2024/03/08

Victor ビクター MCA-100BとMCT-100T

 Victor ビクター MCA-100BMCT-100Tの紹介です。1971年頃の製品になります。ビクターコンポネントステレオのMCA-100B(プリメインアンプ)とMCT-100T(AM/FMチューナー)です。

 小型なので縦置きまたは横置きで配置することができます。低価格帯ですがアルミ無垢のツマミが採用さていますので操作感は良好です。木目調のプラスチックカバーと丸いダイヤルスケールのチューナーが印象的でスッキリとしたデザインに好感が持てます。
 
MCT-100Tの中を覗いてみます。1枚のプリント基板の上に2連バリコンが配置されています。糸掛けを外して修理する必要がありそうです。
FMフロントエンドの初段はFETではなくトランジスタ(2SC535)が採用されているので受信感度やS/Nなどが期待できそうにありません。当時、8,900円の価格を考えると目一杯健闘した結果かと思います。
次にMCA-100B(プリメインアンプ)の中を覗いて見ます。電源基板とアンプ基板のシンプルな構成です。

 
上の写真のようにMCA-100Bを修理するには、底板からプリント基板を分離させる必要があります。
MCA-100BとMCT-100Tの劣化部品は全て交換します。チューナーは再調整しましたがスペアナの波形が揺れて少し不安定な状態でした。
修理が終わったので、ヒヤリングしてみます。MCT-100Tを単体で聴きますがバランスも良く帯域は広く感じられます。奥行もありいい雰囲気です。受信感度はやや弱く感じます。次にMCA-100Bですが、上下の帯域はほどほどですがバランスの取れた聴きやすい音です。また、メリハリがある元気な音質です。特にMCA-100Bは想像していたより遥かにいい音を聴かせてくれました。
低価格帯ですが小型でデザインも良く気になるアンプとチューナーです。PCオーディオなどでサブシステムとしての組み合わせがお勧めかと思います。

2024/03/03

TRIO トリオ KT-7000 AM/FMチューナー

TRIO トリオ KT-7000 AM/FMチューナーの紹介です。1970年、61,000円のチューナーの名機です。チューナーはずしりと重く8.2kgあり、アルミの無垢のツマミとダイヤルスケールの照明が美しいで製品です。

 チューナーのカバーを外すと、黒いシールドケースで厳重に保護されています。

上の写真はシールドケースを外した状態です。糸掛けの方法ですが、バリコン調整用とダイヤル針用で2本の糸掛けを使用するのがめずらしいです。

 
このチューナーの最大の特徴であるクリスタルフィルター2個と同じ横並びの4個の丸いICを見ることが出来ます。

 
修理作業を始めます。部品に劣化が見られるため、劣化部品を全て交換します。
部品交換後に電源試験をします。0.3A流れ安定し正常のようです。
 
修理後は動作の確認をします。FM,AMともに受信は良好です。ただし、上の写真のようにシグナルメーターとチューニングメーターの針の赤い塗装が劣化して剥げています。
シグナルメーターの針を再塗装することで、見た目の雰囲気が格段に良くなります。チューニング時に必ず目に入るメーター針の塗装修理は必要不可欠かと思います。
大きな問題もなく、再調整して修理作業は終了です。再調整しないとSTEREOランプ不点灯や左右の音量バランスが崩れたりします。KT-7000は意外と調整が難しいので要注意です。
 
ヒヤリングしてみます。中低音が厚く奥行を感じる音質です。いかにもアナログチューナーですと主張しています。ボーカルがやさしく聞こえます。デザインと同じような安定感があるチューナーです。アナログチューナーの醍醐味を感じたいのであればKT-7000は最適です。70年代の名機は、現在でも十分通用するクオリティーの製品だと思います。

SUNSUI サンスイ TC-505 AM/FMチューナー搭載ステレオプリアンプ

SUNSUI サンスイ TC-505 AM/FMチューナー搭載ステレオプリアンプの紹介です。1968年、37,500円の製品になります。サンスイはこの時期、TUシリーズ(チューナー)、TCシリーズ(チューナー搭載プリアンプ)、TAC(レシーバー)のラインナップで多くの機種を販売していました。 TC-505は、丸いダイヤルスケールで横幅もありチューナー単体より、バランスの良いデザインで今でも人気がある機種です。

上の図はチューナー部のブロック図になります。FMフロンエンド(F-1031)、FM IFセクション(F-1087)、FM マルチプレックスセクション(F-1099)、AMセクション(TRAM-4A)で構成されています。このプリント基板はチューナーTU-555と同一のものが採用されています。

上の図はチューナー以外の構成です。イコライザアンプ(F-1023)、トーンコンロールアンプ(F1074)、ヘッドホンアンプ(F-1077)でプリアンプを構成しています。TU-555に上記の3つのアンプを搭載した製品がTC-505です。

上から見ると、左下:トーンコントロールアンプ、その右中央がFMマルチプレックスセクション、中央がFM IFセクション、中央上がAMセクション、バリコン下がイコライザ-アンプになります。

裏から見ると、左上はヘッドホンアンプ、その下が電源部になります。 

修理作業に入りますが、まず最初に劣化部品は全て交換します。

次に電源試験をします。0.15A流れ正常のようです。

機能を確認します。ステレオランプが点灯しません。ステレオランプへの電圧はチューニングで変化するので回路は正常です。6Vの豆球と交換して再調整でランプは点灯しました。

ヘッドホンの出力波形が歪んでいるので、 2SB405×2を2SA1015×2と交換しました。

FM受信時にサッーという雑音がやや大きく聞こえます。フロントエンドのFET不良が疑わしいです。FMフロントエンド(F-1031)基板はバリコンと蜜に実装されていて修理が大変です。


 
FMフロントエンドのシールドケースや配線、ボルトを外してプリント基板を取り出します。三菱の初期型FETのMK10が採用されています。
MK10は手持ちのストックと交換です。海外輸出製品のTC-505には、2SK19が使われています。時間があれば2SK19や2SK192aに交換して動作するか確認してみたいものです。MK10の交換によりFM放送時のサッーという音は小さくなり改善されました。最後にチューナー部分を再調整して終了です。チューナー部分はTU-555と同じ手順で調整できます。
 
ヒヤリングしてみます。元気よく明るいトーンでキレのある音色です。バランスも良く帯域も広く感じます。TU-555単体とは違った音色に仕上がっています。同じ基板ですが音色が違うのはトーンコントロールを通したからでしょうか。
TC-505は完成度が高く安定感ある動作を感じることができます。Phonoでレコードを聴いてもいい雰囲気で聴かせてくれます。また、ヘッドホンが使えることも非常に便利です。TC-505とパワーアンプとの組み合わせにより、音のアップグレードが自由にできるのも魅力です。現在では見当たらない絶命危惧種のチューナー搭載型プリアンプです。個人的には自作のパワーアンプなどと組み合わせて使いたくなる個性的な製品かと思います。