2022/05/21

upplayとAudirvana(JPLAY FEMOTOの音楽プレーヤ)

私のステレオ装置ではJPLAY FEMTOを使っている関係から音楽プレーヤーとしてDLNA control pointのupplay1.4.1を採用しています。upplay Windows版の最新バージョンは1.4.10になります。

以前はTuneBrowserとJPLAY FEMOT ASIOの組合せで音楽を再生していました。しかし、JPLAY FEMTOカーネルストリーミング(KS)とupplayの組合せのほうが一聴して一皮むけた鮮烈な音楽を聞かせてくれるのでこの構成となりました。 TuneBrowserも音質改善されて十分に良い音なんですが、ASIOからカーネルストリーミング(KS)に変更しましたが音の良さにもう元に戻れなくなりました。また、JPLAYもJPLAY FEMTOになりインストール後の設定も簡単でupplayもインストールすればすぐに利用できます。今まで散々苦労していたのにあまりに簡単な設定で高音質を再生できるので、あっけにとられた程です。もうこれ以上はいらないんじゃないかと思えたほどです。(2024.12.10:USB DACはToppingDX3proに更改しました)

Windowsでupplayの優先度の設定も必要不可欠です。Windowsタスクマネージャー>詳細>upplay.exeを選択し、右クリックで優先度の選定>リアルタイムを選択します。この設定によりupplayがよりクリアな音質にアップグレードされます。私のヒヤリングでは再生時の音の不安定さがなくなり、音全体が引き締まった印象を受けました。

upplayの設定できる機能は非常に少ないです。また設定画面の日本語直訳を掲載します。 

upplayで聞く音楽には大変満足していますがupplayにも長所と短所があります。

長所は①大容量(試し読みで10万曲)の音楽ファイルを取り込める、②JPLAY FEMTOと組合せで高音質、③かんたんな操作感、④安価(5ユーロ以上)、⑤インストールすればすぐに使える等になります。

短所は①アルバム名表示の文字数が少なく文字切れする、②時々アルバム・ジャケットが表示できなくなる(JPLAY FEMTOを再インストールすると回復する)、③誤操作しやすい(右クリックで”Send to palylist"をクリックして再生したいアルバムを選択して読み込みを誤って複数アルバムの入ったフォルダを選択して大量のデータを読み込みしばらくプレーヤーが使えないことがある)、④アルバム情報で常時表示できない項目(アルバムの年など)など多々あります。

それでもupplayを使う理由はこの高音質であれば必要最低限度の機能と各種の欠点があっても十分妥協できるからです。2019年頃からupplayを使用していますが満足して利用しています。upplayのプアな機能で我慢できるのであればおすすめの音楽プレーヤーだと思います。歳で耳が悪くなったせいなのか普通に昔の音楽を聴いても昔と同じには聞こえてきません。高音質で音楽を聴くと若いころに聞いた音が蘇ってくるんです。私にとってupplayは毎日の生活に必要な一部になっています。

2023.8.16 Upplay 1.6.4

Upplay 1.6.4にアップグレードしました。数日快適に使用していましたがmp3が再生できないことに気づきました。

 
mp3のアルバムを読み込ませると、”upplay some tracks could not be loaded : no compatible audio format”の警告が出ます。アルバムリスト表示されるのですが再生できません。FLACフォーマットは正常に読み込み再生できます。upplayの公式サイトなどを参考にしますが、同じメッセージの事例はありましたが原因は違うようです。
 
upplayの設定は”Preferences”しかありません。Preferencesの設定を確認していると”Do not check track formats against renderer capabilities”という項目が目にとまりました。直訳すると”レンダラーの機能に対してトラック フォーマットをチェックしない”です。mp3などのフォーマットを確認せずに読み込ませるようです。チェックを入れでmp3アルバムを読み込ませたところ正常に読み込めました。思わぬところでトラブルに見舞われました。お同じ現象で困っている方は参考にしてください。
2023.12.20 upplay 1.7.1
upplay 1.7.1にアップデートしていました。動作は良好です。

