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| SH300を収めた前面パネル |
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| 背面パネル |
NATIONAL ナショナル SH-300 真空管FMマルチプレックス・アダプタの紹介です。1964年頃、6,500円の製品です。ナショナル家具調ステレオSE-8800、SE-7500D、SE-7700などのスピーカー内側の底板の上にSH-300を設置することでFMステレオ放送を聴くことができました。また、SE-8800などの高級機種には最初から内蔵されています。SH-300本体をオークションで見るのは大変珍しいので購入しました。上の写真で右側がSH-300、左側は今回自作した専用ケースになります。
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| SH-300 回路図 |
ナショナル RD-511と酷似した回路を採用しています。RD-511はプリント基板ですがSH-300は全て手配線なので音の違いに興味が沸きます。また、RD-511は6BA6,12AT7,12AX7でSH-300は6BA6,12AX7,12AU7と真空管の構成にも違いがあります。
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| ネジ付きフェライトコアの引き抜かれた跡 |
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| コイルの破損の様子 |
今回、入手したのはSH-300本体のみでUSプラグも取り外されているジャンク品です。コイルの端子破損(コイル切断)、ネジ付きフェライトコアを強引に引き抜いたのか座金の残骸とコアなしでボビン破損など多くの修理が必要な製品です。今回は、SH-300を修理して外付けFMマルチプレックス・アダプタを製作したいと思います。
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| コイルの修復後の様子 |
写真左側の端子が破損したコイルです。補強用の軸を入れて破損した端子をボンドでボビンに固定します。切断されていた極細のエナメル線の被膜を紙やすりで慎重にはがして端子にハンダ付けします。コイルから外れている配線は回路図をみながら巻線方向を間違えないようにハンダ付けすれば終了です。次に写真右側の固定金物とネジ付きフェライトコアが欠損しているコイルには、手持ちの部品を移植しました。SH-300の一番重要な箇所の修理は終了です。
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| 修理前の内部の様子 |
内部を見ると電解コンデンサが発熱で被覆がめくれています。シャーシの側面の金属板の欠損もみられます。その他ペーパーコンデンサーなどの劣化部品は全て交換します。
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| 組立部品の仮配置 |
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| 木製ケースの組立 |
SH-300本体と電源回路を組み込むには、高さ12cm以上で通気の良いケースが必要になります。市販品で程よい大きさのケースが見つからず自作することにしました。部品配置を決めてから500円の板を裁断して底板、側板を切り出します。全面はアルミ板、天板はパンチ穴のあるステンレス板を使います。側板は水性の着色剤でマホガニーブラウンで仕上げてみました。底板は無垢のままで、全面パネルと底板は1cmほど離して下からの空気穴を確保します。
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| ケース内への実装 |
手持ちの電源トランス、電解コンデンサ64μF×2、整流用ダイオードと抵抗をラグ板に配置してヒューズを付けた電源回路を製作します。全面パネルには、真空管ラジオから取り外した回転式の電源スイッチとネオンランプを取り付けます。全面にOUTPUT端子を設置したのは、SH-300の構造ではOUTPUT(前)とMPX IN(後)がシャーシの両端に位置する関係からです。B電源とヒーターの電源配線と入出力の配線をすれば完成です。回路をよく見るとセパレーション調整用の半固定抵抗の配線が欠損しています。また、行先不明の電解コンデンサーが1個、B電源の誤配線などを見つけました。これらを回路図どおりに修理して本当の完成です。
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| 通電確認 |
電源試験では0.39Aで安定しました。B電源は120Vの想定のところ135Vなのですが後で修理とします。次に動作確認をします。MPX INとFMチューナーのMPX OUTを接続してOUTPUT端子に簡易モニターを入れてみます。Lch,RchともにFM放送を聞くことができます。修理に大きな間違いはなかった模様です。SH-300に測定器を入れてコイルの調整をします。セパレーションは10dBほどしか確保できません。B電源の電圧の影響かもしれません。135Vから120V(回路図の規定の数値)に変更します。再度、セパレーションを調整すると35dB以上を確保することができました。電源電圧の影響は大きかったです。
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| ヒヤリングの様子 |
調整も終わりヒヤリングです。ややエコーがかかった様な音質が不自然です。RD-511では外部のオーディオ機器との接続には100kΩの抵抗をOUTPUTに付加する必要があります。SH-300も同じかもしれません。OUTPUTに並列で100kΩの抵抗を挿入してから再度ヒヤリングです。ややエコーがかった音は解消しました。出力はやや小さくもう少し音量は大きいほうが使いやすと思います。RD-511と同じ傾向の音色です。ノイズは感じられずS/Nは良好です。スッキリした音で高音がシャープで気持ちの良い響きです。中音は繊細で充実しています。低音は締まっていますがう少し量感がほしいところです。音に艶があり音楽を美しい響きで聴かせてくれるFMアダプタです。セパレーションの調整により奥行が感じられるように変化しました。動作には安定感があります。SH-300は優秀なFMアダプタだと思います。
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| ケースとSH-300 |
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| TRIO AD-5とSH-300 |
コイルなどの補修部品や回路図をもっていないと修理が難しい製品です。ジャンク品が蘇り同じ年代のTRIO AD-5と並べて眺めているのは楽しいものです。管式FMアダプタは流通している品数が少なく今では貴重な製品だと思います。
2025.12.14 ケースの交換
作成したケースですがイマイチの出来で気に入りません。パイオニア真空管チューナーのカバーが余っています。これをベースにケースを再度作成しました。
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| 新しいケース |
パイオニアの真空管チューナーのカバーを黒く塗装してあります。前面は余ったアルミ板と木材で化粧します。電源とランプだけのシンプルなパネルです。
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| 新しいケース内の実装(真上) |
底板はケースに合わせた大きさにカットして黒く塗装します。MPX本体、電源トランス、整流回路をそのまま移植しています。RCA端子はケースの柱を兼ねた木板に取り付けています。
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| 新しいケース内の実装(真横) |
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| 新しいケース内の実装(背面) |
今回、作成したケースの方がステレオセットと一緒にセットしてもしっくりします。これで全ての作業は終了です。