2025/05/17

さぐり式鉱石検波器の製作(二作目とシリコン結晶)

さぐり式鉱石検波器の二作目の製作です。

今回の製作には上の写真の鉱石検波器を参考にしました。鉱石をネジ止めで検波針の調整しやすい構造です。

似た様な部品は入手できないのでスピーカー端子×4個を中心に製作します。全長50mm、直径10mm、M5ネジの金メッキのスピーカー端子を使用します。横穴を通したスピーカーケーブルを上のネジで締め付けるタイプの端子です。
2つのスピーカー端子を組み合わせると何となく探り式鉱石検波器の支柱部品として使えそうなのがわかります。
上の写真が部品一式です。木板×1、丸棒×2、スピーカー端子(金メッキ)×4,ワンタッチスピーカー端子×1、ゴム足×4、銅キャップ(直径10mm)×1、内径10mmのリング×1。
写真のタングステン線は使用しませんでした。ハンダ付けもできず取り付けが難しかったの今回はパスしました。
木版の穴あけと丸棒に穴をあけた支柱台を取り付けます。上の写真は塗装まで加工済みの状態です。

2本の支柱にはスピーカー端子を使います。取り付け後は横穴の高さを確認します。

 
スピーカー端子に鉱石を格納する銅製キャップを取り付けます。
上の写真は取り付けた様子です。

スピーカー端子に真鍮でコイル状のヒゲを取り付けます。ハンドル部分には黒い熱収縮チューブを被せてみました。
探り式鉱石検波器を組み上げた配線前の状態です。
配線は木版の裏が基本ですが銅製キャップだけは直接配線しています。

探り式の構造はネジを回すことで微妙な接触を調整できるのが良かったです。ただし、M5のネジと横穴で遊びがなく針先の可動域が小さいのが難点でした。

鉱石の受け皿は改善の余地がありそうです。鉱石の固定はハンダ付けではなくネジ式による挟み込みがよいのかもしれません。

鉱石の受け皿はすぐに取り外せる構造なので再度作り直しです。22mmの銅製キャップを使います。カップ状ですが深すぎるので5mm程カットしました。銅の加工は硬くて大変です。銅製キャップの底から支柱に固定するM5ネジを出します。鉱石の固定用にはM5ネジ1本で上から締め付ける構造です。鉱石の挟み込みにはネジが使えるようにM5ナットを銅製キャップとハンダ付けしました。

鉱石の受け皿の変更で鉱石の入替と見た目が各段に良くなった気がします。

電子ブロックのゲルマニウムラジオのダイオードと探り式鉱石検波器を入れ替えて実験します。①検波器の端子にダイオードを接触させてラジオ放送が聞こえることを確認します。②ラジオ放送が聞こえる状態でダイオードを外します。③探り式鉱石検波器で検波できるように調整します。以上の手順でラジオ放送が受信できます。製作したさぐり式鉱石検波器の操作感や感度もまずまずのようです。

一作目(左側)、二作目(右側)と並べてみました。性能は同じですが二作目は見た目だけが少しは進歩したのかもしれません。

DSPSDRが全盛の時代に探り式鉱石検波器はレトロすぎると感じるかもしれません。しかし、小さなダイオード1個の検波機能を実現するために多種多様の探り式鉱石検波器を作り出した先人の知恵と努力には頭が下がる思いです。それらの鉱石検波器も技術遺産の一つとして見ていただければと思います。二作目は既存部品(スピーカー端子×3個 )を使い複雑な支柱構造を簡単に作れるようにしました。誰でも1日程度で製作できるかと思いますので是非お試しください。

2025.5.24 高純度シリコン結晶 

高純度シリコン結晶を使ってみます。上の写真の左がシリコン結晶です。右側はハンマーで叩いて丁度良い大きさに加工したものです。 

 

シリコンと聞くとPN接合のダイオードが頭をよぎり無停電ラジオには向かないイメージがあります。しかし、点接触ダイオードやさぐり式鉱石検波器はショットキー接合で順方向電圧(Vf)特性が低いのが特徴です。そのため、シリコン結晶を使ってもさぐり式鉱石検波器の構造により無停電ラジオの検波は良好な動作となります。しかも、シリコン結晶はどの部分に針を当てても音の大小はありますが検波するのて通常の鉱石より扱いやすいです。1900年初頭の頃からシリコン結晶は知られていましたが現在の鉱石ラジオに使っている人は少ないかと思います。通販やオークションても入手できますし、Amazonでも「Si ≧99.99% 原石 結晶 高純度 ポリシリコン テラヘルツ波 高純度シリコン」の名称で50g約1300円ぐらいで購入できます。黄鉄鉱や方鉛鉱と比べてシリコン結晶は感度が高いので、さぐり式鉱石検波器に使ってみては如何でしょうか。鉱石ラジオから大きな音で放送が聞こえるので驚かれると思います。

2025/02/24

GE P740A ポケットラジオ(リードスピーカー搭載)

