ONKYO Integra T-410DG FM tunerは、1978年頃の定価88000円の製品でクォーツ・デジタル・シンセサイザ方式を採用しています。今回は愛用しているFMチューナーが故障してしまいました。
私がFMチューナーに求めている機能は少し変わっていてFMチューナーにMPX OUT端子を搭載していることを条件にしています。そのため、FMチューナーは背面パネルを重点的に観察してMPX OUT端子の有無を確認する変わった買い方をしています。初期のシンセサイザー・チューナーでMPX OUT端子(T-410DGではDET. OUTと表記されています)を搭載するメーカーはテクニクスとONKYO以外は見つけることができませんでした。バリコン式チューナーの中級クラス以上であればMPX OUT端子を搭載している機種は多数存在します。今時、FM放送による4chステレオ用マルチプレックス出力があっても4ch-FM放送は廃止されていて何に使うのか疑問に思われるかと思います。
ONKYO Integra T-410DGのDET.OUT端子にAD-5(管球式FMマルチプレックス・アダプタ)を接続してFMステレオ放送を楽しんでいるんです。真空管チューナーによるFMステレオ放送を好んで使っている一部のオーディオ・ファンは存在しますが、その中でも変則的な使い方の一員(他にいるかは知りませんが)です。バリコン式チューナーのTRIO KT-5500も使いますが、バリコン式チューナーからシンセサイザー・チューナーのONKYO Integra T-410DGに変えてAD-5を接続して使うと不思議なことに真空管サウンドのFMステレオ放送が少しデジタル臭く感じられますがもっとクリアに聞こえる不思議な音の世界が広がるんです。T-410DGの受信機能だけを使いAD-5でステレオ復調させることを楽しみにしているオーディオ・ファンなんです。
話はかなり脱線したのでもとに戻します。症状:両チャネル出力の音が歪む
FM放送を聞いていると発音の語尾が 不鮮明にモガモガ聞こえるようになってしましました。修理するためにチューナーのボンネットを外すと正面から見て左側が制御で右側がFMチューナーの配置が確認できます。
故障の切り分けですがDET.OUT出力で放送を聞くと正常なので、ステレオ復調~OUTPUTまでの間で故障と判断しました。ステレオ復調にはHA11223Wが搭載されていて、このICからのステレオ出力は正常でした。回路図がないので、ここからは基板のプリント配線を追って調べる根気のいる作業になります。1時間ほどかかりOUTPUTのプリアンプ部の2SC1815,2SC1740(左右で違うトランジスタでした)の入出力で音が歪むことが確認できました。
2つのトランジタを2SC1815へ交換して再度確認しますが、まだ音が歪みます。次に疑わしいのは、このトランジスタとのカップリングコンデンサの無極性(NP)2.2μFかと思います。無極性は使い切って手持ちがないので、やむなく少々大きいですがフィルムコンデンサ1μFで代用として交換しました。基板にはフィルムコンデンサがなんとか収まりました。交換箇所での音を確認して正常になり、OUTPUTでも当然音は正常になりました。
故障修理は終了しましたが、過去にもマランツのチューナーでOUTPUTをドライブするためのトランジスタが故障した経験があり、この部分は外部機器との接続があるため負担がかかるのが要因なのかもしれません。大切に愛用しているONKYO Integra T-410DGは予備機も持っていますが直せて一安心の修理でした。
追記2022.11.29:「比較的新しいFMチューナー(TRIO KTF-5002など)で FM多重放送用の検波出力端子ではAD-5と接続してもステレオ復調はできません」との記述は誤りでした。TRIO AD-5の調整不良が原因でした。AD-5を正しく調整したところFMステレオ放送として正常に復調でき、FM多重放送用のMPX端子も使えることが確認できました。