーション 100c/s~7000c/s,20dB以上/利得 1:1/電源電圧 AC(交流)100V,50~60c/s/消費電力 10W/形状 272(巾)×80(高さ)×149mmm(奥行)/重量 2㎏

中を覗いても埃はほとんどありませんので過去にRD-511を修理したのだと思います。観察するとヒューズフォルダーの爪が折れていて糸ヒューズで処理してありました。

次に見つけたのはゲルマニューム・ダイオードOA79がOA91に置き換わっていました。過去に修理した跡が確かに残っています。

 
ヒューズボックスは交換しその他の劣化部品もすべて交換します。しかし、コンパクトな部品配置なので修理作業に手間のかかる製品です。
修理は終了したので交換した部品が正常か通電試験をしてみます。電流値は0.25Aで正常のようです。

アンテナは300Ω-75Ω変換プラグで接続、RE-510とRD-511はMPX端子を2ピン端子コードで接続します。最後にSTEREO OUTをRCAケーブルでオーディオ装置と接続します。

音だしの試験をします。L(左)の音が極端に小さいです。R(右)は正常。ステレオ・インジケータは正常に点灯しました。この製品は左右の音のバランスをとる機能はありませんのでL(左)の音が小さいのは、どこかに不具合がある模様です。

L(左)の音が小さい原因をトレーサーで追ってみるとマトリクス回路のゲルマニューム・ダイオードOA70×1本が不良とわかりました。トランジスターテスターで測定してみるとNGです。

上の写真の互換表に従いゲルマニューム・ダイオードOA70はIN60と交換しました。再度、音出し試験をしますがL(左)の少しは改善しましたが音がまだ小さいようです。あれこれ調べてみましたが回路に不具合はみあたりません。そこで、RCAプラグを抜き差しして試験するとRCAプラグが刺さった状態だとL(左)の音が小さくなるようです?

説明書には接続する機種によってはSTEREO OUTに付属品の抵抗100KΩを入れるように改造の指示が記載されています。もしかしたら、今回のケースもインピーダンス整合用の抵抗100KΩが必要なのかもしれません。

ためしに手持ちの抵抗100KΩを説明書に従って追加しました。音出し試験をするとL(左)の音量は正常になりました。まだ、少し音が小さく感じられますが、極端な音量差はみごとになくなりました。また、抵抗100KΩを入れたことで全体のノイズが低下してクリアに聞こえるようになります。今回の現象は説明書がなければ修理できなかったかもしれません。また、ヒヤリングした感想ですがFMステレオ放送をすっきりとした良い音で聴かせてくれる製品です。初期のFMステレオ放送の時代にこれだけの高音質で聴くことができたことに驚きます。

RE-510とRD-511の組み合わせは、特別な2ピン端子コードが必要で尚且つ現代のオーディオ装置と接続するためには抵抗100KΩを改造して取り付ける必要があります。それらを知らなくて故障したものと勘違いした人もいたと思います。ある程度のスキルを持った人またはマニア向けの真空管FMアダプタかと思います。

2022/07/10

ナショナル RE-510 真空管FMチューナー(普通の修理)


ナショナル RE-510 真空管FMチューナーです。1963年頃の製品で6,800円で販売されいました。現在でもオークションなどで年に何台か出品されているようです。大きさは幅272mm×高さ80mm×奥行149mmのコンパクトなモノラルFMチューナーです。

 
背面には、アンテナ端子、MPX OUT端子、PHONE(L)端子、EXT AMP(L)のRCAコードが配置されています。MPX OUTはFMステレオアダプタ接続してFMステレオ放送を聞くための端子が装備されています。

 

本体の底には、真空管配置図、ダイヤル駆動図があります。残念ながらこのチューナーには回路図は添付されていません。黒いプラスチックの頭のネジは破損しやすいので、必ず手で締めるようにします。ドライバーで締めると非常にもろいので破損させる恐れがあります。

RE-510の中を覗くとすごいほこりでいっぱいです。今まで一度も開けたことはない様子です。本体ケースの汚れやヤニを落とし内部の埃を丁寧に掃除します。

真空管には12BA6×217EW8、2連バリコン、セレン整流器の構成となっています。チューナーのシャーシはケースから電気的に浮いた(絶縁)状態で固定されていました。

ケースから目盛り板が完全に外れていました。きれいに掃除してボンドで固定します。


目盛りの裏板が汚れとサビが出ています。上の写真は再塗装して取り付けた様子です。

はじめに故障個所はないか入念に目視点検します。電源回路の電解コンデンサ端子からの液漏れで使えそうにありません。

同じ径のコンデンサを2個使い絶縁テープで巻いて交換用コンデンサとします。厚紙をコンデンサに巻いて横に固定する方法なので、外観的には交換したことはわからないと思います。

その他の経年劣化した部品を交換します。

一通り修理が終わったので、劣化部品以外に故障個所はないか通電してみます。0.23~0.24Aで安定し正常のようです。

次にFMチューナーの動作確認をします。調整はカバーを外した状態でチューナー部の横から調整することができます。アンテナを接続して受信してみます。受信感度およびトラッキングを調整します。

これで修理は終了です。今回はFM放送の初期に製造された貴重なナショナル FMチューナーRE-510の修理でした。次回はFMチューナーRE-510とセットになるFMステレオアダプター RD-511の紹介および修理です。

2022/07/09

ONKYO Integra T-410DG(電源部の経年劣化を修理)

 

