2025/02/24

GE P740A ポケットラジオ(リードスピーカー搭載)

GE P740A ポケットラジオの紹介です。 1965年頃の8石トランジスタ、1ダイオードのラジオです。

内側にP740Pと印刷されています。

前面パネルには厚いアルミが使われていて触った感触がとても良いです。アルミメッシュのスピーカーカバーも厚手で凹みもなく綺麗な状態です。

プリント基板を見てもはんだ付けした後もなく、オリジナルの部品のままであることがわかります。保存状態も良くネジが1本錆びているだけでした。電池ボックスの金具は少しサビがある程度で良好です。 トランジスタにはRS3826などRS型番が搭載されています。

 

この頃のGEのラジオにはマグネチックスピーカーが搭載されています。回路図も公開されており、最終段がプッシュプルで出力トランスなしで高インピーダンス・スピーカーを駆動しています。

スピーカーを横から見ると振動棒が見えます。日本ではマグネチックスピーカーなどと言われていますが、海外のフォーラムを覗くとリードスピーカー(reed speaker)と呼ばれています。フォーラムに投稿されている方の情報によれば、 当時のGEからは高インピーダンスのリードスピーカーのラジオが130機種以上発売されていたそうです。おまけに該当機種の一覧まで掲載してくれているのには感謝です。

GEの高インピーダンススピーカーのインピーダンスが知りたかったので測定してみました。スピーカー端子の両端の直流抵抗は約16kΩです。

スピーカー片端とセンター間の直流抵抗は約8kΩです。

LCRテスターELC-121の機能は特殊でRレンジは1kHzのインピーダンスが測定できます。スピーカー片端とセンター間のインピーダンスは約44.6Ωです。

スピーカー片端とセンター間のインピーダンスは約17.1Ωです。

 

 再調整したラジオの受信性能は高く、電波難民の我が家でも楽々受信できるレベルです。最近のDSPラジオ以外で我が家で普通に受信できるラジオはほとんどありませんから、P740Aの性能はすばらしいの一言です。 

国内のラジオとは違いGE製は堅牢でしっかりした真面目な作りのラジオで個人的には気に入っています。

GEのラジオが入手できたら最初にスピーカーのマグネットの形状を確認してみてください。四角だったらマグネチックスピーカー(リードスピーカー)です。マグネチックスピーカーの独特の音色によるラジオを楽しむことが出来ます。

2025/02/23

ナショナル T-50 6石トランジスタラジオ

 

ナショナル T-50 6石トランジスタラジオの紹介です。1960年頃、7500円のラジオになります。水色のパステルカラーに金のパネルで鮮やかな印象のラジオです。電源は単三電池×4本またはACアダプター(6V)の2電源方式です。

黒いラジオ下部は電池ボックスになっていて珍しい形状です。電池ボックスはネジで簡単に外れて中はグリーンの電池ホルダで電池を固定するしくみです。

電池ボックス内のカバーを外すと上の写真のように内部のプリント基盤が見えます。両端の計4本のネジを外せば外枠ケースが取れます。

この頃のラジオは小型バリコンが搭載されています。

前面ケースからプリント基板を取り外します。今では見られない大きなダイヤルツマミが印象的です。

パネルからスピーカーやアンテナ端子を取り外してラジオ単体を取り出します。 本体ケースなどは水洗いして汚れやほこりを洗い流します。洗うことでラジオの手触りが全く違い触感が非常によくなります。プリント基板やスピーカーなどは丁寧にホコリを取り去ります。

  

このラジオを詳しく知るには、”ナショナルラジオ サービスノート”が便利です。 

”ナショナルラジオ サービスノート”は販売店用の資料です。定格、マウント写真、部品リスト、配線図、プリントパターン図から構成された修理用ノートです。

特に興味深いのは配線図と実際のラジオを比較したときです。このT-50ラジオはナショナルの旧トランジスタが使われています。配線図では、Tr1:2SA102、Tr2:2SA101、Tr3:2SA101、Tr4:2SB171、Tr5&Tr6:2SB172です。実際のプリント基板には、Tr1:MC102、Tr2:MC101、Tr3:MC101、Tr4:OC71、Tr5&Tr6:2OC72のナショナル・旧トタンジスタが実装されています。


上の写真はTr4:OC71(2SB171)です。

 

上の写真はTr3:MC101(2SA101)です。

 

