2023/03/21

TRIO トリオ KT-5000 AM/FMチューナー

 TRIO トリオ KT-5000 AM/FMチューナーの紹介です。1969年頃、39,500円のチューナです。上位機種にKT-7000 61,000円がありクリスタルフィルターやIC採用以外はほぼ同じのチューナーかと思います。トランジスタに移行してから技術が成熟した印象のチューナーです。機能やデザイン面でKT-5000,KT-7000が基本モデルとなり以降の機種に大きく影響を与えています。

背面パネルの様子です。

内部を見るとIF基板やMPX基板はトランジスタによるディスクリートで製作されています。トランジスタでチューナーの各機能を組み上げていますので、基本のモデル機種かと思います。

全ての劣化部品を交換してから電源を入れ動作確認をしてみます。トラッキングが大幅にズレています。KT-5000は調整箇所が多く調整方法がわからず手探りで調整したのだと思います。そのためフロントエンドから順に全て再調整してみました。

 この時点で発見した不具合は、①ダイヤル目盛りのランプ切れ、②ステレオ・ランプ切れ、③ミューティング 動作しないなどの3点を確認しました。ダイヤルスケールのガラス管ヒューズ電球を交換します。ステレオ・ランプは切れているので新しいムギ球と交換します。ステレオ・ランプの調整ではFM放送局を選択してもトランジスタの電圧振れ幅が小さくVRを調整してもランプが点灯したままで消灯ません。3個ほどトランジスタを交換します。交換によりトランジスタの電圧の振れ幅が大きくなりランプが点灯/消灯できるようになりました。

ミューティング・スイッチをON/OFF、VRを調整してもミューティングが動作しません。この回路にはフェアチャイルドの黒く大きなトランジスタが使われています。フェアチャイルドの代替トランジスタは不明です。そのため海外輸出モデルの回路図を参考にしたところ2SA495と記載がありましたので2SA1015で代替してみました。交換によりミューティング回路も動作するようになりました。

修理完了後にヒヤリングしてみます。中音が充実した奥行のある音を聴かせてくれます。最新のチューナーとは違い高域の伸びと抜けの良さはKT-5000では出すことができません。しかし、けして刺激的にならずに優しく包み込むような音楽を聞かせてくれます。アナログ・チューナーの良さを感じられる製品です。昨今のチューナーでは味わえない重厚で品のあるデザインと中央のダイヤルツマミなどの操作感は格別です。ダイヤルスケールの青い文字もいい雰囲気を出しています。いまだに捨てがたい名機TRIO KT-5000が修理で復活しました。

2023/03/05

Victer ビクター AM/FMステレオ・レシーバー CA-G6

Victer ビクター AM/FMステレオ・レシーバー CA-G6の紹介です。メタリック・グレーに色調を統一されたステレオ・セットで、レシーバーの木製カバーもメタリック・グレーに揃えられています。全面パネルはシルバーを基調に黒いダイヤル目盛りなどで若者向けの明るいデザインになっています。

CA-G6は1976年頃のSystem Stereo G-Serise(レコードプレーヤ、レシーバ、スピーカーのセット製品)G6型98,000円のレシーバー部分です。上の写真は当時のカタログになります。

背面パネルには、アンテナ端子、入力端子、スピーカー端子にはRCAタイプを採用しています。このスピーカー端子は今でもAmazonで入手可能です。Phono端子にアースがありません。レコード・プレーヤーからのアース端子だけは付けてほしかったところです。AM用のフェライト・バーは背面ではなく内部に設置されています。元々レコード・プレーヤーを上に重ねて置くことを想定しているためレシーバーの奥行は必要以上に長くなっています。レシーバーはプレーヤー・ラックを兼ねおり、レシーバーカバーの材質は木製で良い音の響きになるように配慮しているのかもしれません。

内部を見ると奥から電源部とパワーアンプ部の基板、中央がチューナー部、手前がコントロール部と配置されています。フェライト・アンテナが内部に配置されているレシーバーはめずらしいです。パワー・トランジスタには2SC1061が採用されています。 内部を見ると機能は落とさずにコスト・ダウン化された製品の様子が伺えます。ダイヤルスケールの照明はダイヤル針のみで電源部のトランスや電解コンデンサは小型、ボリューム類の可変抵抗も小型、プリント基板を固定するシャーシは板ではなく梁構造、底板はパーチクルボードです。例外はAM2連、FM3連バリコン、初段はFETと機能的には上位機種と遜色ないつくりになっているようです。

古い製品なので劣化部品を全て交換します。交換が終わったら機能確認とヒヤリングをします。左右のスピーカーから音はでるようです。しかし、ハイ上がりでひどく歪んだ音がします。 FM放送ではホワイト・ノイズが気になるほど大きな音がします。

