2024/04/29

PIONEER パイオニア SA-80 プリメインアンプ

PIONEER パイオニア SA-80 プリメインアンプの紹介です。1971年、56,000円の製品になります。オーソドックスですが使いやすいツマミとスイッチの配置です。おちついたデザイン(渋いデザイン)の印象と音質の印象とにギャップを感じます。

背面パネルの様子です。この頃のアンプのスピーカー端子にはT型が採用されています。左側の空洞には、MCカートリッジ用トランスを実装できる本格派です。個人的にはMCカートリッジはトランスを通した音が好きです。
  

SA-80は木製のカバーが採用されています。そのためなのか、EQ回路やTONE部や配線も含めてシールドケースで覆われています。シールドケースにTRIOの修理履歴のシールが残っています。

 シールドケースを取り外した写真です。

パワートランジスタには2SD90×4個が採用されています。パワートランジスタの小ぶりヒートシンクは個人的にはもう少し大型のものにしてほしかったところです。

この頃になるとスピーカー保護のリレーが装着されるようになり、より快適に音楽を楽しめるようになっています。リレー式の保護回路でポップ音防止やショートおよび異常電位などを検知するとスピーカーとパワーアンプ回路を切り離します。リレー式の保護回路は機能的には優れていますが、リレー接点の接触不良が発生することがあり、それまでのヒューズ式と比べて一長一短です。

SA-80のスピーカー端子はT型コネクタが採用されおり、専用の接続プラグが必要になります。上の写真では標準のネジ式プラグに交換してあります。プラグ間隔が狭く締めにくいですがやむ負えずの交換です。

ヒヤリングしてみます。外観からは奥行のあるゆったりした低音がでそうな気がします。しかし印象とは異なり、クリアで音抜けがよいあざやかな中高音の音質です。楽器の1音1音が分離してきこえるようです。奥行もありいい雰囲気を持っています。低域もしかっり出ていますがあまり目立ちません。ただし、ヘッドフォンで聴くとややエコーがかかった様な不自然さを感じます。このプリメインアンプはかなり優秀で個人的には好きな部類です。ただし、音質には好みが別れるアンプなのかもしれません。

2024/04/27

電子ブロック SR用FMパーツの製作(TDA7000)

 

電子ブロック:SR用FMパーツ製作の紹介です。当時、買ってもらった電子ブロックはSR3A(1969年発売、100回路、4,950円)で夢中になって遊んでいました。その後発売された電子ブロックにはSTシリーズやEXシリーズがあります。その中でも心が引かれたのがFM放送を受信できるFMパーツです。FMパーツは1977年頃に3,000円で発売されましたが、知らずに購入できませんでした。FMパーツは今でもたまにネットで見かけますが10,000円以上の高値で取引されています。遅まきながらFMパーツを製作して、電子ブロックSR3AでFMラジオを聞けるようにしてみました。

FMパーツ製作にはSR用のアンテナブロックをケースとして利用します。ケース内にポリバリコンを入れると残りのスペース2.0cm×4.5cmにプリント基板を入れて、そこにすべての部品を実装する必要があります。そのため今回はFMパーツの核になる部品としてTDA7000を使用します。1983年頃フィリップスより発売された18pinのFMラジオチップです。1チップでFMラジオを構成でき、動作電源電圧は2.7V~10.0Vで9Vの電子ブロックとの相性もよさそうです。

必要な部品を揃えてみました。TDA7000×1、SR用アンテナブロック(ダイヤル付き)、プリント基板(2.0cm×4.5cm)、AM/FMポリバリコン(2連×2)、電解コンデンサー(10μF×1,220μF×1)、抵抗(22kΩ×1、10kΩ×1)、セラミックコンデンサー×13、同調コイル×1、スペーサー×1、以上になります。

組み立ては2時間ほどの作業で完成します。上の写真が製作したSR用FMパーツになります。TDA7000が透けて見えて映える外観に仕上がりました。部品実装はギリギリのスペースでした。

プリント基板は高さ2.0cmの範囲内にうまく収まっています。

FMポリバリコンは厚みが薄いFM専用2連を使いたかったのですが、厚みのあるAM/FM2連×2です。アンテナブロックの高さと同じ厚みでしたがなんとか実装できました。

 

プリント基板を装着後に配線をして完成です。

左が製作したSR用FMパーツです。右が純正品のSR用アンテナブロック(AM)です。

FMパーツ単体に電源とアンテナをつなぐとクリスタルイヤホンで正常にFM放送を聞くことができました。

FMパーツを電子ブロックの2石スピーカー式アンプに組み込んでみます。

FM放送を受信できているようですが、スピーカーからの雑音も大きく音も不明瞭です。ダイヤル選局も不安定です。FMパーツ単体で受信は良好なので、電子ブロックの2石アンプの回路に問題がありそうです。

