今回は譲り受けた60年ほど前のゲルマニウム・ラジオをご紹介します。上の写真は補修したラジオの様子です。昔、ゲルマニウム・ラジオは安価で小学生のお小遣いでも買うことができました。アンテナを伸ばしたり引っ込めたりするミュー同調方式のゲルマニウム・ラジオを思い出します。このゲルマニウム・ラジオを見てあまりに懐かしいので放置できず補修することにしました。
上の写真が前オーナーが製作されたゲルマニウム・ラジオです。一番に目立つのが、2連バリコンと2本のコイルで、このゲルマ・ラジオの製作に力を入れていたのがよくわかります。2連バリコンは私が子供の頃でも見たことがない高さ8cmほど古い大きなバリコンです。ロータリースイッチも5cmはある大きな部品です。部品は60年前よりもっと古いかと思います。ツマミは固着して外れませんし、木製の前面パネルは割れ、配線も何本か外れていました。再配線して仮試聴してみました。ラジオの電波難民の地域に住んでいるためか電波が拾えません。アンテナ用の電線を10mとアースを接続して、かろうじて電波を受信できましたが何を言っているのかわからない小さな音量でした。補修するために 回路図を起こし若干手を加えてみました。前製作者には大変申し訳ないと思いましたが、受信感度がわるく音量も小さすぎるため一部変更した回路図です。コイルとバリコンの基本構成はオリジナルのままです。上の写真は、ゲルマニウム・ラジオを載せ替えたあとの様子です。コイルは一部ほどけたので再度まき直しをしました。ゲルマニウム・ダイオードはショットキー・バリア1SS86へ変更しました。シリコンの1SS86を使用したのでゲルマニウム・ラジオ ではなくなり無電源ラジオです。弱電界地域ではしかたありません。また、出力側には音量を上げるためST-30を入れてあります。
取り外した古い部品です。2連バリコンは同じ型のものを譲り受けたので交換しました。また、ロータリースイッチも接触が悪くコンデンサといっしょに交換してあります。
補修後に試聴したところ、受信感度や音量も上がり放送が聞こえてきます。バリコンのツマミとロータリースイッチで一番音量が大きくなるように調整します。これで数局受信できるようになりました。欠点は他局との混信とハンド幅が狭いことです。直す余地はあるかと思います。ゲルマニウム・ラジオは子供の時に何度も買ったり作ったりしたものでした。アンテナのクリップを挟み、イヤホンに耳を澄ましていると昔がよみがえってきます。今でもたくさんの人が製作している気持ちがよくわかります。ここで話は脱線しますが、Ace AR-205Kは弱電界地域では感度が悪く受信できません。以前からダイオードを交換しようと思っていました。ゲルマニウム・ラジオを直していて思い出したので実行です。50年以上前のラジオ・キットですから、ダイオードを1N60から1SS86へ交換することでオリジナル性が損なわれると考える人もいるかと思います。聞けないラジオを飾っておくだけではもったいと思い交換させてもらいました。オリジナルのゲルマニウム・ダイオード1N60です。
スピーカー左中央部のダイオードを交換しただけです。電源を入れるといままで受信できなかった高い周波数のラジオ局を聴くことができるようになりました。確かに感度が上がったことを実感できます。AR-205Kが復活しました。ただし、ダイオードを交換したことによりラジオ放送の背景にサッーというホワイド・ノイズのような雑音が若干大きくなったような気がします。2石レフレックス・ラジオでスピーカーを鳴らすのですから、受信感度が低くてもしかたありません。しかし、ダイオード1本で改善できるのあれば飾っておくラジオよりはいいと思いました。今回はゲルマニウム・ラジオの修理で子供時代を思い出したラジオ修理でした。