2023/02/06

サンコー電子 SMP-70型(高性能FMマルチプレックス・アダプター・ユニット)

サンコー電子株式会社のSMP-70型(高性能FMマルチプレックス・アダプター・ユニット)の紹介です。50年ぐらい昔に秋葉原のお店でガラスのショーウンドウに並べてありました。当時、AM/FMチューナーを機能ごとにプリント基板化されている箱を見てもサッパリ何に使うのか理解できませんでした。おぼえているのは全ての基板を組み合わせるとAM/FMチューナーが完成するらしいとの事だけです。今回、ご紹介するSMP-70はトランジスタ式のFM-MPXの完成基板になります。最近、サンコー電子の製品はネットでは殆ど見ることはありません。しかも基板、ビス、ランプ、説明書が全てそろった未開封品です。

FMアダプターの製作には、ケース、トランス、スイッチ、電源ランプ、ヒューズホルダー、ラグ板、電解コンデンサ、整流用ダイオード、抵抗などを用意します。ケース、トランス以外は全て手持ちの部品で間に合わせました。

おおまかに部品のレイアウトを決めます。次に穴あけ作業をすれば部品の取り付け作業に進むことができます。

部品の取り付けが終わり配線すれば完成です。ステレオ・ランプは電球からLEDへ変更しました。 電源スイッチをONにすると電源部の出力はDC12Vで正常のようです。早速、FMチューナーのMPX OUTとFMアダプターを接続してみます。FMアダプターの左右の出力にモニターを接続してFMステレオ音声の確認をします。正常にFMステレオがモニターできました。

次にFMチューナー:SONY SA50ES、プリメインアンプ:ALPINE/LUXMAN LV-103のオーディオ装置を使いFM放送を試聴してみます。結果は想定外のNGです。SMP-70の出力回路はトランジスター2SC458で構成されていますが、LV-103をドライブできないようです。音が小さく不明瞭で使用に耐えられません。SMP-70の出力回路はどのオーディオ機器でも使われている一般的な回路です。回路のアースのとりかたなのかわかりません。原因が不明です。

しかたなく、MPX基板から出力回路を取り除いてマトリクスを通ったディエンファシス回路の出力をダイレクトにLV-103へ接続してみました。この結果は音声出力は小さいですが音質は良好でした。 やはり、SMP-70の出力回路に問題があったようです。同じサンコー電子のプリアンプ基板との接続を想定していたため、それ以外の機器との接続はNGなのかもしれません。しかしFMアダプターの出力が小さくアンプのボリュームをかなり上げる必要があることが課題です。

FMアダプターの音声出力を上げるためには出力回路を組みなおす必要があります。今回はSONONIA プリアンプ ne5532の完成品を使用することにしました。Amazonで注文して中国から約12日で品物は到着しました。価格は860円、大きさは36.5mm×35.2mmの超小型で、動作電圧の範囲は広くDC12V~30Vで使用できます。

プリアンプ ne5532を配線経路に沿って出力回路として組み込みます。改良したFMアダプターをLV-103と接続しても前回のような不具合は発生しません。FMアダプターの音声レベルは改善されLV-103でFMステレオ放送を良好に聴くことができます。音質ですがSONY ST-SA50ESより帯域が狭くやや音がこもった印象を受けますが十分良い音です。ようやくトランジスター式のFMアダプターが完成しました。

今回を含め製作したFMアダプターは2台目になります。左が今回のサンコー電子:トランジスター式SMP-70です。右はスター:真空管式MU-34になります。FMアダプターはモノラル真空管チューナーのテスト用として使用する予定です。趣味として管式FMアダプターTRIO AD-5を使っていますがトランジスター式とは音の出方が異なります。双方のアダプターによるFM放送の音質を比べて楽しめるものと期待してます。今回は50年経ってようやく実現したFMアダプターの製作でした。

2024.4.26

SONONIA プリアンプ ne5532は、動作は安定しているのですが帯域が狭く不満に思っていました。そのため、オペアンプ搭載型のプリアンプ基板と交換してみました。


標準搭載のオペアンプはNE5532Pです。高価ではありませんが音質には定評のあるオペアンプです。ソケット付のプリント基板なので、オペアンプのアップグレード可能なところがうれしいところです。

大きさは5㎝×4㎝で、電源12V~35Vで扱いやすい小型プリアンプです。場所がないので、2階建てで設置しました。コネクタ接続なので工作が簡単にできます。ただし、電源用のケーブルが付属していなかったので、手持ちのコネクタと交換して作業を進めました。

作業は30分程度で終了です。SONY SA50ESのチューナーと接続してみます。思ったとおり、こちらのほうが帯域は広く聞こえていい音がします。動作はとても安定していて十分に実用になることがわかります。今後はオペアンプを差し替えて音質をヒヤリングしてみたいと思います。

