今回はONKYO D-202Aのためにチャージカップルド・リニア・ディフィニション技術を組み込んだ外付けツィーターの製作です。
以前、ONKYO D-202Aのコンデンサを交換して高域の音抜けが良くなり喜んでいました。しかしフルデジタルチューナーT8+DACでFM放送を聴くと、まだ高音に物足りなさを感じます。FM放送の高域は15000Hzまでです。単にスピーカーの高域の音量不足なのでしょうか。
そこで少々強引ですが外付けツィーター追加を検討しました。スーパーツィーターの様な20kHz以上の空気感がほしいわけではありません。中高域のバランス補正が目的です。好みの音のバランスに仕上げられるか楽しみです。
ONKYO D-202Aのカタログを見ると40Hz~35000Hzと再生帯域は広いです。2.5cmのソフトドームツィーターは柔らかで繊細な高音です。もう少し華やかで見通しが良いスピード感のある音が希望です。
長期保管しているツィーターは少々古いテクニクスEAS-8HH17Gです。EAS-8HH17Gは1974年、4300円/台のツィーターです。8cm口径のホーン型になります。再生帯域は2000Hz~20000Hzです。2000Hz~10000Hzは特性がフラットで10000Hz~20000Hzはダラダラと下降しています。
事前に音色確認
ツィーターの音色やスピーカーとの相性を事前に確認します。
FM放送の音声帯域15000Hz以下という事からコンデンサは仮に1.5μFとしてクロスオーバーを設定します。コンデンサ容量は好みに合わせ調整にしてください。
音圧はD-202A:94dB、EAS-8HH17G:99dBです。本来はツィーターにアッテネーターが必要かと思いますが今回はコンデンサのみ-6dB/octです。
D-202Aとは音質が異なるホーンツィーターなので少し不安です。ヒヤリングします。
高域がサラサラして明るい音です。D-202Aのツィーターとは全く音質が違いEAS-8HH17Gとのつながりが少し不自然で別々に鳴っているように聴こえます。やや高域よりのバランスですが気持ちよく響くので聞き疲れはありません。音にキレがあり情報量もいっきに増えています。
意外にこれで十分じゃないかと思えます。EAS-8HH17がD-202Aの高域を上書きしている感じです。高域はEAS-8HH17そのものの音ですが、思っていたよりうまく鳴ってくれたようです。
2025.11.15 チャージカップルド・リニア・ディフィニション(Charge-Coupled Linear Definition)
外付けツィーターの音が良かったので気をよくしてもうひと工夫します。
ホーン型ツィーターとの相性が良いチャージカップルド・リニア・ディフィニションのネットワーク回路に変更します。JBLでは1990年代後半頃からハイエンド・スピーカーのネットワーク回路にチャージカップルド・リニア・ディフィニション技術を採用しています。
コンデンサにDCバイアスを加えることで逆圧電効果による雑音や歪の低減とゼロクロス歪を排除して音質の透明度と解像度を向上させるネットワーク回路技術です。(1993 JBL Model K2.S5500 Product Overviewを要約)
上の図ではバッテリー式と電池不要のセルフバイアス式の2種類のチャージカップルド・リニア・ディフィニションをネットワーク回路に組み込んでいます。コンデンサは通常の2倍の容量を直列に2個並べその中点にDCバイアスを加えます。
バッテリー式ではDCバイアスに006P 9Vアルカリ電池と抵抗2MΩを使います。電池不要のセルフバイアス式では入力信号を整流してDCバイアスを得るためダイオードと抵抗10kΩを接続します。
試作品なので2種類のチャージカップルド・リニア・ディフィニションをスイッチで切替できるようにします。JBLではダイオードに1N4935(200V、1A)を使っています。
