内部の熱を意識した空気抜きのスリット なのかラジオの音の抜けを良くしたいのか理由は定かではありませんが、ラジオの背面には必ずスリットがあります。そしてここにも懐かしいMADE IN JAPANの文字があります。
前面を横から見ると下から1/3で上下に2mmずつ傾斜しています。 おそらく前面パネルをより立体的にみせたいとのデザイン上の理由と傾斜でダイヤルを2mm前に出すことで操作感を良くしたかったのだと思います。また、全面のシルバーの枠は前面に向かって0.5mmほどでしょうか傾斜させています。裏蓋の相当する赤いボディーは上下左右の側面が背面に向けて2mm傾斜しています。さらに背面も縦にゆるやかなカーブを描いしています。このラジオで直線が使われているのは前面横、上面横、下面横、背面横と前面のスピーカーパネルと梨地仕上げの堺の縦線のみで直線を排除した徹底したつくりのデザインになっています。
ポリバリコンは超小型の16mm角でIFTは標準サイズを採用しています。ボリュームのスイッチ機構は接点を上下に動かす今で見たことのない古い方式のものでした。
このラジオを分解するときに一番気をつかうのがダイヤルツマミの取り外しです。プリント基板の赤いネジを外してからダイヤルツマミとポリバリコンの隙間にドライバーを入れて本体を傷つけないようにダイヤルツマミを浮かせて取り外します。「通電しませんでした」 とのジャンク品を購入しました。電池を入れてスイッチをONにしますが無音です。何もスピーカーから音がしない本当の無音です。故障の切り分けで出力トランスでモニターするとラジオ放送が聞こえてきました。原因はよくある故障でイヤホンジャックの切り替え端子の接触不良でした。1000番以上のサンドペーパーで軽く接点を磨いて固着した汚れをとり、コンタクトスプレーをごく少量塗れば修理は終わりです。ラジオのダイヤルを回して受信してみたところ感度は良好です。低い周波数のラジオ局を選択しているとバリバリと雑音が入ります。しばらくはこのまま使っても大丈夫そうですが、ポリバリコン内部のポリプロピレンの劣化が始まっているようです。それ以外には特に不具合は見られませんでした。
上の写真がラジオを分解した様子です。古いラジオなので分解清掃をします。
R118特有ではありませんがトランジスタの構成に特徴があります。R118のトランジスタの構成を見ると2SA102,2SA101×2、2SB175、2SB176×2となっています。6石ラジオとしてR118以前からR1000番シリーズに至るまで同様のトランジスタ構成が採用されています。当時、6石トランジスタ・ラジオとしてはすでに完成の域にありデザインを変えて販売していたようです。それだけラジオには大きな需要があったということなのでしょう。上の回路図は海外輸出仕様なので電源3V(国内は9V)になっています。国内仕様でも3V~9Vの電圧の違いはありますが同様のトランジスタ構成が採用されていました。
メタリック調のラジオはメカを強調したシャープなデザインになりがちです。R-118 は細やかなデザインへの配慮により優雅な雰囲気さえ漂わせています。現在のラジオにはみられないゆとりと活力がを感じることができるのが昭和のラジオ製品です。