
EICO MX99 真空管式FMステレオ・マルチプレクスアダプターの紹介です。EICO(USA製)から1961年~1963年まで販売されていた製品です。当時は1ドル=360円の頃ですから、39ドル(日本円で約14,000円)の価格になります。当時、サラリーマンの月給が20,000円~25,000円ですから、FMアダプター単体だけでも非常に高価な製品でした。EICOはオーディオ専業メーカーではありません。測定器メーカーでキット販売はその一部でしかありません。EICOのオーディオ機器はキット製品で組立・調整は購入者がします。FMステレオ黎明期に測定器の技術を生かしてFMアダプター(キット)を販売しています。Fisher,Scott,Marantzなとのオーディオメーカーの様な華のあるブランド製品ではありません。一般家庭向きでもなく技術に興味のある人やエンジニアが主な購買層です。価格も安く調整すれば回路どおりしかり動作する製品であり一定の購買層があったようです。
EICO MX99はeBayでしか見たことがありません。日本では代理店がないので個人輸入以外はなかったはずです。偶然ネットで見つけたので購入させてもらいました。 測定器メーカーらしく地味はフロントパネルです。回路図をみると教科書どおりの回路構成で堅実さを感じます。EICO MX99は温かみのある音質とシンプルなデザインが魅力の真空管式FMマルチプレックスアダプターです。前面パネルは、電源スイッチ、ステレオ/モノ切替スイッチ、STEREOランプ、電源ランプ、セパレーションボリュームです。セパレーションボリュームは菊型ノブなので、たぶんオリジナルではないと思います。パネルも含めたボディーには傷もなく保存状態が良い製品です。
背面はMPX INとLRのOUT PUT端子、電源ヒューズの構成です。
左奥の真空管が6D10になります。国内では珍しい真空管で入手しにくい比較的高額な球です。海外のサイトからはMX99サービス・マニュアルが入手可能です。サービス・マニュアルには回路図や調整方法が記載されています。スキルと機材があれば個人でもメンテンナンスも可能かと思います。
12AU7×2、12AT7×1,6AU6×1、6D10×1、6X4×1、ダイオード×6で構成されています。
背面から見ると真空管配置図と背面パネルの説明シールが貼られています。
真空管全体を見渡すと6D10以外は全てガラス面が黒くなっています。6D10は最近交換されたように見えます。6D10以外は国内で流通している真空管なのでメンテナンスは楽です。6D10以外は使用しながら順次交換が必要かと思います。
部品は当時のオリジナルのままのようです。修理した形跡もありません。電源をいれますが約0.4Aで安定しました。正常のようです。ブロック電解コンデンサの発熱もありません。左右から音が出ました。高価な6D10が正常なので一安心です。オリジナル部品で今でも正常に安定動作することに驚きます。セパレーションを測定すると15dBほどです。本来であれば30dB確保できるはずです。コアを回して調整しようとしましたが、コアが固くてまわりません。無理に回すとフェライトが破損しそうなので断念しました。
ヒヤリングをしてみます。帯域はやや狭く現在のチューナーのように広くは感じられませんがバランスの良い音質です。セパレーション・ボリュームを左側にまわすとシャープな音、右側に回すと音が丸く変化します。セパレーション・ボリュームを操作するとセパレーションの値も増減します。セパレーションが変化する量は少ないボリュームです。私は音質調整用に使っています。左右に廻して快適な音質に調整しています。EICO M99は音質やブランドで語る製品ではありません。FMステレオ黎明期に「規格通りに確実にステレオを復調する」という役割を果たす、いかにもEICOらしい実務的なMPXアダプターです。技術的遺産としての価値を感じます。今尚現役のオーディオ機器として使用できる貴重なFMアダプターです。