2024.6. 16 Audirvana Origin

過去にAudirvanaの無料トライアルを試しましたが、操作性や文字化けなど基本的な機能がダメで導入を断念した経緯があります。その後、何度トライしても音は良いのですが動作や操作性に我慢出来ませんでした。先日、Audirvana Originをようやく購入しました。カーネルストリーミング機能を標準搭載していますので、JPLAY FEMTOと組み合わせた音楽プレーヤとして使います。

フォルダ・ツリーによる楽曲の表示もできるようになったので非常に便利です。楽曲数が数万あっても音楽を聴きながら読み込みが終わります。動作や操作性への影響が少ないところが良いです。Audirvana Originは動作が安定し操作性が格段に改善されているようです。

さっそくAudirvana Originのヒヤリングをします。音の粒子が非常に細かくなり音楽が静寂の中から立ち上がって聴こえます。なるほど、皆さんが絶賛しているが良くわかります。upplayで聞くより音が繊細で静寂性がワンランクもツーランクも上がっています。試験的にUSBケーブルを交換してみました。音がケーブル交換に敏感に反応するのには驚きます。簡易なオーディオ・システムではAudirvanaの実力を出し切れないかもしれません。良質な音と高い購入価格です。コスパをどう捉えるかはリスナーさんしだいです。ただし、Audirvana Originの無料トライアルを聴いてしまった私は誘惑には勝てず購入させてもらいました。

2024.10.22 upplay 1.7.7

upplay1.7.7にバージョンアップしています。upplayは起動時に大量の音楽ファイルを読み込むのに時間がかかります。 1.7.7では短時間で音楽ファイルの読込みが終了してすばやく起動できるようになっていました。また、音質もアップしているのでしょうか、今までよりクリアな音質で再生されているように聴こえます。

2025.1.25 upplay 1.8.0

upplay 1.8.0にバージョンアップしましたが、直ぐに1.8.1にバージョンアップされていました。入れ替えのタイミングが悪かったです。1.8.0を使っていますがアルバムアートの表示しない不具合がありますので1.8.1にすぐに変更になったのでしょう。次回のバージョンアップで対応します。

2025.2.14 Audirvana Origin 2.5.20

Audirvana Originも2.5.20 までバージョンアップしました。最近、音質が変わったような気がします。透明感があり抜けの良い音はするのですが、深みのある音がしなくなりました。音楽を聴いても深い感動が伝わってきません。気のせいでしょうか。upplayの方が音に深みや奥行があります。すぐに、2.5.21にバージョンアップしました。音質は密かに元に戻っていました。

2025.4.21 upplay 1.9.6

upplay 1.9.6にバージョンアップしました。早速インストールしましたが起動しません。upplay1.8.2にダウングレードしても起動しません。upplay1.8.0にすると起動します。思い当たる節がないのでメールで問い合わせしたところ、「Microsoft C++ 再頒布可能ランタイムライブラリ」が必要との回答です。Microsoft C++ 再頒布可能ランタイムライブラリとupplay1.9.6をインストールします。何事もなかったように正常に起動するようになりました。迅速なサポートに感謝です。使用感ですが、なんだか前より安定感があり深みのある音質にグレードが上がっているように聴こえます。特に低音がかなり下まで出るようになったようです。気のせいでしょうか。

2025.4.22 upplay Windowsダウンロードページに下記の注意が追記されました。

”I need to fix the setup file, but, for now, you can download and install vc_redist.x86.exe from the following Microsoft support page”

和訳:セットアップファイルを修正する必要がありますが、今のところは、次の場所からvc_redist.x86.exeをダウンロードしてインストールできます。マイクロソフトサポートページ”

2022/05/17

PIONEER 真空管 AM/FMチューナー TX-40

PIONEER 真空管 AM/FMチューナー TX-40です。1966年頃の製品で、比較的コンパクトなチューナーで前面は4mm〜10mmの削り出しアルミパネルに両端から枠用のアルミをねじ止めする贅沢なつくりになっています。レベルメーター、ステレオランプとダイヤル目盛りのガラス板の両端からランプ照明するつくりになっています。

真空管は6CG7,6AQ8×2,6AV6,6BA6,6AU6,6BE6の7球で構成されています。 2連バリコンを採用していますが混信妨害に弱くS/Nもあまりよくありません。3連バリコンにしてもらえたら良いチューナになったと思いますので非常にもったいない製品です。