更にヒヤリングを重ねると右側のスピーカーの音が歪んでいます。外部入力しても歪むのでパワーアンプ部のようです。初段の2SA672を通ると音が歪むようなので2SA1015に交換します。右側の基板裏側を見ると22kΩの抵抗がエミッタに接続されています。しかし左側の22kΩの抵抗は別の個所に接続されいることに気づきました。製造時に抵抗を誤接続したことがトランジスタの故障原因のようです。トランジスタを交換して抵抗も本来の接続箇所に直しました。これでほぼ歪はなくなったようです。更にパワーアンプ回路の2段目の2SC12132SC1815に交換することで音の透明感は格段にアップするようです。

FM放送のホワイト・ノイズはモノラルでも聞こえることからアンテナから検波までの間のようです。初段のFET 2SK19を2SK192Aに交換してみます。ホワイト・ノイズは低減しましたが驚いたことに音質まで大幅に変化しました。ハイ上がりでキンキンした音でしたが歪みも減り高音寄りですが落ち着いた音質に変わりました。

修理が終了した時点でもこのレシーバーはFMステレオ時のホワイト・ノイズがやや大きいことが気になります。特にクラッシクなどの楽器と楽器の音の狭間でノイズが非常に目立ちます。ロックやポップスを聴いている分にはノイズはあまり気になりません。ノイズに改善の余地があるのかもしれません。このレシーバーはAMの受信性能が特に優れています。弱電界地域でも難なく受信できるのには驚きます。音質は透明感のある高音が特徴の明るい音です。 音作りは若者向けのオーディオ・セットとのして位置づけでしょうか。キラキラしたシールバーのパネル・デザインに通じる音質です。このクラスではレコードやFM放送を聞くのに少し色づけした個性を持たせたほうがスピーカーとの相性が良かったのかもしれません。10万円のステレオ・セットでCA-G6レシーバーは実質3万円を切るぐらいでしょうか。初心者に最適なレシーバー・アンプです。

2023/03/04

SONY ソニー STR-200 FM/AMレシーバー(MU故障)

SONY ソニー STR-200 FM/AMレシーバーの紹介です。1970年頃の製品です。本来は4点セット(レコードプレーヤー、レシーバー、スピーカー×2)59,800円のステレオシステム・イテグレード200として販売されていました。レシーバー本体はSTR-200となります。Sonyの薄型で整ったデザインのレシーバーは今でも人気があります。

背面パネルはいたってシンプルです。アンテナ端子、入力端子、RCAのスピーカー端子が配置されています。この機種にもPhono用のアース端子がありませんでした。

内部をのぞいてみます。配線が少し煩雑です。電源トランスの下はパワートランジスタとヒートシンク、中央左は電源基板、右がチューナー基板になります。

劣化部品は全て交換したのでテストしてみます。左右からFM放送を聞くことができます。しかしステレオ・ランプは点灯しませんのでモノラルのようです。ランプ単体試験では点灯します。チューナー基板中央の大きなW数の抵抗と近くのトランジスタでランプを点灯させているいようです。トランジスタのベース電圧を見ながら選局しても電圧に変化はみられません。MU(マルチプレックス・ユニット)1-425-548-11の不良かもしれません。以前、他のSONY製品から取り外したMUが1個あるので交換してみます。ステレオ・ランプは点灯するようになりましたが点灯したままの状態です。ノイズが混入した影響で点灯したままのようです。

 

上の図にはMU回路図を示します。他機種のサービス・マニュアルから拾ったものです。0.0082μFはマニュアルから抜粋の数値です。0.00978μは故障したMU、0.00993μFは交換した MUの実測値です。後から気づいたのですが、故障したMUのコイルの通電はOKだったので、MUにコンデンサを外付けすれば修理できたかもしれません。

AUXから入力した波形はパワーアンプの出力で正常でした。 FM波へのテスト信号で測定します。左右の正弦波の上下がカットされたような波形でノイズも乗っています。FM回路が不良です。故障が疑わしいのはMU~フロントエンドの間のトランジスタです。フロントエンドの2SK23、2SC170を交換してみます。波形はやや改善しましたがNGです。次にIFTまでの4つのトランジシタ:2SC403を2SC1815に交換します。きれいな正弦波が出力されるようになりノイズも消えました。トランジスタ不良です。ステレオ・ランプも正常に点灯/消灯するようになりました。

独特の透明感があり高音がキラリとするきれいな音質です。FM放送のS/Nは良いです。全体的な量感は薄くパワー不足を感じます。高能率のスピーカーを使うか小音量で使うのが適していると思います。このレシーバーはFM操作時に少し癖があります。FM放送のステレオとモノラルで音量差が大きいです。選局時と選局中の音量差も大きくボリュームを操作する必要があり扱いにくいレシーバーです。レシーバーの価格は約20,000円ぐらいでしょうか。このレシーバーは当時の低価格帯の製品として操作性を犠牲にした音質重視のレシーバーだと思います。