2023/11/25

SONY ソニー MS-3400 FM STEREO/AM RADIO(マトリックス・サウンド)

SONY ソニー MS-3400 FM STEREO/AM RADIO(マトリックス・サウンド MS-34)の紹介です。 1970年、19,800円の製品です。マトリックス・サウンドはMS-4000,MS-3300,MS-3200と4種類の製品を販売していました。マトリックス・サウンドと聞くと長岡鉄男さんのMXスピーカーを思い出します。それより古いMS-3400ですが3つのスピーカーによるマトリックス方式なのでMX-14,MX-15と同じです。ただし、MS-3400は特殊なアンプとスピーカー配線の組合せですが、MX-14やMX-15はスピーカーの配線のみで実現しており音(左右の音の合成比率)の違いからセミマトリックスと呼ばれています。SONYのMSシリーズは、3つのスピーカーによるフルマトリックス方式です。

回路を調べましたがMS-3400のマトリックス方式は巧妙でよく出来た作りです。上の図がMS-3400のマトリックス・サウンドのイメージ概要になります。①パワーアンプの出力がL+RL-R,②左スピーカーと右スピーカーはパラ接続ですがセレクタでSTEREO選択時は右スピーカーは極性を反転させます。③3つのスピーカーからは、L-R,L+R,R-Lがそれぞれが出力されます。①~③の仕組みにより、④左右の耳に届く音は2L,2Rのマトリックス・サウンドになっています。更にSTEREO RANGEのボリュームで左右のスピーカ音量を調整してサラウンド感の大小をコントロールできるようにしています。以上がマトリックス・サウンドの概略です。

木製のカバーを外して修理に取り掛かります。外した木製のカバーの内部は3つに区切られています。スピーカーを区切り、あたかも3つの別々のスピーカーのように鳴らします。スピーカーの音がラジオ本体の中で他のスピーカーから漏れ出ないように区分してサラウンド効果を最大限に発揮させます。

マトリックス方式の3つの8Ωスピーカーです。

真っ先に目に入ってくるのがオレンジ色のSONY独自のMU(マルチプレックス・ユニット)です。チューナー以外で搭載しているのを初めて見ました。MUの型番は1-425-633-11でチューナー搭載のものとは違うようです。細長いプリント基板はチューナー部、その右上にパワーアンプ、右端にフロントエンド、右底に電源回路が配置されています。

動作を確認します。セレクタがFM STEREOの状態では残響音ばかり聞こえるだけで動作はNGです。FM MONOは正常そうです。AMは音がでません。故障の全体像がはっきり掴めないのでどこから手を付ければいいのか迷います。初めに劣化部品を交換します。交換後に再度、動作確認をしますが同じ症状です。

セレクタを何度か動かすと音が出たりでなかったりです。接触が悪いようです。このラジオのセレクタ・スイッチは横長で端子が多く取り外しが大変です。2本とも分解して清掃します。 FM STEREOで音が出るようになりました。AMはセレクタを目いっぱいまわした状態を手でおさえていれば音がでます。セレクタの金具にスペーサーを噛ましてスイッチを少し押した状態にしてあげることでAMも正常に音がでるようになります。

選局時にバリバリ音がしてチューニングが安定しません。ポリバリコンの劣化のようです。フロントエンドからポリバリコンを取り外します。ポリバリコン内部のポリプロピレンがクシャクシャになっています。ポリバリコンは軸の長さが9mmで軸の両側平のAM/FM2連の物と交換します。交換により選局時のバリバリ音もなくなりスムーズにチューニングできるようになりました。

FMの受信感度を調整することでSTEREOランプが点灯するようになります。AMも受信感度を調整します。

ヒヤリングしてみます。音に広がりのある独特のマトリックス・サウンドを聴くことができます。音楽を聴くときにSTEREO RANGEでサラウンド効果を強めにするとより楽しめます。会話やニュースなどはマトリックスでないほうが聴きやすいです。STEREO RANGEを強くするとステレオ分離の影響なのかチリチリとノイズが少し気になります。再度セパレーションの調整をしましたがこのノイズは残ります。FMステレオでマトリックス方式を実現するのには高い技術が必要だと感じられます。マトリックス・サウンドには余程自信があったのか4機種も発売しています。SONYの技術者の発想で製品化したのがMS-3400です。マトリックス方式に対する強い自負と思いが感じられるラジオです。