2023/11/03

VICTOR ビクター JA-S31 プリメインアンプ


VICTOR ビクター JA-S31 プリメインアンプの紹介です。 1975年、39,800円の製品です。当時、非常に人気があったJAシリーズのアンプです。パネルデザインを見ただけでビクターのアンプだとわかります。この当時のアンプは今ではあり得ないほど物量が投入された作りなので永く愛用して欲しい製品です。

背面パネルの様子です。
 
内部を覗いてみます。大容量電解コンデンサー×2個、ヒートシンクにパワーIC×2個のシンプルな構成です。下部のプリント基板、右からEQ回路、パワーアンプ、電源回路です。手前上のプリント基板はTONE回路になります。
上の写真はEQ回路です。右から左に信号が流れていく作りになっています。phonoを選択すると左右から激しいノイズが出ています。Tunerにするとノイズはありません。EQ回路の故障です。EQ回路からの出力をモニターするとLchにノイズ、Rchは正常です。
上の写真はEQ回路図の抜粋です。ノイズトレーサーで順にノイズを追っていきます。EQ回路の電解コンデンサC302からノイズがでています。Phono端子からの初段のカップリングコンデンサが不良です。C302コンデンサはオレンジ色で識別できるようになっています。1箇所の故障ですがせっかくなので劣化部品はすべて交換してリニューアルします。カップリングコンデンサの交換部品にはニチコンのファインゴールドを使用します。

ヒヤリングしてみます。EQ回路からのノイズは綺麗になくなりました。クリアで帯域も広く優等生的なバランスの良い音です。綺麗な音ですがもう少し奥行きや深みが欲しいアンプです。但し、そこまでの音をこの価格帯のアンプに求めるのは酷かもしれません。懐かしいデザインがとても魅力的です。今でも古さを感じさせない豪華で見映えする姿です。リビングでゆったりと音楽に浸りたくなるアンプの復活です。

2023/11/01

COLUMBIA コロンビア TFC-100 AM/FMホームラジオ


 COLUMBIA コロンビア TFC-100 AM/FMホームラジオの紹介です。TC-100Dは1970年頃、9,900円であることから、TC-100もほぼ同時期と価格ではないかと思います。箱型のオーソドックスなデザインのホームラジオです。外観の状態は良く傷もスピーカーネットの破れもありません。

背面はパーチクルボードでFMアンテナ端子が用意されています。パーチクルボードの傷みも少なく状態はよいです。木製ケースの板厚はかなり薄いです。


内部を覗いてみます。単三電池が電池ケースの中で朽ち果てています。ケースから電池を抜くこともできません。電池金物は電池の液漏れの影響で錆がひどい状態です。スピーカー、プリント基板、電源トランスはスッキリと配置されていて無理のない作りです。とにかく、埃が凄いので、ケースから部品を全て取り外します。ケースは素早く水洗いしてタバコのヤニもいっしょに落とします。電池の金具は錆で使えないので塗装します。そのためAC100Vでの使用のみとなります。

ラジオが聞こえない故障したラジオです。部品に劣化がみられるので交換します。交換してから機能を再度確認します。部品交換でAM.FM共にラジオを聴くことができるようになりました。調整もあまりズレていません。ボリュームのガリもなく受信感度など動作も良好です。故障の原因は電解コンデンサの劣化によるものでした。このラジオには古いナショナル の乾電池が入っていたので30年以上は使えない状態だったのでしょう。長い間保管されて待った甲斐があり修理して復活しました。

古い木製ホームラジオは味わい深い魅力があります。ポータブルラジオより人間味が感じられます。部屋の隅に置いて毎日気軽にスイッチを入れて聴くラジオです。部屋に馴染んで空気の様な存在感がホームラジオの魅力です。ラジオが生活の一部だった時代が感じられます。

2023/10/15

SONY ソニー ST-SA50ES FM/AMステレオチューナー(高品質のFM)

SONY ソニー ST-SA50ES FM/AMステレオチューナーの紹介です。1997年、40,000円の製品になります。フロントエンドにアクティブセレクションを搭載した音の良いチューナーです。今でも愛用する人がいる名機です。

FM文字放送用のFM DATA端子を搭載した珍しい機種です。

ST-SA50ESは2台目の予備機として購入します。本体の角が潰れていますが奇跡的に全面パネルに傷がないジャンク品です。内部を覗いて見ます。電源トランスが斜めに傾き、電源トランスの乗ったプリント基板が横一線に破断してます。チューナーを落とした衝撃で破損したのでしょう。プリント基板破損では電源が入らないはずです。電源部のプリント基板に直接配線して修理します。

