2023/04/15

TRIO トリオ FX-46K 真空管FMチューナー(ファーストリカバリーダイオードに交換)

TRIO トリオ FX-46K 真空管FMチューナーは、1966年頃で17,900円のキット製品です。同時期にFX-46として23,900円で完成品も販売されていました。今回は久々に真空管チューナーの修理です。

TRIOの真空管チューナー は1966年頃を最後に製造は終了しています。 この頃から急速にトランジスタのチューナーへと移行しています。FM真空管チューナーは1960年前後から6〜7年のほんの短い期間の貴重な製品なので大切に扱ってほしいものです。

 FX-46Kはメーターがブルーの照明が目印です。

外観を見ても大きな傷やダメージはなさそうです。サビもみられませんので比較的良好な状態のようです。

内部の状態を確認します。トランスの電解コンデンサが3ケ所で破裂して焼け焦げています。何故かAC100Vの白いリードが外れていて危険な状態でした。ブロック電解コンデンサ不良なのかシャーシ回りに焼け焦げた跡がみられます。

 

この状態では電源試験もできないので、劣化部品を全て交換します。全面パネルも外し清掃します。このときガラス管ヒューズ型ランプも交換します。

部品交換も終わり、ようやく電源試験ができます。電源ONにすると0.6Aで安定します。各箇所の電圧を測定して正常であることを確認します。電解コンデンサーなど発熱もないことを確認します。最後に受信感度やセパレーションなど再調整します。

エージングを兼ねたヒヤリングを数時間します。音質は厚みがありききやすい音です。低音は出ますし奥行も感じられます。個人的にはもう少し抜けの良い音で音楽を楽しみたいところです。

FX-46Kには整流用ダイオードにER1Kが2本使われています。 

以前から交換してみたかったファーストリカバリーダイオード(FRダイオード)に交換してみます。トランジスタ・アンプではよく使っていましたが、管式チューナーでは使ったことがありません。音のバランスが崩れたらと心配しながらの交換です。元に戻せるように慎重にダイオードを取り外してから交換します。

FRダイオードに交換後にヒヤリングして音質を確認します。本来の厚みのある音質はそのままで霧が晴れて見通しが良い音に変わりました。情報量が多くなったのが一聴してわかり細かい音が再現できるようになりました。交換前のマイルドな音が良いのか交換後の音が良いのかは好みで決めればよいと思います。FRダイオードに交換したから音質が良くなるとは思っていませんので、あくまで音質の変化の違いを楽しめればいいと思います。個人的には交換後のジャスの音が好みです。

2023/03/21

TRIO トリオ KT-5000 AM/FMチューナー

 TRIO トリオ KT-5000 AM/FMチューナーの紹介です。1969年頃、39,500円のチューナです。上位機種にKT-7000 61,000円がありクリスタルフィルターやIC採用以外はほぼ同じのチューナーかと思います。トランジスタに移行してから技術が成熟した印象のチューナーです。機能やデザイン面でKT-5000,KT-7000が基本モデルとなり以降の機種に大きく影響を与えています。

背面パネルの様子です。

内部を見るとIF基板やMPX基板はトランジスタによるディスクリートで製作されています。トランジスタでチューナーの各機能を組み上げていますので、基本のモデル機種かと思います。

全ての劣化部品を交換してから電源を入れ動作確認をしてみます。トラッキングが大幅にズレています。KT-5000は調整箇所が多く調整方法がわからず手探りで調整したのだと思います。そのためフロントエンドから順に全て再調整してみました。

 この時点で発見した不具合は、①ダイヤル目盛りのランプ切れ、②ステレオ・ランプ切れ、③ミューティング 動作しないなどの3点を確認しました。ダイヤルスケールのガラス管ヒューズ電球を交換します。ステレオ・ランプは切れているので新しいムギ球と交換します。ステレオ・ランプの調整ではFM放送局を選択してもトランジスタの電圧振れ幅が小さくVRを調整してもランプが点灯したままで消灯ません。3個ほどトランジスタを交換します。交換によりトランジスタの電圧の振れ幅が大きくなりランプが点灯/消灯できるようになりました。

ミューティング・スイッチをON/OFF、VRを調整してもミューティングが動作しません。この回路にはフェアチャイルドの黒く大きなトランジスタが使われています。フェアチャイルドの代替トランジスタは不明です。そのため海外輸出モデルの回路図を参考にしたところ2SA495と記載がありましたので2SA1015で代替してみました。交換によりミューティング回路も動作するようになりました。