背面にはAMアンテナバーがあり、動かすことでAM放送の受信時に威力を発揮します。

TX-40の情報はラジオ技術1966年11月号で「パイオニアTX-40 AM/FM MPX AUTOステレオ・チューナ」で回路図も含め詳しく解説されています。また、この製品はTX-400の型番で輸出もされていたようです。写真はTX-400の回路図でTX-40と比較しましたが同じ構成となっています。今回はTX-400の回路図があるので修理するのに本当に助かりました。


 内部の配線を見ると電源部のフィルムコンデンサの表面に油が流れたような跡があり過電流の傾向がありそうです。また、このままでは電源を入れるのは危険なようです。

また、MPX部では49mHのインダクターが2つに割れているのを見つけました。修理は電源部などの劣化部品の交換から始めることにしました。

写真は部品交換が完了した内部配線です。この修理によりAM/FMとも受信できるようになりました。ただし、AMは受信感度も低くトラッキングもずれていたので再調整、FMはトラッキングがずれていたので調整して良好となりました。今回の修理ではTX-50をもっていたのでチューナーの型番に疑問をもちました。1969年頃のTX-50からはトランジスタチューナーになるのですがTX-40からTX-50までに3~4年の空白があります。この期間中に新しいチューナーはありませんから(私が知らないだけかもしれません)、他の製品化に注力していたのでしょうか。パイオニアさんのチューナー型番に疑問を持ちながらの修理でした。

SONY ステレオ・レシーバー YJ-300(懐かしい70年代のレシーバー)


懐かしさからSONY ステレオ・レシーバーYJ-300のジャンク品を購入してみました。1974年頃の製品でしょうか、レコードプレーヤ、スピーカー、レシーバーがセットになったYJ-300システム・ステレオで約90000円ぐらいで販売されていたかと思います。中学生の頃、ラジオ雑誌の裏表紙に掲載されたこれらの製品を自分専用のステレオとして欲しかったのですが高くて買えませんでした。AM/FMチューナー、アンプ、マイク入力とトランスミッターの機能までついます。写真ではわかりませんが、チューニングメータ、ステレオランプ、ONAIRランプがあり、バックライトで目盛りが見やすくなっています。

背面は、AM/FMアンテナ端子、プレーヤ、チューナー、AUX端子とRCAのスピーカー端子になっています。この当時のスピーカ端子はメーカーによっていろいろな種類があるのが特徴ですね。RCAスピーカーケーブルはAmazonで今でも販売されているので接続に困ることはありませんが、ケーブルが抜け落ちるリスクと抜けたときにショートするリスクがあるので今では使われていません。

木製ケースから本体を取り出してみました。左上が電源部、中央がパワーアンプ、右上がチューナー部、下がプリアンプの構成になっています。基板をよく見るとトランジスター2SC403などが交換されていて修理をして使っていた様子です。

症状:AMの音がでない。

チューナー端子から入力するとヘッドホンやスピーカーから正常に出力しますので、プリアンプやパワーアンプは正常のようです。チューナー部故障と思われるのでAMのプリアンプ接続箇所でモニターしますが無音でした。FMのプリアンプ接続箇所でモニターすると当然ながら正常です。故障探査でチューナー部のAM部分の回路をモニターしながら追ってみた結果、2か所の部品を交換しました。交換されていない古いトランジスター2SC403を2SC1815で代用して交換、プリアンプへの出力側カップリングコンデンサが断のため交換しました。これによりAMから音が出るようになりましたが、長時間ヒヤリングすると軽いノイズが変動しながら出ているようです。そのため、古い電解コンデンサーは全て交換して解決しました。これにより、ノイズだけでなく長く安全に利用できるかと思います。電源部の電解コンデンサは1000μFから手持ちの8000μFにアップしてみました。

