2022/09/16

ALPEINE/LUXMAN プリメインアンプ LV-103(隠れた名機)

ALPEINE/LUXMAN プリメインアンプ LV-103は、1985年に79,800円で販売されていた真空管とMOS-FETを搭載したプリメインアンプです。発売当時も気になっていたのですが今日まで見過ごしてしまった製品です。正面から見えるALPEINE/LUXMANの文字の入った真空管(6CG7)が印象的なプリメインアンプです。ジャンク品でしたが昔に戻って、どんなプリメインアンプなのかためしてみたくなり購入しました。

トランスの右横は電源と中央はパワーアンプ、右横はイコライザーのプリント基盤です。手前左側は真空管とその下がシールド板で囲われたTONE回路、手前中央はセレクター関係の基盤になります。

TunerやCDから入力した信号は最初にTONE回路に入ります。オペアンプ4558Dを使ったTONE回路です。TONE回路は単純にIN/OUTで回路をスルーできるTONE INボタンをもっています。音質優先であればTONE INボタンをOFFにします。ただし、ブロック図をみると単純にスイッチでダイレクトに配線でスルーするだけで動作中に切り替えるとノイズが発生します。回路的にどうしても発生してしまう構造です。そのため、ボリュームを絞ってからTONEボタンは操作する必要があります。イコライザー、セレクタ、ボリューム、バランスの順に信号は流れます。パワーアンプの初段にはデュアルFET:2SJ75、プリドライバー(真空管:6CG7)で最終段は2SK405/2SJ115のMOS-FETが採用されています。

まずは電源を投入してみます。保護リレーも正常に動作しましたが片チャネルから音がでません。次にTONE INボタンをOFFにしてTONE回路をスルーしておきます。Tuner端子からテスト信号を入れて回路をトレースして故障個所を探します。真空管:6CG7の出力で片チャネルの音がでていません。真空管を左右入れ替えますが症状はかわりません。真空管の基板不良のようです。LVシリーズに共通する故障で真空管ソケットの端子が錆びてはんだづけ不良になった模様です。再度、はんだづけすればいいのですが、ソケット端子がさびてはんだがうまくのりません。真空管ソケットの端子は金メッキではありませんので、経年劣化によるもので交換が必要です。

そのため、上の写真のようにセラミック製の真空管ソケットに左右ともに交換しました。ソケット交換で左右から正常に音が出てくるようになりました。メーカー純正の真空管ソケットでは端子が劣化して錆びやすいので交換することをおすすめします。

正常に音が出るようになったのでヒヤリングしてみます。製造から35年以上経過しているからでしょうか低音もでないスカスカの音です。とてもLUXMANのアンプの音とは思えません。当時のこのクラスのプリメインアンプは購入時から2~3年はいい音がしますが、その後音質は劣化して購入当初の音はしなくなる経験を何度もしています。LV-103も同様で採用されている部品が安価なため経年劣化で音質も劣化したのだと思います。LV-105などの上位機種になると明らかに高級な部品を採用しているので、現在でもそれなりの音を出してくれます。

そこで電源部の大容量以外の電解コンデンサーを交換してみました。真空管を採用しているためか、通常のアンプでは使わない比較的電圧の高い電解コンデンサーを必要とします。上の写真は電解コンデンサー交換後の姿です。

再度ヒヤリングして本当にびっくりしました。とてもいい音です。それも奥行きのあるとてもいい音です。正直、LV-103がこんなにいい音だとは思いませんでした。テスト用のスピーカーはスピード感がありレンジもそこそこ広く質の高い音がでる様にネットワークを改造してありますが深みのある奥行きを出しにくいタイプです。しかし、しっかりと奥行きのある豊な音楽を聞かせてくれました。これならクラッシックを聴いてもいいと思える仕上がりです。LUXMAN LV-103は隠れた名機だったんですね。

