2026/03/06

SONY 8F-36 AM/FM ソリッドステートファミリ 2バンドホーム型

SONY 8F-36 AM/FM ソリッドステートファミリ 2バンドホーム型ラジオの紹介です。1966年、11,000円の製品です。 312×190×100mm、2.3kg、単一×4個(6V)、10cmスピーカーのホームラジオです。FMにはメサ型トランジスタを採用した高感度設計です。

大きな操作しやすいダイヤルツマミとFM/AM切替スイッチ、トーンコントロール、ボリュームの順に並んだツマミが意識しないで操作できる自然で高級感のあるデザインです。

背面のパーチクルボード
背面パネルの内部と回路図

回路図
電源は電池のみで持ち運びを重視したのか、もしくは電源ノイズを排除したのかったのかもしれません。FMロッドアンテナを採用していますが、外部アンテナ端子はありませんでした。外部出力はイヤホンジャックと録音ジャックが背面にあります。フェライトバーは長さ余裕のある16cmを採用しています。

上の写真の様に修理のため分解・清掃をします。

左上:フロントエンド、右上:アンプ回路、右下:IF回路
FM/AM切替スイッチ
FM/AM切替スイッチは接触が悪いので分解・清掃します。
交換した劣化の激しい電解コンデンサ

劣化部品は全て交換してから動作確認をします。

AM、FMともに受信しますが音が小さすぎます。 アンプ回路に正弦波を入力すると正常にスピーカーから音がでます。IF回路の利得が不足していると推定しました。

IF回路基板

取外した型番不明のNPNトランジスタ

IF回路のトランジスタを交換のため取り外します。回路図ではPNPでしたが、測定するとNPNです。IF回路はトランジスタが極性反転されていました。トランジスタはOEMらしく型番不明です。代替として2SC535×3個に交換します。

2SC535に交換したIF回路

再度、動作確認をします。AM放送の音量は正常になりました。やはり、IF回路の故障でした。FM放送はノイズと音割れです。FMフロントエンドのトランジスタ不良が濃厚です。

メサ型トランジスタ:2SA455

FMフロントエンドには、メサ型トランジスタ2SA455×2個が搭載されています。PNPでは驚異的な高性能トランジスタです。基本、2SA45×以外に代替品はなく、入手困難な絶滅危惧種のゲルマニウムトランジスタです。

2SA376×2個に交換した様子

2SA455:材質Ge、fT=300MHz、Cob=0.6pF、Ic max=10mA

2SA263:材質Ge、fT=180MHz、Cob=2pF、Ic max=5mA

2SA263:fT=180MHzとFM帯域の要件を満たすトランジスタです。 2SA455と交換してみましたが動作はNGでした。利得が足りないのかもしれません。

2SA376: 材質Ge、fT=50MHz、Cob=0.6pF、Ic max=10mA

2SA376は Qと利得は良好ですが、fT=50MHzと帯域が狭くFMのRFやMixには要件を満たさない不向なトランジスタです。手持ちのトランジスタがこれしかなくMixの代替品として試しに交換してみました。動作はOKです。更にRFのトランジスタと交換してみます。驚いたことに十分に実用になりえる動作で感度も十分です。2SA376のスペックはfT=50MHzですが、実際はfT=100MHz程度の性能を持っていたことになります。

2SA455の代替品は下位互換として2SA376に決定しました。

検波用ダイオード
 最後に残ったのはサッーというノイズで調整してもとれません。FMモノラルでノイズが入ることから検波用ダイオードの不良が疑わしいです。検波用ダイオードをIN34A×2個に交換してノイズは解消しました。
修理が完了したラジオ内部

最終的な動作確認をします。AM放送は受信感度、音質などノイズもなく良好な動作です。 FM放送は、隣接チャネルが近くにあると影響を受けやすく不安定になります。ノイズももう少し少ない方が良いと思いますが、この当時の限界です。

外部アンテナを接続した様子

FMフロントエンドにPNPトランジスタでは感度は不足ぎみです。FM用ロッドアンテナでは受信レベルが足りません。FMは強電界地域での使用を前提にしたラジオなのかもしれません。外部のFMアンテナ端子が欲しかったです。上の写真では、ラジオのアンテナ同軸ケーブルに300Ωの外部アンテナを接続したところ受信感度は良好でした。

操作感も良く高級感のあるホームラジオです。あと2~3年経っていればフロントエンドも改良され良質なFM放送が聴けたかと思います。時期尚早で少し残念な製品です。 

SONY 8F-36は、1966年の製品なので回路全体が劣化していました。また、PNPトランジスタでFMフロントエンドを構成した、代替部品が入手困難で修理がむずかしいラジオです。この時代以降は、高性能なNPNトランジスタやFETに置き換わりますが、それ以前の初期のFMラジオです。IF回路のトランジスタは回路図ではPNPですが実際はNPNに極性反転して実装されているとから、急速に半導体技術が進んでいた時代の製品であることがわかります。

同時期に8F-38、8F-48とFMステレオアダプタによりFMステレオラジオが販売されています。真剣にFMステレオを聴きたいユーザー向けの製品です。8F-36は気楽に毎日ラジオを楽しむためのホームラジオとしてユーザーは棲み分けされています。FM放送はモノラルですが良質のFMを聴かせる大人のラジオです。ホームラジオですが当時の技術を惜しみなく投入したFM時代の幕開けを感じさせる製品です。