2024/07/12

ONKYO D-202A ネットワーク用コンデンサー交換

ONKYO D-202A のネットワーク用コンデンサー交換の紹介です。1975年、1本32,000円の製品です。スピーカーのサイドエッジを交換して使っています。毎日、音楽を聴いていますが最近は今一つもの足りない音に聞こえます。高音で何か詰まったように音の伸びが足りないのが不満なところです。スーパーツィーターの追加もいいですが音全体のバランスをとるのが難しいです。ほんの僅か高音が欲しいだけですから余計に難しいです。そのため現状のスピーカーに手を加える方が早道だと思います。

 左:D-202Aのコンデンサ、右:PARC 4.7μF

ネットワーク用コンデンサーをPARC Audio 4.7μF/400Vのフィルムコンデンサーに交換することにします。PARC Audioは、愛知県にある(株)ドリームリクエーションのブランドです。スピーカー関係を主に製造、販売しているようです。黄色い 4.7μF/400Vのフィルムコンデンサーです。ホームページには「高品位な金属蒸着ポリプロピレンを採用したフィルムコンデンサー。しっかりとケースに封入固定をしており、クセの少ない素直な音色を実現しています」と掲載されています。外形サイズは、幅= 38mm、高さ= 28mm、奥行= 18mm、リード間隔= 31mmとかなり大きいです。

早速、作業にかかります。ウーファーを取り外すと奥にネットワーク用のプリント基板が見えます。 作業しやすようにツィーターも取り外します。

ネットワークのプリント基板はプラスチックのスペーサー3か所で固定されます。プラスチックのスペーサの小さな爪をラジオペンチで抑えながらプリント基板を引っ張ると抜くことが出来ます。
ネットワークにつながる配線は短いのでスピーカー端子のナットを取り外します。ナットを内側から固定してスピーカー端子を回せば簡単に取り外せます。
ネットワーク基板には、コイル、コンデンサー、抵抗だけの簡単なものです。コンデンサーはブチルゴムが巻かれて防振対策しています。配線も同様に防振テープが巻かれて線鳴きを防止しています。今回はフィルムコンデンサーの交換だけです。コイル交換も考えましたがコストと効果を考えて今回は見送りです。フィルムコンデンサー×2個で1300円ぐらいなら手軽に交換できます。
右側の黄色いPARC Audio 4.7μF/400Vのフィルムコンデンサーに交換します。左の青いフィルムコンデンサーのどこを金属棒で叩いてもカチッと音がして空洞はなく中が充填されています。PARCを同様に金属棒で叩くと両側面と上面はカチッと音がしますが、前面と背面は鈍くポコッと音が違います。コンデンサー内部に一部空洞があるようです。コンデンサーの防振対策が弱いのかもしれません。同じPARC Audioで黒いフィルムコンデンサーは2重構造で防振対策してあるそうです。価格は2倍なのでどちらがいいか迷うところです。少なくとも黄色いフィルムコンデンサーはブチルゴムで防振対策する必要がありそうです。
取り外したフィルムコンデンサーの容量を測定してみます。4.7μFのところが4.9μFです。左右とも4.9μFです。経年劣化はないようです。

ネットワーク用のプリント基板には穴がたくさんあるのでコンデンサの大きさにあった位置で配線することができます。フィルムコンデンサーの底面はボンドで固定しました。後でコンデンサー全体をブチルゴムで防振対策をする予定です。

プリント基板をもとの位置に戻しスペーサーに固定します。次にスピーカー端子のボルトとナットでネットワークの配線と接続します。最後にツイーターとウーファーを配線すれば終了です。

フィルムコンデンサーの交換作業は2時間もかかりません。部品代も安くお手軽なアップグレードかと思います。ヒヤリングします。フィルムコンデンサーの交換により高域がスッーと音が伸びるのがハッキリわります。最初は高音の粗さが少し気になりますが、しばらく聞いていると高音の暴れがなくなり落ち着きます。音全体の見晴らしが良くなりました。当初の目的は達成できたようです。オリジナルの音質を大幅に変更することもなく導入しやすいアップグレードかと思います。オーディオはほどほどで留めることが出来れば、苦労せずに楽しむことができると年齢を重ねてから知りました。

2024/07/07

PIONEER F-005 (クォーツロック・タッチセンサーシステム搭載)

PIONEER F-005 FMステレオ・チューナーの紹介です。1979年、58,000円のクォーツロックとタッチセンサーを搭載したFM専用チューナーです。当時、F-005を愛用していました。5素子のFMアンテナを建ててFMエアチェックに使っていた懐かしいチューナーです。

上の写真はF-005の回路図です。電波新聞社 AUDIO別冊ステレオコンポ回路図集にPIONEER F-003、F005、F-007、F-26の回路図が掲載されています。 F-005のプリント基板には何故か部品番号が書かれていません。修理作業で回路の把握に少し時間がかかりそうです。