その他にもバリオードMA23B (バリスタ)やダイオードD1:OA70など当時の部品が使われています。


 電解コンデンサはプラケースに入ったタイプで、プッシュプル出力段はオレンジ色、そのほかはグレーと色分けされています。全ての部品がオリジナルのまま保存されていました。ラジオは動作するので、貴重な部品は交換せずにこのまま残置することにします。

外側からはイヤホン端子の破損は見えましたが、取り外すと完全に二つに割れていました。

イヤホン端子のプラスチックの補修をします。

もう一か所、ケースの欠けを補修します。

T-50ラジオはナショナルのトランジスタの変遷を知ることができる貴重なラジオです。”ナショナルラジオ サービスノート”と一緒にコレクションする価値のあるラジオかと思います。

2025/02/22

CLARION クラリオン HR-2000A 蓄音機型AM/FMラジオ

 

CLARION クラリオン HR-2000A 蓄音機型AM/FMラジオの紹介です。1988年発売で5000台限定の製品になります。本体とアンテナ線だけでプレートや元箱などはありませんでした。ラッパはネジで固定されていて見栄えだけです。音は本体前面のスピーカーからです。

 金色のドラムがダイヤル目盛りで右のハンドルでチューニングする凝った作りです。

電源はAC100Vだけです。電池でもラジオが聞けたら便利だったのにと思います。裏面にアンテナ端子がでています。

外観はきれいですがジャンク品でラジオが鳴りません。早速、修理をします。本体を持ち上げると底板がブラブラして今にも外れそうです。底板のネジが4本が外れています。修理のため開けたのでしょう。底板を外すとプリント基板のアンテナが取り付けてあるのが見えます。上の写真のようにスピーカーと本体基板を取り外せば修理できるようになります。

 
上の図は、本体基板の主要部品の動きを把握するため配置図です。これだけの内容がわかれば、おおよその故障個所は特定できるようになります。
 
 
LA1260はAM/FMチューナーシステムICです。このラジオではAM部分のみ使用しています。
C575C2はパワーアンプICで8Ω/2Wの性能です。
 1B4B41はブリッジ整流器で100V/1Aの性能です。
 
LA1185はFMフロントエンドICです。FMに重点を置いているのかLA1260を使用せずに、このICで回路を組んでいます。
動作確認をします。電源ONにしてもスピーカーからは無音で全く反応がありません。試験用電源装置の電流計を見ても全く振れず通電していません。ACコンセント、電源トランスの順に通電確認します。ACコード両端で通電はないのですが、プリント基板上では通電しています。現象が不可解で故障個所が特定できません。電源トランスを取り外して切り分けることにします。
電源トランスのハンダを取り外し中にプリントパターン切断を発見しました。AC100V入力部分のプリントパターン断です。ラジオ本体を落としたりしたのでしょうか?珍しい故障です。断線箇所はジャンパー線で修理します。電源ONにするとスピーカーからノイズが出るようになり通電出来たようです。ラジオの試験ではAMは受信NG、FMは受信OKです。
 
AMが受信NGの原因はアンテナバーの赤いリード線の断線です。これを修理してAMも受信OKになりました。劣化部品は全て交換します。 最後に受信感度を調整します。
ダイヤル目盛りとポリバリコンの位置が合わずダイヤル目盛りがどうしてもズレます。ダイヤル目盛りの歯車を外して物理的に調整します。0.9mmの極細六角ドライバーで取り外しダイヤル目盛りの受信周波数を合わせます。
 
スピーカー、プリント基板、底板を全て元に戻して完成です。このラジオは劣化部品は全て交換したので永く使えるとおもいます。実質2~3時間の作業で息抜きにはちょうど良いラジオ修理でした。

2025/02/16

米国製の鉱石ラジオ:American Leader Pocket Radio

1937年(昭和12年)の米国製の鉱石ラジオ:American Leader Pocket Radioの紹介です。ラジオは木製の箱で横に扉をつけてレシーバーを保管できるようにしています。ポケットラジオの名前のとおり小型で軽いので持ち運びには便利なラジオです。


裏側はアンテナ端子とアース端子です。A:アースとG:グランドのシールの文字が逆さまです。端子への内部配線が逆だったためシールを逆さまに貼ったのだと思います。配線を直さずシールを逆さに貼っていた、細かいことは気にしない時代だったのかなと想像してしまいます。(1937年は世界恐慌ですから大変な時期ですが・・・・)

ラジオの動作確認をしますが全くの無音です。 ラジオの裏蓋がクギで止められていて、過去に開けた様な形跡がみられます。蓋を外すと四角いコイルが上下に紙を詰めて固定した面白い作りです。