2023/02/01

Pioneer パイオニア SX-414 FM/AMレシーバー

 Pioneer パイオニア SX-414 FM/AMレシーバーの紹介です。1972年発売、39,800円の製品になります。シルバーメタリックを基調としてダイヤルスケールには黒を背景とした青い照明の文字が印象的で美しいパネルデザインです。フロントバネルの両端は無垢の木材はウッドケースに収納されレシーバーの高級感を引き立てています。SXシリーズの最下位グレードですがシンプルな機能と量感ある音質が魅力のレシーバーです。

背面はアンテナ端子、アンテナバー、スピーカー端子(T型)、RCA入出力端子などが配置されています。

SX-414の後ろ側のプリント基板がチューナー部(AMとFM)、前側のプリント基板がプリアンプとパワーアンプなどになります。1972年のレシーバーですから電解コンデンサは全て交換します。部品交換によりレシーバーの動作は安定して長期の利用ができるようになります。この段階で電源を入れFM放送を聞いてみます。左右から音はでますのでチューナー部、プリアンプ、パワーアンプは正常なようです。一聴してこのレシーバーは音がいいです。しかし、音の出かたが単調でステレオではないようです。後でFMチューナー部の調整します。

次にPhono端子とAUX端子から入力して試験をします。音は正常ですが接触が悪く不安定です。利用頻度が多かったのかピンジャックの中心にあるフォーク状の金物の接触不良が原因でした。そのため上の写真のようにピンジャックを交換しました。

修理は終わり最後にチューナー部の調整をします。受信感度、セパレーション、レベルメーターの振れ幅などを調整します。調整後のレシーバーは本当にいい音がします。上下の帯域のバランスも良好で音に厚みもあります。

音質がいいので更に改善したくなります。電源部の大容量電解コンデンサ2200μFを4700μFに交換します。

交換することで全体の靄が晴れて音の輪郭がハッキリと聴こえてきました。高音の出かたにはまだ少し粗さが感じられます。レシーバーによっては低音が出ない機種が数多くあります。TONE回路やラウドネスを使えば、それなりに低音を出せますが音は不自然になります。SX-414は最初から量感がいっぱいの中音〜低音を聴かせてくれます。この機種の本来持っている音質なのでしょう。ジャンルを選ばずに音楽を楽しむことが出来ます。SX-414は最下位グレードですが完成されたレシーバーアンプです。シンプルな機能と良好な音質を持つお勧めのレシーバーかと思います。

2023/01/14

Victor ビクター JR-S3 FM-AMステレオ・レシーバー

 Victor ビクター JR-S3 FM-AMステレオ・レシーバーの紹介です。1973年発売で52,900円のレシーバーです。大きなダイヤル目盛りと2つのメーター、鮮やかなグリーンに光る文字盤が印象的なパネルです。ガラス奥の黒い文字盤を明るいアルミパネルで囲い、アルミのツマミと大きなトグルスイッチを配置した垢ぬけたデザインです。60年後半のレシーバーにはない陽気で明るい雰囲気を持っています。いかにも音楽を楽しんでくださいと思わせるレシーバーです。更に今回のJR-S3は別売のウッドケースに入り高級感も漂います。

右からアンテナ端子、入力端子、中央の四角いカバーの中はパワートランジスタ:2SA765/2SC1445とヒューズが入っています。左側はスピーカー端子、プリOUT端子とパワーIN端子が配置されていて本格的です。

内部は大きな2つのプリント基板で構成されています。奥の基板は半分が電源回路で残り半分がパワーアンプ回路です。中央はFMとAMのチューナー基板です。大きなフライホイールがありますので小さいアルミのツマミですが適度に重くチューニング感覚は非常に心地いいです。

 手前左から簡単なプリアンプを含むボリュームとマイク回路や各種回路の基板とTONE回路のプリント基板が格納されています。ボリュームとTONE回路はかなり遠く離れたデザイン優先の苦しい配置です。

ヒューズ切れはありませんが、いきなり通電しての試験はしたくありません。まずは劣化部品の交換をします。 

次にボリュームとマイク回路や各種回路のプリント基板の劣化部品は全て交換します。TONE回路の基板では電解コンデンサーの下部が膨らみ劣化が進んでいます。ここの劣化部品もすべて交換しました。

 

ここで初めて通電してみます。ヘッドホンでFM放送を聞いてみます。FMチューナー部は無事のようです。選局・ステレオランプ点灯も正常で放送が聞こえます。ただしRightのみ正常でLeft側は無音です。外部入力から1kHzのテスト信号を入れPRE OUTで確認してみました。上の写真がその波形で正弦波が歪んでいますので入力~PRE OUTまでの回路の故障です。

