2022/05/25

LEAD FMチューナー・ケース・キット(2022.5.6:修理完了)

LEAD FMチューナー・ケース・キットを使ったFMチューナー(ジャンク)を購入してみました。LEAD FMチューナー・ケース・キットは1963年頃の雑誌に製作記事が掲載されています。普通の人はLEADケースを使ったラジオは絶対に買いません。自作ですから回路も不明で配線の手直しもすごく大変なのが最初からわかるからです。私の場合は以前よりLEAD FMチューナー・ケース・キットに興味があったので購入したしだいです。キットですが、ちゃんとFMチューナーらしい面構えになっているのに感心します。左のダイヤル:OFF VOLUMEと書いてありますが、電源スイッチだけでボリュームではないようです。中央ダイヤル:AFC.SWのダイヤルがどうしてないのかが不安にさせます。

背面はOUTPUT端子(モノラル)とアンテナと電源コード(私が取り外しました)になります。

 LEAD FMチューナー・ケース・キットは、ナショナル FMワイヤード・パック FM-P1を搭載していて簡単にFMチューナーを製作できるように配慮されています。ただし、FM-P1にはAFC機能はないので6BA6などで回路を別に付加する必要があります。真空管は6AQ8、6BA6×2、6AU6、6AL5で構成されています。また、コンパクトなケースに2連バリコンを搭載してますが2連バリコンでは混信妨害に弱くS/Nもあまりよくありません。このFMチューナーは欲張らずほどほどの性能ですが、誰が製作しても同じ性能を発揮できることに重点をおいたキット製品であることがわかります。

このFMチューナーはナショナル FMワイヤード・パック FM-P1の説明書に掲載された回路例を参考にしているようです。上の写真がナショナルの回路例です。

ただし、電源部では6X4ではなくてFUJIDENKIのセレン整流器×2ケ、ボリュームなし、AFC回路なしの3箇所が回路例と違っていました。 私はFM-P1の説明書と「FMステレオ製作読本:1963年」を参考に修理したいと思います。「FMステレオ製作読本」には実体配線図もあり配線回しや抵抗の数値が若干違うなどの情報が助かります。

配線を見ると電源部で電圧を下げるのに苦労したのかワット数が大きい抵抗が発熱で劣化して被覆がはがれたり焼け焦げています。やはり、ナショナルの回路例のように6X4を使った電源回路の方がよさそうです。

まず最初にケースをグレーの塗装にして、つまみ部分の銅板をみがきアクリルスプレーします。まずはチューナーらしい雰囲気づくりからです。全体的に汚れてくすんだ色でしたが光沢のある真新しい雰囲気によみがえりました。

次に全体にサビが出ているシャーシもサビ止め塗料を塗ると見違えるようにきれいになります。また、トランスもサビや塗装が盛り上がっている部分を剥がし、艶消し黒で再塗装したことで全体がいい雰囲気に仕上がりました。ナショナル FMワイヤード・パック FM-P1のクッションゴムは固く劣化していたので付替えしてあります。電源部は6X4で作り直すつもりでしたが、5Vもののトランスだったので5MK9としました。ただし、トランスの出力電圧が250Vなので整流後の電圧をかなりさげる必要があります。劣化部品は交換することにしました。また、ボリューム500kΩスイッチ付きとAFC機能、ヒューズ・フォルダーが省略されているので追加します。

 2022.5.22 今日の作業はここまでとし、後日残りの作業をしたいと思います。 

2022.6.5 作業再開です。まずは電源部からです。

上の写真が今回の電源回路(電圧は実測値、電流値は予測値)で搭載されていたトランスは5Vものなので5MK9で電源回路を組みます。しかし、トランスの出力電圧が250Vもあり、電源回路の整流後の出力電圧は115Vまで下げる必要があります。このチューナーの製作者さんも出力電圧を下げるのに苦労したのだと思います。トランスの出力電圧を下げるには電源回路の抵抗で調整する前に電源トランスの110V端子にAC100Vを入れてみます。トランスの250V端子をテスターで測ると約200Vとなり50Vほど下げることができました。110V端子を使い電源回路の整流回路の出力で約30mA流れると想定すると3KΩで回路図の電圧115Vのところ計算値では110Vになります。実際の回路では手持ちのメタルクラッド3.6KΩ(手持ち部品なので50WもありもっとちいさなW数でOKです)で製作するので115Vのところ計算値では92Vになりますが後に実測して確認します。

 

上の写真が電源回路になります。リード型ヒューズ・ボックス(左端)、スイッチ付ボリューム(左側)、AFCスイッチ(中央)、メタルクラッド:金色(右側)になります。

上中央の白いソケットが6BA6でAFC回路を作り込みます。また、「FMステレオ製作読本」を参考にヒーターチョーク(中央下)を入れてみました。
配線ではラグ板×3枚で込み入った配線を整理し、パスコンのアース位置を変えて手直ししました。

修理も終わり電源まわりを確認して火入れです。電源を入れると約0.42Aながれ、電源回路の出力電圧は約100V(計算値では92V)で正常のようです。本来、回路図では115Vのところが100Vですが動作すると思います。

モニターをつなぎラジオ放送を選局しますが音が何も出ません。ナショナル FMワイヤード・パック FM-P1のIFTやコイルの調整用ネジがいじられているようです。調整用ネジを固定する白い塗料が本来の位置にありません。そこで、すべての調整用ネジを白い塗料の位置におおよそあわせてみました。もう一度、選局してますとFM放送が聞こえてきました。受信感度を上げる仮の調整をしたところ普通に使える程度には調整できました。受信感度は高く良好なので細かな調整は別途とします。

LEADのケースには、ダイヤルスケールの裏側にランプ用の穴が4つあり照明できるようになっています。このケースには電源ランプがないので動作しているかわかりにくいので、ジャンク品のE10ソケットをつけてランプで照明してみました。

 
電源を入れるときれいなパネル照明でいい雰囲気です。LEAD FMチューナー・ケース・キットの製作を過去に遡っての追体験で非常にたのしい時間を過ごせました。LEADキットと「FMステレオ製作読本」を見ていると、昔に戻ったような感覚でまた沼にはまりそうです。