修理完了後にヒヤリングしてみます。中音が充実した奥行のある音を聴かせてくれます。最新のチューナーとは違い高域の伸びと抜けの良さはKT-5000では出すことができません。しかし、けして刺激的にならずに優しく包み込むような音楽を聞かせてくれます。アナログ・チューナーの良さを感じられる製品です。昨今のチューナーでは味わえない重厚で品のあるデザインと中央のダイヤルツマミなどの操作感は格別です。ダイヤルスケールの青い文字もいい雰囲気を出しています。いまだに捨てがたい名機TRIO KT-5000が修理で復活しました。

2023/03/05

Victer ビクター AM/FMステレオ・レシーバー CA-G6

Victer ビクター AM/FMステレオ・レシーバー CA-G6の紹介です。メタリック・グレーに色調を統一されたステレオ・セットで、レシーバーの木製カバーもメタリック・グレーに揃えられています。全面パネルはシルバーを基調に黒いダイヤル目盛りなどで若者向けの明るいデザインになっています。

CA-G6は1976年頃のSystem Stereo G-Serise(レコードプレーヤ、レシーバ、スピーカーのセット製品)G6型98,000円のレシーバー部分です。上の写真は当時のカタログになります。

背面パネルには、アンテナ端子、入力端子、スピーカー端子にはRCAタイプを採用しています。このスピーカー端子は今でもAmazonで入手可能です。Phono端子にアースがありません。レコード・プレーヤーからのアース端子だけは付けてほしかったところです。AM用のフェライト・バーは背面ではなく内部に設置されています。元々レコード・プレーヤーを上に重ねて置くことを想定しているためレシーバーの奥行は必要以上に長くなっています。レシーバーはプレーヤー・ラックを兼ねおり、レシーバーカバーの材質は木製で良い音の響きになるように配慮しているのかもしれません。

内部を見ると奥から電源部とパワーアンプ部の基板、中央がチューナー部、手前がコントロール部と配置されています。フェライト・アンテナが内部に配置されているレシーバーはめずらしいです。パワー・トランジスタには2SC1061が採用されています。 内部を見ると機能は落とさずにコスト・ダウン化された製品の様子が伺えます。ダイヤルスケールの照明はダイヤル針のみで電源部のトランスや電解コンデンサは小型、ボリューム類の可変抵抗も小型、プリント基板を固定するシャーシは板ではなく梁構造、底板はパーチクルボードです。例外はAM2連、FM3連バリコン、初段はFETと機能的には上位機種と遜色ないつくりになっているようです。

古い製品なので劣化部品を全て交換します。交換が終わったら機能確認とヒヤリングをします。左右のスピーカーから音はでるようです。しかし、ハイ上がりでひどく歪んだ音がします。 FM放送ではホワイト・ノイズが気になるほど大きな音がします。

更にヒヤリングを重ねると右側のスピーカーの音が歪んでいます。外部入力しても歪むのでパワーアンプ部のようです。初段の2SA672を通ると音が歪むようなので2SA1015に交換します。右側の基板裏側を見ると22kΩの抵抗がエミッタに接続されています。しかし左側の22kΩの抵抗は別の個所に接続されいることに気づきました。製造時に抵抗を誤接続したことがトランジスタの故障原因のようです。トランジスタを交換して抵抗も本来の接続箇所に直しました。これでほぼ歪はなくなったようです。更にパワーアンプ回路の2段目の2SC12132SC1815に交換することで音の透明感は格段にアップするようです。

FM放送のホワイト・ノイズはモノラルでも聞こえることからアンテナから検波までの間のようです。初段のFET 2SK19を2SK192Aに交換してみます。ホワイト・ノイズは低減しましたが驚いたことに音質まで大幅に変化しました。ハイ上がりでキンキンした音でしたが歪みも減り高音寄りですが落ち着いた音質に変わりました。

修理が終了した時点でもこのレシーバーはFMステレオ時のホワイト・ノイズがやや大きいことが気になります。特にクラッシクなどの楽器と楽器の音の狭間でノイズが非常に目立ちます。ロックやポップスを聴いている分にはノイズはあまり気になりません。ノイズに改善の余地があるのかもしれません。このレシーバーはAMの受信性能が特に優れています。弱電界地域でも難なく受信できるのには驚きます。音質は透明感のある高音が特徴の明るい音です。 音作りは若者向けのオーディオ・セットとのして位置づけでしょうか。キラキラしたシールバーのパネル・デザインに通じる音質です。このクラスではレコードやFM放送を聞くのに少し色づけした個性を持たせたほうがスピーカーとの相性が良かったのかもしれません。10万円のステレオ・セットでCA-G6レシーバーは実質3万円を切るぐらいでしょうか。初心者に最適なレシーバー・アンプです。

