2022/10/09

TRIO トリオ 真空管FMチューナー FM-106(ワイドFMが聴ける)

 

今回は、TRIO トリオ 真空管FMチューナー FM-106の修理です。1960年頃、当時で9100円のFMモノラルチューナーです。上位機種にはFM-105があり基本性能はそのままで低価格化した下位機種になります。今回のチューナーは全面パネルやボンネットにサビや傷もなく良好な状態のものです。FM-106はシグナルメーターもなく2連バリコン の廉価版のイメージがあるせいか人気がないようです。性能はFM-105に近く若干機能を減らした(2連バリコン )だけです。操作感は全く同じですし、安定感がありお気に入りのチューナーのひとつです。

 

 FM-106の受信可能なバンド幅は76MHz~108MHzです。当時のFM放送は76.1MHz~89.9MHzです。90.0MHz~108MHzまではテレビ地上波のch1、ch2、ch3に使われていてテレビの音声を聴くことができました。世界的にはFMバンド幅80MHz~108MHzが多く、日本の76.1MHz~89.9MHzが特殊だったようです。現在ではテレビ地上波は廃止されワイドFM(FM補完放送)90.0MHz~94.9MHzに割り振られています。このFM-106はワイドFMに対応できるところがうれしい機能になります。時代がめぐって本来のバンド幅で利用できるようになったわけです。

 

背面には300Ωのアンテナ端子、MPX 、OUTPUT(モノラル出力)、PU(FM-106をセレクタとして使うための外部入力端子)で構成されています。

 
内部を覗いて見るとシャーシにひどい錆があり外観に比べて内部の状態は良くありません。コストダウンのためなのか2連バリコンを採用しているのが残念なところです。

裏蓋を外して配線内部に損傷がないか入念に確認します。ブロック電解コンデンサが劣化して液漏れしています。真下の抵抗にも液漏れした跡が残っています。それ以外は目視では不良個所はなさそうです。

シャーシをさび止め塗料で再塗装します。

劣化部品を交換してFM-106にはヒューズがないので電源部にヒューズを実装させます。

ここまで修理してからようやく電源試験です。電源を入れるとやや多めですが0.5A流れて安定しました。各箇所の電圧を測定しますが正常のようです。異音や発熱もなくランプも点灯しました。

受信してみますが音がでません。全面のセレクタースイッチ を何度もスライドさせるとたまに音がでます。不安定です。スイッチ は分解して清掃、最後にコンタクトスプレーを綿棒につけて接触面にだけ塗り汚れを落とします。分解修理でスイッチ はスムーズに切替わるようになりました。再度テストします。受信感度は良好です。トラッキングの調整も不要のようです。FM-106のMPXとTRIO FMアダプターAD-5と接続します。FMステレオ放送の音質確認をします。非常にバランスのとれた美しい音がします。当然ですがAD-5とは相性がとてもいいようです。

FM-106は60年以上前のFMチューナーですが修理すると非常に安定した動作をしてくれます。このFM-106などのチューナーでFM波を受信するほうがradikoなどのネットを利用するFM放送より遥かに高品質の音を聴かせてくれます。しかもワイドFMが普及することでFM-106にはもう一度活躍の場がありそうです。この貴重な真空管式FMチューナーがこれから先何十年も生き延びることを願って止みません。

2022/10/06

ゲルマニウム・ラジオ(譲り受けたラジオ)

 

今回は譲り受けた60年ほど前のゲルマニウム・ラジオをご紹介します。上の写真は補修したラジオの様子です。昔、ゲルマニウム・ラジオは安価で小学生のお小遣いでも買うことができました。アンテナを伸ばしたり引っ込めたりするミュー同調方式のゲルマニウム・ラジオを思い出します。このゲルマニウム・ラジオを見てあまりに懐かしいので放置できず補修することにしました。