0.33Ωの抵抗(最終的には3.3Ωに調整)は、スピーカーとツィーターの音量差を整えるために入れています。あらかじめプリント基板上に仮配置しておき、最終的な値はヒヤリングで決める予定です。また、この抵抗にはレベル調整だけでなく、ネットワークのダンピングを適正化し、共振点付近のQを抑えて特性をなだらかにする効果があります。さらに、CCLDの動作とのバランスを取る役割も持っています。
※参考1:JBLのスピーカー機種名 ①バッテリー式は、K2 S5500、S3100mkⅡ、4348、4344mkⅡ、K2-S9800、DD66000、②セルフバイアス式は、4367,DD67000などです。
※参考2:チャージカップルド・リニア・ディフィニションとは関係ありませんが、バイパスコンデンサ0.01μFは高域の補正を行いレスポンスや透明感を改善します。
上の写真が試作したネットワーク回路基板です。コンデンサには250V以上のESRの低いフィルムコンデンサが適しています。コンデンサは最終的に400V 3.2μF(2.2μF+1.0μF)で製作しました。(注:直列に入れる抵抗は実装前の状態)
ダイオードには耐電圧、耐電流以外に順方向電圧(VF)や漏れ電流(IR)が小さいファーストリカバリーダイオードが適している様です。
JBLはバッテリーにアルカリ電池006P 9Vを使用しています。抵抗2MΩにより約1μA(実測)の消費電流に抑制しています。電池は4年〜5年(1993 JBL Model K2.S5500 Product Overviewから抜粋)は使えるとのことです。バッテリー種別は内部抵抗が低いほどDCバイアス電源の安定性に優れていると推測します。
試作品なのでコンデンサを交換しやすいようにネットワーク回路基板は外付けにしました。2種類のチャージカップルド・リニア・ディフィニションはプリント基板のスライドスイッチで切替できます。2種類のチャージカップルド・リニア・ディフィニション搭載のツィーターをヒヤリングします。
① バッテリー式(アルカリ電池):チャージカップルド・リニア・ディフィニションをONにすると高音の伸びと音の透明感が増します。音に広がりや繊細なニュアンアスを聴くことが出来ます。スピーカーが本来持っている音質はかわりませんが、チャージカップルド・リニア・ディフィニションによる微細信号の広がりの効果がはっきりと感じられました。
②セルフバイアス式(1N4935):バッテリー式よりは音質への効果は穏やかに効く感じです。バッテリー式の方が解像度や透明感があります。バッテリー式の後に聞くと少し音の粒子が丸くなったように聴こえます。
どちらの音質が優劣なのかは決められません。音の好みにより2つの方式から選択すべきかと思います。今回はセルブバイアス式の方が音の全体のバランスが取れて好ましいです。
EAS-8HH17GはD-202Aの外付けツィーターとして十分満足できる音です。
しかし音の好みがあるので万人向けではありません。
チャージカップルド・リニア・ディフィニション技術を組み込んだツィーターのヒヤリングは興味深い体験です。コンデンサのゼロクロス歪を排除してパッシブ・スピーカーの音質向上を目指した着眼点がすばらしいです。
音を決める要因全体から見れば影響は限定的ですが音質向上への確かな選択肢の一つです。ハイエンド・スピーカー以外のホームユース向けにも採用して欲しい技術です。
今回は高域に特化しましたが中低域にも効果があります。チャージカップルド・リニア・ディフィニション・ネットワーク回路の製作はスピーカー自作派にはお勧めです。
JBLのスピーカー技術の片鱗を感じるツィーターになりました。若い頃に聴こえていた音が蘇ります。
部品の入手先
2026.1.8
チャージカップルド・リニア・ディフィニションのクロスオーバ歪などの測定データがほしいと思われることでしょう。本方式の効果は、コンデンサ誘電体の非線形やゼロクロス近傍の挙動といった微小信号領域に関わるもので、一般的なオシロスコープによる波形観測では差異を確認することは困難です。実際にオシロスコープで観測しましたが違いはわかりませんでした。 測定できるとしても THD/IMD −80 dB 以下です。聴くとわかるが測りにくい領域での話になります。そのため、今回の内容については主観のみの評価とさせていただきました。