2023/03/04

SONY ソニー STR-200 FM/AMレシーバー(MU故障)

SONY ソニー STR-200 FM/AMレシーバーの紹介です。1970年頃の製品です。本来は4点セット(レコードプレーヤー、レシーバー、スピーカー×2)59,800円のステレオシステム・イテグレード200として販売されていました。レシーバー本体はSTR-200となります。Sonyの薄型で整ったデザインのレシーバーは今でも人気があります。

背面パネルはいたってシンプルです。アンテナ端子、入力端子、RCAのスピーカー端子が配置されています。この機種にもPhono用のアース端子がありませんでした。

内部をのぞいてみます。配線が少し煩雑です。電源トランスの下はパワートランジスタとヒートシンク、中央左は電源基板、右がチューナー基板になります。

劣化部品は全て交換したのでテストしてみます。左右からFM放送を聞くことができます。しかしステレオ・ランプは点灯しませんのでモノラルのようです。ランプ単体試験では点灯します。チューナー基板中央の大きなW数の抵抗と近くのトランジスタでランプを点灯させているいようです。トランジスタのベース電圧を見ながら選局しても電圧に変化はみられません。MU(マルチプレックス・ユニット)1-425-548-11の不良かもしれません。以前、他のSONY製品から取り外したMUが1個あるので交換してみます。ステレオ・ランプは点灯するようになりましたが点灯したままの状態です。ノイズが混入した影響で点灯したままのようです。

 

上の図にはMU回路図を示します。他機種のサービス・マニュアルから拾ったものです。0.0082μFはマニュアルから抜粋の数値です。0.00978μは故障したMU、0.00993μFは交換した MUの実測値です。後から気づいたのですが、故障したMUのコイルの通電はOKだったので、MUにコンデンサを外付けすれば修理できたかもしれません。

AUXから入力した波形はパワーアンプの出力で正常でした。 FM波へのテスト信号で測定します。左右の正弦波の上下がカットされたような波形でノイズも乗っています。FM回路が不良です。故障が疑わしいのはMU~フロントエンドの間のトランジスタです。フロントエンドの2SK23、2SC170を交換してみます。波形はやや改善しましたがNGです。次にIFTまでの4つのトランジシタ:2SC403を2SC1815に交換します。きれいな正弦波が出力されるようになりノイズも消えました。トランジスタ不良です。ステレオ・ランプも正常に点灯/消灯するようになりました。

独特の透明感があり高音がキラリとするきれいな音質です。FM放送のS/Nは良いです。全体的な量感は薄くパワー不足を感じます。高能率のスピーカーを使うか小音量で使うのが適していると思います。このレシーバーはFM操作時に少し癖があります。FM放送のステレオとモノラルで音量差が大きいです。選局時と選局中の音量差も大きくボリュームを操作する必要があり扱いにくいレシーバーです。レシーバーの価格は約20,000円ぐらいでしょうか。このレシーバーは当時の低価格帯の製品として操作性を犠牲にした音質重視のレシーバーだと思います。

2023/02/18

Pioneer パイオニア SX-45 FM/AMレシーバー

Pioneer パイオニア SX-45 FM/AMレシーバーの紹介です。 1970年頃の39,800円の製品でシリーズの最下位機種になります。全面はアルミ枠に黒いアクリルバネルを重ね黒のツマミを配置、チューナーのメーターはオレンジ色、目盛りはブルーに輝く斬新なデザインです。上の写真は、黒いツマミが高級なゴールドのアルミ無垢のツマミに変更されています。SX-45はブラックで統一されていますが、ツマミを交換しても最初からこのデザインだったように違和感もなくいい雰囲気に仕上がっています。

SXシリーズの背面は全て同じ構成でフェライト・アンテナおよびアンテナ端子、スピーカー端子(パイオニア独自のT型)、RCA入出力端子などが配置されています。

内部は全体にスッキリとした部品配置でレシーバ製作に手慣れた印象を受けます。電源部には大型トランスと2200μFの大容量電解コンデンサを採用ています。チューナー部は茶色のプリーにAM2連、FM3連バリコン、15mm角の少し大きなIFTは過渡期の部品かと思います。もう一つのプリント基板にはPhonoイコライザ、プリアンプ、パワーアンプが順番に配置されています。パワートランジスタ2SD226Aはシャーシをヒートシンクとして使い4個配置する作りになっています。照明には苦労した様子で長さ15cmほどの目盛りには4つもランプを使用して明るさを確保しています。

