2023/02/10

Marantz マランツ PM-64AV プリメインアンプ

Marantz マランツ PM-64AV プリメインアンプの紹介です、1989年頃、60,700円の映像端子を搭載したプリメインアンプです。当時のプリメインアンプは50,000円を超えると音が一段良くなると感じています。ただし、2〜3年経つと音質が劣化する製品が多かったです。音質劣化は徐々に進むのでほとんどの人は気づかなで使っています。今回はジャンク品を修理します。修理により当時の新品に近い音を聴けないかと期待しています。

背面パネル

個人的にAV機器は嫌いでオーディオに特化した製品が好みです。PM-64AVは映像も扱いますが、プリメインアンプに映像機能を追加した構造なので好感がもてます。写真を見ると電源トランスと中央のパワーアンプに多くの資源が投入された製品のようです。オーディオ信号はTONE回路をとおりパワーアンプへ流れるシンプルな構成です。映像機能は省いてアンプの充実を図ってほしかったところです。まずは音声系の故障診断をします。ヒューズ切れはありません。焼け焦げたり変色した箇所もありません。試しに電源を入れてみますが異音や異臭もなくヒューズも切れないようです。しかし、スピーカー保護回路が働きスピーカー用リレーが動作しません。

電源回路の電圧は正常、パワーアンプ入口でLRモニターしてOKです。ヘッドホンからの出力はNGです。パワーアンプの前段にあるSTK3062Ⅳの各端子電圧を測るとNGです。プリアンプ相当のIC故障です。このICは取扱う店が少ないのでAmazonChips Gateから購入します。IC×2個で2850円で中国から20日ぐらいで送られてきます。ICが安く買えるので気長に待ちます。ブロック電解コンデンサなどの劣化部品を交換します。次にSTK3062Ⅳをヒートシンクごと取り外してから交換します。

パワーアンプ修理後に電源を入れてみます。電源ONから数秒遅れてスピーカー用リレーがカチリと動作しました。しかし、ヘッドホンやスピーカーの左右から音がでません。PM-64AVのリレー回路は複雑でヘッドホン用リレーを通してからスピーカーA.Bのリレーに接続されています。スピーカー用リレーは動作しますのでヘッドホン用の緑色のリードリレー日立L24が故障しているようです。

リードリレー日立L24ははるか昔の廃品種で入手できません。代替品として富士通リレーRY5W-K(24V)を組み込んでみました。リレーは動作してヘッドホンからは音がでるようになりました。しかし、スピーカー用リレーが動作しなくなり結果はNGです。

富士通リレーRY5W-K(24V)を入れると保護回路用IC:TA7317Pではスピーカー用リレーを駆動できないようです。交換したリレーRY5W-Kに電流が流れ過ぎるのか内部抵抗が大きく電圧が低下するのかが原因と思われます。交換したリレーRY5W-Kを取り外すとスピーカー用リレーが動作します。手持ちのリレーでは不具合が発生したので残念です。リレーは外して接点間を赤、黒のジャンパーで直接接続します。これによりスピーカー用リレーも動作してスピーカーから正常に音がでるようになりました。この方法の欠点はヘッドホン用リレーがないため電源ON時にヘッドホンからポップ音が入ることです。修理が残っている映像系は使用しませんので機能確認もせずに残置としました。

音質は奥行や量感もあり締まった低音が気持ちいいです。高音は上まで延びていて透明感もあります。音量を上げても余裕のあるパワーが良い感じです。音楽ソースの良し悪しがハッキリわかります。音色はアンプ自身の色付けするタイプではなく原音に忠実なタイプのアンプなのかもしれません。AVアンプだからと侮れません。PM-64AVは質の高い音がするプリメインアンプです。

2023/02/06

サンコー電子 SMP-70型(高性能FMマルチプレックス・アダプター・ユニット)

サンコー電子株式会社のSMP-70型(高性能FMマルチプレックス・アダプター・ユニット)の紹介です。50年ぐらい昔に秋葉原のお店でガラスのショーウンドウに並べてありました。当時、AM/FMチューナーを機能ごとにプリント基板化されている箱を見てもサッパリ何に使うのか理解できませんでした。おぼえているのは全ての基板を組み合わせるとAM/FMチューナーが完成するらしいとの事だけです。今回、ご紹介するSMP-70はトランジスタ式のFM-MPXの完成基板になります。最近、サンコー電子の製品はネットでは殆ど見ることはありません。しかも基板、ビス、ランプ、説明書が全てそろった未開封品です。