GE P740A ポケットラジオの紹介です。 1965年頃の8石トランジスタ、1ダイオードのラジオです。

内側にP740Pと印刷されています。

前面パネルには厚いアルミが使われていて触った感触がとても良いです。アルミメッシュのスピーカーカバーも厚手で凹みもなく綺麗な状態です。

プリント基板を見てもはんだ付けした後もなく、オリジナルの部品のままであることがわかります。保存状態も良くネジが1本錆びているだけでした。電池ボックスの金具は少しサビがある程度で良好です。 トランジスタにはRS3826などRS型番が搭載されています。

 

この頃のGEのラジオにはマグネチックスピーカーが搭載されています。回路図も公開されており、最終段がプッシュプルで出力トランスなしで高インピーダンス・スピーカーを駆動しています。

スピーカーを横から見ると振動棒が見えます。日本ではマグネチックスピーカーなどと言われていますが、海外のフォーラムを覗くとリードスピーカー(reed speaker)と呼ばれています。フォーラムに投稿されている方の情報によれば、 当時のGEからは高インピーダンスのリードスピーカーのラジオが130機種以上発売されていたそうです。おまけに該当機種の一覧まで掲載してくれているのには感謝です。

GEの高インピーダンススピーカーのインピーダンスが知りたかったので測定してみました。スピーカー端子の両端の直流抵抗は約16kΩです。

スピーカー片端とセンター間の直流抵抗は約8kΩです。

LCRテスターELC-121の機能は特殊でRレンジは1kHzのインピーダンスが測定できます。スピーカー片端とセンター間のインピーダンスは約44.6Ωです。

スピーカー片端とセンター間のインピーダンスは約17.1Ωです。

 

 再調整したラジオの受信性能は高く、電波難民の我が家でも楽々受信できるレベルです。最近のDSPラジオ以外で我が家で普通に受信できるラジオはほとんどありませんから、P740Aの性能はすばらしいの一言です。 

国内のラジオとは違いGE製は堅牢でしっかりした真面目な作りのラジオで個人的には気に入っています。

GEのラジオが入手できたら最初にスピーカーのマグネットの形状を確認してみてください。四角だったらマグネチックスピーカー(リードスピーカー)です。マグネチックスピーカーの独特の音色によるラジオを楽しむことが出来ます。

2025/02/23

ナショナル T-50 6石トランジスタラジオ

 

ナショナル T-50 6石トランジスタラジオの紹介です。1960年頃、7500円のラジオになります。水色のパステルカラーに金のパネルで鮮やかな印象のラジオです。電源は単三電池×4本またはACアダプター(6V)の2電源方式です。

黒いラジオ下部は電池ボックスになっていて珍しい形状です。電池ボックスはネジで簡単に外れて中はグリーンの電池ホルダで電池を固定するしくみです。

電池ボックス内のカバーを外すと上の写真のように内部のプリント基盤が見えます。両端の計4本のネジを外せば外枠ケースが取れます。

この頃のラジオは小型バリコンが搭載されています。

前面ケースからプリント基板を取り外します。今では見られない大きなダイヤルツマミが印象的です。

パネルからスピーカーやアンテナ端子を取り外してラジオ単体を取り出します。 本体ケースなどは水洗いして汚れやほこりを洗い流します。洗うことでラジオの手触りが全く違い触感が非常によくなります。プリント基板やスピーカーなどは丁寧にホコリを取り去ります。

  

このラジオを詳しく知るには、”ナショナルラジオ サービスノート”が便利です。 

”ナショナルラジオ サービスノート”は販売店用の資料です。定格、マウント写真、部品リスト、配線図、プリントパターン図から構成された修理用ノートです。

特に興味深いのは配線図と実際のラジオを比較したときです。このT-50ラジオはナショナルの旧トランジスタが使われています。配線図では、Tr1:2SA102、Tr2:2SA101、Tr3:2SA101、Tr4:2SB171、Tr5&Tr6:2SB172です。実際のプリント基板には、Tr1:MC102、Tr2:MC101、Tr3:MC101、Tr4:OC71、Tr5&Tr6:2OC72のナショナル・旧トタンジスタが実装されています。


上の写真はTr4:OC71(2SB171)です。

 

上の写真はTr3:MC101(2SA101)です。

 

その他にもバリオードMA23B (バリスタ)やダイオードD1:OA70など当時の部品が使われています。


 電解コンデンサはプラケースに入ったタイプで、プッシュプル出力段はオレンジ色、そのほかはグレーと色分けされています。全ての部品がオリジナルのまま保存されていました。ラジオは動作するので、貴重な部品は交換せずにこのまま残置することにします。

外側からはイヤホン端子の破損は見えましたが、取り外すと完全に二つに割れていました。

イヤホン端子のプラスチックの補修をします。

もう一か所、ケースの欠けを補修します。

T-50ラジオはナショナルのトランジスタの変遷を知ることができる貴重なラジオです。”ナショナルラジオ サービスノート”と一緒にコレクションする価値のあるラジオかと思います。