電源装置を介してチューナーの電源を入れると 0.2A程度流れます。しかしディスプレが表示しません。チューナー基板の電源部を確認します。IC901のLA5667の電圧は7ピンとも正常です。ディスプレイボードへのコネクタの電圧も正常です。ディスプレイボード故障のようです。

上の写真のように、この機種は何故かディスプレイボードのハンダクラックが多いです。ハンダクラック×2箇所を修理するとディスプレイ表示するようになり輝度も良好です。

 フロントエンドの上面のシールドケースを取り外した様子です。

 フロントエンドの基板には非常に細かいプリントパターンが描かれています。

フロントエンドもハンダクラックが発生しやすい箇所です。フロントエンドのプリント基板を慎重にチューナー基板から取り外してハンダクラックの有無を確認します。案の定、2箇所のクラックを発見したので修理します。チューナー基板についてはクラックはありません。

フロントエンド 左上に2か所のクラックが見られます。

次に動作の確認をします。チューニングダイヤルが固くて回転できないほどです。チューニングのダイヤル軸をクイックドライクリーナーで洗浄すると、重たいですが回転できるようになります。Autoチューニングしても放送局をスルーして永遠に止まりません。マニュアル操作では選局ができます。選局するとSTEREOランプは点灯してFM放送を聞くことが出来ます。1~9までのセレクタボタンの反応が鈍いです。

Autoチューニングが止まらないのは信号レベルが低すぎるためです。RV221で規定の受信レベルに調整します。再度、Autoチューニングすると放送局で停止して選局できる様になりました。その他セパレーションなどを調整して修理は完了です。

ST-SA50ESは従来のデジタルチューナーより高品質なFM放送を聴かせてくれます。クォードラチュア検波はPLL検波に比べてソフトな音質などとレビューされているようです。

我が家のFMステレオ・マルチプレックス・アダプタです。

ST-SA50ESのFM DATA端子に真空式FMステレオ・マルチプレックス・アダプタと接続してFM放送を聞いています。今まで色々なチューナーの音質を確認してきました。ST-SA50ESは過去最高に音が良いチューナーです。今までのチューナーとは別次元の素晴らしい音です。透明感があり一音一音が繊細で明瞭なFMサウンドを聴かせてくれます。唯一の欠点はアクティブセレクションで3回チューニングする際、ノイズが発生する事です。

ST-SA50ES以降はFM DATA端子を搭載した機種は販売されていません。FM文字放送のサービスが終了したのでMPX端子を搭載する必要がなくなったからです。ST-SA50ESはMPX端子を搭載した最後のチューナーです。真空管で高品質なFM放送を聴かせてくれるST-SA50ESは貴重な存在です。

2023/10/08

データ専用USBケーブル(外部電源付)

自作したデータ専用USBケーブルの紹介です。以前よりPCオーディオで使うデータ専用USBケーブルで音質改善をやりたいと思っていました。データ専用USBケーブルは株式会社エーワイさんのオリジナル発案品(公証人役場で認証済み)です。1本3500円で販売していますが普及が容易いよう実用新案、特許等はあえて取得しないそうです。”他社様が同じ仕様のケーブルを製造販売されることは自由です”とホームページで明記しています。オーディオ・ファンには大変ありがたい会社さんです。ELSOUND(エルサウンド)という個性的なオーディオ製品も開発・販売しています。

 
上の図は通常のUSBケーブルの配線図です。PC側:Aタイプ、DAC(Topping D3)側:Bタイプで接続することを想定しています。

製作するデータ専用USBケーブルの配線図です。1番端子のVCC(電源)ケーブルを配線しないUSBケーブルを作成します。金メッキのUSBコネクタとオヤイデ電気の切売りUSBケーブルを使います。詳しい製作の仕方はオヤイデ電気のホームページに掲載されています。

オヤイデ店舗オリジナルのUSBケーブル20.-28/26(自作用切り売りケーブル)ブラックと金メッキのUSBプラグ(Aタイプ、Bタイプ)です。

上の写真は製作したデータ専用USBケーブルです。

データ専用USBケーブルをテストしますが、まさかの失敗です。あれこれ調べ、Topping D3を外部電源で使用している時は、USB端子にVCC電源と-Data+Dataが同時に流れていないとUSB-DACの入力セレクタが動作しないようです。Topping D3はデータ専用USBケーブルが使えない機器です。