次に試験的にMOS-FET:2SK405/2SJ115を新品と入れ替えてみましたが以外なことに音の変化は感じられませんでした。MOS-FETに経年劣化がなかったのか交換は不要のようです。

TONE回路の改修をしてみます。LV-103のTONE回路を通すとやや曇った印象の音になります。前面パネル左下の一番奥にあるTONE回路を取り出してシールドケースを外してみました。基板にはオペアンプ4558Dが使われていました。このオペアンプ4558Dはバランスの良い音がしますがTONE回路の音質劣化の原因かもしれません。試しにオペアンプをOPA2134に交換してみます。OPA2134に交換した後のヒヤリングではクリアでレンジの広い音になり、TONE回路を入れたことを意識させない音質に変わりました。TONE回路のオペアンプ交換ではアンプ全体の音質を左右するような大きな変化はおこりません。TONE回路を使いたい人にとっては回路を通しても音質が劣化したことがわからない快適な機能がほしだけです。私もそのひとりです。

LV-103はまだまだ触れる箇所があります。LV-103は真空管を配置しているためか全体のゲインが高いように感じます。そのため小音量時のボリュームの可動範囲が狭く調整しにくいところがあり、小音量時では特定箇所でガリがでやすい傾向があります。このアンプもボリュームの特定箇所にガリがあり交換することにしました。

LV-103のボリューム交換で問題になるのがツマミ軸の形状です。ツマミ軸がD型ため該当するボリューム(2連100kΩ、基板実装タイプ、軸がD型)は見つかりません。今回、見つけたボリュームは中央に切れ込みがある差し込み式のツマミ軸のため半分に切断して使用しました。平たい部分の厚みが足りないため銅板を張り付けて軸受けにフィットさせて解決しました。次に問題になったのはボリュームが22ステップのクリック・タイプだったことです。交換したところクリック・タイプだと小音量時の最初の1ステップ目で音が大きすぎて使用に耐えられません。ボリュームと同じ基板上にある抵抗2本を大きな数値にすれば音量を絞ることができそうです。試行錯誤して当初470Ωだった抵抗を500kΩで最終調整しました。小音量時のボリュームの可動範囲が広くなり使いやすくなりました。また、ボリューム交換したことで、余分な音を省いたより透き通った音質になりいい感じの改善になったようです。

最後にフォノ・イコライザー部を改善できないかプリント基板をみてみます。フォノ・イコライザー部にはオペアンプ4558Cが使われていました。レコードを聴くのにオペアンプ4558Cは残念です。これも交換するとレコードの音質に大きく影響すると思います。上の写真は、ICソケットを取り付けてオペアンプOPA2134を搭載した様子です。これでも十分に音質は改善されます。

更にオペアンプの候補として帯域も広くてバランスの良い「しろくま製OPA627」を採用してみました。思った通り、一聴してクリアで帯域の広い豊かな音楽を聞かせてくれます。オペアンプ交換は効果があります。オペアンプ交換はレコードファンの方には恩恵も大きく必要な改修だと思います。

 

LV-103の最初から最後までのほとんどを触ったかと思います。設計が秀逸なのか部品交換でここまで音質が向上するプリメインアンプは初めてです。しかも動作の不安定さは全く感じられませんでした。元々単純なつくりなのでパワーアンプの初段のデュアルFETとドライバーぐらいしか交換するものは残されていません。LV-103は真空管搭載タイプでは最下位グレードですが、部品交換により非常に質の良い音楽を聞かせてくれることがわかりました。LV-103は最初から高いポテンシャルをもっているのに音質を抑えて出荷された製品かと思います。中古で10,000円前後で購入できますので、修理を前提とすれば非常にお買い得のプリメインアンプだと思います。この音質であれば大半の人は十分満足できるはずです。私自身も小型ステレオセットとしてLV-103を常時使用することにしました。今さらながらLUXMANの音作りに感心させられたアンプ修理となりました。