50年以上前のレシーバーはこのままの状態では使用できないので劣化部品は交換します。ただ淡々と部品を交換する根気が必要な作業です。 修理後は一通りの機能を試験をします。プリアンプ、パワーアンプ、FM、AMは全て正常に機能しているようです。

ただ1点、シグナル・メーターは振れるのですが、突然針が振れなくなったり突然回復する症状が不定期に発生します。何度も試験していると終いにはシグナルレベルが1/3にまで低下する症状まで出てきました。回路を調べますがIF段の2SC170コレクタ電圧が9.3V⇒4.2V不安定なので交換しましたが直接の原因ではありませんでした。原因はわからず。数日テストを繰り返した際にメーターを叩くと針が振れたり振れなくなったりの症状が変化しました。メーター本体の故障のようです。

ダメ元でシグナル・メーターのカバーを外して内部を確認してみます。 上の写真を見ると針を元に戻すばねコイルのハンダ付けが外れて接触しているだけの状態でした。メーターは振動で導通が変化するので振れたり振れなかったりしたはずです。修理のためはんだ付けしようとしますが、はんだが溶けたときの表面張力でコテ先にバネコイルが張り付いてはんだできません。30分格闘してなんとかはんだ付けは成功です。シグナル・メーターの信号レベルも回復し動作も安定しました。

受信感度、トラッキング、セパレーションの調整をします。調整後のFMステレオ放送は音が全然違います。クリアで広がりがのある音に激変しました。部品交換で音質が改善したのと調整がズレていたのでしょう。SX-414より抜けの良さと量感がやや劣りますが、バランスがとれたSX-414と同じ音の傾向を持った良い音です。高音はややサ音が強く、低音はダンピングが効いたような締まった音がします。エージングすることで落ち着くでしょう。パイオニアのSX-414より一世代前のSXシリーズ・レシーバーは独自のパネル・デザインで雰囲気もあり音も良いのでお勧めの製品だと思います。

2023/02/11

Technics テクニクス SA-5200 FM/AMステレオレシーバー

Technics テクニクス SA-5200 FM/AMステレオレシーバーの紹介です。1973年頃、47,800円のレシーバーです。テクニクスのレシーバーはあまり出回っていませんが以前より興味があり入手しました。ダイヤルスケールの照明が美しいパネルデザインのレシーバーです。このレシーバーは重く8kgもあり物量が投入されいるようで期待がもてます。

背面パネルを見るとFMアンテナ端子(600Ω/75Ω)、フェライトアンテナ、外部入力、テープ端子、スピーカ端子、スピーカヒューズが配置されています。

カバーを開けて目に入るのがPanasonicの薄紫色の大量電解コンデンサ2200μF×2本です。大型のフライホイールによりダイヤル選局時の操作感は非常にいいです。FMの初段は4本足のFET 2SK39-Q、FM:3連/AM:2連ですがバリコンにカバーがあるものは珍しいです。この頃にはFM MPX用ICが使われ始めていてAN211が実装されています。パワートランジスタは2SD390を採用しています。

最初に故障箇所はないか目視で確認します。FMチューナー基板の電解コンデンサのカバーが熱で変形しています。1973年の製品なので劣化部品は全て交換します。劣化部品の交換後は機能を確認します。左右のスピーカーからの音は正常でノイズもありません。FMやAMも正常に受信できます。

メーターランプとダイヤル針のランプが切れていました。メーターのランプ交換は簡単ですがダイヤル針のランプは分解修理が必要です。ダイヤル針のムギ球を取り外します。ムギ球を実測して直径3mm、ムギ球のリード線で電圧が5.2Vです。リード線付き6V、直径3mmのムギ球を用意してダイヤル針に装着すれば修理は完了です。電源を入れるとブルーのダイヤルスケールに針がオレンジ色に輝く美しい照明が復活しました。

一聴してわかるのは余裕のある豊かな低音が魅力のレシーバーです。 FMステレオ放送のS/Nは良好で澄み切った音楽を聞かせてくれるのは特筆すべき点です。ジャンルを選ばず、どんな音楽でも瑞々しく表現してくれます。Technicsというのオーディオ・ブランドに相応しい高い性能と優秀な音質のレシーバーだと思います。