2024/03/03

TRIO トリオ KT-7000 AM/FMチューナー

TRIO トリオ KT-7000 AM/FMチューナーの紹介です。1970年、61,000円のチューナーの名機です。チューナーはずしりと重く8.2kgあり、アルミの無垢のツマミとダイヤルスケールの照明が美しいで製品です。

 チューナーのカバーを外すと、黒いシールドケースで厳重に保護されています。

上の写真はシールドケースを外した状態です。糸掛けの方法ですが、バリコン調整用とダイヤル針用で2本の糸掛けを使用するのがめずらしいです。

 
このチューナーの最大の特徴であるクリスタルフィルター2個と同じ横並びの4個の丸いICを見ることが出来ます。

 
修理作業を始めます。部品に劣化が見られるため、劣化部品を全て交換します。
部品交換後に電源試験をします。0.3A流れ安定し正常のようです。
 
修理後は動作の確認をします。FM,AMともに受信は良好です。ただし、上の写真のようにシグナルメーターとチューニングメーターの針の赤い塗装が劣化して剥げています。
シグナルメーターの針を再塗装することで、見た目の雰囲気が格段に良くなります。チューニング時に必ず目に入るメーター針の塗装修理は必要不可欠かと思います。
大きな問題もなく、再調整して修理作業は終了です。再調整しないとSTEREOランプ不点灯や左右の音量バランスが崩れたりします。KT-7000は意外と調整が難しいので要注意です。
 
ヒヤリングしてみます。中低音が厚く奥行を感じる音質です。いかにもアナログチューナーですと主張しています。ボーカルがやさしく聞こえます。デザインと同じような安定感があるチューナーです。アナログチューナーの醍醐味を感じたいのであればKT-7000は最適です。70年代の名機は、現在でも十分通用するクオリティーの製品だと思います。

SUNSUI サンスイ TC-505 AM/FMチューナー搭載ステレオプリアンプ

SUNSUI サンスイ TC-505 AM/FMチューナー搭載ステレオプリアンプの紹介です。1968年、37,500円の製品になります。サンスイはこの時期、TUシリーズ(チューナー)、TCシリーズ(チューナー搭載プリアンプ)、TAC(レシーバー)のラインナップで多くの機種を販売していました。 TC-505は、丸いダイヤルスケールで横幅もありチューナー単体より、バランスの良いデザインで今でも人気がある機種です。

上の図はチューナー部のブロック図になります。FMフロンエンド(F-1031)、FM IFセクション(F-1087)、FM マルチプレックスセクション(F-1099)、AMセクション(TRAM-4A)で構成されています。このプリント基板はチューナーTU-555と同一のものが採用されています。

上の図はチューナー以外の構成です。イコライザアンプ(F-1023)、トーンコンロールアンプ(F1074)、ヘッドホンアンプ(F-1077)でプリアンプを構成しています。TU-555に上記の3つのアンプを搭載した製品がTC-505です。

上から見ると、左下:トーンコントロールアンプ、その右中央がFMマルチプレックスセクション、中央がFM IFセクション、中央上がAMセクション、バリコン下がイコライザ-アンプになります。

裏から見ると、左上はヘッドホンアンプ、その下が電源部になります。 

修理作業に入りますが、まず最初に劣化部品は全て交換します。

次に電源試験をします。0.15A流れ正常のようです。

機能を確認します。ステレオランプが点灯しません。ステレオランプへの電圧はチューニングで変化するので回路は正常です。6Vの豆球と交換して再調整でランプは点灯しました。

ヘッドホンの出力波形が歪んでいるので、 2SB405×2を2SA1015×2と交換しました。

FM受信時にサッーという雑音がやや大きく聞こえます。フロントエンドのFET不良が疑わしいです。FMフロントエンド(F-1031)基板はバリコンと蜜に実装されていて修理が大変です。


 
FMフロントエンドのシールドケースや配線、ボルトを外してプリント基板を取り出します。三菱の初期型FETのMK10が採用されています。
MK10は手持ちのストックと交換です。海外輸出製品のTC-505には、2SK19が使われています。時間があれば2SK19や2SK192aに交換して動作するか確認してみたいものです。MK10の交換によりFM放送時のサッーという音は小さくなり改善されました。最後にチューナー部分を再調整して終了です。チューナー部分はTU-555と同じ手順で調整できます。
 
ヒヤリングしてみます。元気よく明るいトーンでキレのある音色です。バランスも良く帯域も広く感じます。TU-555単体とは違った音色に仕上がっています。同じ基板ですが音色が違うのはトーンコントロールを通したからでしょうか。
TC-505は完成度が高く安定感ある動作を感じることができます。Phonoでレコードを聴いてもいい雰囲気で聴かせてくれます。また、ヘッドホンが使えることも非常に便利です。TC-505とパワーアンプとの組み合わせにより、音のアップグレードが自由にできるのも魅力です。現在では見当たらない絶命危惧種のチューナー搭載型プリアンプです。個人的には自作のパワーアンプなどと組み合わせて使いたくなる個性的な製品かと思います。

2024/02/20

TRIO トリオ TW-200 FM/AMレシーバー

TRIO トリオ TW-200 FM/AMレシーバーの紹介です。1969年頃、38,800円の製品になります。この時期のTRIO製品は木目調のケースが特徴的で懐かしいです。修理にあたり雑誌など回路図を探しましたが見つかりません。海外輸出製品のKenwood TK-20Uが同等製品になりますのでこちらを参考にすることにしました。

背面パネルの様子です。

外部入力端子(AUX,MAG)が外されています。また、TAPE端子からTONE基板にダイレクトに配線(黄色と灰色)が変更されています。更にTAPE端子に10μFが挿入されていて、DIN端子に抵抗が2本と配線が変更されていました。

