2024/06/15

DENON PMA-235 プリメインアンプ

 

DENON PMA-235 プリメインアンプの紹介です。 1975年、66,500円の製品になります。シンプルで洗練されたデザインとシルバーメタリックが美しいアンプです。また、PMA-235はアンプを自作していた当時を思い出す懐かしい基本的な回路のアンプです。 

 

背面は中央の電源トランスが印象的です。スピーカー端子はネジ式ですがスピーカーケーブルをホールドできるワッシャーがあり使いやすいです。


中央後には電源トランス、中央に電源および保護回路、左右にはパワーアンプを配置しています。全面のプリント基板は上下2段構成で上部はプリ、TONE・Filter回路、下部は入力セレクタ、EQなどです。全体的に左右対称の美しい配置です。

左右の大容量電解コンデンサー(6800μF)は発熱で被覆が捲れています。劣化している様子なので10000μFと交換です。その他、劣化部品はすべて交換します。 ただし、このアンプは接点がすべてハンダ付けに変更されているので、プリント基板の取り出し作業が大変です。

劣化部品交換後に初めて電源を入れてみます。電源回路からの電圧はすべて正常です。しかし、電源部にある保護リレーが動作しません。オフセット電圧は正常です。PMA-235の回路図はないので手探りでの修理となります

リレーと同じ基板の22番ピン(リレーの左)を抜くとリレーが正常に動作します。リレーが動作しない原因は、22番ピン(リレーの左)に電源ON時に20kΩ程の抵抗があるためです。この22番ピンには、電源スイッチと連動して電源OFF(0Ω:アース)、電源ON(アース解放:抵抗∞)を22番ピンに出力する必要があります。上の写真の電源と連動するスイッチ内部の接触不良です。

スイッチは取り外して分解清掃します。これで、リレーが正常に動作するようになります。

電源ランプも切れていたので麦球を交換します。

次に音声出力を確認します。スピーカー出力で無音、若干のノイズは聞こえるようです。パワーアンプ基板の入力端子でもNGです。原因はTONE基板の一番左にあるlo-cat filterスイッチの接触不良です。スイッチは取り外して分解清掃します。パワーアンプ基板の入力端子までは正常になりました。

 次にスピーカー端子またはヘッドホンでモニターします。Lchは正常、RchはNGです。パワートランジスタ:MJ3001、MJ2501の不良です。交換によりRchも正常に出力するようになりました。動作確認を続けますが、lo-cat filterとmutingスイッチを操作するとリレーが誤動作します。スイッチ切替え時のノイズがパワーアンプ出力に影響して保護回路が動作した模様です。原因はlo-cat filterの出口のタンタルコンデンサ劣化です。タンタルコンデンサを交換してリレー誤動作はなくなり正常になりました。他のタンタルコンデンサ劣化により回路が不安定になっていると思われるため全てを交換しました。修理中のヒヤリングでは音がよかったのでタンタルコンデンサ交換を躊躇したため、修理が二度手間になってしまいました。

余談ですがlo-cat filterのプリント配線がカッターで切断され、再度ジャンパーで元に戻してありました。lo-cat filterスイッチ切替時のリレー誤動作は、前オーナーさんの時代から発生していたのかもしれません。

次はアンプの調整です。パワーアンプ基板のVR1で直流オフセット電圧(DC漏れ)を調整します。VR2はバイアス調整です。しかし、実装した基板の状態では0.45Ωの両端でバイアス電圧を測定できない構造です。

PMA-235のパワーアンプは、PMA-500Z(上の回路図)とほぼ同じ回路構成です。PMA-500Zを参考にしてバイアス調整します。PMA-500Zは+B電源には45mA流れ、パワートランジスタには30mA、そのフロント回路には15mA流れる構造です。

 

