2023/09/28

LEADER LSG-231 FMシグナル・ジェネレーター

 LEADER LSG-231 FMシグナル・ジェネレーターの紹介です。1970年頃の製品になります。ご存じのようにFMシグナル・ジェネレーターはFMのセパレーションを測定するための装置です。最新のセパレーションメーターより安価で操作も簡単なためLSG-231を愛用しています。ネットでたまにしか見かけませんが、予備機として購入することができました。

パイロット信号:19kHz
コンポジット信号

製造が1970年なので故障して使用できるとは思えません。まずは機能を確認します。1KHz出力:OK,19KHz出力:OK、コンポジット信号:OKです。ここまでの機能確認は順調です。

FM RF出力をチューナーに接続します。 チューナーは88MHzに合わせます。しかし、選局してもStereoランプが点灯しません。オシロスコープではなんとかLR出力の正弦波が観測できます。アナライザーでは1KHzが弱く左右分離もしない状態です。パイロット信号19kHzも微弱です。そしてLSG-231の動作が不安定で、Rチャネルの1KHzが出力しなくなりました。LSG-231は故障していて全く使い物になりません。

修理できるか不明ですが内部を覗いてみます。大きな損傷は見られません。ただし、半数の電解コンデンサーに劣化の痕跡がみられます。最初にできることは劣化部品を全て交換することです。1時間ほどで部品交換は終了です。電源を入れます。修理前は0.5Aほどでしたが0.6A流れます。なぜか僅かに電流が増えました。

再度、LSG-231のRF出力をチューナーに接続て試験をします。1KHz出力:OK、19KHzのON/OFF:StereoランプOK、セパレーション:LRともOKです。ここまでの機能は正常です。幸いなことに半導体などの故障はなかった模様です。(注:正常とは書きましたが測定器の機能ブロックを様々な規格に合わせて調整した訳ではありません。波形出力が確認できたとの意味です。)

ただし、1KHz出力が1020Hzと周波数がズレてしまいました。回路図を見てオペアンプに接続するVR302を調整しますが1KHzに調整すると発振しなくなります。周辺部品の乗数を変える必要があるようです。測定には特段の支障はないので1020Hzのまま使用することにします。

翌日、LSG-231とチューナーを接続したところ、チューナーのStereoランプが点灯しません。19k Hzは正常に出力していることからRF ON/OFFスイッチ周辺の回路が故障のようです。

回路図を見るとRF ON/OFFスイッチは電源回路に接続されています。電圧変動による動作不良かもしれません。電源ONにしたばかりの時点では1.8kΩで17V(回路図の中央赤丸)の電圧です。Stereoランプが不点灯です。10分程度経つと17.3Vまで微増してStereoランプが点灯します。この状態ではVR001で電圧を上げても下げてもランプが消灯します。RF回路が動作できる電圧範囲に調整できていないことが原因の様です。

電源ONしてすぐの状態ではVR001で電圧調整しますが一杯まで回してあり電圧はこれ以上あげられません。VR001を470Ωから500Ωに交換してみます。最初に電圧を調整してStereoランプが点灯するように調整します。10~20分すると電圧が変動してStereoランプが消灯します。測定器が温まった状態で再度調整してStereoランプが点灯するように調整します。1日程度、Stereoランプが消灯しないか様子をみてもOKでした。翌日、電源を入れると10~20分程度でチューナーのStereoランプが点灯して安定します。毎回、使用前に10~20分程度電源を入れ動作を安定させる必要があります。

これでLSG-231の修理は終了です。LSG-231を購入されるときは修理が前提となりますので注意が必要です。LSG-231はFMチューナーの調整には欠かせない測定器です。自作や修理するために1台は持っておきたい製品かと思います。

 追記:秋月電子のFMステレオ・トランスミッター・キット

以前、ネットでFMトランミッターを使いセパレーションを測定した記事を読んだのを思いだしました。頭のいい人がいるものだと感心したのを覚えています。その記事では秋月電子のFMステレオ・トランスミッター・キットを使っています。面白そうなので数年前に購入してみました。

FMトランスミッター・キットとACアダプターを購入(約6000円)、100円ショップのプラケースに収めています。このFMトランスミッターの入力レベルを最大になるようにジャンパーを設定します。FM出力が弱いのでアンテナには同軸をつなぎTV用のRFコネクタを付けます。FMチューナーのRF端子に直接、トランスミッターを接続するためです。

実際にFMトランスミッターをSONY ST-SA50ESに接続してみます。87.5MHz、信号レベルは60dBで受信することができます。たしかにステレオ・ランプも点灯しますのでパイロット信号も送信できているようです。家では光TVから同軸でFM放送を受信しています。その受信レベルは60dBでFMトランスミッターとほぼ同じでした。