右下中央には1000μF50Vがパワーアンプ回路に追加されています。左下には電源回路にリレーが挿入され、ラウドネススイッチと接続してリレーでスピーカーをON/OFFしていたようです。電源ONしたときのポップノイズ対策でしょうか。

IF 基板の裏側に逆さまに配置された2つのトランジスタがありました。初めて見ましたが何故逆さまかは不明です。上の3枚の写真を見てわかるように、このレシーバーは魔改造されていて修理が大変そうです。修理作業に入ります。外部入力RCA端子、ラウドネス回路の配線、TAPE端子、DIN端子の配線、電源回路からリレー取り外しなどをオリジナルの状態に戻します。次に電解コンデンサーは全て交換します。交換後、電源試験で0.25A流れ正常の様です。

動作確認をします。FM受信しますが、Rchは雑音あり、Lch無音です。Lch無音はボリュームの配線が外れていたので元に戻しLchから音がでるようになりました。

左右にノイズがあり発生源を調べます。モニターを使った古典的で簡易な探査方法で調べてみます。 入力出力の電解コンデンサの頭の金属部分にモニターをあててノイズがあるかを調べる方法です。ここではパワーアンプ回路の電解コンデンサーの入力側ではノイズがありません。パワーアンプ回路の最終段手前でノイズが発生している模様です。結果的に左右の2SC733,2SC734を全て交換することでパワーアンプ回路のノイズを消すことができました。パワーアンプ回路に前オーナーが追加した1000μFの電解コンデンサなどは不要になったわけで取り外しました。

 

 最後まで見つからなかったノイズ源のコンデンサー(IF回路、プリアンプ回路、TONE回路)

次にFM受信時のサーッという音のノイズの発生源を調べます。外部入力AUX及びFM受信時にノイズが発生します。結論から言うと、コンンデンサー不良です。FM回路、プリアンプ回路、TONE回路に使われていた、写真の茶色いコンデンサーがノイズ発生源です。これは全てフィルムコンデンサと交換しました。FM受信時に気になったノイズはなくなりクリアな音になりました。

受信感度、トラッキングを調整します。STEREOランプ、メーター、セパレーションを調整します。

 ヒヤリングをします。 電源ON時にスピーカーから軽くポップ音がでます。音の帯域は広く感じますがS/Nが悪いように聞こえやや粗さと音がうるさく感じます。そのため、TONEで高音をやや控えめにして中低音をゆったり鳴らすような調整をして聞くととてもいい感じになります。大量に劣化部品を交換したのでエージングが必要なのかもしれません。

前オーナーはこのレシーバーには相当時間をかけて改造した様子です。IF回路のトランジスタ交換、パワーアンプ回路の1000μFの追加はノイズ対策、TAPE端子のカップリングコンデンサやDIN端子への抵抗挿入などもFM受信時のレシーバーからのノイズに悩まされた結果のように思えます。修理により何十年ぶりかでレシーバーからノイズを解放することができました。 前オーナーさんにノイズのないFM放送を聞かせてあげたかった思いが残る修理でした。

2024/01/01

エレキット TU-870R 真空管アンプ

エレキット TU-870R 真空管アンプの紹介です。2008年発売の真空管アンプ・キット23,800円(税抜き)の製品です。現在は販売終了となっています。無垢のアルミのボリュームツマミと前面アルミパネル、大型のインシュレータ、黒い梨地のボディーにより高級な雰囲気を持ったアンプです。

真空管にはRussia製6BM8シングル(5極管接続)が実装されていました。

入力は2系統ありセレクタで切替できます。出力は2.0W+2.0Wですが十分な音量で聴かせてくれます。

Lchにノイズが乗っているので底板を外して内部を覗いてみます。プリント基板に実装するタイプのアンプです。回路はオリジナルのままで改造はされていないようです。特に部品が劣化したり焼けたような形跡はみられません。電源部の電解コンデンサーは100μF×1,47μF×2です。100μF×1を増設できる余地が残されていますが、個人的には真空管の劣化を早めるので増設はしたくありません。突入電流が大きくなり現状の値が限界かと思います。

電源を入れてみます。0.4Aですぐに安定して変動もありません。各電圧を確認しますが、ほぼ回路図の数値で異常は見られません。真空管を左右入れ替えてもLchからノイズが出ています。

C1:0.1μF,C3:0.022μF、C7:220μFを試しに交換しますがノイズが消えません。コンデンサーなどの故障ではなさそうです。ボリュームを触っただけでLchからのノイズが変化することに気づきました。ボリュームの故障かもしれません。テスターで実装したままのボリュームの抵抗を測定してみます。Lchの抵抗値が変動して安定しません。ボリュームの故障ではなくハンダ付け不良です。一見、正常にハンダされているように見えます。周囲のハンダを見るとお団子状で光沢もありません。一度ハンダを吸い取り、再度ハンダ付けしました。ボリュームの抵抗値の変動もなくなりノイズは完全に消えました。最後にプリント基板全体を再度ハンダし直して修理は終了です。

ヒヤリングしてみます。2.0W+2.0Wとは思えいない十分な音量です。一聴してS/Nが良い静寂性に優れたアンプです。中高音を繊細でクリアな音で聴かせてくれます。低音は出ていますが中高音寄りのバランスです。元気の良いデジタル音源を聴くのに向いているアンプです。出力段が5極管接続なので3結にすれば、音色は一変して面白いかもしれません。改善余地がある真空管アンプなので色々楽しめそうです。

TU-870Rの6BM8のオレンジ色の優しい光りが魅力的です。小型で低価格ですが音は本格的なアンプです。入門的な位置づけの製品ですが真空管の魅力を十分に堪能できる製品かと思います。