上の写真はデータ専用USBケーブル用の2種類の外部電源(左側は単三×4、右側はACアダプター)です。

段々、沼にハマっていきます。Topping D3でデータ専用USBケーブルを使いDACが動作するようにケーブルを改造します。Topping D3のUSB端子にPC給電ではなく、別の外部電源をつなぐことが出来る特殊なUSBケーブルを作成します。外部電源の候補は電池およびACアダプターです。昔使っていたオーロラサウンドのバスパワープロ2みたいになってしまいました。オーロラサウンドさんはUSBの電源線が音質に影響すること知って製品化したのだと思います。

上の図は製作するデータ専用USBケーブル(外部電源付)の構成図です。

上の図はデータ専用USBケーブル(外部電源付)にUSB-DAC(Topping D3)を接続したときの配線図です。USB-DAC自身の電源スイッチON/OFFでは電流0mAです。USB-DAC用電源供給を断にすると約31mA ながれるようです。
 

①データ専用USBケーブルに電池式(6V)の外部電源を接続した場合(USB-DAC電源供給ON):電圧は約6.1V、電流0mA です。

②データ専用USBケーブルに電池式(6V)の外部電源を接続した場合(USB-DAC電源供給断):電圧は約6.1V、電流31mA です。電池による外部電源は単三×4本(6V)で約31mA流れます。約2.6日間で電池を消費する計算です。

③データ専用USBケーブルにACアダプター式(6V)の外部電源を接続した場合(USB-DAC電源供給ON):電圧は約10V、電流0mA です。
④データ専用USBケーブルにACアダプター式(6V)の外部電源を接続した場合(USB-DAC電源供給断):電圧は約10V、電流31mA です。ACアダプターを使う外部電源を用いる場合は音質の良いトランス式を使います。
 
 データ専用USBケーブル(外部電源端子付)

新しく製作した外部電源端子付のデータ専用USBケーブルのテストとヒヤリングです。3種類のUSBケーブルを比較します。
 
①ノーマルのUSBケーブル
音質の比較用に同じ材質で製作したUSBケーブルです。スペアナにはわずかな違いがでています。1kHz以下のノイズがやや大きくなっています。テスト信号の高調波2kHzもやや大きい数値がでています。音質は②、③のデータ専用ケーブルに比べ、やや霞のかかったような音がします。少し音が丸くなり1音1音が少し不明瞭になって聞こえます。
②データ専用USBケーブル(外部電源付:電池式)
スペアナを見ると1kHz以下のノイズが①、③と比べ一番小さくなっています。2kHzの高調波も①と比べて小さいです。明瞭で透明感のある音がします。1音1音が分離して美しい響きです。全体にクリアな音で高域が特に気持ちいです。USBケーブル1本で本当に音質が改善されることに驚きます。
③データ専用USBケーブル(外部電源付:ACアダプター式)
スペアナを見ると1kHz以下のノイズが①、②の中間になります。2kHzの高調波は②と同じレベルです。音質は②よりクリアさがやや後退してほんの少し丸くしたような音質です。こちらの方が音に量感が感じられます。音の印象は悪くありません。
スペアナではわずかなデータの差異で明確な違いはわかりません。しかし音を聴くとデータ専用USBケーブルは確かに効果があるようです。私の古いTopping D3でさえ違いがわかります。手持ちのDACでは、外部電源を付加しないとデータ専用USBケーブルが使用できませんでした。製作したケーブルの外部電源はないほうが音がいいはずです。純粋にデータ専用USBケーブルだけで音楽を聴ければよりクリアな音だと思います。今回は緊急避難的なケーブル試作でしたが、データ専用USBケーブルの実力を感じる事ができました。製作したデータ専用USBケーブル(外部電源:ACアダプター)は我が家のオーディオ・セットに組み込まれています。PCオーディオで音楽を聴く楽しみがまた一つ増えたようです。
 
注意:今回、ご紹介したデータ専用USBケーブル(外部電源付)の使用は自己責任にてお願いします。また、PCオーディオにはJPLAY FEMTOをカーネルストリーミング(KS)で使用、FLAC音源、DACも古い製品ですが改造してある環境でヒヤリングしています。そのため、それなりの高音質の環境でないとUSBケーブルの違いはわからないかもしれません。

2023/10/01

SANYO サンヨー IC-ST71 AM/FM ステレオ・ラジオ(アンテナ端子を付加)