上の写真が前オーナーが製作されたゲルマニウム・ラジオです。一番に目立つのが、2連バリコンと2本のコイルで、このゲルマ・ラジオの製作に力を入れていたのがよくわかります。2連バリコンは私が子供の頃でも見たことがない高さ8cmほど古い大きなバリコンです。ロータリースイッチも5cmはある大きな部品です。部品は60年前よりもっと古いかと思います。ツマミは固着して外れませんし、木製の前面パネルは割れ、配線も何本か外れていました。再配線して仮試聴してみました。ラジオの電波難民の地域に住んでいるためか電波が拾えません。アンテナ用の電線を10mとアースを接続して、かろうじて電波を受信できましたが何を言っているのかわからない小さな音量でした。

補修するために 回路図を起こし若干手を加えてみました。前製作者には大変申し訳ないと思いましたが、受信感度がわるく音量も小さすぎるため一部変更した回路図です。コイルとバリコンの基本構成はオリジナルのままです。

 

上の写真は、ゲルマニウム・ラジオを載せ替えたあとの様子です。コイルは一部ほどけたので再度まき直しをしました。ゲルマニウム・ダイオードはショットキー・バリア1SS86へ変更しました。シリコンの1SS86を使用したのでゲルマニウム・ラジオ ではなくなり無電源ラジオです。弱電界地域ではしかたありません。また、出力側には音量を上げるためST-30を入れてあります。

取り外した古い部品です。2連バリコンは同じ型のものを譲り受けたので交換しました。また、ロータリースイッチも接触が悪くコンデンサといっしょに交換してあります。

補修後に試聴したところ、受信感度や音量も上がり放送が聞こえてきます。バリコンのツマミとロータリースイッチで一番音量が大きくなるように調整します。これで数局受信できるようになりました。欠点は他局との混信とハンド幅が狭いことです。直す余地はあるかと思います。ゲルマニウム・ラジオは子供の時に何度も買ったり作ったりしたものでした。アンテナのクリップを挟み、イヤホンに耳を澄ましていると昔がよみがえってきます。今でもたくさんの人が製作している気持ちがよくわかります。

ここで話は脱線しますが、Ace AR-205Kは弱電界地域では感度が悪く受信できません。以前からダイオードを交換しようと思っていました。ゲルマニウム・ラジオを直していて思い出したので実行です。50年以上前のラジオ・キットですから、ダイオードを1N60から1SS86へ交換することでオリジナル性が損なわれると考える人もいるかと思います。聞けないラジオを飾っておくだけではもったいと思い交換させてもらいました。

オリジナルのゲルマニウム・ダイオード1N60です。

プリント基板へ1SS86を実装した様子です。
スピーカー左中央部のダイオードを交換しただけです。電源を入れるといままで受信できなかった高い周波数のラジオ局を聴くことができるようになりました。確かに感度が上がったことを実感できます。AR-205Kが復活しました。ただし、ダイオードを交換したことによりラジオ放送の背景にサッーというホワイド・ノイズのような雑音が若干大きくなったような気がします。2石レフレックス・ラジオでスピーカーを鳴らすのですから、受信感度が低くてもしかたありません。しかし、ダイオード1本で改善できるのあれば飾っておくラジオよりはいいと思いました。今回はゲルマニウム・ラジオの修理で子供時代を思い出したラジオ修理でした。

2022/10/01

HITACHI(日立) 真空管FMチューナー UF-1000

 

今回はHITACHI(日立) 真空管FMチューナー UF-1000の修理になります。日立製で小型FM専用チューナーを出しているとは知りませんでした。初めて見るチューナーです。小型FMチューナーとしてはTRIO FM-108や東芝 FMT-100などと競合する製品になるかと思います。1960年~1965年頃の製品とは思いますが年代は不明でした。FM放送をモノラル出力とMPX出力できるチューナーとなっています。

背面はパーチクルボードで300Ωのアンテナ端子と8ピンUSプラグでMPX接続する仕様になっています。日立製のFMアダプターMA-20などを接続してFMステレオ放送を聴くことができます。USプラグからはB電源やヒーターの給電もされているので日立製以外との接続には注意が必要です。

