1966年頃(17,900円)に販売されたTRIO トリオ FX-46K FMマルチステレオチューナーです。
プリメインアンプW-46とペアになるFMチューナーFX-46のキット製品になります。ラジオ雑誌の46シリーズの広告記事です。当時、このような広告をみたら誰でも欲しくなります。FX-46Kはオーディオ機器として見栄えのするフロントパネルで、AFC、ノイズフルター、レベルメータ、ステレオランプなど必要十分な機能を搭載した完成されたFMチューナーです。背面にはアンテナ端子とステレオ出力端子があります。赤いRCAケーブはオリジナルにありませんので、内部回路を見てどんな改造をしたのか確認する必要がありそうです。
右側は6AQ8×2による3連バリコンのフロントエンドです。プリント基板には6BA6×4から構成されるIF部です。左下はMPX部で6AW8A,6AN8で構成されています。
内部回路はプリント基板のおかげでスッキリした配線になっています。謎だった赤いRCAケーブルの接続先には可変抵抗とコンデンサ等が接続されていて、MPX出力回路を構成しているようです。ステレオチューナーにわざわざMPX出力回路を追加したのは更に謎です。
まずはシャーシの清掃からです。次にフロントパネルを外してダイヤルスケールのガラスなどの清掃をします。ガラス板を保護するゴムがボロボロになっているので交換します。最後に劣化部品を全て交換します。ここで製作当時のミスを発見しました。上の写真をご覧ください。特に整流回路のダイオードと端子板のハンダ付けに注目です。 一見正しくハンダ付けされていように見えます。
1本のダイオードは端子板に巻き付けてあるだけで、ハンダ付けがされていませんでした。TRIOのキットでは多くみられるハンダ付け不良です。このハンダ付け不良は劣化部品を交換している最中に部品がグラグラするので気づきました。端子板の真横からみてもハンダ付けされているように見えます。FX-46Kの製作者さんの痛恨の製作ミスのようです。ワット数が小さな半田ごてを使用して熱がよく伝わらなかったのだと思います。電源回路は半波整流となって電圧が下がりチューナーの音質に大きな影響を与えたのだと想像しました。製作者さんはFX-46KのMPX回路不良を疑ってMPX出力回路を追加したのだと思います。MPX回路は規定の電圧でないと正しく動作せず、セパレーションが悪化します。
MPX回路は取り外し、劣化部品は全て交換しました。ここまでの作業をしてから初めて電源を入れます。0.6A流れ安定しました。各回路の電圧を測り正常のようです。チューニングとして受信感度、トラッキング、セパレーションなどを調整します。FMステレオ放送をヒヤリングしてみます。FX-102Kとは違った落ち着きのあるFM放送を聴かせてくれます。同じTRIOの製品でも音質は機種ごとに個性があるのがおもしろいところです。
完成後の真空管チューナーの姿はいつも見ても美しいです。当時は高額だった真空管FM専用チューナーの製作ミスにより思い描いたFM放送を聴くことができなかった製作者さんを思うと気の毒な限りです。今まで数多く修理をしていると以前のオーナーさんの使い方がなんとなくわかるときがあります。今回の修理したFX-46KでFM放送を聴かせてあげたかったと思う気持ちは私だけでしょうか。