SANYO サンヨー IC-ST71 の紹介です。1972年頃、16,800円のSANYO TRANS WORLDシリーズのラジオです。TRANS WORLDシリーズは遊び心満載のラジオです。代表機種はRP-7500(トランシーバー機能を搭載)、MR-4180(初期のラジカセ)です。どちらの機種も外付けステレオキャスト(FMアダプタ)によりヘッドホンでFMステレオ放送を聞くことができます。今回のIC-ST71は、FMステレオ機能を内蔵した数少ないラジオ製品です。FMステレオ機能を内蔵した機種は他にもあり、17F-B88VMR-41610F-B56+MAX-56などです。IC-ST71の特徴はポータブルラジオでFMステレオ放送を左右の内蔵スピーカーで聴けることです。競合する機種がありナショナル のサウンドスコープRF-787、ソニーのマトリックスサウンドMS-3200などです。

 

ラジオ正面中央のメーターは面白い使い方をします。その名もバランス・インジケータ。左右の音の大きい側(LまたはR)に針が振れます。メーターの針が中央に来るようにバランスで調整します。名前の通り左右の音のバランスを確認するためのメーターです。

ラジオの状態を確認します。ボリュームの文字などが消えかかっています。 ステレオランプが点灯しませんし、ラジオは受信できますが不安定です。中を覗いて見ます。 両脇の丸いヒートシンクを付けたトランジスタが出力段のようです。ボリュームの配線につながる先はMPX回路かと思います。ステレオランプの接続先は19kHzの抽出回路でしょうか。中央にあるSANYO LA1201はIF用のICです。

ラジオ部品の一部に劣化の兆しが見られます。劣化部品は全て交換します。少しづつ交換しながらラジオを聞いて作業を進めます。交換が進むに従いノイズやラジオの受信状態が徐々に改善されてきます。

受信感度を調整します。次に上の写真の半固定抵抗を回しますがグラグラで接触不良のため交換します。取り外すとバラバラに分解してしまいました。これでは受信が安定しないのも当然です。 

調整によりステレオランプも点灯するようになりました。TONEをMIDDLEにすると落ち着いた音を聴かせてくれます。電波が弱いためかステレオ・ランプが揺らめいて安定しません。音もノイズが大きく感じられます。

見た目も大切なので、ボリューム目盛りと機能表示をテプラで修復します。ダイヤル針も赤い塗装を塗り直します。言い忘れましたが、IC-ST71のボリュームダイヤルやチューニングダイヤルの操作感は適度に重く非常に心地よいです。

この機種は外部スピーカーが使えるようにL,R別々に出力するピン端子が用意されています。

外部スピーカーを接続します。予想外の音がします。とてもいい音です。ボリューム3ぐらいで大音量です。出力にも余裕があります。ステレオ・セットで聴いているようです。しかしロッドアンテナでは電波が弱くFM放送はノイズが多く安定しないため改善したいところです。我が家の様に弱電界の地域ではFMステレオ放送を活かすことが出来ません。

F型コネクタから75Ω:300Ω変換をしてアンテナ回路に接続している様子です。

背面パネルにF型コネクタを配置しました。

スカイセンサーの様に外部アンテナ端子があれば受信レベルは改善します。前オーナーが背面パネルに付けた外部アンテナ用ケーブルの跡(穴)を使いF型コネクタを付加してみます。内部で75Ω:300Ω変換もます。外部アンテナ端子とアンテナを接続することで受信感度は大幅に改善します。外部スピーカーでヒヤリングしてみます。素晴らしいステレオ放送の音を聴かせてくれます。この音が、このラジオ本来の音なのでしょう。

 

FMシグナルジェネレータで1kHzをL+Rに送信します。ラジオ出力ではLchのゲインが小さくバランスが崩れていま す。ラジオのバランスを調整します。

外部アンテナを接続した環境で受信感度を調整します。FMシグナルジェネレータで1kHzをLのみを送信します。交換した半固定抵抗でセパレーションを調整します。調整により22dBを確保することができました。これにより音に広がりが出てきます。

当時、FMステレオ放送をスピーカーで手軽に聴ける小型のラジオは少なかったと思います。このラジオには外部アンテナ端子はなく弱電界地域での受信には無理があります。IC-ST71は購入者の電波環境に左右される製品です。簡単なTONE機能しかもたないFMステレオに特化したラジオです。外部アンテナ端子が必要なことはわからないはずがありません。それでも敢えて販売したことに競合他社へのこだわりを感じます。IC-ST71はFMステレオに力を注いだ当時の技術と競争の狭間で揺れ動いた製品なのかもしれません。