 LchとRchに1kHz信号

 Lchのみに1kHz信号

セパレーションを測定するために発振器の1kHz信号を FMトランスミッターのステレオ・ジャックへ入力します。FMチューナーの出力をスペアナで観測すると、1kHzと19kHz(パイロット信号)を見ることができます。この状態でLまたはRの1kHzを切断したLとRの差分レベルがセパレーションになります。このFMトランスミッター自身のセパレーションは35dBです。そのためFMチューナーのセパレーションは35dBまでしか測定できないことになります。真空管チューナーを修理している私には十分な性能です。本当に測定できるのがすごいです。LSG-231には1kHzの発振器が内蔵されていて操作性はいいですが、性能面で比較すればLSG-231と遜色なさそうで参ります。興味がある方はキットを購入して試してみる価値はあるかと思います。

2023/09/04

SONY ソニー CF-1300 FM/AM カセット・テープ・レコーダー

SONY ソニー CF-1300 FM/AM カセット・テープ・レコーダー ”マイク イン チック1300”の紹介です。1970年、27,800円の製品です。SONY初のラジカセCFM-812から6ケ月遅れで発売された横置きのラジカセになります。当時のカセット・デッキは横置きが常識だったのを思い出しました。SONYの型番でCFと聞くと懐かしさがこみあげてきます。数々の名機を送り出したCFシリーズです。 

 
キャリング・ハンドルが引き出せて持ち運びに便利です。そのまま、縦置きに保管することもできます。
 

本体の劣化は少ないですが、全体的に少しずつ劣化しています。最初に本体カバーを水洗いして埃を取ります。次に故障個所の確認です。ロッド・アンテナの先端なし、アンテナホールド破損しています。FM/AMの切り替えスイッチ接触不良、ボリュームのガリあり、テープレコーダー走行NGです。
まずは逆さまにして裏蓋を外します。

プリント基板やレコーダーのネジを外し、最後にスピーカーとマイクを取り外します。
カセット・レコーダーのゴムベルトを張り替えます。フライホイールを支える金物は真横のネジ2本で外すことができます。その他、電解コンデンサなどの劣化はみられませんので部品交換は不要です。
 次にラジオのFM/AMスイッチ、ボリュームの接触不良をコンタクト・スプレーをごく少量噴霧します。これで簡単に治ります。ラジオ基板は外側に露出しているのでトラッキング調整がしやすいです。
アンテナの先端は他のアンテナより移植しました。アンテナホールド破損はプラリペアで修理してみましたが短時間で再度破損したため、このままにします。

全体の動作を確認します。AM/FMのトラッキングもOKです。ボリュームやスイッチの接触不良もありません。カセット・テープのテストでは、アジマス調整が狂ったのか再生中にカセット位置をずらすと音が大きく再生できます。回転ムラを感じません。当時のカセットは横置きが安定していることを改めて実感します。テープ走行については、再生、早送り、巻き戻しなど力強く正常に回転します。モーターはいまだに健在のようです。しかしカセットは使いませんので未調整とします。
CF-1300はラジオとカセットを融合させていますが、すでに基本機能が完成された製品となっています。ソニーらしい斬新でスタイリッシュなデザインが心を引きます。CF-1300は製品開発のマイルストーン的な位置づけなのかもしれません。今でもデザインや操作性には何の違和感もなく快適です。CF-1300はラジカセが急速に進化してゆく70年代の予兆を感じさせる製品です。

2023/09/03

SANSUI サンスイ PM-880 真空管3バンド・レシーバー

SANSUI サンスイ PM-880 真空管3バンド・レシーバーの紹介です。1960年頃のモノラル・レシーバーになります。個人的に所有してFMモノラル・オーディオを 楽しんでいたレシーバーです。先日、FM放送を聞いていたら突然死です。全く音がでなくなりました。そのため、久しぶりに修理することになりました。

カバーを外すと真空管が13本あります。一番奥が出力段の6BQ5×2本で、意外といい音を聴かせてくれます。

内部を覗くと電源トランスの漢字で”山水”の文字が目に入ります。電解コンデンサーなどに劣化の兆候がみられます。抵抗も変色して過電流の兆候がみられます。

回路図は上蓋の裏にあります。少し煤けていますが十分に読み取れそうです。写真を撮り拡大すれば修理に役立ちます。

各電圧を測ると電源回路からつながる抵抗500Ωからチューナー部への電圧が出ていません。上の写真右下の白いセメント抵抗500Ωが断線しています。 各箇所の電解コンデンサーなどが全般的に劣化して過電流が流れたようです。

劣化部品は全て交換することにました。交換後に電源を入れると消費電流は約1.0Aで正常のようです。

スピーカー1本を接続して試験をします。3バンドですがFM以外のMW、SWは使いません。FMだけヒヤリングします。モノラルは違和感のないボーカルが魅力です。意外とキレのある音を聴かせてくれます。私はモノラル・オーディオに安定感のある音を求めています。 基本はスピーカー1本が好みです。スピーカーは大きなものが良いですが、小型スピーカーであればONKYO D-202A以上のものが良いと思います。テスト用のYAMAHA NS-10MMTの超小型2way・スピーカー(世間の評価が低いスピーカーです)ですら、FM放送を楽しく聞かせてくれます。本来であればモノラル録音されたレコードをPM-880で鳴らせば理想的なのかもしれません。モノラル・オーディオは忘れ去れたジャンルなのかもしれません。PM-880は今でも十分通用する音質をもったレシーバーだと思います。

