2024/02/20

TRIO トリオ TW-200 FM/AMレシーバー

TRIO トリオ TW-200 FM/AMレシーバーの紹介です。1969年頃、38,800円の製品になります。この時期のTRIO製品は木目調のケースが特徴的で懐かしいです。修理にあたり雑誌など回路図を探しましたが見つかりません。海外輸出製品のKenwood TK-20Uが同等製品になりますのでこちらを参考にすることにしました。

背面パネルの様子です。

外部入力端子(AUX,MAG)が外されています。また、TAPE端子からTONE基板にダイレクトに配線(黄色と灰色)が変更されています。更にTAPE端子に10μFが挿入されていて、DIN端子に抵抗が2本と配線が変更されていました。

右下中央には1000μF50Vがパワーアンプ回路に追加されています。左下には電源回路にリレーが挿入され、ラウドネススイッチと接続してリレーでスピーカーをON/OFFしていたようです。電源ONしたときのポップノイズ対策でしょうか。

IF 基板の裏側に逆さまに配置された2つのトランジスタがありました。初めて見ましたが何故逆さまかは不明です。上の3枚の写真を見てわかるように、このレシーバーは魔改造されていて修理が大変そうです。修理作業に入ります。外部入力RCA端子、ラウドネス回路の配線、TAPE端子、DIN端子の配線、電源回路からリレー取り外しなどをオリジナルの状態に戻します。次に電解コンデンサーは全て交換します。交換後、電源試験で0.25A流れ正常の様です。

動作確認をします。FM受信しますが、Rchは雑音あり、Lch無音です。Lch無音はボリュームの配線が外れていたので元に戻しLchから音がでるようになりました。

左右にノイズがあり発生源を調べます。モニターを使った古典的で簡易な探査方法で調べてみます。 入力出力の電解コンデンサの頭の金属部分にモニターをあててノイズがあるかを調べる方法です。ここではパワーアンプ回路の電解コンデンサーの入力側ではノイズがありません。パワーアンプ回路の最終段手前でノイズが発生している模様です。結果的に左右の2SC733,2SC734を全て交換することでパワーアンプ回路のノイズを消すことができました。パワーアンプ回路に前オーナーが追加した1000μFの電解コンデンサなどは不要になったわけで取り外しました。

 

 最後まで見つからなかったノイズ源のコンデンサー(IF回路、プリアンプ回路、TONE回路)

次にFM受信時のサーッという音のノイズの発生源を調べます。外部入力AUX及びFM受信時にノイズが発生します。結論から言うと、コンンデンサー不良です。FM回路、プリアンプ回路、TONE回路に使われていた、写真の茶色いコンデンサーがノイズ発生源です。これは全てフィルムコンデンサと交換しました。FM受信時に気になったノイズはなくなりクリアな音になりました。

受信感度、トラッキングを調整します。STEREOランプ、メーター、セパレーションを調整します。

 ヒヤリングをします。 電源ON時にスピーカーから軽くポップ音がでます。音の帯域は広く感じますがS/Nが悪いように聞こえやや粗さと音がうるさく感じます。そのため、TONEで高音をやや控えめにして中低音をゆったり鳴らすような調整をして聞くととてもいい感じになります。大量に劣化部品を交換したのでエージングが必要なのかもしれません。

前オーナーはこのレシーバーには相当時間をかけて改造した様子です。IF回路のトランジスタ交換、パワーアンプ回路の1000μFの追加はノイズ対策、TAPE端子のカップリングコンデンサやDIN端子への抵抗挿入などもFM受信時のレシーバーからのノイズに悩まされた結果のように思えます。修理により何十年ぶりかでレシーバーからノイズを解放することができました。 前オーナーさんにノイズのないFM放送を聞かせてあげたかった思いが残る修理でした。

2024/01/01

エレキット TU-870R 真空管アンプ

エレキット TU-870R 真空管アンプの紹介です。2008年発売の真空管アンプ・キット23,800円(税抜き)の製品です。現在は販売終了となっています。無垢のアルミのボリュームツマミと前面アルミパネル、大型のインシュレータ、黒い梨地のボディーにより高級な雰囲気を持ったアンプです。