最初に劣化部品を交換します。交換後に動作確認をします。FMは受信できているようです。左右のOUTPUT端子からは音声が聞こえます。ただし、受信レベルメーターとチューニングメーターは調整要、STEREOとTUNE、LOCKEDランプは不点灯、トラッキングは大幅なズレがある状況です。受信レベルを調整してレベルメーターは正常に振れるようになりSTEREOランプも点灯します。しかし、TUNEとLOCKEDランプは不点灯のままです。チューナー部分は正常に修理できましたがクォーツロック回路に不具合がありそうです。

 
TUNEランプの動作を確認します。APC回路の同期出力:7番端子とチューニングノブのON/OFF検出が関係しています。APC回路の各電圧および周波数を調整しますが、TUNEランプが点灯しません。調べた結果、1つ目の原因はAPC10番端子に入力する中間周波数の波形が周期的に崩れていました。基盤側のQ4:2SK19の不良で交換して正常に波形出力します。
2つ目の原因はAPC7番端子出力により制御されるQ21、Q22(2SC945A×2)およびチューニングノブON/OFFを制御するQ12、Q14、Q15、Q17(2SC945A×4)を交換して正常に動作するようになりました。また、TUNEランプが正常になるとともにLOCKEDランプも正常に動作するようになっていました。

最後に音声出力の波形が歪んでいるので原因の切り分け作業をします。OUTPUTではFMジェネレータからの信号が大きいと波形がつぶれて歪んでいます。PA3001出力のHORIZ出力で波形正常。PA1001 L.P.F出力:68番、69番端子で波形正常。PA1002A出力:51番、54番端子で歪ありNGでした。PA1002Aの故障の模様です。PA1002Aを交換して波形は正常です。PA1002A交換により雑音を消しきれなかったミューティング機能も正常に動作するようになりました。スペアナ(19kHz)を見ながらパイロット・オート・キャンセラー調整用のVR5で最小になるように調整すれば終了です。

ヒヤリングしてみます。帯域も広く感じられクリアで明るい音質です。音にサラサラ感があり気持ちがいい音質です。また音のバランスも良く奥行も感じられる良質な音作りです。パイオニアらしい音を持ったチューナーかと思います。

今回のようなF-005の修理前提の購入はあまりお勧めできません。オートロックが故障していた場合、調整だけですめばいいですが故障していると原因特定が難しいです。パイオニアのFM用ICも入手が難しいです。しかも回路図が必要です。修理して再調整できれば、このチューナーは完成度も高く操作感も格別な製品に生まれ変わります。懐かしいチューナーです。F-005が発売された当時はオーディオ全盛期の穏やかでいい時代でした。

2024/07/06

AIWA TPR301 FM/MW/SWラジオカセット

AIWA TPR301 FM/MW/SWラジオカセットの紹介です。1974年、40,800円のラジカセです。このラジカセの特徴はダブル・ダイヤルスケールです。とてもレアな機能ですが、真空管チューナーの頃にはダブル・ダイヤルスケールが既に搭載されています。FM、AMなど一度選局しておけばバンドが変わるたびにいちいち選局の必要がない便利な機能です。コストは2倍かかるので高額な上位機種での採用になるかと思います。しかしデジタルチューナーのワンタッチ選局の登場により、ダブル・ダイヤルスケールは無用の長物となってしまいました。今頃になってダブル・ダイヤルスケールのラジカセが70年代に発売されていたことを知りました。誘惑には勝てずジャンクのTPR301を買わせてもらいました。

TPR301はSWの変調方式別にFMとMWの2つにダイヤルスケールが分かれています。AIWAのラジカセLL350TMR350TMR355にも採用されていますが他メーカーでは見つかりませんでした。AIWAだけかもしれません。

 TPR301ではダブル・ダイヤルスケールを使ったダブル・オペレーション機構を搭載しています。ラジオをカセット録音しながら他のラジオ局を聞くことができる機能です。左上の真四角(DUAL)がその機能ボタンです。

 もう一つの特徴はワイヤレスマイク搭載です。70年代には多数のラジオやラジカセにワイヤレス機能が搭載されて一種のブームのようになっていました。TPR301もその1台です。