2026.1.31 あとがき
このあとがきは、ブログを読み直しているうちに、ふと思い出したことです。
ツイーターを眺めているうちに、このツイーターには、まだ引き出されていない潜在能力があるのではないか、という気がしてきました。
外付けツイーターとして使うだけでは、結局のところ過去の焼き直しです。何とかして、このツイーターの能力を引き出せないものかと考えていました。
そんな折、オーディオ雑誌のリスニングルームの写真を眺めていると、大型スピーカーの上に、細長い乾電池のようなものが載っているのが目に入りました。
瞬間的に、JBL の CCLD(チャージカップルド・リニア・ディフィニション)を用いたネットワークではないかと思いました。これがひとつのヒントになりました。
テクニクスのツイーターを CCLD で鳴らしたら、どうなるのだろうか。
そう考え、技術資料や回路図を調べ尽くしたうえで製作に取りかかりました。
それが、このブログです。
2026.2.4 再調整
文中に、ツィーターとコンデンサの構成でのヒヤリングを事前の音色確認との項目名と一文を追記しました。
また、CCLD回路図で当初0.33Ωの抵抗は、最終的に3.3Ωに調整した旨と抵抗の役割を文中に追記しました。
2026.2.13 前提条件
ブログを読み返して実験の前提条件が抜けていましたので追記しました。
①再生機器
メディアプレーヤーはJPLAY FEMTOとAudirvana OriginをDLNAコントロールポイントとしてKS(Kernel Streaming)で動作させています。ここで注意する点はJPLAY FEMTOをASIOで動作させてもCCLDの効果は感じられませんでした。KS(Kernel Streaming)での動作のときのみCCLDの効果を感じます。CCLDの効果を得るためにはジッタの少ない純度の高い条件で動作する構成が不可欠です。
②音源
何を聴いてもCCLDの効果を感じられるわけではありません。今回は八神純子さんの「もう忘れましょう」などのスローで音の粒子が多く広がるように感じる楽曲を使用しています。CCLDの効果が判りやすい楽曲です。
③事前確認
ONKYO D-202A(ソフトドームツィーター)とテクニクスEAS-8HH17(ホーンツィーター)は、通常あり得ない異なる構造のツィーター同士の組み合わせです。オーディオのセオリーを敢えて無視しています。この組み合わせの目的はホーンツィーターからのみCCLDが影響する音の粒子(つたない音の表現です)が感じられるかを確認するためです。CCLD導入後の音質評価の元の音になります。ソフトドームツィーターではCCLDなどの微細信号は出にくく、CCLDの微小で繊細な音が出るのがホーンツィーターです。CCLDのテストにはホーンツィーターにだけに着目すれば良いスピーカー構成としています。
④CCLD導入の効果
CCLD 導入効果の確認においては、音そのものの良し悪しを評価対象にはしていません。
私の聴覚上の解釈では、音の粒子(微細信号)の不揃いが均一化される(ザラつきの軽減)、粒子の細分化、背景(空間の雰囲気)の明瞭化、そして粒子の広がりが感じられます。
これらが揃うことで、音楽の伝わり方に独特の快感を覚えます。
あくまで主観的な評価ですので、最終的な判断はご自身で行ってください。
以上が本実験における前提条件です。
ヒヤリングの難易度が高い作業であり、音の入口から出口まで繊細な情報を失わないよう、システム全体の構築には十分な注意を払うことをお勧めします。
CCLD は単なるネットワーク技術ではなく、微細信号を救い出すための JBL の“狂気に満ちた執念”が生んだ開発・製品化であることをご理解いただければ幸いです。
本稿の内容は、再現性や普遍性を保証するものではありません。
自作オーディオは自己責任で行ってください。
関連ブログ
ヘッドホン・ジャック専用バッシブ・スピーカーの製作(JBL CCLDの世界)
音の粒子の世界を別のアプローチで実現したブログです。
あわせて参考にしていただければ幸いです。