AM/FMともに正常に出力するようになったので、次にチューナー部の調整をします。チューナー部の機能を記載しておきましたので、必要な方は参考にしてください。

AM/FMとも立派に受信できるようになり修理は全て終了です。スピーカーからの音を聞くとさすがに低音もスカスカでとても音が良いとは言えません。しかし、昔欲しかった懐かしいレシーバーパネルを見ながらのFM放送は格別な気分にさせてくれます。

2022/02/20

TRIO トリオ FM-105 真空管FMチューナー 修理(60年には完成の領域)

 正面から見たTRIO FM-105

TRIO FM-105 FMチューナー 1960年頃で13900円の製品です。 このFMチューナーはモノラル出力のみです。FM-105のMPX OUTにマルチプレックスアダプターを接続してFMステレオ放送を聴くしくみでした。この製品で感心するのは、3連バリコンを採用していることです。2連バリコンでは混信妨害に弱くS/Nもあまりよくありません。モノラル出力ですが、スレテオ放送を前提としているため3連バリコンを搭載しているのだと思います。ステレオ放送を良好に受信するには3連バリコン以上のチューナーが必要だと思います。できれば4連バリコン以上が理想的ですね。

ラジオ技術1962年9月号の掲載記事

初めてダブルリミッタを搭載したFM-105については、ラジオ技術1962年9月号「トリオ FM-105形 FMチューナの解剖」で機能・動作の解説や回路図が掲載されていますので大変参考になります。

症状:オークションで購入時のコメントは「真空管式のため通電確認していません・・・」と記載があります。電源を入れると損傷する危険があることをわかってくれている出品者に感謝です。よく出品時に「通電確認しました」との記載をみかけますが、ただ電源が入ることを確認する行為は危険ですし故障を拡大させるだけの百害あって一利なしの無用な行為だと思っています。

修理前の汚れた前面パネルのTRIO FM-105

修理の前に、まずは外観をチェックすると全面パネルの左下のシルバー部分の表面に黄色のヤニでしょうか?よごれが固着してとれませんしサビがあちこちに出ていますので、一度はがして再塗装するしかないかもしれません。試しに表面を少し削ると簡単にはがれて驚いたことにその下から黄金色の銅の地金がでてきました。贅沢な銅製の全面パネルが採用されていました。

 修理前のTRIO FM-105の内部配線

次に底板を外して内部配線を確認すると、ブロック電解コンデンサの安全弁が盛り上がっていて危険な兆候があります。電源入れずに販売したことは大正解だったことがわかります。また、よく見るとIFTとアース間のコンデンサが焼け焦げて容量もわかりません。並列で入っている抵抗はなんともないので発振したのでしょうか?このようなケースには回路図を事前に用意できているので安心して部品交換ができます。これ以外は異常はなさそうなので修理作業に入ります。

TRIO FM-105を修理してきれいになった前面パネルと電源トランスケース
全面パネルの補修から始めますが、パネルの再塗装にはひとつ問題があります。シルバーに再塗装するとその部分の文字が消えてしまいます。凹凸は残るので文字はよく見れば見えるかと思います。今回はシルバーの塗装を剥がして様子を見ることにしました。半日かかって塗装を剥がした全面パネルはとても美しい姿なので再塗装する気にはなれません。ただし、銅製なので翌日にはすぐに酸化して黒くくすんでしまいます。そこで、酸化しないようにアクリルスプレーで表面をコーティングしてみたところ銅製の地金の色を生かした美しいパネルに修復することができました。再塗装よりはるかにきれいな仕上がりです。しかも文字も消えずにきれいに残っているFM-105のゴールドバージョンですね。

 TRIO FM-105を上から見た部品配置ときれいになった電源トランスと

トランスのケースもサビがあるため塗装を剥がして再塗装するとみちがえるような部品配置の景色に生まれ変わります。

 TRIO FM-105を修理して部品交換した内部配線

次に劣化部品の交換です。灼け焦げたコンデンサは回路図から50pfとわかるので交換します。FMモノラルチューナーなので高周波部品が多いので劣化部品は少なく交換修理は楽なんです。 3つあるチューブラ型のコンデンサはフィルムコンデンサに交換します。ブロック電解コンデンサは内部をくり抜き外側のケースのみ残して新しい電解コンデンサ3個で再配線します。この頃のTRIOの製品は何故かヒューズがないため危険なのでガラス管ヒューズを入れて完成となります。

