2022/07/11

ナショナル RD-511 真空管FMステレオアダプター(アンプ接続時に注意)

 

ナショナル RD-511 真空管FMステレオアダプター、1963年頃の製品になります。RE-510 FMチューナーと同じデザインで組合わせてFMステレオ放送を聞くことができます。正面左から電源スイッチ、ステレオ・インジケーター、セレクターが配置されています。

背面パネルの左からMPX IN(2ピン端子およびピンジャック)、PHONO(IN)L R(3ピン端子)、STEREO OUT L R(RCA端子)が配置されています。

ケース底に真空管配置図、上蓋の裏に回路図が配置されていました。回路図が残っていますので、写真を撮って拡大印刷して修理のときに使用します。


付属品一式が揃っているこは大変めずらしいです。RCA接続コード2本(茶×1本、灰×1本)、3ピン端子×3個、2ピン端子×2個、スペーサおよびネジ×各6、ピンプラグ×1個、改造用抵抗100kΩ×2本、ご愛用のしおり×1冊。

上の写真は付属する取扱説明書(ご愛用のしおり)です。

詳細な定格は以下のとおりです。真空管 6BA6,12AT7,12AX7/ダイオード OA79×4、OA70×2、SC-20×1/ステレオセパレーション 100c/s~7000c/s,20dB以上/利得 1:1/電源電圧 AC(交流)100V,50~60c/s/消費電力 10W/形状 272(巾)×80(高さ)×149mmm(奥行)/重量 2㎏

中を覗いても埃はほとんどありませんので過去にRD-511を修理したのだと思います。観察するとヒューズフォルダーの爪が折れていて糸ヒューズで処理してありました。

次に見つけたのはゲルマニューム・ダイオードOA79がOA91に置き換わっていました。過去に修理した跡が確かに残っています。

 
ヒューズボックスは交換しその他の劣化部品もすべて交換します。しかし、コンパクトな部品配置なので修理作業に手間のかかる製品です。
修理は終了したので交換した部品が正常か通電試験をしてみます。電流値は0.25Aで正常のようです。

アンテナは300Ω-75Ω変換プラグで接続、RE-510とRD-511はMPX端子を2ピン端子コードで接続します。最後にSTEREO OUTをRCAケーブルでオーディオ装置と接続します。

音だしの試験をします。L(左)の音が極端に小さいです。R(右)は正常。ステレオ・インジケータは正常に点灯しました。この製品は左右の音のバランスをとる機能はありませんのでL(左)の音が小さいのは、どこかに不具合がある模様です。

L(左)の音が小さい原因をトレーサーで追ってみるとマトリクス回路のゲルマニューム・ダイオードOA70×1本が不良とわかりました。トランジスターテスターで測定してみるとNGです。

上の写真の互換表に従いゲルマニューム・ダイオードOA70はIN60と交換しました。再度、音出し試験をしますがL(左)の少しは改善しましたが音がまだ小さいようです。あれこれ調べてみましたが回路に不具合はみあたりません。そこで、RCAプラグを抜き差しして試験するとRCAプラグが刺さった状態だとL(左)の音が小さくなるようです?

説明書には接続する機種によってはSTEREO OUTに付属品の抵抗100KΩを入れるように改造の指示が記載されています。もしかしたら、今回のケースもインピーダンス整合用の抵抗100KΩが必要なのかもしれません。

ためしに手持ちの抵抗100KΩを説明書に従って追加しました。音出し試験をするとL(左)の音量は正常になりました。まだ、少し音が小さく感じられますが、極端な音量差はみごとになくなりました。また、抵抗100KΩを入れたことで全体のノイズが低下してクリアに聞こえるようになります。今回の現象は説明書がなければ修理できなかったかもしれません。また、ヒヤリングした感想ですがFMステレオ放送をすっきりとした良い音で聴かせてくれる製品です。初期のFMステレオ放送の時代にこれだけの高音質で聴くことができたことに驚きます。