電子ブロックで回路変更しやすい機種はスペースの制約がないSRシリーズです。1段目のトランジスタのエミッタに10μFと1MΩを入れて改善してみます。雑音がなくなりFM放送が選局しやすくなり、クリアな音質でFM放送を聞くことができます。
このFMパーツで受信できる放送局は、80.0MHz:TOKYO FM80.7MHz:NHK-FM81.3MHz:J-WAVE89.7MHz:InterFM897でした。78.0MHz:bayfmがダイヤルの範囲外で受信できません。ポリバリコンのトリマでトラッキングを調整します。チューニングダイヤルを左いっぱいに回して 78.0MHz:bayfmの受信が出来るようになりました。今回のFMパーツは78.0MHz~90.0MHzまでの受信範囲をカバーすることができたようです。


強電界地域のアンテナはリード線でも受信は可能かと思います。我家のような電波難民地域ではリード線では雑音が大きいので、有線放送のFMアンテナを接続しています。FMパーツの性能ですが受信感度や選局も良好で音もクリアに聞こえることに驚きます。長時間ラジオを聞いていても受信周波数のドリフトもなく安定しています。ただし、チューニングはシビアで少しでもズレると雑音が多くなります。音質は電波強度とアンプの性能がそのまま音の良し悪しとして反映されます。使用環境(上の写真)ですがPCの傍に電子ブロックを置いてみましたがノイズの影響は少ないです。2石アンプの音量は夜間のFM放送リスニングにちょうど良い大きさです。昔から欲しくて心残りだったFMパーツです。自作したことで今日ようやく完結しました。古い電子ブロックSR3AはFMパーツを付加したことで新たな魅力ある製品に復活したようです。
 
2024.5.1 
mute switchを付加しました。
 FMパーツの横に小型スライド・スイッチを取付けます。TDA7000の1番端子と接続した10kΩ抵抗とアース間をON/OFFすることでミュート機能を制御しています。

ミュートONにすると局間の雑音が入らなくなり選局が快適になりました。TDA7000を搭載したFMパーツにより、電子ブロックとは思えないすばらしい性能を体感することができます。
 
2024.11.4
電子ブロックSR用のFMステレオ・ラジオをブログ公開しました。電子ブロックSR用のDSPラジオの製作です。FMステレオを電子ブロックSRで聞くことができます。アンプ回路も見直し音質も格段に良い音がします。

2024/03/08

Victor ビクター MCA-100BとMCT-100T

 Victor ビクター MCA-100BMCT-100Tの紹介です。1971年頃の製品になります。ビクターコンポネントステレオのMCA-100B(プリメインアンプ)とMCT-100T(AM/FMチューナー)です。

 小型なので縦置きまたは横置きで配置することができます。低価格帯ですがアルミ無垢のツマミが採用さていますので操作感は良好です。木目調のプラスチックカバーと丸いダイヤルスケールのチューナーが印象的でスッキリとしたデザインに好感が持てます。
 
MCT-100Tの中を覗いてみます。1枚のプリント基板の上に2連バリコンが配置されています。糸掛けを外して修理する必要がありそうです。
FMフロントエンドの初段はFETではなくトランジスタ(2SC535)が採用されているので受信感度やS/Nなどが期待できそうにありません。当時、8,900円の価格を考えると目一杯健闘した結果かと思います。
次にMCA-100B(プリメインアンプ)の中を覗いて見ます。電源基板とアンプ基板のシンプルな構成です。

 
上の写真のようにMCA-100Bを修理するには、底板からプリント基板を分離させる必要があります。
MCA-100BとMCT-100Tの劣化部品は全て交換します。チューナーは再調整しましたがスペアナの波形が揺れて少し不安定な状態でした。
修理が終わったので、ヒヤリングしてみます。MCT-100Tを単体で聴きますがバランスも良く帯域は広く感じられます。奥行もありいい雰囲気です。受信感度はやや弱く感じます。次にMCA-100Bですが、上下の帯域はほどほどですがバランスの取れた聴きやすい音です。また、メリハリがある元気な音質です。特にMCA-100Bは想像していたより遥かにいい音を聴かせてくれました。
低価格帯ですが小型でデザインも良く気になるアンプとチューナーです。PCオーディオなどでサブシステムとしての組み合わせがお勧めかと思います。

2024/03/03

TRIO トリオ KT-7000 AM/FMチューナー

TRIO トリオ KT-7000 AM/FMチューナーの紹介です。1970年、61,000円のチューナーの名機です。チューナーはずしりと重く8.2kgあり、アルミの無垢のツマミとダイヤルスケールの照明が美しいで製品です。

