2023/12/01

Victor ビクター MCT-105 FM/AMチューナー

 

Victor ビクター MCT-105 FM/AMチューナーの紹介です。1969年、69.800円の製品です。FM、AMの2つのダイヤルスケールがある超弩級の高級チューナーです。チューナーとは思えない8.3kg、アンプ並みの重量です。上下2段のダイヤルスケールは、TRIO W-15管式ステレオレシーバーを思い出します。

FMを選択した場合は上のダイヤルスケールとセンターメーター、下のレベルメーターの照明が点灯します。ダイヤルスケールがグリーンの光で浮かびあがる美しい照明です。

AMを選択した場合は下のダイヤルスケールとレベルメーターの照明が点灯します。

 
チューナーには珍しくヘッドホンが接続できます。AMとFMそれぞれにヘッドホンと可変出力の兼用ボリュームが設けられています。

背面パネルの様子です。中央の黒いキャップがしてあるボリュームはセパレーションとミューティング調整用です。

中を覗いてみます。ダイヤルスケールとランプが上下2列に並ぶ圧巻の眺めです。左手前はAMチューナー、左奥はFMフロントエンド、中央はMPX回路、中央上はクリスタルフィルターがあるFM IF、右上は電源回路と同じプリント基板上にヘッドホンアンプが搭載されています。トランジスタには2SC459、電解コンデンサーには10μFなどを多用して部品の種類が極端に少ないチューナーです。物量を投入してコストもかかりすぎて、部品の統一などでコストを削っているのかもしれません。

全体に部品が劣化していますので劣化部品は交換します。動作を確認します。Lchから音が出ません。SELECTの接触不良です。接点を一度クリーニングしてからクイックドライクリナーで洗浄します。洗浄後にコンタクトスプレーを手作業で塗れば接触不良は解消です。

下の段のレベルメータが振れません。メーターの端子で電圧を確認します。電圧は正常です。メーターを取り外してテスターで導通確認しますがNGです。コイル内部で断線しています。手持ちのメーターを加工して代替品とします。

 代替品のメーターとチューナーの文字盤です。

チューナーの文字盤を代替品のメーターに移植します。

レベルメーターが復活しました。

チューニングメーターが中央からズレていますので調整します。更に受信感度、セパレーションを調整して作業は終了です。

ここまでの修理でヒヤリングします。音全体にノイズが乗っています。上の写真はチューナー出力が無信号の場合ですが、ノイズが出ていることがはっきりわかります。オシロスコープで回路を調べますがノイズ源が見つかりません。

原因がわからず基本にかえり各箇所のアースの取り方を確認します。チューナー出力と接続するケーブルのRCA端子にアースを接触させるとノイズが消えます。まさかと思いましたがチューナーのRCA端子を2000番の紙やすりで磨いてみると多くの緑青(銅のサビ)が取れます。プラグ表面に光沢が戻ったのでコンタクトスプレーをつけます。再度、ヒヤリングするとノイズは完全になくなりました。RCAプラグが錆びて接触抵抗が大きくなったことによるノイズだったようです。本来ならRCA端子を交換したいところです。

修理後のヒヤリングです。ダイヤルノブは小型ですが回すときに適度の重さがあり心地よいチューニングができます。高級機らしくクリアで上品な音質です。バランス重視なのでしょうか上下の帯域を欲張らず優等生的な音がします。決して刺激的な音を出すことがないチューナーです。ヘッドホンで聴いてみます。アンプを介さずに手軽にチューナーで聴けるのが快適です。ヘッドホンでは力強い低域と厚みがある音が特徴です。ボリュームを小さくしても音が痩せないところがいいです。夜、静かに聴くには最適です。FM/AMの2つのダイヤルスケールとダイヤルノブ、ヘッドホンアンプ内蔵、セパレーション調整、ミューティング調整などリスナーが便利だと思う機能を盛り込んだ高級機です。重厚なデザインと操作の質感は格別です。オーディオ機器を操作する楽しさを教えてくれる製品です。