RE-510とRD-511の組み合わせは、特別な2ピン端子コードが必要で尚且つ現代のオーディオ装置と接続するためには抵抗100KΩを改造して取り付ける必要があります。それらを知らなくて故障したものと勘違いした人もいたと思います。ある程度のスキルを持った人またはマニア向けの真空管FMアダプタかと思います。

2022/07/10

ナショナル RE-510 真空管FMチューナー(普通の修理)


ナショナル RE-510 真空管FMチューナーです。1963年頃の製品で6,800円で販売されいました。現在でもオークションなどで年に何台か出品されているようです。大きさは幅272mm×高さ80mm×奥行149mmのコンパクトなモノラルFMチューナーです。

 
背面には、アンテナ端子、MPX OUT端子、PHONE(L)端子、EXT AMP(L)のRCAコードが配置されています。MPX OUTはFMステレオアダプタ接続してFMステレオ放送を聞くための端子が装備されています。

 

本体の底には、真空管配置図、ダイヤル駆動図があります。残念ながらこのチューナーには回路図は添付されていません。黒いプラスチックの頭のネジは破損しやすいので、必ず手で締めるようにします。ドライバーで締めると非常にもろいので破損させる恐れがあります。

RE-510の中を覗くとすごいほこりでいっぱいです。今まで一度も開けたことはない様子です。本体ケースの汚れやヤニを落とし内部の埃を丁寧に掃除します。

真空管には12BA6×2、17EW8、2連バリコン、セレン整流器の構成となっています。チューナーのシャーシはケースから電気的に浮いた(絶縁)状態で固定されていました。

ケースから目盛り板が完全に外れていました。きれいに掃除してボンドで固定します。


目盛りの裏板が汚れとサビが出ています。上の写真は再塗装して取り付けた様子です。

はじめに故障個所はないか入念に目視点検します。電源回路の電解コンデンサ端子からの液漏れで使えそうにありません。

同じ径のコンデンサを2個使い絶縁テープで巻いて交換用コンデンサとします。厚紙をコンデンサに巻いて横に固定する方法なので、外観的には交換したことはわからないと思います。

その他の経年劣化した部品を交換します。

一通り修理が終わったので、劣化部品以外に故障個所はないか通電してみます。0.23~0.24Aで安定し正常のようです。

次にFMチューナーの動作確認をします。調整はカバーを外した状態でチューナー部の横から調整することができます。アンテナを接続して受信してみます。受信感度およびトラッキングを調整します。

これで修理は終了です。今回はFM放送の初期に製造された貴重なナショナル FMチューナーRE-510の修理でした。次回はFMチューナーRE-510とセットになるFMステレオアダプター RD-511の紹介および修理です。

2022/07/09

ONKYO Integra T-410DG(電源部の経年劣化を修理)

 

前回、Technics ST-S6の修理で電源部がひどく劣化していました。Technics ST-S6 1981年製、ONKYO Integra T-410DG 1978年製です。T-410DGの電源部も経年劣化していると思ったほうがよさそうです。今回は緊急対応でT-410DGの電源部のリニューアルです。

試験的にT-410DGの消費電流を測定してみます。Power OFFで0.2Aも流れます。しかもPower ONでもなんと0.2Aで電流値が同じでした。電源スイッチの意味ありません。どうりで、使っていないのに左後ろのトランス付近が妙に熱くなるので気になっていたんです。

 
しかもチューナーなのに背面パネルに空気穴が開いています。チューナーで空気穴があるのはT-410DGぐらいだと思います。ONKYOさんは発熱多いことを知ってたんですね。
チューナーを開けてみます。時すでに遅し、金属カバーの裏側がススで真っ黒です。電源部の電解コンデンサからは液が漏れだしていて全滅です。セメント抵抗のプリント基板も焦げています。
チューナー部もよく見ると抵抗が焼けています。この状態で、よくチューナーとして動作してくれていました。
 