波形の歪ではモニターによる故障探査は無理なので。テスト信号を入れたままオシロスコープで故障個所を探します。TONE回路を通すと歪みます。 TONE回路の出力段のトランジスタ:2SC458が故障していました。交換でLeft側の音声波形は正常に戻りました。

スピーカーを接続してヒヤリングしてみます。元気で切れのある音を聴かせてくれます。高音の抜けもよく中域から低域までよく出て聞かせるメリハリのある音です。ロックやポップスなどに向いているのかもしれません。カラッとした音でしっとりとした味わいではありません。どの音楽を聴いてもレシーバー特有の音質を感じます。この音はレシーバーのデザインと不思議にマッチしているような気がします。このレシーバーを聴いているとローリング・ストーンズやカリー・サイモンの当時の曲が蘇ってきます。

2023/01/06

NATIONAL ナショナル R-118

NATIONAL ナショナル R-118の紹介です。1964年3900円で販売されていたものです。100mm×65mm×30mmのポケット・ラジオで赤、青、黒の3色が用意されていました。シルバーのスピーカーパネルとキザキザの縁取りがあるゴールドのダイヤルツマミ、縦にシルバーの梨地仕上げの華やかなデザインとなっています。また、ボディーの両側は中央から上下に2mmの落差のある緩やかなカーブで膨らみをもたせ柔らかな雰囲気を醸し出しています。

内部の熱を意識した空気抜きのスリット なのかラジオの音の抜けを良くしたいのか理由は定かではありませんが、ラジオの背面には必ずスリットがあります。そしてここにも懐かしいMADE IN JAPANの文字があります。

前面を横から見ると下から1/3で上下に2mmずつ傾斜しています。 おそらく前面パネルをより立体的にみせたいとのデザイン上の理由と傾斜でダイヤルを2mm前に出すことで操作感を良くしたかったのだと思います。また、全面のシルバーの枠は前面に向かって0.5mmほどでしょうか傾斜させています。裏蓋の相当する赤いボディーは上下左右の側面が背面に向けて2mm傾斜しています。さらに背面も縦にゆるやかなカーブを描いしています。このラジオで直線が使われているのは前面横、上面横、下面横、背面横と前面のスピーカーパネルと梨地仕上げの堺の縦線のみで直線を排除した徹底したつくりのデザインになっています。

 

ポリバリコンは超小型の16mm角でIFTは標準サイズを採用しています。ボリュームのスイッチ機構は接点を上下に動かす今で見たことのない古い方式のものでした。

このラジオを分解するときに一番気をつかうのがダイヤルツマミの取り外しです。プリント基板の赤いネジを外してからダイヤルツマミとポリバリコンの隙間にドライバーを入れて本体を傷つけないようにダイヤルツマミを浮かせて取り外します。

「通電しませんでした」 とのジャンク品を購入しました。電池を入れてスイッチをONにしますが無音です。何もスピーカーから音がしない本当の無音です。故障の切り分けで出力トランスでモニターするとラジオ放送が聞こえてきました。原因はよくある故障でイヤホンジャックの切り替え端子の接触不良でした。1000番以上のサンドペーパーで軽く接点を磨いて固着した汚れをとり、コンタクトスプレーをごく少量塗れば修理は終わりです。ラジオのダイヤルを回して受信してみたところ感度は良好です。低い周波数のラジオ局を選択しているとバリバリと雑音が入ります。しばらくはこのまま使っても大丈夫そうですが、ポリバリコン内部のポリプロピレンの劣化が始まっているようです。それ以外には特に不具合は見られませんでした。

上の写真がラジオを分解した様子です。古いラジオなので分解清掃をします。

R118特有ではありませんがトランジスタの構成に特徴があります。R118のトランジスタの構成を見ると2SA102,2SA101×2、2SB175、2SB176×2となっています。6石ラジオとしてR118以前からR1000番シリーズに至るまで同様のトランジスタ構成が採用されています。当時、6石トランジスタ・ラジオとしてはすでに完成の域にありデザインを変えて販売していたようです。それだけラジオには大きな需要があったということなのでしょう。上の回路図は海外輸出仕様なので電源3V(国内は9V)になっています。国内仕様でも3V~9Vの電圧の違いはありますが同様のトランジスタ構成が採用されていました。

メタリック調のラジオはメカを強調したシャープなデザインになりがちです。R-118 は細やかなデザインへの配慮により優雅な雰囲気さえ漂わせています。現在のラジオにはみられないゆとりと活力がを感じることができるのが昭和のラジオ製品です。

2023/01/04

PIONEER パイオニア SX-70T AM/FMマルチ総合ステレオアンプ(T型プラグの自作)

 