2023/08/13

Columbia コロンビア TFC-140 トランジスタ ホームラジオ

  

Columbia コロンビア TFC-140 トランジスタ ホームラジオの紹介です。 1967年頃のトランジスタ式のホームラジオです。家具調の優雅なデザインのラジオです。60年代のホームラジオは作りに手間暇をかけてあるので好感がもてます。
 
背面はパーチクルボードでFMアンテナ端子と外部入力端子が設けてあります。
内部を見てみます。AC100Vと乾電池の2電源方式です。乾電池の受け金具のサビがひどく補修できそうにないので取り外します。ホコリもすごいので水洗いしましたがびくともしない丈夫な木製の作りです。
スピーカーネットは汚れて色むらで洗ってもきれいになりません。枠ごと取り外してサランネットを張り替えます。サランネットは黒にしたので締まったデザインのラジオになりました。
電源を入れてもラジオは受信できませんので、劣化部品は全て交換してみます。交換後、電源を入れてみます。AM,FMともにラジオは受信できるようになりましたが、ボリュームのガリがひどい爆音で使用に耐えられません。スイッチ付き5kΩの可変抵抗を交換します。手持ちの可変抵抗と交換しましたが、軸が短くカップラーで延長し、ボリュームツマミの軸受けを少し切断して高さを調整しました。
ダイヤル糸も切れています。ダイヤルスケールの背面パネルを取り外して張り直しをします。また、ダイヤルスケールのランプ切れのため12V麦球を交換します。
ここまでの修理でようやく調整することができます。
AM,FMともに受信感度の調整をします。
FMのトラッキングが大幅にずれています。フロントエンドがラジオ本体に水平のプリント基板のため、いちいちプリント基板全体を取り外さないと調整できません。ダイヤルスケールを見ながらの調整はできない構造です。時間はかかりましたがトラッキングも無事調整できました。

AMの受信性能は良く快適に受信できます。FMはアンテナ接続しましたが、やや受信性能は低いように感じます。電源OFFの操作時にプッと大きなポップ音ができるのが気になります。ラジオの音量には余裕がありゆったりとしたおちついた音です。ランプの点灯で夜はいい雰囲気が味わえます。60年代のトランジスタ製の木製ホームラジオは珍しく、作りもデザインもいいので大切に使ってほしいと思います。

2023/08/03

GE ジェネラル・エレクトリック P1700AとP1704B ラジオ(マグネチックスピーカー)

 

GE ジェネラル・エレクトリック P1700AP1704B ポケット・ラジオの紹介です。 1960年後半では珍しいマグネチックスピーカーを搭載した独特の音色のラジオです。AM放送の特性にあわせて、あえて低スペックのマグネチックスピーカーを搭載しているところが素晴らしいです。上の写真は左がP1700A,右がP1704Bです。写真ではわかりにくいですが、ラジオを手に取ってみると76×121×38mmのサイズは当時の国産ポケットラジオと比べてやや大きく分厚く感じるアメリカサイズです。

背面はスリットとイヤホン端子が見えます。

背面パネルにP1700A、P1701Aの型番シールが見えますが、このラジオケースの色からP1700Aと判別できます。P1700Aは1966年頃の製品となります。トランジスタがメタキャンが使われていますのでP1704Bより古いトランジスタ・ラジオであることがわかります。

 
上の写真はP1704Bです。黒く丸い樹脂の トランジスタに置き換わっていることから、P1700Aから2-3年後(1968-69年頃)の製品かと思われます。トランジスタの配置も数か所違うことから、P1700Aからやや異なる回路構成となっているようです。
 P1700Aの拡大写真です。IFTなどは日本製です。中央のスピーカーマグネットの四角い形状からマグネッチック・スピーカーが採用されていることがわかります。
P1704Bの拡大写真です。同じく日本製IFTとマグネチック・スピーカーが採用されています。
ケースからプリント基板を取り外してみます。スピーカーのセンターキャップが小さく、マグネチック・スピーカーの特徴を見ることができます。

コの字型のマグネットと中央にある振動版から振動棒がコーンに接続されています。

真横から見た状態です。

 

マグネチック・スピーカーは高インピーダンスのためトランジスタ直結でスピーカーを駆動することができます。GE P1700A,P1704Bでは上の図のようにプシュプル回路との直結でスピーカーを動作させています。


1960年後半にもかかわらずGEだけはマグネチックスピーカーを採用しています。マグネチックスピーカーは大音量ではひずみがでる構造のため、小音量のラジオには適しています。また、実際に聴いてみるとわかるのですが、再生できる周波数帯域も狭いのが幸いしてかノイズが聞こえにくいラジオです。更に低音がでない高音寄りの音質のため、英語の発音が聞き取りやすかったのではと思います。どのような理由にしても、GEはマグネチックスピーカーに優位性があると思い採用しています。P1700AとP1704BにGEが時代遅れのマグネチックスピーカーを採用したことで、他にはないユニークな特徴を持ったポケットラジオとしています。マグネチックスピーカーの音色は独特です。60年代の日本製ポケットラジオでは聞けない音です。GEのラジオを聴くたびに1930年頃の当時の音が聞こえる様な気がします。