SANSUI サンスイ TU-555 FM/AMチューナーの紹介です。1968年、28,900円の製品です。サンスイのチューナーはあまり触る機会がなく、真空管チューナーTU-70やPM-880以来の修理になります。丸いダイヤルスケールが特徴のコンパクトなチューナーです。
ダイヤルスケールのグリーンの照明が美しいチューナーです。
セパレーション調整用のボリュームがあります。低価格帯ですが利用者に高いスキルを求めているような気がします。
内部は機能別のプリント基板に分けられスペースに無駄のない整然とした作りです。調整箇所の多いチューナーです。
フロントエンドとその調整穴およびプリント基板の見えメンテネンスしやすく配置されています。
劣化部品を交換します。交換後に機能を確認します。AM放送は聞こえますが受信レベルが低いです。FMはダイヤル目盛りが大幅にズレています。
AM放送の受信感度を調整します。簡易的に2mほどのリード線をアンテナ代わりにします。調整後の受信レベルは良好です。電波難民地域ですが難なく受信できています。AM機能は実際にはなかなかの実力の製品です。
FMの受信感度を調整します。ダイヤルのトラッキングを調整するため低い受信周波数はLOで調整します。コアを回しますがうまく調整できません。コイルのボビンの中を覗くとフェライトコアが割れています。前オーナーさんが調整で割ってしまったのでしょうか。ジャンク品から回収してあるフェライトコアと交換して調整します。
FMの高い受信周波数のダイヤル目盛りのズレはTCOで調整します。次に高い受信周波数を調整します。89.7M㎐の放送局が88M㎐と大幅にズレています。TCOで調整しますが受信周波数に変化がありません。これは困った症状です。フロントエンドを開けなければ修理できそうにありません。
シールドケースを外したフロントエンド故障したTCOのトリマ(左)と代用品のトリマ(右)フロントエンドのシールドカバーを外します。修理できるようにプリント基板をバリコンがら分離させます。TCOのトリマコンデンサ(10pF)を取り外してコンデンサ容量を確認します。コンデンサ容量が測定できません。トリマコンデンサの故障です。この部品もジャンクチューナーから回収したものと交換します。トリマコンデンサの交換により高い受信周波数も調整できるようになりました。
最後にMPX基板の調整とセパレーションボリュームを調整します。調整前は10dBほどだったセパレーションが30dB以上確保できるようになりました。
ヒヤリングします。一見帯域は狭く感じますがしっかり上下の帯域まで音が出ています。高域はやや控え目で粒子はやや粗く少し混濁しているように聞こえます。全体的にもクリアさと言うか透明感が足りません。音のバランスは良く量感・奥行も十分に感じられます。このチューナーはピアノの音が良く音楽性に優れた製品のようです。FM放送を聞いているとハッとする音が聴こえる瞬間があるので、このチューナーは本物(出来の良いチューナーとの意味)です。低価格帯ですが良く出来た製品の一つかと思います。
参考:調整方法
お手持ちの機材に合わせて調整してください。TU-666も同じ手順で調整できます。
AMチューナー部