 チューナーのカバーを外すと、黒いシールドケースで厳重に保護されています。

上の写真はシールドケースを外した状態です。糸掛けの方法ですが、バリコン調整用とダイヤル針用で2本の糸掛けを使用するのがめずらしいです。

 
このチューナーの最大の特徴であるクリスタルフィルター2個と同じ横並びの4個の丸いICを見ることが出来ます。

 
修理作業を始めます。部品に劣化が見られるため、劣化部品を全て交換します。
部品交換後に電源試験をします。0.3A流れ安定し正常のようです。
 
修理後は動作の確認をします。FM,AMともに受信は良好です。ただし、上の写真のようにシグナルメーターとチューニングメーターの針の赤い塗装が劣化して剥げています。
シグナルメーターの針を再塗装することで、見た目の雰囲気が格段に良くなります。チューニング時に必ず目に入るメーター針の塗装修理は必要不可欠かと思います。
大きな問題もなく、再調整して修理作業は終了です。再調整しないとSTEREOランプ不点灯や左右の音量バランスが崩れたりします。KT-7000は意外と調整が難しいので要注意です。
 
ヒヤリングしてみます。中低音が厚く奥行を感じる音質です。いかにもアナログチューナーですと主張しています。ボーカルがやさしく聞こえます。デザインと同じような安定感があるチューナーです。アナログチューナーの醍醐味を感じたいのであればKT-7000は最適です。70年代の名機は、現在でも十分通用するクオリティーの製品だと思います。

SUNSUI サンスイ TC-505 AM/FMチューナー搭載ステレオプリアンプ

SUNSUI サンスイ TC-505 AM/FMチューナー搭載ステレオプリアンプの紹介です。1968年、37,500円の製品になります。サンスイはこの時期、TUシリーズ(チューナー)、TCシリーズ(チューナー搭載プリアンプ)、TAC(レシーバー)のラインナップで多くの機種を販売していました。 TC-505は、丸いダイヤルスケールで横幅もありチューナー単体より、バランスの良いデザインで今でも人気がある機種です。

上の図はチューナー部のブロック図になります。FMフロンエンド(F-1031)、FM IFセクション(F-1087)、FM マルチプレックスセクション(F-1099)、AMセクション(TRAM-4A)で構成されています。このプリント基板はチューナーTU-555と同一のものが採用されています。

上の図はチューナー以外の構成です。イコライザアンプ(F-1023)、トーンコンロールアンプ(F1074)、ヘッドホンアンプ(F-1077)でプリアンプを構成しています。TU-555に上記の3つのアンプを搭載した製品がTC-505です。

上から見ると、左下:トーンコントロールアンプ、その右中央がFMマルチプレックスセクション、中央がFM IFセクション、中央上がAMセクション、バリコン下がイコライザ-アンプになります。

裏から見ると、左上はヘッドホンアンプ、その下が電源部になります。 

修理作業に入りますが、まず最初に劣化部品は全て交換します。

次に電源試験をします。0.15A流れ正常のようです。

機能を確認します。ステレオランプが点灯しません。ステレオランプへの電圧はチューニングで変化するので回路は正常です。6Vの豆球と交換して再調整でランプは点灯しました。

ヘッドホンの出力波形が歪んでいるので、 2SB405×2を2SA1015×2と交換しました。

FM受信時にサッーという雑音がやや大きく聞こえます。フロントエンドのFET不良が疑わしいです。FMフロントエンド(F-1031)基板はバリコンと蜜に実装されていて修理が大変です。


 
FMフロントエンドのシールドケースや配線、ボルトを外してプリント基板を取り出します。三菱の初期型FETのMK10が採用されています。
MK10は手持ちのストックと交換です。海外輸出製品のTC-505には、2SK19が使われています。時間があれば2SK19や2SK192aに交換して動作するか確認してみたいものです。MK10の交換によりFM放送時のサッーという音は小さくなり改善されました。最後にチューナー部分を再調整して終了です。チューナー部分はTU-555と同じ手順で調整できます。
 
ヒヤリングしてみます。元気よく明るいトーンでキレのある音色です。バランスも良く帯域も広く感じます。TU-555単体とは違った音色に仕上がっています。同じ基板ですが音色が違うのはトーンコントロールを通したからでしょうか。
TC-505は完成度が高く安定感ある動作を感じることができます。Phonoでレコードを聴いてもいい雰囲気で聴かせてくれます。また、ヘッドホンが使えることも非常に便利です。TC-505とパワーアンプとの組み合わせにより、音のアップグレードが自由にできるのも魅力です。現在では見当たらない絶命危惧種のチューナー搭載型プリアンプです。個人的には自作のパワーアンプなどと組み合わせて使いたくなる個性的な製品かと思います。