マイク左の白いボタンを押すと蓋が30度ぐらいまで開いて。4ウェイ・コンデンサマイク(WM-206)が取り出せます。。4ウェイ・コンデンサマイク(WM-206)を格納するときには電源のスライドスイッチが自然にOFFになるよう蓋に出っ張りが設けてあります。
上の写真は取り出した4ウェイ・コンデンサマイク(WM-206)です。4ウェイ・コンデンサマイクとの名称のとおり以下の4通りの使い方があります。① ラジカセ内蔵・コンデンサマイク、②コード・コンデンサマイク、③ワイヤレス・コンデンサマイク、④ワイヤレス・トランスミッター 。このワイヤレス・マイク単体(WM-206)にはアンテナがありません。ワイヤレス・マイク利用時には付属コード(アンテナに相当)接続する必要があります。知らずに付属コードなしでワイヤレスマイクのテストをしていました。送信できる距離が極端に短くておかしいと思っていました。アンテナが無ければ当然です。
このラジカセの取扱説明書には回路図が掲載されています。AIWAさんには感謝の言葉しかありません。

故障修理するためケースから本体を取り出します。スピーカーも一体で取り出せる修理しやすい構造です。
このラジカセの故障はラジオ(AM,FM)から音が出ないことです。いろいろなスイッチをON/OFFすると時々雑音やラジオ放送が瞬間きこえるだけです。故障の原因はDUAL切替用スライドスイッチの接触不良でした。スライドスイッチを取り外して分解清掃すると音がでるようになります。そのほかプリント基板の劣化部品は全て交換します。

DUAL表示ランプが切れているので赤く塗装した麦球ランプと交換します。ラジオの受信感度とトラッキングを調整します。カセットのゴムベルトを交換しましたがモーターの回転が弱く残念ながらカセットテープ再生は無理のようです。

このラジカセはケースの損傷が激しいです。上の写真の左側アルミの淵に沿ってL字型にプラスチックが7~8cmほど裂けてハンドルでラジカセを持ち上げることも出来ません。内部では裏蓋をビスで止めるプラスチックの円筒形のスペーサーが根本から折れて、開いたままの裏蓋右上ビスが締めらません。ボンドで補修してビス止めで裏蓋を閉められる様になり、ハンドルで持ち運びも出来るようになりました。

電池の蓋がないので他のラジカセの蓋を黒で塗装して代用します。プラスチックの爪が折れて蓋の固定が出来ません。スペーサー取り付け場所が確保できたので蓋をビス止めにしました。これですべての修理作業は終了です。

AIWA TPR-301のダブル・ダイヤルスケールは個性的なデザインで見ているだけで楽しくなります。70〜80年代のラジカセにはワイヤレスマイク、2Wayスピーカー、BCL、ステレオ、ダブルカセット、デジタルメーター、CDなどの機能が時代とともに次々搭載されています。ラジカセを見ると懐かしいその頃の技術や出来事を思い出します。TPR301は70年代の旺盛な製品開発から生まれたレアな機構を持ったラジカセです。デジタルが主流の今では二度と製品化されることのないアナログ技術の一端を感じることが出来る製品です。

2024/06/15

DENON PMA-235 プリメインアンプ

 

DENON PMA-235 プリメインアンプの紹介です。 1975年、66,500円の製品になります。シンプルで洗練されたデザインとシルバーメタリックが美しいアンプです。また、PMA-235はアンプを自作していた当時を思い出す懐かしい基本的な回路のアンプです。 

 

背面は中央の電源トランスが印象的です。スピーカー端子はネジ式ですがスピーカーケーブルをホールドできるワッシャーがあり使いやすいです。


中央後には電源トランス、中央に電源および保護回路、左右にはパワーアンプを配置しています。全面のプリント基板は上下2段構成で上部はプリ、TONE・Filter回路、下部は入力セレクタ、EQなどです。全体的に左右対称の美しい配置です。

左右の大容量電解コンデンサー(6800μF)は発熱で被覆が捲れています。劣化している様子なので10000μFと交換です。その他、劣化部品はすべて交換します。 ただし、このアンプは接点がすべてハンダ付けに変更されているので、プリント基板の取り出し作業が大変です。

劣化部品交換後に初めて電源を入れてみます。電源回路からの電圧はすべて正常です。しかし、電源部にある保護リレーが動作しません。オフセット電圧は正常です。PMA-235の回路図はないので手探りでの修理となります

リレーと同じ基板の22番ピン(リレーの左)を抜くとリレーが正常に動作します。リレーが動作しない原因は、22番ピン(リレーの左)に電源ON時に20kΩ程の抵抗があるためです。この22番ピンには、電源スイッチと連動して電源OFF(0Ω:アース)、電源ON(アース解放:抵抗∞)を22番ピンに出力する必要があります。上の写真の電源と連動するスイッチ内部の接触不良です。

スイッチは取り外して分解清掃します。これで、リレーが正常に動作するようになります。

電源ランプも切れていたので麦球を交換します。

次に音声出力を確認します。スピーカー出力で無音、若干のノイズは聞こえるようです。パワーアンプ基板の入力端子でもNGです。原因はTONE基板の一番左にあるlo-cat filterスイッチの接触不良です。スイッチは取り外して分解清掃します。パワーアンプ基板の入力端子までは正常になりました。