FMアダプターの製作には、ケース、トランス、スイッチ、電源ランプ、ヒューズホルダー、ラグ板、電解コンデンサ、整流用ダイオード、抵抗などを用意します。ケース、トランス以外は全て手持ちの部品で間に合わせました。

おおまかに部品のレイアウトを決めます。次に穴あけ作業をすれば部品の取り付け作業に進むことができます。

部品の取り付けが終わり配線すれば完成です。ステレオ・ランプは電球からLEDへ変更しました。 電源スイッチをONにすると電源部の出力はDC12Vで正常のようです。早速、FMチューナーのMPX OUTとFMアダプターを接続してみます。FMアダプターの左右の出力にモニターを接続してFMステレオ音声の確認をします。正常にFMステレオがモニターできました。

次にFMチューナー:SONY SA50ES、プリメインアンプ:ALPINE/LUXMAN LV-103のオーディオ装置を使いFM放送を試聴してみます。結果は想定外のNGです。SMP-70の出力回路はトランジスター2SC458で構成されていますが、LV-103をドライブできないようです。音が小さく不明瞭で使用に耐えられません。SMP-70の出力回路はどのオーディオ機器でも使われている一般的な回路です。回路のアースのとりかたなのかわかりません。原因が不明です。

しかたなく、MPX基板から出力回路を取り除いてマトリクスを通ったディエンファシス回路の出力をダイレクトにLV-103へ接続してみました。この結果は音声出力は小さいですが音質は良好でした。 やはり、SMP-70の出力回路に問題があったようです。同じサンコー電子のプリアンプ基板との接続を想定していたため、それ以外の機器との接続はNGなのかもしれません。しかしFMアダプターの出力が小さくアンプのボリュームをかなり上げる必要があることが課題です。

FMアダプターの音声出力を上げるためには出力回路を組みなおす必要があります。今回はSONONIA プリアンプ ne5532の完成品を使用することにしました。Amazonで注文して中国から約12日で品物は到着しました。価格は860円、大きさは36.5mm×35.2mmの超小型で、動作電圧の範囲は広くDC12V~30Vで使用できます。

プリアンプ ne5532を配線経路に沿って出力回路として組み込みます。改良したFMアダプターをLV-103と接続しても前回のような不具合は発生しません。FMアダプターの音声レベルは改善されLV-103でFMステレオ放送を良好に聴くことができます。音質ですがSONY ST-SA50ESより帯域が狭くやや音がこもった印象を受けますが十分良い音です。ようやくトランジスター式のFMアダプターが完成しました。

今回を含め製作したFMアダプターは2台目になります。左が今回のサンコー電子:トランジスター式SMP-70です。右はスター:真空管式MU-34になります。FMアダプターはモノラル真空管チューナーのテスト用として使用する予定です。趣味として管式FMアダプターTRIO AD-5を使っていますがトランジスター式とは音の出方が異なります。双方のアダプターによるFM放送の音質を比べて楽しめるものと期待してます。今回は50年経ってようやく実現したFMアダプターの製作でした。

2024.4.26

SONONIA プリアンプ ne5532は、動作は安定しているのですが帯域が狭く不満に思っていました。そのため、オペアンプ搭載型のプリアンプ基板と交換してみました。


標準搭載のオペアンプはNE5532Pです。高価ではありませんが音質には定評のあるオペアンプです。ソケット付のプリント基板なので、オペアンプのアップグレード可能なところがうれしいところです。

大きさは5㎝×4㎝で、電源12V~35Vで扱いやすい小型プリアンプです。場所がないので、2階建てで設置しました。コネクタ接続なので工作が簡単にできます。ただし、電源用のケーブルが付属していなかったので、手持ちのコネクタと交換して作業を進めました。

作業は30分程度で終了です。SONY SA50ESのチューナーと接続してみます。思ったとおり、こちらのほうが帯域は広く聞こえていい音がします。動作はとても安定していて十分に実用になることがわかります。今後はオペアンプを差し替えて音質をヒヤリングしてみたいと思います。

2023/02/01

Pioneer パイオニア SX-414 FM/AMレシーバー

 Pioneer パイオニア SX-414 FM/AMレシーバーの紹介です。1972年発売、39,800円の製品になります。シルバーメタリックを基調としてダイヤルスケールには黒を背景とした青い照明の文字が印象的で美しいパネルデザインです。フロントバネルの両端は無垢の木材はウッドケースに収納されレシーバーの高級感を引き立てています。SXシリーズの最下位グレードですがシンプルな機能と量感ある音質が魅力のレシーバーです。