 TRIO FM-105の試験模様

配線の再度確認と電源部の電圧を確認してから、毎回登場の電源装置に接続してからFM-105の電源を入れます。おおよそ0.45Aで各箇所の電圧も適正値でした。

修理してきれいになったTRIO FM-105

動作確認はFMアンテナを接続してFMモノラル出力を確認しますが受信レベルメータも振れて音出しもOKでした。MPX OUTはAD-5を接続してステレオ放送の確認をしましたが良好です。今回は60年以上前の製品とは思えない良い仕上がりになりました。修理すると愛着が湧くんですが、コレクターではないので使わないと意味がないと思います。手放したほうがいいのではないかと思うと複雑な心境の修理になりました。

2022/02/18

ONKYO Integra T-410DG FM tuner(MPX OUT端子があるチューナー)

前から見たONKYO Integra T-410DG

 ONKYO Integra T-410DG FM tunerは、1978年頃の定価88000円の製品でクォーツ・デジタル・シンセサイザ方式を採用しています。今回は愛用しているFMチューナーが故障してしまいました。

ONKYO Integra T-410DGの背面パネルとDET.OUT端子

私がFMチューナーに求めている機能は少し変わっていてFMチューナーにMPX OUT端子を搭載していることを条件にしています。そのため、FMチューナーは背面パネルを重点的に観察してMPX OUT端子の有無を確認する変わった買い方をしています。初期のシンセサイザー・チューナーでMPX OUT端子(T-410DGではDET. OUTと表記されています)を搭載するメーカーはテクニクスとONKYO以外は見つけることができませんでした。バリコン式チューナーの中級クラス以上であればMPX OUT端子を搭載している機種は多数存在します。今時、FM放送による4chステレオ用マルチプレックス出力があっても4ch-FM放送は廃止されていて何に使うのか疑問に思われるかと思います。

ONKYO Integra T-410DGとTRIO AD-5

ONKYO Integra T-410DGのDET.OUT端子にAD-5(管球式FMマルチプレックス・アダプタ)を接続してFMステレオ放送を楽しんでいるんです。真空管チューナーによるFMステレオ放送を好んで使っている一部のオーディオ・ファンは存在しますが、その中でも変則的な使い方の一員(他にいるかは知りませんが)です。バリコン式チューナーのTRIO KT-5500も使いますが、バリコン式チューナーからシンセサイザー・チューナーのONKYO Integra T-410DGに変えてAD-5を接続して使うと不思議なことに真空管サウンドのFMステレオ放送が少しデジタル臭く感じられますがもっとクリアに聞こえる不思議な音の世界が広がるんです。T-410DGの受信機能だけを使いAD-5でステレオ復調させることを楽しみにしているオーディオ・ファンなんです。

話はかなり脱線したのでもとに戻します。症状:両チャネル出力の音が歪む

FM放送を聞いていると発音の語尾が 不鮮明にモガモガ聞こえるようになってしましました。修理するためにチューナーのボンネットを外すと正面から見て左側が制御で右側がFMチューナーの配置が確認できます。

ONKYO Integra T-410DG内部のプリント基板

故障の切り分けですがDET.OUT出力で放送を聞くと正常なので、ステレオ復調~OUTPUTまでの間で故障と判断しました。ステレオ復調にはHA11223Wが搭載されていて、このICからのステレオ出力は正常でした。回路図がないので、ここからは基板のプリント配線を追って調べる根気のいる作業になります。1時間ほどかかりOUTPUTのプリアンプ部の2SC1815,2SC1740(左右で違うトランジスタでした)の入出力で音が歪むことが確認できました。

ONKYO Integra T-410DGの故障と思われるトランジスタとコンデンサ

2つのトランジタを2SC1815へ交換して再度確認しますが、まだ音が歪みます。次に疑わしいのは、このトランジスタとのカップリングコンデンサの無極性(NP)2.2μFかと思います。無極性は使い切って手持ちがないので、やむなく少々大きいですがフィルムコンデンサ1μFで代用として交換しました。基板にはフィルムコンデンサがなんとか収まりました。交換箇所での音を確認して正常になり、OUTPUTでも当然音は正常になりました。

