LEADER LSG-231 FMシグナル・ジェネレーターの紹介です。1970年頃の製品になります。ご存じのようにFMシグナル・ジェネレーターはFMのセパレーションを測定するための装置です。最新のセパレーションメーターより安価で操作も簡単なためLSG-231を愛用しています。ネットでたまにしか見かけませんが、予備機として購入することができました。
パイロット信号:19kHzコンポジット信号
製造が1970年なので故障して使用できるとは思えません。まずは機能を確認します。1KHz出力:OK,19KHz出力:OK、コンポジット信号:OKです。ここまでの機能確認は順調です。
FM RF出力をチューナーに接続します。 チューナーは88MHzに合わせます。しかし、選局してもStereoランプが点灯しません。オシロスコープではなんとかLR出力の正弦波が観測できます。アナライザーでは1KHzが弱く左右分離もしない状態です。パイロット信号19kHzも微弱です。そしてLSG-231の動作が不安定で、Rチャネルの1KHzが出力しなくなりました。LSG-231は故障していて全く使い物になりません。
修理できるか不明ですが内部を覗いてみます。大きな損傷は見られません。ただし、半数の電解コンデンサーに劣化の痕跡がみられます。最初にできることは劣化部品を全て交換することです。1時間ほどで部品交換は終了です。電源を入れます。修理前は0.5Aほどでしたが0.6A流れます。なぜか僅かに電流が増えました。
再度、LSG-231のRF出力をチューナーに接続て試験をします。1KHz出力:OK、19KHzのON/OFF:StereoランプOK、セパレーション:LRともOKです。ここまでの機能は正常です。幸いなことに半導体などの故障はなかった模様です。(注:正常とは書きましたが測定器の機能ブロックを様々な規格に合わせて調整した訳ではありません。波形出力が確認できたとの意味です。)
ただし、1KHz出力が1020Hzと周波数がズレてしまいました。回路図を見てオペアンプに接続するVR302を調整しますが1KHzに調整すると発振しなくなります。周辺部品の乗数を変える必要があるようです。測定には特段の支障はないので1020Hzのまま使用することにします。
翌日、LSG-231とチューナーを接続したところ、チューナーのStereoランプが点灯しません。19k Hzは正常に出力していることからRF ON/OFFスイッチ周辺の回路が故障のようです。
回路図を見るとRF ON/OFFスイッチは電源回路に接続されています。電圧変動による動作不良かもしれません。電源ONにしたばかりの時点では1.8kΩで17V(回路図の中央赤丸)の電圧です。Stereoランプが不点灯です。10分程度経つと17.3Vまで微増してStereoランプが点灯します。この状態ではVR001で電圧を上げても下げてもランプが消灯します。RF回路が動作できる電圧範囲に調整できていないことが原因の様です。
電源ONしてすぐの状態ではVR001で電圧調整しますが一杯まで回してあり電圧はこれ以上あげられません。VR001を470Ωから500Ωに交換してみます。最初に電圧を調整してStereoランプが点灯するように調整します。10~20分すると電圧が変動してStereoランプが消灯します。測定器が温まった状態で再度調整してStereoランプが点灯するように調整します。1日程度、Stereoランプが消灯しないか様子をみてもOKでした。翌日、電源を入れると10~20分程度でチューナーのStereoランプが点灯して安定します。毎回、使用前に10~20分程度電源を入れ動作を安定させる必要があります。
これでLSG-231の修理は終了です。LSG-231を購入されるときは修理が前提となりますので注意が必要です。LSG-231はFMチューナーの調整には欠かせない測定器です。自作や修理するために1台は持っておきたい製品かと思います。
追記:秋月電子のFMステレオ・トランスミッター・キット
以前、ネットでFMトランミッターを使いセパレーションを測定した記事を読んだのを思いだしました。頭のいい人がいるものだと感心したのを覚えています。その記事では秋月電子のFMステレオ・トランスミッター・キットを使っています。面白そうなので数年前に購入してみました。
FMトランスミッター・キットとACアダプターを購入(約6000円)、100円ショップのプラケースに収めています。このFMトランスミッターの入力レベルを最大になるようにジャンパーを設定します。FM出力が弱いのでアンテナには同軸をつなぎTV用のRFコネクタを付けます。FMチューナーのRF端子に直接、トランスミッターを接続するためです。
実際にFMトランスミッターをSONY ST-SA50ESに接続してみます。87.5MHz、信号レベルは60dBで受信することができます。たしかにステレオ・ランプも点灯しますのでパイロット信号も送信できているようです。家では光TVから同軸でFM放送を受信しています。その受信レベルは60dBでFMトランスミッターとほぼ同じでした。
LchとRchに1kHz信号
Lchのみに1kHz信号
セパレーションを測定するために発振器の1kHz信号を FMトランスミッターのステレオ・ジャックへ入力します。FMチューナーの出力をスペアナで観測すると、1kHzと19kHz(パイロット信号)を見ることができます。この状態でLまたはRの1kHzを切断したLとRの差分レベルがセパレーションになります。このFMトランスミッター自身のセパレーションは35dBです。そのためFMチューナーのセパレーションは35dBまでしか測定できないことになります。真空管チューナーを修理している私には十分な性能です。本当に測定できるのがすごいです。LSG-231には1kHzの発振器が内蔵されていて操作性はいいですが、性能面で比較すればLSG-231と遜色なさそうで参ります。興味がある方はキットを購入して試してみる価値はあるかと思います。