真空管にはRussia製6BM8シングル(5極管接続)が実装されていました。

入力は2系統ありセレクタで切替できます。出力は2.0W+2.0Wですが十分な音量で聴かせてくれます。

Lchにノイズが乗っているので底板を外して内部を覗いてみます。プリント基板に実装するタイプのアンプです。回路はオリジナルのままで改造はされていないようです。特に部品が劣化したり焼けたような形跡はみられません。電源部の電解コンデンサーは100μF×1,47μF×2です。100μF×1を増設できる余地が残されていますが、個人的には真空管の劣化を早めるので増設はしたくありません。突入電流が大きくなり現状の値が限界かと思います。

電源を入れてみます。0.4Aですぐに安定して変動もありません。各電圧を確認しますが、ほぼ回路図の数値で異常は見られません。真空管を左右入れ替えてもLchからノイズが出ています。

C1:0.1μF,C3:0.022μF、C7:220μFを試しに交換しますがノイズが消えません。コンデンサーなどの故障ではなさそうです。ボリュームを触っただけでLchからのノイズが変化することに気づきました。ボリュームの故障かもしれません。テスターで実装したままのボリュームの抵抗を測定してみます。Lchの抵抗値が変動して安定しません。ボリュームの故障ではなくハンダ付け不良です。一見、正常にハンダされているように見えます。周囲のハンダを見るとお団子状で光沢もありません。一度ハンダを吸い取り、再度ハンダ付けしました。ボリュームの抵抗値の変動もなくなりノイズは完全に消えました。最後にプリント基板全体を再度ハンダし直して修理は終了です。

ヒヤリングしてみます。2.0W+2.0Wとは思えいない十分な音量です。一聴してS/Nが良い静寂性に優れたアンプです。中高音を繊細でクリアな音で聴かせてくれます。低音は出ていますが中高音寄りのバランスです。元気の良いデジタル音源を聴くのに向いているアンプです。出力段が5極管接続なので3結にすれば、音色は一変して面白いかもしれません。改善余地がある真空管アンプなので色々楽しめそうです。

TU-870Rの6BM8のオレンジ色の優しい光りが魅力的です。小型で低価格ですが音は本格的なアンプです。入門的な位置づけの製品ですが真空管の魅力を十分に堪能できる製品かと思います。

2023/12/05

TOSHIBA 東芝 FMT-100 真空管FMチューナー(MPX OUTを付加)

TOSHIBA 東芝 FMT-100 真空管FMチューナーの紹介です。発売時期はTRIO FM-108と同時期の1963年頃でしょうか。小型の真空管FMモノラル・チューナーです。

背面はアンナナ端子とモノラルのOUT PUT端子のみになります。

FMチューナーパック FM-011P3Aが使われています。17EW8を使ったμ同調方式のチューナーパックです。

チューナーの底には、回路図、配置図、糸掛け図が張り付けてあります。

ペーパーコンデンサを交換します。電源試験で0.4Aですぐに安定しました。発熱もなくブロック電解コンデンサはまだ使えるようです。機能試験をしますが音がでません。各電圧を確認しますが正常です。よく見るとボリュームの配線が切断していました。この配線を直して音ができるようになりました。受信感度を調整します。受信周波数はズレていませんでした。

これで修理は終了です。修理と言えるような作業ではありません。時間があるのでMPX OUT端子を追加してみることにしました。 

上の図は標準的なレシオ検波回路です。この検波回路でディエンファシス回路を回避してMPX OUTを取り出し、FMアダプターに接続してみましたが動作はNGでした。この検波回路の構成だとスペアナで見てもパイロット信号19kHzが取り出せないようです。

トリオのチューナーを参考にします。FMT-100の回路では検波出力をコンデンサから抽出していますが、上の図の様に検波回路のコンデンサ中点と抵抗中点の間に抵抗を入れて抽出するように回路を変更すれば動作はOKです。この回路変更によりパイロット信号19kHzも出力できるようになります。