部品交換したONKYO Integra T-410DG

故障修理は終了しましたが、過去にもマランツのチューナーでOUTPUTをドライブするためのトランジスタが故障した経験があり、この部分は外部機器との接続があるため負担がかかるのが要因なのかもしれません。大切に愛用しているONKYO Integra T-410DGは予備機も持っていますが直せて一安心の修理でした。

追記2022.11.29:「比較的新しいFMチューナー(TRIO KTF-5002など)で FM多重放送用の検波出力端子ではAD-5と接続してもステレオ復調はできません」との記述は誤りでした。TRIO AD-5の調整不良が原因でした。AD-5を正しく調整したところFMステレオ放送として正常に復調でき、FM多重放送用のMPX端子も使えることが確認できました。

2022/02/17

TRIO FMマルチプレックス・アダプタ AD-5 修理(貴重なFMアダプター)

前から見たTRIO AD-5

今回は TRIO FMマルチプレックス・アダプタ AD-5 の修理になります。TRIOモノラルFMチューナーFM-30とペアになるTRIO AD-5です。ご存じのようにFMステレオ放送初期のFMチューナーはモノラルしかなく、FMマルチプレックス・アダプタによりステレオに復調して聴いていました。60年代、70年代のトランジスタラジオにもMPX OUT端子が装備されていましたが、トランジスタラジオもモノラルのためFMステレオ放送を聞くためにはMPX OUT端子にFMアダプターを接続する必要があったのです。代表的な製品ではスカイセンサーのオプションでSTA-50,STA-60などがあります。

1963年(昭和38年)のラジオ雑誌に掲載されていたTRIO AD-5の広告です。現金正価11,200円とあります。当時はモノラルラジオとFMアダプターを別々に販売した理由が、金銭面で負担のないようラジオを買ってから後からFMアダプターを購入できるようにしたとのことです。現代の私たちの金銭感覚では、まったく理解できません。1963年の初任給は17,100円ですから、AD-5の11,200円は現代の価値にして130,000円ぐらいでしょうか。ラジオやFMアダプターを一緒にすると1ケ月分の給与でも買えなかったようです。当時はラジオやFMアダプターがいかに贅沢で高額な製品だったのか驚くばかります。

私は管球式FMマルチプレックス・アダプターによるFMステレオ放送を好んで聞いているオーディオファンの一人です。私のお気に入りのTRIO AD-5がオークションで入手できたので修復したいと思います。

電波科学 1963年8月号の掲載記事

TRIO AD-5は1960年頃の製品になり、電波科学 1963年8月号「FCC方式ステレオ用マトリックス方式 トリオAD-5アダプタの回路と性能」で機能、性能や回路図が詳しく解説されています。

TRIO AD-5を上から見た部品配置

早速、上部ボンネットを外すと72476AU6,12AX7の真空管類が配置された簡単なつくりです。

修理前のTRIO AD-5の内部配線

修理で問題になるのは裏ブタの中で開けて配線や部品を確認するとオリジナルの状態のままのようです。以前にオリジナルではない魔改造されたFMアダプタを苦労して修理した体験があるのでオリジナルのままであることが重要なポイントです。異常がないか丹念に確認すると電解コンデンサの安全弁が破裂して液漏れをしています。60年もたっているので経年劣化する部品は交換することにしました。ブロック電解コンデンサは今では入手できない3つのコンデンサを集約した太くて短い形状のものです。

修理後のTRIO AD-5の内部配線

当時の雰囲気を残したいので、くり抜いて外側のボディーだけ使うことにします。その他コンデンサはフィルムコンデンサに交換しました。最後にAD-5にはヒューズがないのでガラス管ヒューズを装着してあります。

TRIO AD-5の市試験模様

ここで、前回の真空管ラジオ修理でも使った電源装置に接続してから電源を入れてみます。電流計は0.3A付近で落ち着きましたのでやや多めかと思いますが正常のようです。次に各部の電圧も測り正常です。