とりあえず、コイルを外してみます。コイルは角材にエナメル線を巻き付けています。コイルにバーをスライドさせてインダクタンスを変えてチューニングする方式です。

最初に導通を確認するとレシーバーと本体間の導通がありません。


レシーバーの蓋を開けてみると2つのコイルが見えます。古いラジオ教科書に書かれたマグネチック・レシーバーの構造です。レシーバーの導通を確認します。代替えのない大切な2つのコイルの導通はOKです。1つのコイルで抵抗が600Ωあり、2つ直列で1200Ωの高インピーダンス・タイプであることがわかります。レシーバーの綿編コードが断線していました。コードの内部での断線なのでコード全体を交換します。レシーバー単体では正常になり音が聴こえるようになりました。

同調コイルの通電はOKです。しかし検波器がみあたりません。コイルを巻いた角材の横に直径5mmほどの穴があり黒いタール状の物質の中へ裸線が伸びています。導通確認しましがNGで片側の行先が不明です。慎重にタール状の物質を取り除いてみました。中から探り針と鉱石がでてきました。鉱石の形状や色合いから方鉛鉱またはシリコン結晶を使っているようです。探り針は真鍮製でしょう。予想外の探り式鉱石検波のラジオです。検波器の導通がNGが故障の原因です。元オーナーさん達が修理を断念したのも頷けます。

上の図は、このラジオのしくみです。もう少し詳しく説明すると、角材の横に穴をあけ、鉱石を穴の奥に設置して探り針で検波します。ポケットラジオなので持ち運べるように調整後の探り針を黒いタール状の物質で固定しています。黒い物質は完全に硬化しないので、棒などで上から押せば探り針の針圧ぐらいは調整できたかと思います。また、湿度などから検波器を封止する役割もあったのでしょうか。探り式鉱石検波器はすごく不安定なのでこの状態で何年も使えたとは思えません。屋外にラジオを持ち歩きたいとの要望に応えた意欲的な製品なのでしょう。

上の図が、このラジオの回路図です。部品点数が少ない基本的なラジオです。同調コンデンサがないので電灯線アンテナとアースをしっかり接続することが大前提のラジオです。

復元はかなり細かい作業になるので探り式鉱石検波器は大事に保存するだけにします。オリジナル性が損なわれるので賛否が分かれますが仮復旧してみます。このラジオには固定式鉱石検波器を入れるスペースもないので、高感度のゲルマニウム・ダイオードを使いました。但し、いつでも探り式鉱石検波に戻せる状態にしてあります。

仮修理したのでテストしてみます。電灯線アンテナとアースを接続します。音は小さいですがNHKが1局受信できました。受信できる周波数は約500~750kHzぐらいでした。マグネチック・レシーバーはクリスタルイヤホンより音が小さく聴こえます。ラジオを聞けるレベルには仮修理できたようです。

このラジオはマグネチック・レシーバーを収納して本体を耳にあてながらチューニングしてラジオ放送を聞くことが出来ます。こんな使い方もあるんだと感心します。ラジオ本体のスピーカー窓は飾りではなく実用的な機能でした。

壊れて鳴らないので骨董的なコレクションとして保管されていたラジオです。取り外した部品(綿編コードとクギ)は大事に保管してあります。いつでも復元できるかと思います。コレクションとして復元しても良いですし、古典鉱石ラジオの雰囲気を味わいながら使ってみるのもいいかと思います。米国でラジオが普及して日常生活に大きな影響を与えた時代の製品の紹介でした。

2025.2.15

壊れた探り式鉱石検波器を修理します。 

探り針の先端を磨いてみますが導通がありません。

しかたなく探り針を取り外してみたところはんだの根本で断線していました。このまま戻してもいいのですが、新しく探り針を作成することにしました。

上の写真は製作した探り針です。真鍮0.5mmなのでオリジナルより太いです。何回か方鉛鉱の上を針で探るとラジオが聞こえてきました。修理はできたようです。ただし、このままだと本体に振動を与えるとすぐに針がズレて検波できなくなります。固定してもその後、継続的に正常のまま保持できるか不安です。固定しないでダイオードと並行して接続しておくことにしました。 探り式でラジオを聞きたい場合は、裏蓋を開けてダイオードの片側を外します。探り式は不安定で固定して無調整にすることは断念しました。今回はオリジナルの状態に戻すのが難しい探り式のラジオ修理でした。