背面はアンテナ端子、アンテナバー、スピーカー端子(T型)、RCA入出力端子などが配置されています。

SX-414の後ろ側のプリント基板がチューナー部(AMとFM)、前側のプリント基板がプリアンプとパワーアンプなどになります。1972年のレシーバーですから電解コンデンサは全て交換します。部品交換によりレシーバーの動作は安定して長期の利用ができるようになります。この段階で電源を入れFM放送を聞いてみます。左右から音はでますのでチューナー部、プリアンプ、パワーアンプは正常なようです。一聴してこのレシーバーは音がいいです。しかし、音の出かたが単調でステレオではないようです。後でFMチューナー部の調整します。

次にPhono端子とAUX端子から入力して試験をします。音は正常ですが接触が悪く不安定です。利用頻度が多かったのかピンジャックの中心にあるフォーク状の金物の接触不良が原因でした。そのため上の写真のようにピンジャックを交換しました。

修理は終わり最後にチューナー部の調整をします。受信感度、セパレーション、レベルメーターの振れ幅などを調整します。調整後のレシーバーは本当にいい音がします。上下の帯域のバランスも良好で音に厚みもあります。

音質がいいので更に改善したくなります。電源部の大容量電解コンデンサ2200μFを4700μFに交換します。

交換することで全体の靄が晴れて音の輪郭がハッキリと聴こえてきました。高音の出かたにはまだ少し粗さが感じられます。レシーバーによっては低音が出ない機種が数多くあります。TONE回路やラウドネスを使えば、それなりに低音を出せますが音は不自然になります。SX-414は最初から量感がいっぱいの中音〜低音を聴かせてくれます。この機種の本来持っている音質なのでしょう。ジャンルを選ばずに音楽を楽しむことが出来ます。SX-414は最下位グレードですが完成されたレシーバーアンプです。シンプルな機能と良好な音質を持つお勧めのレシーバーかと思います。

2023/01/14

Victor ビクター JR-S3 FM-AMステレオ・レシーバー

 Victor ビクター JR-S3 FM-AMステレオ・レシーバーの紹介です。1973年発売で52,900円のレシーバーです。大きなダイヤル目盛りと2つのメーター、鮮やかなグリーンに光る文字盤が印象的なパネルです。ガラス奥の黒い文字盤を明るいアルミパネルで囲い、アルミのツマミと大きなトグルスイッチを配置した垢ぬけたデザインです。60年後半のレシーバーにはない陽気で明るい雰囲気を持っています。いかにも音楽を楽しんでくださいと思わせるレシーバーです。更に今回のJR-S3は別売のウッドケースに入り高級感も漂います。

右からアンテナ端子、入力端子、中央の四角いカバーの中はパワートランジスタ:2SA765/2SC1445とヒューズが入っています。左側はスピーカー端子、プリOUT端子とパワーIN端子が配置されていて本格的です。

内部は大きな2つのプリント基板で構成されています。奥の基板は半分が電源回路で残り半分がパワーアンプ回路です。中央はFMとAMのチューナー基板です。大きなフライホイールがありますので小さいアルミのツマミですが適度に重くチューニング感覚は非常に心地いいです。

 手前左から簡単なプリアンプを含むボリュームとマイク回路や各種回路の基板とTONE回路のプリント基板が格納されています。ボリュームとTONE回路はかなり遠く離れたデザイン優先の苦しい配置です。

ヒューズ切れはありませんが、いきなり通電しての試験はしたくありません。まずは劣化部品の交換をします。 

次にボリュームとマイク回路や各種回路のプリント基板の劣化部品は全て交換します。TONE回路の基板では電解コンデンサーの下部が膨らみ劣化が進んでいます。ここの劣化部品もすべて交換しました。

 

ここで初めて通電してみます。ヘッドホンでFM放送を聞いてみます。FMチューナー部は無事のようです。選局・ステレオランプ点灯も正常で放送が聞こえます。ただしRightのみ正常でLeft側は無音です。外部入力から1kHzのテスト信号を入れPRE OUTで確認してみました。上の写真がその波形で正弦波が歪んでいますので入力~PRE OUTまでの回路の故障です。