TRIO FM-106とTRIO AD-5

テストにはMPX OUTのあるTRIO FM-106にAD-5を接続する構成としました。AD-5のRCAライン端子からのFM放送のステレオ出力を試聴する音出し試験は正常のようです。AD-5の電源ケーブルが他のオーディオ機器の電源ケーブルと近すぎたりするとハム音が混じるので注意が必要になります。AD-5のデメンション・コントロールを調整するには試聴しながらセパレーションが一番良い位置にする必要があります。しかし、デメンション・コントロールは音質に大きな影響を及ぼすので私は自分の好みの音質の位置で固定して使っています。感想ですがAD-5を通したFMステレオ放送の音質は60年前の製品とは思えないくらいです。管球式と聞いて古臭い音のイメージがあるかもしれませんが、イメージを一掃するようなクリアな音を提供してくれます。何度でもこの音が聞きたくなりAD-5を買っては修理することを繰り返しています。管球式FMステレオを一度聴いてみる価値はあると思います。

2022/02/16

SONY スレテオヘッドホンアダプター STA-50(スカイセンサーでFMステレオ)

 SONY STA-50と元箱

SONY スレテオヘッドホンアダプター STA-50は、スカイセンサーのオプションで定価4300円で販売されていました。当時のラジオにはMPX OUT端子を装備している機種が数多くあり、このMPX OUT端子にSTA-50を接続してFMステレオ放送を聞くことができました。オークションで"電源が入りません。ジャンク品です”と出品されているのを見て、また衝動買いをしてしまいました。STA-50は簡単なつくりなので電源が入らないなんて故障は想像できませんが、修理は簡単だと思い買ったしだいです。

改造で付加されたSONY STA-50の電源端子

届いたSTA-50は元箱付きで定価4300円の値札もあります。しかし、よく見ると"DC IN 4.5V"のテプラと外部電源ジャックを付加する改造をされたようです。使った人しかわからないと思いますがSTA-50に外部電源を接続したい気持ちは痛いほどわかります。毎日、FM放送を聞いていると単3電池3本ではすぐに電池が切れてしまいます。STA-50の後継機種にSTA-60があり単2電池3本で長時間使えるようになりましたが、外部電源にはかないません。当時、私も外部電源を付けようかと思いましたがFMステレオ放送をオーディオ・チューナーで聞くようになりSTA-50は使わなくなりました。元の所有者の方はスカイセンサーで毎晩FM放送を聞きたかったのだと思います。

症状:電源が入らない

ナショナル RF-858 GXワールドボーイのMPX OUTにSTA-50を接続してもイヤホンからは何も聞こえてきません。たしかに電源が入っていないように感じられます。

ナショナル RF-858とSONY STA-50を接続

分解して蓋を取るとDC INプラグのプラス(+)端子とMPX INのアース線の配線が2本完全に外れています。元に戻してハンダして試聴するとイヤホンから音がでるようになりました。

SONY STA-50の内部配線

次にSTEREO CHECK ボタンを押しますがランプが点灯しません。ランプにはむぎ球が使われていて両端をテスタで測るとステレオ時に電圧がでますが、むぎ球はかすかに光るだけです。使われているトランジスタが劣化してむぎ球を点灯できないようです。19kHzのステレオ信号を検出して電圧はでるので消費電力が大きいむぎ球からLEDへ変更して修理しました。

SONY STA-50のSTEREO CHECK

最後に手持ちのSONY ACアダプター 4.5Vと接続してSTA-50で聞いてみたところ、外部電源でノイズが乗るかと思ったのですが音質はクリアでちょっと意外でした。

SONY STA-50とACアダプター

STA-50を使いラジオでステレオ放送を聞くにはFM波の受信環境がよくなければノイズだらけで聞くに堪えないことになってしまいます。私のナショナル RF-858ではかなり無理があります。スカイセンサーなどのように受信性能が高く外部アンテナ端子があり安定した受信レベルを確保できる機種が最適なんです。STA-50のようなFMステレオアダプターは使う人のスキルが問われる製品です。使いこなしが意外と難しいです。今回は元の所有者の思い入れのある製品の修理でした。

2023.4.29追記:STA-50のセパレーションを測定してみました。35dB以上あり非常に良い数値に驚きました。