前回、Technics ST-S6の修理で電源部がひどく劣化していました。Technics ST-S6 1981年製、ONKYO Integra T-410DG 1978年製です。T-410DGの電源部も経年劣化していると思ったほうがよさそうです。今回は緊急対応でT-410DGの電源部のリニューアルです。

試験的にT-410DGの消費電流を測定してみます。Power OFFで0.2Aも流れます。しかもPower ONでもなんと0.2Aで電流値が同じでした。電源スイッチの意味ありません。どうりで、使っていないのに左後ろのトランス付近が妙に熱くなるので気になっていたんです。

 
しかもチューナーなのに背面パネルに空気穴が開いています。チューナーで空気穴があるのはT-410DGぐらいだと思います。ONKYOさんは発熱多いことを知ってたんですね。
チューナーを開けてみます。時すでに遅し、金属カバーの裏側がススで真っ黒です。電源部の電解コンデンサからは液が漏れだしていて全滅です。セメント抵抗のプリント基板も焦げています。
チューナー部もよく見ると抵抗が焼けています。この状態で、よくチューナーとして動作してくれていました。
 
電源部の電解コンデンサを全て交換しました。
チューナー部の電源に関わる電解コンデンサを全て交換しました。T-410DGはデジタル時計が内蔵されているので常に電流を流す必要があり、1978年製の部品は更に早く劣化したのかも知れません。T-410DGが中古で品物が少ないのも納得です。電源部が故障するので完全に壊れて中古市場にも出せない物が多かったんだと思います。T-410DGは2台もっていますが、2台とも同じ惨状でした。やはり、1970-1980年代のシンセサイザーチューナーをそのまま使うと重大な故障につながることを学びました。現在、使われているこれらの年代の製品は修理してから使用することを強くお勧めします。

2022/07/05

Technics ST-S6 FM/AMチューナー(quartz lookのランプが不規則に点滅)

Technics ST-S6 クオーツ・シンセサイザー FM/AMチューナー 1981年 59,800円の製品です。初期のシンセサイザー・チューナーですが、操作はとても使いやすく機能的にも完成された製品です。私が永年愛用しているシンセサイザー・チューナーです。

シンセサイザー・チューナーでは、めずらしく4CHマルチ出力の端子が装備されています。Technics ST-S5以上の上位機種もしくはONKYO Integra T-410DGにしかこの端子を装備したシンセサイザー・チューナーを見つけることができませんでした。(他にもあるかもしれませんが私は知りません)

愛用していたTechnics ST-S6ですが先日故障して、quartz lookのランプが不規則に点滅して音声も同時に途切れる症状が出始めました。シンセサイザー・チューナーは修理経験もなく直せるかわかりませんが、とりあえず中を覗いて見ることにしました。上のカバーを外し、全面パネルの下と両脇のネジをはずします。背面のRCA端子盤のネジとアンテナ部のネジ、プリント基板固定のネジをはずせば、プリント基板を裏返すことができます。非常にメンテナンスしやすい作りになっています。 

まず最初に見つけた故障は、スーパーキャパシター(電気二重層コンデンサ)Gold Cap 1.8V 3.3F×3個から液が染み出ていました。このままだとチャネル・メモリを保持できなくなります。そこで交換部品として高さ28mmで同じ電圧と容量を探しますが見つかりません。この製品ではスーパーキャパシターを直列にして使用しています。3個・直列で合計5.4V 1.1Fで使用しています。同じ電圧と容量を2個で構成できるようなスーパーキャパシターを探しました。高さ20mm 2.7V 5.0F×2個を直列で使うと合計5.4V 2.5Fとなるのでこれを購入しました。

上の写真が実装した様子です。裏の配線で2個のスーパーキャパシターを直列にします。

次に見つけた故障はプリント基板の表面が熱で泡立っている箇所です。よく見ると電解コンデンサのハンダも溶けて劣化しています。電源回路の電解コンデンサー不良が疑われます。

電源回路の電解コンデンサーを取外すと、プリント基板が焼け焦げたり液が染み出していました。想像以上にひどい状態です。この電源回路にはヒューズはなく、ヒューズ抵抗で過電流を防止するしくみのようです。このまま使い続けたらヒューズ抵抗が溶断するところでした。

上の写真では、電源回路の電解コンデンサーはすべて交換してあります。この状態でテストしてみます。まだquartz lookのランプは不規則に点滅します。点滅する頻度は少なくなりましたが根本的な原因は解決していません。ただし、FM放送などの音質は透明度が増し交換前より品質がよくなりました。

次に水晶発振子(クリスタル)の近辺の電解コンデンサも疑わしいので交換してみます。これでだめなら、VR101:FM QUARTZ LOOK INDICATOR ADJUSTMENTで調整してみる予定です。再度テストするとquartz lookのランプ点灯のままになり正常になりました。長時間使用してのテストでも良好です。クリスタルの近くでしたが、IC(マイコン)の電源部に入れる電解コンデンサの不良です。電解コンデンサ劣化によるICの誤動作が原因だったようです。
 
最後に残った古い電解コンデンサを交換します。今回は非常に簡単な故障原因だったので部品交換だけで終了です。
Technics ST-S6 クオーツ・シンセサイザー FM/AMチューナーは中古品を安価で入手することができます。しかし、使えても今回のように内部の部品はかなり劣化していますので、安易に購入し使うのは危険かと思います。部品交換を前提で入手するのであれば、非常にコスパの良いチューナーでおすすめです。今回は愛着のあるチューナー修理により、引退させずにしばらくこのチューナーでFM放送が楽しむことができそうです。