FMアダプターと接続してセパレーションを測定します。約12dBほどしか確保できません。しかし、ステレオ放送を聞くことは出来そうです。最初はパイロット信号を止めてモノラル状態でヒヤリングしてみます。上下の帯域が狭い中音のみ強調された音です。ノイズ感はなく良好です。次にステレオでヒヤリングします。全体に透明感が出て高域と音の広がりが改善されたことがはっきりわかります。聴感上のノイズ感はありません。FMステレオ放送の片鱗は聴くことが出来たようです。

1963年頃のFMステレオチューナーは高価ですから、モノラルで聴くのが普通のことだったと思います。当時のオーナーさんはFMT-100でFMステレオ放送が聴きたかったはずです。60年後に実現できました。FMT-100はFMチューナーパックの高い性能によりMPX OUTを実装できました。簡単な変更ですが、TRIO FM-108に対抗できる実力をもったFMT-100です。

2023/12/03

SANSUI サンスイ TU-555 FM/AMチューナー

SANSUI サンスイ TU-555 FM/AMチューナーの紹介です。1968年、28,900円の製品です。サンスイのチューナーはあまり触る機会がなく、真空管チューナーTU-70やPM-880以来の修理になります。丸いダイヤルスケールが特徴のコンパクトなチューナーです。

ダイヤルスケールのグリーンの照明が美しいチューナーです。

 セパレーション調整用のボリュームがあります。低価格帯ですが利用者に高いスキルを求めているような気がします。

内部は機能別のプリント基板に分けられスペースに無駄のない整然とした作りです。調整箇所の多いチューナーです。

フロントエンドとその調整穴およびプリント基板の見えメンテネンスしやすく配置されています。

劣化部品を交換します。交換後に機能を確認します。AM放送は聞こえますが受信レベルが低いです。FMはダイヤル目盛りが大幅にズレています。

AM放送の受信感度を調整します。簡易的に2mほどのリード線をアンテナ代わりにします。調整後の受信レベルは良好です。電波難民地域ですが難なく受信できています。AM機能は実際にはなかなかの実力の製品です。

 
FMの低い受信周波数のダイヤル目盛りのズレはLOで調整します。

LOの割れたフェライトコアと代用品のコア(右)

FMの受信感度を調整します。ダイヤルのトラッキングを調整するため低い受信周波数はLOで調整します。コアを回しますがうまく調整できません。コイルのボビンの中を覗くとフェライトコアが割れています。前オーナーさんが調整で割ってしまったのでしょうか。ジャンク品から回収してあるフェライトコアと交換して調整します。

FMの高い受信周波数のダイヤル目盛りのズレはTCOで調整します。

次に高い受信周波数を調整します。89.7M㎐の放送局が88M㎐と大幅にズレています。TCOで調整しますが受信周波数に変化がありません。これは困った症状です。フロントエンドを開けなければ修理できそうにありません。 

シールドケースを外したフロントエンド

故障したTCOのトリマ(左)と代用品のトリマ(右)

フロントエンドのシールドカバーを外します。修理できるようにプリント基板をバリコンがら分離させます。TCOのトリマコンデンサ(10pF)を取り外してコンデンサ容量を確認します。コンデンサ容量が測定できません。トリマコンデンサの故障です。この部品もジャンクチューナーから回収したものと交換します。トリマコンデンサの交換により高い受信周波数も調整できるようになりました。

最後にMPX基板の調整とセパレーションボリュームを調整します。調整前は10dBほどだったセパレーションが30dB以上確保できるようになりました。

ヒヤリングします。一見帯域は狭く感じますがしっかり上下の帯域まで音が出ています。高域はやや控え目で粒子はやや粗く少し混濁しているように聞こえます。全体的にもクリアさと言うか透明感が足りません。音のバランスは良く量感・奥行も十分に感じられます。このチューナーはピアノの音が良く音楽性に優れた製品のようです。FM放送を聞いているとハッとする音が聴こえる瞬間があるので、このチューナーは本物(出来の良いチューナーとの意味)です。低価格帯ですが良く出来た製品の一つかと思います。

参考:調整方法

お手持ちの機材に合わせて調整してください。TU-666も同じ手順で調整できます。

AMチューナー部

FMチューナー部
FMマルチプレックス
テストポイント①
テストポイント②