 次にスピーカー端子またはヘッドホンでモニターします。Lchは正常、RchはNGです。パワートランジスタ:MJ3001、MJ2501の不良です。交換によりRchも正常に出力するようになりました。動作確認を続けますが、lo-cat filterとmutingスイッチを操作するとリレーが誤動作します。スイッチ切替え時のノイズがパワーアンプ出力に影響して保護回路が動作した模様です。原因はlo-cat filterの出口のタンタルコンデンサ劣化です。タンタルコンデンサを交換してリレー誤動作はなくなり正常になりました。他のタンタルコンデンサ劣化により回路が不安定になっていると思われるため全てを交換しました。修理中のヒヤリングでは音がよかったのでタンタルコンデンサ交換を躊躇したため、修理が二度手間になってしまいました。

余談ですがlo-cat filterのプリント配線がカッターで切断され、再度ジャンパーで元に戻してありました。lo-cat filterスイッチ切替時のリレー誤動作は、前オーナーさんの時代から発生していたのかもしれません。

次はアンプの調整です。パワーアンプ基板のVR1で直流オフセット電圧(DC漏れ)を調整します。VR2はバイアス調整です。しかし、実装した基板の状態では0.45Ωの両端でバイアス電圧を測定できない構造です。

PMA-235のパワーアンプは、PMA-500Z(上の回路図)とほぼ同じ回路構成です。PMA-500Zを参考にしてバイアス調整します。PMA-500Zは+B電源には45mA流れ、パワートランジスタには30mA、そのフロント回路には15mA流れる構造です。

 

PMA-500Zとは少々回路が異なり、PMA-235はフロント回路とパワートランジスタは別電源になっています。+36V端子(右端のオレンジ)と-36V端子(右から3番目のグリーン)はパワートランジスタのみ供給されます。実測して+36V端子の電流が32mAのときに0.45Ωの両端で15mVとなるのを確認しました。そのため、以下の方法でPMA-235のバイアス調整をすることができます。パワーアンプ基板の+36V端子のリード線を取り外して、その間に電流計を挿入します。VR2で32mAになるように調整します。結果的に0.45Ωの両端電圧は15.0mVとなりバイアス調整は終了です。この方法であれば実装したまま電源線の取り外しだけでバイアス調整ができます。

上の写真ではリレー接点が黒く焼けている様子がわかります。リレー、スピーカーセレクター、ボリュームを洗浄および清掃をします。

ヒヤリングしてみます。 色付けのないクリアで透明感のある音質です。高音はシャープですが刺激的にならない品が良い音です。低音はやや控えめですがしっかり出ています。音を聞けばハッタリのない真面目に作られたことがわかるアンプです。出力に余裕が感じられ安心して音楽を楽しめます。クラッシックを聴いても奥行を感じます。個人的は中低域にもう少し厚みがほしかったと思います。修理により安定感のあるアンプの音に仕上がりました。しっかり修理したので永く愛用することが出来ると思います。PMA-235は当時のアンプ回路技術とオーディオの楽しさを凝縮した印象深い製品です。

2024/06/14

SANSUI SAX-250 FM/AMレシーバー

 

SANSUI SAX-250 FM/AMレシーバーの紹介です。1969年、39,900円のレシーバーです。黒とシルバーの落ち着いたデザインの製品です。やや暗いですがグリーンの数字にオレンジのダイヤル針の照明が綺麗なダイヤルスケールです。レシーバーとしては小型の製品になります。

背面のスリットはパワートランジスタの放熱用です。アンテナやスピーカーはワンタッチ接続端子で使いやすいです。

昔のSANSUIの電源トランスが懐かしいです。パワーアンプ基板はソケットを使い狭いスペースに実装されています。バリコンは、AM2連とFM3連です。

底の配線も高密度でEQ、TONE、電源基板なとが実装されていますパワートランジスタと同じ場所にスピーカー保護ヒューズが配置されています。ヒューズの確認や交換がしにくい場所です。

劣化部品は全て交換しますが、基板も小さく込み入った配線で作業には時間がかかります。修理中に気づいたのですが基板の一部に修理した跡が残っていました。大切に補修しながら使っていたのだと思います。

FMの受信感度やトラッキングを調整します。最後にセパレーションを調整します。

 

ヒヤリングをしますがFM放送にサッーとノイズが入ります。フロントエンドを開けて見るとTU-555とほぼ同じ回路のようです。初段のFET 2SK192SK192aに交換します。FM放送のノイズはクリアになりました。

ヒヤリングします。上下の帯域を欲張らないバランスの取れた聞きやすい音です。高音、低音については、少しアクセントをつけてメリハリのある音に仕上げているようです。修理したので音や操作の安定感が違います。前オーナーさんがレシーバーを補修しながら丁寧に使用していたのが感じられた製品です。