パネルをはずして覗いてみると糸掛けが外れているのがわかります。それ以外に大きなダメージなさそうです。また、右の側面には回路図が残っていました。

シャーシを取り出します。中央に電源トランスを配置し、2連バリコン、6R-HH2×1、6BA6×2 が実装されています。

 
チューナー内部に残されていた大切な定格、糸掛図、回路図です。
裏側の配線です。見た限りでは大きな損傷はみられませんした。
修理を始めます。糸掛けを直そうと思いますがダイヤル針のレールが外れています。原因は金属レールを連結しているネジが破損しているためです。ネジは透明なプラスチック製なので少し強い力が加わって破損したようです。左右の連結ネジを金属製と交換して糸掛けしなおして終了です。
 
内部の劣化部品は全て交換します。上の写真は部品交換後のようすです。
部品交換後に初めて電源を入れて確認します。0.4A流れ変動もありません。各箇所の電圧も測定したところ正常のようです。最後に受信感度やトラッキング調整して修理は終了です。
MPX OUTは背面の8ピンUSプラグを使用します。日立製以外のFMアダプタとの接続にはMPX OUTとして2番、5番に出力します。USプラグにはFMアダプタに給電するB電源やヒーター電圧がかかるピンがあるので注意が必要です。
モノラル出力は正常です。TRIO FMアダプターAD-5と接続してFMステレオ放送をヒヤリングしてみます。ステレオ放送は聞こえますがハム音がのって使用に耐えられません。

STAR MU-34を搭載した自作のFMアダプターと接続してみます。FMステレオ放送にはノイズもなく正常に聞くことができます。日立製以外と接続する場合は相性があるようで要注意です。TRIO AD-5と接続して正常に動作させるにはUF-1000のMPX OUTに抵抗100kΩ程度を並列に入れることで解決しました。実際に100kΩの抵抗を入れてヒヤリングすると動作は安定し、FM放送をすばらしい 音質で聴くことができました。

※2022.12.20追記 TRIO AD-5との接続トラブルは、AD-5の調整不良が原因でした。スキルの低さを痛感します。


2022/09/16

ALPEINE/LUXMAN プリメインアンプ LV-103(隠れた名機)

ALPEINE/LUXMAN プリメインアンプ LV-103は、1985年に79,800円で販売されていた真空管とMOS-FETを搭載したプリメインアンプです。発売当時も気になっていたのですが今日まで見過ごしてしまった製品です。正面から見えるALPEINE/LUXMANの文字の入った真空管(6CG7)が印象的なプリメインアンプです。ジャンク品でしたが昔に戻って、どんなプリメインアンプなのかためしてみたくなり購入しました。

トランスの右横は電源と中央はパワーアンプ、右横はイコライザーのプリント基盤です。手前左側は真空管とその下がシールド板で囲われたTONE回路、手前中央はセレクター関係の基盤になります。

TunerやCDから入力した信号は最初にTONE回路に入ります。オペアンプ4558Dを使ったTONE回路です。TONE回路は単純にIN/OUTで回路をスルーできるTONE INボタンをもっています。音質優先であればTONE INボタンをOFFにします。ただし、ブロック図をみると単純にスイッチでダイレクトに配線でスルーするだけで動作中に切り替えるとノイズが発生します。回路的にどうしても発生してしまう構造です。そのため、ボリュームを絞ってからTONEボタンは操作する必要があります。イコライザー、セレクタ、ボリューム、バランスの順に信号は流れます。パワーアンプの初段にはデュアルFET:2SJ75、プリドライバー(真空管:6CG7)で最終段は2SK405/2SJ115のMOS-FETが採用されています。

まずは電源を投入してみます。保護リレーも正常に動作しましたが片チャネルから音がでません。次にTONE INボタンをOFFにしてTONE回路をスルーしておきます。Tuner端子からテスト信号を入れて回路をトレースして故障個所を探します。真空管:6CG7の出力で片チャネルの音がでていません。真空管を左右入れ替えますが症状はかわりません。真空管の基板不良のようです。LVシリーズに共通する故障で真空管ソケットの端子が錆びてはんだづけ不良になった模様です。再度、はんだづけすればいいのですが、ソケット端子がさびてはんだがうまくのりません。真空管ソケットの端子は金メッキではありませんので、経年劣化によるもので交換が必要です。

