2022/06/16

スター FM-200 真空管FMチューナー(珍しいμ同調方式)

 

スターFM-200形の真空管FMチューナーです。アイボリーの本体にシルバーのパネルと大きな文字と茶色の目盛りが印象的です。いままでスター製品を触る機会がなかったので購入してみました。 写真のとおりかなりジャンクなFMチューナーです。

 
スターFM-200は1963年ごろの雑誌に特集記事や広告がのっていますので、発売時期は1963年頃だと思います。 TRIO FM-106が機能面で近い機種になるので価格も10,000円前後ではないかとないかと想像しています。

背面はパーチクルボードで真空管ラジオみたいです。パーチクルボードは湿気を吸うとボロボロになるので高価になりますがアルミにしてほしかったです。また、背面の端子にMPX出力を持ったモノラルFMチューナーになります。

上から見ると何か違和感ありませんか?このチューナーにはバリコン がないんです。バリコン を使わないμ同調方式のFMチューナーなんです。6AQ8,6AU6×3,6AL6の構成で、左側にある6AQ8を搭載したスター製のμ同調方式/FMチューナー・ユニット:FU-36Bにより安定した受信性能を確保しています。このチューナーの全面パネルはアルミの削り出しではなく型抜きした1mmのアルミで、背面パーチクルボード、整流管ではなくシリコン・ダイオード、バリコン なしのμ同調方式などの徹底したコストダウンをしてます。それにもかかわらずデザインや性能は落とさずによく出来た製品だと思います。また、このころのトリオのチューナーもそうですが、なぜかヒューズがないつくりはいただけません。

FM-200を手持ちの資料から探したところ電波科学 1963年4月号で機能・回路図・性能など詳しく解説されていました。

また、FMチューナー・ユニット:FU-36Bについてはラジオ技術1962年9月号「FMチューナー・ユニットの構造」で解説されています。上の写真はFU-30Bシリーズ一覧を抜粋したものです。真空管FMチューナーを使う楽しさもありますが、これらの資料によりFM-200を深く知ることで楽しさが何倍にもなるんです。

μ同調方式のユニットでは糸を直線に引いて糸巻きしますので、糸を引っかける穴のあるリング状の固定金物(名前を知りません)を使います。FM専用なので土台の軸とリング状の固定金物とプーリーの構成になります。これにAMが加わるとバリコンの軸にカップラを取り付けて同調する構成になります。

 

内部の配線ですがきれいな状態です。特に見た目には損傷らしき痕跡はみあたりませんでした。


 
最初は外観から補修してみました。上の写真のように本体はアイボリーで再塗装しツマミのゴールドの金属部分は他のツマミから移植してみました。アイボリーのFMチューナーはめずらしいですが、見た目もよく今にもFM放送が聴けそうな雰囲気に仕上がりました。
トランスの手前にヒューズ・ボックスを追加してみました。
通常はいきなり通電試験をしませんが損傷もなさそうなのでテストする気になりました。通電試験すると電流は0.8Aから1~2分もかかって0.6Aまで下がりましたが電流が流れすぎで不安定です。私の感覚では0.4~0.5Aぐらいが適正だと思っています。1~2分通電してブロック・電解コンデンサを手で触ってみると非常に熱くなっています。本来はあたたかい程度で熱くなることはありませんので劣化した末期症状のブロック電解コンデンサーのようです。やはり、見た目だけで判断するのは危険だと改めて実感しました。
 
上の写真のように劣化部品はすべて交換しました。ブロック電解コンデンサーの配線をはずし残置して外観を確保します。その下に代替の電解コンデンサーで電源部を作り込みました。
再度、通電試験をします。電流値は思った通り0.45Aぐらいにすぐに落ち着きました。電源部の電解コンデンサーもまったく熱くなっていません。修理は成功のようです。他に修理が必要な箇所もないのでこれで終了です。
 
TRIOのFMアダプター:AD-5と接続してステレオでFM放送を受信してみます。受信感度は良好ですがトラッキングが大幅にずれていたので調整します。AFCもよく機能しています。真空管チューナーのFM放送の音が好きなオーディオ愛好家も多く私のその一人です。真空管チューナーは本当にいい音がしますので一度お聴きになってはいかかでしょうか。スター製FMチューナー・ユニットは雑誌に載っているので知っていましたが、今まで取り扱った真空管ラジオやチューナーではμ同調方式に出会えませんでした。FM-200を使ってみてFMチューナー・ユニットがあれば受信感度の良いチューナーを簡単につくれそうです。
 
余談ですが実は私もアルプス製のμ同調方式・FMチューナー・ユニット(上の写真)とリング状の固定金物を大切に保管しています。今回、とてもいい経験をしたので近々にでも製作に取組んでみようかと思います。