電源部の電解コンデンサを全て交換しました。
チューナー部の電源に関わる電解コンデンサを全て交換しました。T-410DGはデジタル時計が内蔵されているので常に電流を流す必要があり、1978年製の部品は更に早く劣化したのかも知れません。T-410DGが中古で品物が少ないのも納得です。電源部が故障するので完全に壊れて中古市場にも出せない物が多かったんだと思います。T-410DGは2台もっていますが、2台とも同じ惨状でした。やはり、1970-1980年代のシンセサイザーチューナーをそのまま使うと重大な故障につながることを学びました。現在、使われているこれらの年代の製品は修理してから使用することを強くお勧めします。

2022/06/21

TRIO 真空管FMチューナー FM-111(整流管6X4の不良)

 今回は初めて修理するTRIO 真空管FMチューナー FM-111になります。FMシリーズでFM-111があるとは知りませんでした。本体は堅牢なケースと前面パネルの色は違いますがデザインはFM-105と同じでツマミが金属製に代わっていました。POWER OFF/FM/FM AFCと記載のある電源のセレクタ-も若干異なります。

背面は同じでモノラル端子とMPX OUT端子、ボリューム、アンテナの構成はFM-105と同じです。

TRIOの管式FMチューナーの種類はわかりにくいです。上の一覧(2022.12.4更新)は私が使っているTRIO管式FMチューナー一覧です。自作の一覧なので抜けている機種や年代、系統などに誤りがあると思いますがご容赦ください。この一覧で私も修理したことがあるのは12機種ぐらいです。一覧を眺めてみるとTRIOさんがFMステレオ放送の普及のために多くのチューナーを世に送り出したことがわかります。今回のFM-111はFM-105の流れをくむFMシリーズのモノラル・FMチューナーだと思います。

6AQ8×2、6BA6×2、6AU6×2、6AL5、6X4の構成・配置はFM-105と全く同じです。FM-105の後継機種がFM-111のようです。

このチューナーは「通電できますが受信できないジャンク品」とのことで購入しました。内部を見てみましたが目視からは損傷個所は見つかりませんでした。
 
ためしに通電試験をしてみます。電源を入れると0.38Aで安定しました。電流値が少ない感じがします。各箇所の電圧を測るとB電源で0V、ここで電圧がでていません。トランスの電圧は正常なので整流管6X4の不良と思われます。
上の写真は故障したと思われる整流管6X4です。整流管の中心部がぐると一周ガラスが黒くすすけています。整流管はこのチューナーの中で一番寿命の短い真空管なので故障しても納得です。
 
最初に劣化部品の交換です。ブロック電解コンデンサーは配線を外して外観上の見栄えのために残します。その他の劣化部品は全て交換しました。 念のために故障と思われる6X4を交換して確認します。B電源は0Vなので6X4の故障に間違いありません。整流管6X4を交換します。
修理後、電源を入れると0.45Aで安定します。B電源出力で約100Vの電圧が出ました。電源部は正常になりました。
ここで受信確認をしてみます。受信感度は良好でメータも振れます。AFCもよく機能します。また、トラッキングはズレていましたので調整しました。
最後にTRIO AD-5(FMマルチプレックス・アダプター)と接続してFMステレオ放送を受信してみます。受信感度も高く、いつも通りの管式FMチューナーのいい音です。FM-111はFM-105の後継機種としてお勧めのチューナーだと思います。今回のFM-111もこの時代の製品として性能・信頼性などが群を抜いて優れた製品だと思っています。この製品以降、2~3年するとトランジスタ方式に置き換わってゆくことになります。管式FMチューナーは1960年代前半~中頃までの短い期間の製品ですが今でも色あせない音でFM放送を聴かせてくれます。

2022/06/16

スター FM-200 真空管FMチューナー(珍しいμ同調方式)

 

スターFM-200形の真空管FMチューナーです。アイボリーの本体にシルバーのパネルと大きな文字と茶色の目盛りが印象的です。いままでスター製品を触る機会がなかったので購入してみました。 写真のとおりかなりジャンクなFMチューナーです。

 
スターFM-200は1963年ごろの雑誌に特集記事や広告がのっていますので、発売時期は1963年頃だと思います。 TRIO FM-106が機能面で近い機種になるので価格も10,000円前後ではないかとないかと想像しています。