そのため、上の写真のようにセラミック製の真空管ソケットに左右ともに交換しました。ソケット交換で左右から正常に音が出てくるようになりました。メーカー純正の真空管ソケットでは端子が劣化して錆びやすいので交換することをおすすめします。

正常に音が出るようになったのでヒヤリングしてみます。製造から35年以上経過しているからでしょうか低音もでないスカスカの音です。とてもLUXMANのアンプの音とは思えません。当時のこのクラスのプリメインアンプは購入時から2~3年はいい音がしますが、その後音質は劣化して購入当初の音はしなくなる経験を何度もしています。LV-103も同様で採用されている部品が安価なため経年劣化で音質も劣化したのだと思います。LV-105などの上位機種になると明らかに高級な部品を採用しているので、現在でもそれなりの音を出してくれます。

そこで電源部の大容量以外の電解コンデンサーを交換してみました。真空管を採用しているためか、通常のアンプでは使わない比較的電圧の高い電解コンデンサーを必要とします。上の写真は電解コンデンサー交換後の姿です。

再度ヒヤリングして本当にびっくりしました。とてもいい音です。それも奥行きのあるとてもいい音です。正直、LV-103がこんなにいい音だとは思いませんでした。テスト用のスピーカーはスピード感がありレンジもそこそこ広く質の高い音がでる様にネットワークを改造してありますが深みのある奥行きを出しにくいタイプです。しかし、しっかりと奥行きのある豊な音楽を聞かせてくれました。これならクラッシックを聴いてもいいと思える仕上がりです。LUXMAN LV-103は隠れた名機だったんですね。

次に試験的にMOS-FET:2SK405/2SJ115を新品と入れ替えてみましたが以外なことに音の変化は感じられませんでした。MOS-FETに経年劣化がなかったのか交換は不要のようです。

TONE回路の改修をしてみます。LV-103のTONE回路を通すとやや曇った印象の音になります。前面パネル左下の一番奥にあるTONE回路を取り出してシールドケースを外してみました。基板にはオペアンプ4558Dが使われていました。このオペアンプ4558Dはバランスの良い音がしますがTONE回路の音質劣化の原因かもしれません。試しにオペアンプをOPA2134に交換してみます。OPA2134に交換した後のヒヤリングではクリアでレンジの広い音になり、TONE回路を入れたことを意識させない音質に変わりました。TONE回路のオペアンプ交換ではアンプ全体の音質を左右するような大きな変化はおこりません。TONE回路を使いたい人にとっては回路を通しても音質が劣化したことがわからない快適な機能がほしだけです。私もそのひとりです。

LV-103はまだまだ触れる箇所があります。LV-103は真空管を配置しているためか全体のゲインが高いように感じます。そのため小音量時のボリュームの可動範囲が狭く調整しにくいところがあり、小音量時では特定箇所でガリがでやすい傾向があります。このアンプもボリュームの特定箇所にガリがあり交換することにしました。

LV-103のボリューム交換で問題になるのがツマミ軸の形状です。ツマミ軸がD型ため該当するボリューム(2連100kΩ、基板実装タイプ、軸がD型)は見つかりません。今回、見つけたボリュームは中央に切れ込みがある差し込み式のツマミ軸のため半分に切断して使用しました。平たい部分の厚みが足りないため銅板を張り付けて軸受けにフィットさせて解決しました。次に問題になったのはボリュームが22ステップのクリック・タイプだったことです。交換したところクリック・タイプだと小音量時の最初の1ステップ目で音が大きすぎて使用に耐えられません。ボリュームと同じ基板上にある抵抗2本を大きな数値にすれば音量を絞ることができそうです。試行錯誤して当初470Ωだった抵抗を500kΩで最終調整しました。小音量時のボリュームの可動範囲が広くなり使いやすくなりました。また、ボリューム交換したことで、余分な音を省いたより透き通った音質になりいい感じの改善になったようです。

最後にフォノ・イコライザー部を改善できないかプリント基板をみてみます。フォノ・イコライザー部にはオペアンプ4558Cが使われていました。レコードを聴くのにオペアンプ4558Cは残念です。これも交換するとレコードの音質に大きく影響すると思います。上の写真は、ICソケットを取り付けてオペアンプOPA2134を搭載した様子です。これでも十分に音質は改善されます。