PMA-500Zとは少々回路が異なり、PMA-235はフロント回路とパワートランジスタは別電源になっています。+36V端子(右端のオレンジ)と-36V端子(右から3番目のグリーン)はパワートランジスタのみ供給されます。実測して+36V端子の電流が32mAのときに0.45Ωの両端で15mVとなるのを確認しました。そのため、以下の方法でPMA-235のバイアス調整をすることができます。パワーアンプ基板の+36V端子のリード線を取り外して、その間に電流計を挿入します。VR2で32mAになるように調整します。結果的に0.45Ωの両端電圧は15.0mVとなりバイアス調整は終了です。この方法であれば実装したまま電源線の取り外しだけでバイアス調整ができます。

上の写真ではリレー接点が黒く焼けている様子がわかります。リレー、スピーカーセレクター、ボリュームを洗浄および清掃をします。

ヒヤリングしてみます。 色付けのないクリアで透明感のある音質です。高音はシャープですが刺激的にならない品が良い音です。低音はやや控えめですがしっかり出ています。音を聞けばハッタリのない真面目に作られたことがわかるアンプです。出力に余裕が感じられ安心して音楽を楽しめます。クラッシックを聴いても奥行を感じます。個人的は中低域にもう少し厚みがほしかったと思います。修理により安定感のあるアンプの音に仕上がりました。しっかり修理したので永く愛用することが出来ると思います。PMA-235は当時のアンプ回路技術とオーディオの楽しさを凝縮した印象深い製品です。

2024/06/14

SANSUI SAX-250 FM/AMレシーバー

 

SANSUI SAX-250 FM/AMレシーバーの紹介です。1969年、39,900円のレシーバーです。黒とシルバーの落ち着いたデザインの製品です。やや暗いですがグリーンの数字にオレンジのダイヤル針の照明が綺麗なダイヤルスケールです。レシーバーとしては小型の製品になります。

背面のスリットはパワートランジスタの放熱用です。アンテナやスピーカーはワンタッチ接続端子で使いやすいです。

昔のSANSUIの電源トランスが懐かしいです。パワーアンプ基板はソケットを使い狭いスペースに実装されています。バリコンは、AM2連とFM3連です。

底の配線も高密度でEQ、TONE、電源基板なとが実装されていますパワートランジスタと同じ場所にスピーカー保護ヒューズが配置されています。ヒューズの確認や交換がしにくい場所です。

劣化部品は全て交換しますが、基板も小さく込み入った配線で作業には時間がかかります。修理中に気づいたのですが基板の一部に修理した跡が残っていました。大切に補修しながら使っていたのだと思います。

FMの受信感度やトラッキングを調整します。最後にセパレーションを調整します。

 

ヒヤリングをしますがFM放送にサッーとノイズが入ります。フロントエンドを開けて見るとTU-555とほぼ同じ回路のようです。初段のFET 2SK192SK192aに交換します。FM放送のノイズはクリアになりました。

ヒヤリングします。上下の帯域を欲張らないバランスの取れた聞きやすい音です。高音、低音については、少しアクセントをつけてメリハリのある音に仕上げているようです。修理したので音や操作の安定感が違います。前オーナーさんがレシーバーを補修しながら丁寧に使用していたのが感じられた製品です。

2024/05/09

HITACHI Lo-D SR-600 ステレオ・レシーバー

 

 HITACHI Lo-D SR-600 ステレオ・レシーバーの紹介です。1971年頃、56,800円のレシーバーです。シルバーメタリックのフロントパネルが美しいレシーバーです。同時期に発売されたプリメインアンプ(IA-600,IA-1000)もSR-600と同様に評価も高く今でも買い求める人が多い製品かと思います。

背面パネルは全体が利用されて空スペースがありません。パワートランジスタの保護カバーが4つ四角く突き出ているのが印象的です。右上は左右のスピーカーヒューズの保護によるレシーバーのようです。