背面はパーチクルボードで真空管ラジオみたいです。パーチクルボードは湿気を吸うとボロボロになるので高価になりますがアルミにしてほしかったです。また、背面の端子にMPX出力を持ったモノラルFMチューナーになります。

上から見ると何か違和感ありませんか?このチューナーにはバリコン がないんです。バリコン を使わないμ同調方式のFMチューナーなんです。6AQ8,6AU6×3,6AL6の構成で、左側にある6AQ8を搭載したスター製のμ同調方式/FMチューナー・ユニット:FU-36Bにより安定した受信性能を確保しています。このチューナーの全面パネルはアルミの削り出しではなく型抜きした1mmのアルミで、背面パーチクルボード、整流管ではなくシリコン・ダイオード、バリコン なしのμ同調方式などの徹底したコストダウンをしてます。それにもかかわらずデザインや性能は落とさずによく出来た製品だと思います。また、このころのトリオのチューナーもそうですが、なぜかヒューズがないつくりはいただけません。

FM-200を手持ちの資料から探したところ電波科学 1963年4月号で機能・回路図・性能など詳しく解説されていました。

また、FMチューナー・ユニット:FU-36Bについてはラジオ技術1962年9月号「FMチューナー・ユニットの構造」で解説されています。上の写真はFU-30Bシリーズ一覧を抜粋したものです。真空管FMチューナーを使う楽しさもありますが、これらの資料によりFM-200を深く知ることで楽しさが何倍にもなるんです。

μ同調方式のユニットでは糸を直線に引いて糸巻きしますので、糸を引っかける穴のあるリング状の固定金物(名前を知りません)を使います。FM専用なので土台の軸とリング状の固定金物とプーリーの構成になります。これにAMが加わるとバリコンの軸にカップラを取り付けて同調する構成になります。

 

内部の配線ですがきれいな状態です。特に見た目には損傷らしき痕跡はみあたりませんでした。


 
最初は外観から補修してみました。上の写真のように本体はアイボリーで再塗装しツマミのゴールドの金属部分は他のツマミから移植してみました。アイボリーのFMチューナーはめずらしいですが、見た目もよく今にもFM放送が聴けそうな雰囲気に仕上がりました。
トランスの手前にヒューズ・ボックスを追加してみました。
通常はいきなり通電試験をしませんが損傷もなさそうなのでテストする気になりました。通電試験すると電流は0.8Aから1~2分もかかって0.6Aまで下がりましたが電流が流れすぎで不安定です。私の感覚では0.4~0.5Aぐらいが適正だと思っています。1~2分通電してブロック・電解コンデンサを手で触ってみると非常に熱くなっています。本来はあたたかい程度で熱くなることはありませんので劣化した末期症状のブロック電解コンデンサーのようです。やはり、見た目だけで判断するのは危険だと改めて実感しました。
 
上の写真のように劣化部品はすべて交換しました。ブロック電解コンデンサーの配線をはずし残置して外観を確保します。その下に代替の電解コンデンサーで電源部を作り込みました。
再度、通電試験をします。電流値は思った通り0.45Aぐらいにすぐに落ち着きました。電源部の電解コンデンサーもまったく熱くなっていません。修理は成功のようです。他に修理が必要な箇所もないのでこれで終了です。
 
TRIOのFMアダプター:AD-5と接続してステレオでFM放送を受信してみます。受信感度は良好ですがトラッキングが大幅にずれていたので調整します。AFCもよく機能しています。真空管チューナーのFM放送の音が好きなオーディオ愛好家も多く私のその一人です。真空管チューナーは本当にいい音がしますので一度お聴きになってはいかかでしょうか。スター製FMチューナー・ユニットは雑誌に載っているので知っていましたが、今まで取り扱った真空管ラジオやチューナーではμ同調方式に出会えませんでした。FM-200を使ってみてFMチューナー・ユニットがあれば受信感度の良いチューナーを簡単につくれそうです。
 
余談ですが実は私もアルプス製のμ同調方式・FMチューナー・ユニット(上の写真)とリング状の固定金物を大切に保管しています。今回、とてもいい経験をしたので近々にでも製作に取組んでみようかと思います。