PIONEER パイオニア SX-70T AM/FMマルチ総合ステレオアンプの紹介です。1967年に発売されたトランジスタによるディスクリート設計されたレシーバーです。SX-70Tのデザインを見ていると同じ時期に販売されたプリアンプSC-100、パワーアンプSM-100を思い出します。当時のパイオニアらしさを感じさせる懐かしいデザインです。機能は豊富で必要とする機能は一通り用意されています。スイッチ類はわかりやすく配置してあり使いやすいコンパクトなレシーバーです。

背面はAMアンテナバーとアンテナ端子、各種入力端子 、スピーカー端子はパイオニア独特のT型端子が採用されています。セパレーションコントロールの調整ネジがあるのは珍しいです。

SX-70Tの内部配置はわかりやすく機能ごとに基板化されています。FMフロントエンド、AMバリコン、AM基板、FM IF基板、MPX基板などから構成されています。

本体下部の基板も同様に機能ごとです。電源基板、パワーアンプ基板、プリアンプ基板、イコライザー 基板で構成されています。この製品にはスピーカーの保護回路(リレーやヒューズ)がありませんのでボリュームを絞ってから電源を入れたほうが良いと思います。それでも電源ONの時のPOP音(ボコッやキュ)がスピーカーから漏れてきます。また保護回路がないのでスピーカー端子のショートは故障原因になるので要注意です。

このレシーバーは音がでないジャンク品です。最初の故障診断では電源回路をチェックします。9番端子:12V⇒0V 不良、8番端子:19V⇒12V 電圧が低いようです。9番端子は2SC367の故障です。交換することで9番の電圧が正常になりました。電源基板の電解コンデンサーは全て交換します。8番端子はコンデンサ交換で正常な電圧になりました。

外部入力で音出しの試験をしてみます。左右の音は出るようになりました。しかし音が割れてノイズもありひどい状態です。パワーアンプの入力側をモニターすると正常に聞こえます。ノイズの原因はパワーアンプ基板のトランンジスタのバイアス用電解コンデンサー不良でした。電解コンデンサー劣化しているので全て交換します。

パワーアンプを修理してもプリアンプ出力でまだ少しノイズがあります。プリアンプ基板の電解コンデンサーを全て交換してノイズは解消しました。次にFMの動作を確認します。

FM放送を聞くとステレオ時にノイズがあります。MPX基板の電解コンデンサーを交換しますがノイズが消えません。更にトランジスタを交換してようやくノイズが消えました。しかし、長時間ヒヤリングするとまだ僅かなノイズと時々音が途切れたりします。最後に残ったのはスチロールコンデンサーです。交換してみたところノイズ音は完全に消えました。

しかし、この時点でも長時間試験すると音が出たりでなかったりの不安定な状態は変わりません。MPX基板に原因があることは間違いありません。基板を軽く叩くと音切れが再現しました。原因はMPX出力バランス用の1kΩ半固定抵抗です。昔のワット数の大きな半固定抵抗でスライド接点のカーボン部分が摩耗してカーボンが殆ど残っていません。暫定ですが2本の抵抗に交換して様子をみます。数日間、音出しや電源ON/OFFなど繰り返し試験しましたが不安定な動作が完全になくなりました。音にも影響があり安定感ある音に変わったようです。

50年以上前のトランジスタ・レシーバーは繊細ですから、長期利用を考えると電源のサージ電流を軽減して回路を保護したいと思います。サイリスタを電源トランスの一次側に入れてサージ電流を軽減させることにしました。最後に19kHz同期や受信感度やセパレーション等を調整して修理作業は終了です。

上の写真は交換した部品です。トランジスタ製品の古いレシーバーは交換部品が多くなり修理が大変です。しかし、この部品交換がレシーバーの安定した動作に欠かせない大切な作業になります。

修理したSX-70Tですがスピーカー用T型端子で接続に困った方は多いと思います。製品にT型プラグが偶然ついてくるケースは稀にありますが市販もされていません。

そのため私の場合はT型プラグを自作しています。1個100円程度のACプラグを加工して作成します。ACプラグの端子部分を長さ10mm、幅5mmに加工します。ACプラグの端子は90度根元で捻ってあるのでこれを元に戻して垂直プラグを作成します。もう1本は平行プラグなのでそのまま利用します。垂直プラグではケースのフタができません。プラグの厚み分を削ると完成です。

実際に使ってみると大きさも程よく脱着がしやすくて非常に便利です。パイオニアのT型端子用プラグの自作はおすすめかと思います。

スピーカーを接続してヒヤリングするとバランスの良い音です。キラキラとした華やいだ雰囲気を持っています。低音は出にくいですがトーンコントロールやラウドネススイッチにより好みに合わせて楽しめます。夜、SX-70Tから聴こえるFM放送のジャズが一番似合っています。昭和のビンテージ・オーディオは少しレトロな雰囲気で気持ちが和む空間を提供してくれます。