パワーアンプ基板に大容量コンデンサ×2個を直接配置した作りです。

レシーバーのカバーを外すと、透明のビニールに包まれた自作のスピーカー保護基板(上の写真)が設置・配線されていました。プリント基板は固定もされていないでブラブラの状態です。年代物のリレーとトランジスタ(2SC92,2SC69)で遅延回路の機能を持たせたスピーカー保護回路のようです。電源ONの時に保護回路が必要なほど激しいポップノイズがでたのだと思います。他のレシーバー修理でも保護回路が後付けされていた経験があり前オーナーさんにとっては切実な機能だったかと思います。

 

修理は劣化部品を交換して再調整します。スピーカー保護回路以外は普段と変わらない修理作業です。

SR-600にはシグナルレベルメーターはありますが、チューニングメーターはありません。その代わり最適なチューニングが出来た時点でダイヤル針がオレンジ色に点灯する機能を持っています。修理後に再調整して気づいた便利なチューニング機能です。

試験的にスピーカーを接続してみます。予想どおりの激しいポップノイズです。スピーカー端子の電圧を見ると、電源ONにした時の高い電圧が発生してから減衰するまでに約7~8秒も時間もかかります。スピーカーの故障を誘発する非常に困った症状です。対策として新たにスピーカー保護基板を設置しました。 ポップノイズの原因は不明ですがパワーアンプ基板に実装された大容量電解コンデンサーの影響かもしれません。

上の写真が電源電圧12~24Vのスピーカー保護回路です。レシーバーの電源部から抵抗で少し電圧を落として電源を確保します。左右のスピーカー(+)のみ保護リレーに結線してあります。この保護回路はスピーカ端子が0.7V以上では動作しない仕様です。電源ONすると約10秒ほど経ってからリレーが動作しました。パワーアンプの直流電圧が落ち着くまで時間がかかるレシーバーのようです。また、パワートランジスタの発熱が大きいので専用のヒートシンクは必要だったと思います。

昔、日立さんが管球式の音を持ったレシーバーと広告してたのでヒヤリングが楽しみです。USB DACを接続してヒヤリングしてみます。このレシーバーはすばらしい音の出来栄えです。上下に帯域も広くクリアでキレのある音質です。最新の音楽ソースでも全く遜色ない音を聞かせてくれます。MMカートリッジでレコードを聴いてみますが同じ音の傾向です。Phono入力でのレコードの音がいいレシーバーは少なく貴重な製品です。音の量感、奥行の雰囲気も良好な大人のレシーバーです。SR-600はLo-D のオーディオブランドに恥じないレシーバーの名機かと思います。

2024/05/05

TRIO AFX-21T を利用したFM MPX アダプターの製作

 

 TRIO AFX-21Tを利用したFM MPX アダプター製作の紹介です。 TRIO AFX-21T は、1967年、28,900円のAM/FMチューナーです。

 

チューナーのセレクターの軸が折れて修理できないジャンクになってしまいました。内部のプリント基盤はきれいで捨てるにはおしいので再利用することにします。

電波科学 1967年11月号にAFX-21T の回路図が掲載されています。回路図を見ると、①RF基板、②IF基板、③MPX基板、④AUDIO基板、⑤POWER SUPPLY基板などの機能毎にプリント基板が分かれて構成されています。MPX基板が独立していて分離できるため、プリント基板をそのまま載せ替えてFM MPXアダプターを作りたいと思います。この年代以降になると、MPX回路とIF回路を1枚のプリント基板に実装したり、MPX ICIF ICが搭載された高密度実装になり再利用しにくくなります。

AFX-21Tから、電源トランス、MPX基板、AUDIO基板、POWER SUPPLY基板を取り出してシャーシ(摂津金属工業CA-80W:縦8cm×横20cm×奥行18cm)に組み込みます。上の写真は部品を仮置きして配置を決めている様子です。

部品の配置が決まったらシャーシにプリント基板固定用のスペーサーを取付けます。電源スイッチ、ヒューズホルダー、ACコード、RCA端子、STEREOランプなど流用できるもはすべて再利用します。