更にオペアンプの候補として帯域も広くてバランスの良い「しろくま製OPA627」を採用してみました。思った通り、一聴してクリアで帯域の広い豊かな音楽を聞かせてくれます。オペアンプ交換は効果があります。オペアンプ交換はレコードファンの方には恩恵も大きく必要な改修だと思います。

 

LV-103の最初から最後までのほとんどを触ったかと思います。設計が秀逸なのか部品交換でここまで音質が向上するプリメインアンプは初めてです。しかも動作の不安定さは全く感じられませんでした。元々単純なつくりなのでパワーアンプの初段のデュアルFETとドライバーぐらいしか交換するものは残されていません。LV-103は真空管搭載タイプでは最下位グレードですが、部品交換により非常に質の良い音楽を聞かせてくれることがわかりました。LV-103は最初から高いポテンシャルをもっているのに音質を抑えて出荷された製品かと思います。中古で10,000円前後で購入できますので、修理を前提とすれば非常にお買い得のプリメインアンプだと思います。この音質であれば大半の人は十分満足できるはずです。私自身も小型ステレオセットとしてLV-103を常時使用することにしました。今さらながらLUXMANの音作りに感心させられたアンプ修理となりました。

2022/09/12

TRIO トリオ FM-105 真空管FMチューナー(受信レベルが低い)

 

1960年頃のTRIO FM-105 真空管FMチューナー(2台目)の修理です。今回のチューナーは前面パネルのあちこちにサビがあり補修が必要です。ボンネットは比較的きれいな状態なので補修は不要と思います。

背面から見るとシャーシ全体にサビが出始めているので補修が必要かと思います。

ボンネットを取り外すとお約束の埃でいっぱいです。電源トランスの上部カバーにサビがでていますので補修が必要かと思います。
 
内部の配線をみてみましたが、外観上での損傷はみられませんでした。
ブロック電解コンデンサや電解コンデンサは劣化しているので交換します。この頃のTRIO 製品にはヒューズが内蔵されていないので、外観を損ねないリードタイプを付加しました。
シャーシにサビが出ていて真空管型番も読めない状態なので、サビ止め塗料で補修しました。また、電源トランスのカバーも再塗装してみたところ、上の写真のようにきれいに仕上げることができました。

前面パネルはサビが出ていたので研磨してアクリルスプレーでコーティングしてみました。

 

「電源が入りません」とのことで購入した品物です。部品交換後に通電試験をしてみたところ0.4Aの電流が流れ正常のようです。 

FM放送は受信できるようです。しかし、シグナル・メーターの針が1割程度しか振れません。回路図をみますがメーター調整箇所はないようです。この状態でIFT類を調整してみますが、メーターの振れ幅を2割程度に改善させるのがやっとでした。

シグナル・メーターは2割程度の振れですが、音出し試験をしてみます。FMアダプターにはTRIO AD-5を使用しました。ステレオ放送の音の背景にノイズがのっています。

シグナル・メーターの振れの問題は受信レベルが低いことが原因のようです。我が家のFMアンテナの環境は、光TVの有線放送のサービスを利用しているのでアンテナ環境は完璧です。疑わしいのはフロントエンドの6AUQ8の真空管不良です。1段目の6AQ8を交換してみますと、シグナル・メーターの振れが6割~7割程度に改善しました。この状態で再度ヒヤリングしてみます。クリアな音質でノイズもありません。非常にバランスのいいFMステレオ放送を聴くことができます。出来れば6AQ8×2本とも新品に交換したいですが今回はここまでで修理を終わることにしました。

TRIO FM-105は、3連バリコン、フロントエンドが6AQ8×2、検波6AL5、電源6X4などオール真空管で構成された製品です。動作は非常に安定していて不安要素はありません。音質も非常にバランスのとれた美しい音がします。FM-105は完成度が高く私のお気に入りの製品の一つです。毎回修理するたびに真空管FMチューナーは現在のチューナーにはない大きな魅力を秘めた製品だと感じています。