波形の歪ではモニターによる故障探査は無理なので。テスト信号を入れたままオシロスコープで故障個所を探します。TONE回路を通すと歪みます。 TONE回路の出力段のトランジスタ:2SC458が故障していました。交換でLeft側の音声波形は正常に戻りました。

スピーカーを接続してヒヤリングしてみます。元気で切れのある音を聴かせてくれます。高音の抜けもよく中域から低域までよく出て聞かせるメリハリのある音です。ロックやポップスなどに向いているのかもしれません。カラッとした音でしっとりとした味わいではありません。どの音楽を聴いてもレシーバー特有の音質を感じます。この音はレシーバーのデザインと不思議にマッチしているような気がします。このレシーバーを聴いているとローリング・ストーンズやカリー・サイモンの当時の曲が蘇ってきます。

2023/01/06

NATIONAL ナショナル R-118

NATIONAL ナショナル R-118の紹介です。1964年3900円で販売されていたものです。100mm×65mm×30mmのポケット・ラジオで赤、青、黒の3色が用意されていました。シルバーのスピーカーパネルとキザキザの縁取りがあるゴールドのダイヤルツマミ、縦にシルバーの梨地仕上げの華やかなデザインとなっています。また、ボディーの両側は中央から上下に2mmの落差のある緩やかなカーブで膨らみをもたせ柔らかな雰囲気を醸し出しています。

内部の熱を意識した空気抜きのスリット なのかラジオの音の抜けを良くしたいのか理由は定かではありませんが、ラジオの背面には必ずスリットがあります。そしてここにも懐かしいMADE IN JAPANの文字があります。

前面を横から見ると下から1/3で上下に2mmずつ傾斜しています。 おそらく前面パネルをより立体的にみせたいとのデザイン上の理由と傾斜でダイヤルを2mm前に出すことで操作感を良くしたかったのだと思います。また、全面のシルバーの枠は前面に向かって0.5mmほどでしょうか傾斜させています。裏蓋の相当する赤いボディーは上下左右の側面が背面に向けて2mm傾斜しています。さらに背面も縦にゆるやかなカーブを描いしています。このラジオで直線が使われているのは前面横、上面横、下面横、背面横と前面のスピーカーパネルと梨地仕上げの堺の縦線のみで直線を排除した徹底したつくりのデザインになっています。

 

ポリバリコンは超小型の16mm角でIFTは標準サイズを採用しています。ボリュームのスイッチ機構は接点を上下に動かす今で見たことのない古い方式のものでした。

このラジオを分解するときに一番気をつかうのがダイヤルツマミの取り外しです。プリント基板の赤いネジを外してからダイヤルツマミとポリバリコンの隙間にドライバーを入れて本体を傷つけないようにダイヤルツマミを浮かせて取り外します。

「通電しませんでした」 とのジャンク品を購入しました。電池を入れてスイッチをONにしますが無音です。何もスピーカーから音がしない本当の無音です。故障の切り分けで出力トランスでモニターするとラジオ放送が聞こえてきました。原因はよくある故障でイヤホンジャックの切り替え端子の接触不良でした。1000番以上のサンドペーパーで軽く接点を磨いて固着した汚れをとり、コンタクトスプレーをごく少量塗れば修理は終わりです。ラジオのダイヤルを回して受信してみたところ感度は良好です。低い周波数のラジオ局を選択しているとバリバリと雑音が入ります。しばらくはこのまま使っても大丈夫そうですが、ポリバリコン内部のポリプロピレンの劣化が始まっているようです。それ以外には特に不具合は見られませんでした。

上の写真がラジオを分解した様子です。古いラジオなので分解清掃をします。

R118特有ではありませんがトランジスタの構成に特徴があります。R118のトランジスタの構成を見ると2SA102,2SA101×2、2SB175、2SB176×2となっています。6石ラジオとしてR118以前からR1000番シリーズに至るまで同様のトランジスタ構成が採用されています。当時、6石トランジスタ・ラジオとしてはすでに完成の域にありデザインを変えて販売していたようです。それだけラジオには大きな需要があったということなのでしょう。上の回路図は海外輸出仕様なので電源3V(国内は9V)になっています。国内仕様でも3V~9Vの電圧の違いはありますが同様のトランジスタ構成が採用されていました。

メタリック調のラジオはメカを強調したシャープなデザインになりがちです。R-118 は細やかなデザインへの配慮により優雅な雰囲気さえ漂わせています。現在のラジオにはみられないゆとりと活力がを感じることができるのが昭和のラジオ製品です。