電源用ネオンランプ、スペーサー、整流ダイオード×1、電解コンデンサ220μF、ラグ板×2、RCAコード×1だけは新たに用意しました。配線もすべて流用させてもらいました。

組み立て前にプリント基板の電解コンデンサなどの劣化部品は全て交換しておきます。回路図を見ながら最初に電源回路およびSTEREOランプの電源部(ラグ板で作成)を配線します。次にオーディオ基板とMPX基板を配線しました。

半日程度の作業で完成です。上の写真は完成後の姿です。手配線が乱雑で美しくありませんがご容赦ください。

再度、配線を確認してから電源を入れて各電圧を確認します。次にチューナーからのMPXを入力してRCA端子から左右の音が出力されるか確認します。心配だった部品配置やアース位置、配線経路などからのノイズはないようです。最後に測定器を入れてセパレーションの調整およびSTEREOランプが点灯するように調整します。

 
完成品をヒヤリングしてみます。ノイズ感はなく繊細でクリアな音質です。弦楽器の鮮やかな高音が印象的です。すっきりした透明感とキレのある音がします。低音がたっぷり出るような質感の音は苦手なようです。それなりに奥行もあり雰囲気も持っています。当然ですが長時間ヒヤリングしても発熱は少なく安定した動作です。高級なFM MPXアダプターが出来上がりました。AFX-21Tはオールトランジスで組まれた製品です。1チップとなったMPX ICも良いですが、オールトランジスタで組まれたMPXも捨てがたい魅力があります。今回のFM MPXアダプターは、プリント基板の乗せ替えなので工作する難易度は低いかとおもいます。製作したレトロなFM MPXアダプターと真空管モノラル・チューナーとを組み合わせてFMステレオ放送を楽しんでみたいと思います。

2024/04/29

PIONEER パイオニア SA-80 プリメインアンプ

PIONEER パイオニア SA-80 プリメインアンプの紹介です。1971年、56,000円の製品になります。オーソドックスですが使いやすいツマミとスイッチの配置です。おちついたデザイン(渋いデザイン)の印象と音質の印象とにギャップを感じます。

背面パネルの様子です。この頃のアンプのスピーカー端子にはT型が採用されています。左側の空洞には、MCカートリッジ用トランスを実装できる本格派です。個人的にはMCカートリッジはトランスを通した音が好きです。
  

SA-80は木製のカバーが採用されています。そのためなのか、EQ回路やTONE部や配線も含めてシールドケースで覆われています。シールドケースにTRIOの修理履歴のシールが残っています。

 シールドケースを取り外した写真です。

パワートランジスタには2SD90×4個が採用されています。パワートランジスタの小ぶりヒートシンクは個人的にはもう少し大型のものにしてほしかったところです。

この頃になるとスピーカー保護のリレーが装着されるようになり、より快適に音楽を楽しめるようになっています。リレー式の保護回路でポップ音防止やショートおよび異常電位などを検知するとスピーカーとパワーアンプ回路を切り離します。リレー式の保護回路は機能的には優れていますが、リレー接点の接触不良が発生することがあり、それまでのヒューズ式と比べて一長一短です。

SA-80のスピーカー端子はT型コネクタが採用されおり、専用の接続プラグが必要になります。上の写真では標準のネジ式プラグに交換してあります。プラグ間隔が狭く締めにくいですがやむ負えずの交換です。

ヒヤリングしてみます。外観からは奥行のあるゆったりした低音がでそうな気がします。しかし印象とは異なり、クリアで音抜けがよいあざやかな中高音の音質です。楽器の1音1音が分離してきこえるようです。奥行もありいい雰囲気を持っています。低域もしかっり出ていますがあまり目立ちません。ただし、ヘッドフォンで聴くとややエコーがかかった様な不自然さを感じます。このプリメインアンプはかなり優秀で個人的には好きな部類です。ただし、音質には好みが別れるアンプなのかもしれません。